今日は二月三日、郡千景の誕生日である。
海斗は事前に作っていた、千景専用のゲームアプリをプレゼントしていた。
一方、景夜は昨日見た夢を思い出していた。
雪花が見たような平行世界の夢。
その世界に景夜は居らず、勇者も若葉以外の全員が死んでしまっているというものだった。
その世界で千景は、精霊の穢れを貯め過ぎたことによる暴走で若葉を襲ってしまう。
愛されたくて、必要とされたくて、その所為で堕ちてしまった。
結果的には神樹に勇者としての資格を剥奪される。
その後は若葉に守って貰うが、敵の死角を突いた攻撃から若葉を守るために星屑に右肩辺りから腹の方までを噛まれてしまう。
そして、千景と若葉の最後の会話はーー
「……乃木さん……私は……あなたのことが嫌いよ……」
「知っている……」
「でも……嫌いなのと同じくらい……あなたに、憧れて……」
「……」
「あなたのことが、好きだったわ……」
景夜がこの言葉を聞いて思ったことは、とてつもない憎悪だ。
郡千景と言う存在をここまで追い詰めた人たちが憎くて、それでも自分たちはそういう人たちも守らなければいけない勇者で、混乱した頭で気付けば昼を迎えていた。
千景への誕生日プレゼントは前から決まっている、それは――
「チカ~、準備出来たよ。そっちはどう?」
景夜は千景の部屋の座椅子に腰かけながら、コントローラを手で遊ばせる。
「こっちも準備オーケーよ。じゃあ、始めましょうか――」
千景も景夜の隣に座り、コントローラ持つ。
彼女からは、剣呑なオーラが滲み出ている。
「「俺たちの
彼女たちの発言は、決して某有名ライトノベルのパクリではない。
魂からの言葉が、ポロッと出できたに過ぎない。
大切なことなので、二度言おう。
断じてパクリでは(ry
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景夜のプレゼントは時間だ。
「今日のお昼から、一緒に協力プレイのゲームをしよう!」という企画だ。
だが、これには致命的な欠点がある。
それは――
「景夜君!SW側に敵!」
「了解、俺が突貫するから援護お願い!」
「任せなさい」
二人がゲームに対して真剣になり過ぎると言う所だ。
二人の後ろには友奈(高)(途中参戦)が居て、ゲームを観戦しているが如何せん二人が強すぎて相手が弱く見える。
彼女も先程までプレイしていたが、早々にリタイア。
彼女の無念を晴らす為、二人は鬼になって敵チームを次々に撃破していっている。
既に、このやり取りを数回は繰り返しているため、友奈も慣れてきているので次回からは善戦できるだろう。
まぁ、この試合が終わってからはまた別のゲームに移ったため、彼女が活躍することはなかった。
次のゲームはパーティ系でワイワイ盛り上がった、途中から若葉やひなた、球子に杏も参加して相当な人数でやることに。
そのお陰で、千景は退屈をしていなかったので景夜は特に何も気に留めなかった。
夕日も隠れ、夜空に月が見えるようになった頃。
ポロリと、言葉が漏れだした。
「なぁチカ?もし、もしの話だぞ。自分が死ぬってなったら誰に何を伝えたい?」
他のみんなが居る中で自分だけに向けられた問。
千景は、少し思考して答えを出す。
「そうね……高嶋さんやあなたに感謝を伝えるわ。後は……乃木さんに……素直な言葉を」
顔を少し俯かせて照れたような表情を見せる千景に対して、景夜は安堵した。
こういうことが言える限り、大抵のことは何とかなるだろうと悟ったのだ。
「そっか……」
「いきなりなんなの?こんな質問して」
「何でもないよ、ただ……チカが生まれて来てくれてよかった。そう思っただけ」
「変な景夜君ね……あなたのそういう所が好きなのだけど」
クスリと笑った彼女の笑顔が脳に焼き付く、この笑顔をもう一度守り抜くことを誓った。
「誕生日おめでとうチカ!」
「ええ、ありがとう……」
この後、若葉が千景の大切なゲームのセーブデータを消したのはまた別のお話し。
次回もお楽しみに!
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