雪花の誕生日回です!
北海道の勇者・秋原雪花、北海道と言う広大な土地で一人、孤独に戦った少女。
幾億もある平行世界の中、彼女が救われる世界はほんの一握りだけ。
多くの結末は――
「景にゃん、そこは本返し縫いでお願い~」
「はいはい……にしても、雪花ってホントにこういうの上手いよな」
一月一八日、雪花の誕生日。
景夜は彼女の部屋にて、衣装づくりを手伝っていた。
「そんなことないよ?景にゃんだって慣れれば簡単簡単、こうやって作業してると何だか心が落ち着くんだよね」
「そうか、今日はこの後の予定あるか?」
景夜の言葉に、雪花は頬を掻きながら苦笑して答える。
「それが、今日はこの後なんも予定ないんだよね~。偶には、一人でゆっくり過ごすのもいいかなって」
「……もしかして俺、邪魔しちゃったか?」
「大丈夫大丈夫。どうせ来るだろうと思ってたから、この作業残してたし」
「雪花がいいならいいか……」
そう言った景夜は自分が任された作業に戻る。
慣れない景夜からしたらあまり上手く縫えてるか分からないが、縫い目は雪花が見ても満点を上げられるほどの綺麗さだ。
そこから数分、無言が続く。
景夜は真剣に縫っているし、雪花もそれを見てかあまり話しかけないよにしている。
「…………」
「…………」
「………ねぇ?」
「……どした?」
しばしの間続いた無言を破ったのは、雪花だった。
「夜さ……良かったらなんだけど、一緒にラーメンでも食べに行かない?」
「……俺でいいのか?」
「うん、しずくから良い場所教えてもらったんだよね。だから……さ」
何故だろうか、景夜は今の雪花を見ていると無性に不安になる。
「いいぞ。それより、なんかあったのか?少し変だぞ、今日の雪花は」
「そう?景夜にもそう見える?……実はさ、昨日夢見たんだ」
雪花が語ったのは夢の話、だが本当は数ある平行世界の自分の結末。
「段々と土地が減っていって、それで周りの人たちは私を責めたり、恩を着せる為に庇ったり。……人の醜い部分を嫌って程見せつけられた、天の神がバーテックスを寄越してきた理由が何となく分かった気がした」
「…………」
「まぁ、夢じゃなくて
あまりにも救いがない終わり。
その世界の彼女に、救いや幸せはあったんだろうか。
「……嫌な話だな」
「だよね……でさ、私は思っちゃうんだ。あの世界の私には悪いけど、景夜たちに会えて良かったって。だって景夜たちに会えてなかったら、きっと私は死んでた」
「お前が居たから、諏訪は救えた。お前が悪く思う必要はない」
「おお!相変わらず、言いたいことはズバズバ言うよね。そういう所が好きなんだけど」
その後も雪花の話に付き合い、時折相槌をして時を過ごす。
そんなこんなで二時間も経った頃には作業を終えて、二人とも向かい合ってお茶を飲んでいた。
「ありがとね、愚痴みたいのに付き合ってくれて。結構スッキリした」
「ん、まぁ愚痴聞くのは慣れてるからな。師匠の愚痴はもっと凄かった」
「ああ~、確かに紅葉さんは凄かったよね。景にゃんに誘われて飲みに行ったら、紅葉さんの愚痴に三時間は付き合わされたもん。しかも、結構生々しくてさぁ~」
「誘って悪かったな、誰か道連れにしようと思ったら話を合わせてくれそうなのが雪花しかいなくて」
あまり悪気がなさそうに謝る景夜に対して怒ることはなく、呼び方もいつも通りに戻っている。
「あっ、忘れないうちにこれ」
小さな箱を取り出す、そこには――
「ブレスレット?」
「そ、雪花はオシャレだからな、選ぶのに結構苦労したぜ。着てる服の傾向をよく観察して、ひなたに選ぶのを手伝って貰ったりもした」
「へぇ~、私の為にそこまで。愛されてるにゃ~私って」
照れた顔を誤魔化すように、冗談交じりに言葉を返す。
それに対して景夜は、
「そうだな、お前は愛され上手だよ。だから、なんかあったら俺に吐き出してくれていい。別にそんなので嫌いになったりしないからさ」
「やっぱり、景にゃんには敵わないな~。……また今度、聞いてもらってもいい?」
「勿論、遠慮なくどうぞ。なんせ俺たちは――なんだから」
雪花は景夜が言った単語を頭の中で反芻させる。
「仲間……いいね、こういうの」
「だろ?」
それからは外に出て、歩きながらなんでもない話に花を咲かせて夕暮れの道を歩く。
雪花は一人も好きだが、こうやってなんでもない時を
きっと昔、北海道で勇者をやっていた頃は、こんなこと思わなかっただろう。
彼らのお陰だ、今ならハッキリ分かる。
(ああ、本当にここのみんなに会えて良かった)
「ありがとね景にゃん、良い誕生日だったよ」
「そりゃぁ良かった。ついでにらーめん奢ってやるよ、何食う?」
「とんこつで!ゴチになりま~す」
景夜にとっては、友達の誕生を祝う大切な一日。
雪花にとっては、大切な友達に祝われた最高の一日。
(帰りたくないな~、ずっとここに居られたら楽しいだろうな)
彼女は、元の世界に帰りたくないと思える程に、この温かい日常に染まっていた。
次回もお楽しみに!
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