へたブラ!   作:日暮れ

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第二話

 ……?

 

 昨夜何があったのかはっきりと思い出せない。気付いたら美涼の部屋で倒れていた。

 

 何があったと美涼に聞いても適当にはぐらかされてしまう。いやこの時点でアイツが俺に何かしたのは明白なのだが、どうにもそこを思い出そうとするとただただ「貧乳は禁句」と脳内でせわしなくこだましてしまう。

 

 ……なんだかとても怖いからこの件には深く触れないでおこう。触らぬ神に祟りなしだ。

 

「大河ー! 早く準備しないと学校遅れるわよーほら美涼も!」

 

 母さんの俺たちをせかす声が家に響く。おっと、もうこんな時間か。言い忘れていたが俺は十六歳の高校一年生だ。ちなみに美涼はひとつ下の中学三年生。

 

「ほらほら、いくよ兄貴!」

 

「このヤロウ……人が気絶してたのに何の介抱もしてくれないなんてひどいだろ!」

 

「し、知らなかったんだもん気絶してたなんて!」

 

「じゃあ一体何してたんだよ俺が気絶してた部屋で! お前もあの部屋で寝てたんだろ?」

 

「そっ……それは、その……腕まくらとか……」

 

「ん?何だって?」

 

「っ……ぅるさいこの馬鹿兄貴! 死ね!」

 

そういってアイツは先に走っていってしまった。それにしてもまぁ腕まくらとは……――

 

 

 

 ――俺が妹と「兄弟」という関係になったのは、ごく最近の話だ。

 

 それまで妹は俺にとってほとんど他人でしかなかった。月一で話すか話さないかのなんとなく家にいる人。あの時は俺も妹も互いにそう認識していただろう。

 

 そんな時だ。まぁ、あのときのことは俺もあまり思い出したくはない。つまりいい記憶ではないのだ。

 

 ……妹が襲われそうになった。

 

 帰り道、なんの気なしに公園を覗いてみると、一人の少女が年上のガラの悪い男達に囲まれていた。

 

 よく見るとどうやら妹のようだ。助けるか助けないか少し迷った結果、助けないことにした。

 

 アレももう中三だ。あんなトラブルくらい自分で何とかするだろう。何より面倒な事に巻き込まれたくないからな。

 

 じゃーな妹よ。がんばれよと言おうとした瞬間、妹が後ろから押さえつけられた。そのまま車に運び込まれてゆく。

 

「――っ!?」

 

 どうしよう、助けなきゃ。どうやって? 無理だ! 警察を呼ぶしか……

 

「っ…だれかっ……助けて!」

 

 ――それを聞いた瞬間、俺の中の何かがふっきれた。

 

 ……その後のことはよく覚えていない。気付くと、体中泥とアザだらけにし、家の前に倒れこんでいた。どうやら俺はアイツらに正面から突っ込んで行ったらしい。

 

 なんて馬鹿なことをしちまったんだ俺。警察でも呼べばいいものを……

 

「あの……アリガト、兄貴。」

 

 ……まぁ、別にいいか。たまには。

 

 ――そんなことがあった次の日から、妹の――いや、美涼の奇妙な行動が始まった。

 

 俺の秘蔵のエロ本を探し始めたり風呂入ってきたり、挙句の果てには俺のベッドにもぐりこんで一緒に寝てたというのも一度あった。

 

 さっきだって腕まくらしてたっていってたし……あの日から一か月位しかたってないのに普通ここまで懐くか? 犬でもあるまいし。何なんだよまったく。

 

 さて、昔話はこれくらいにしてと。妹もいなくなったことだし一人優雅な通学時間を楽しむと

 

「やあ、おはよう大河」

 

 ………………

 

「頼むからそんな悲しい顔をしないでくれ。結構こちらも傷つくものなんだよ?」

 

 ……こいつは幼馴染み兼親友の藤本加恋。こんなしゃべり方をしてはいるが、れっき

とした女である。正直、俺より男らしい所が多々あってまいっているが。しかし――

 

「……今失礼なことを考えていたでしょ?」

 

「い、いや!? 何にも考えてないよ? うん」

 

 しかし……ギャップ、というやつだろうか。こいつが時々見せる今の「○○でしょ」のような女言葉。正直、たまりません。

 

「……まあいい。それより、今日の宿題ちゃんとやってきたのかい?」

 

「いや、昨日はちょっとな……気絶してて」

 

「怖いから何があったのかは聞かないでおくよ……僕のものを写すかい?」

 

「お、相変わらずいろんな意味で気が回るな。いつも感謝してるよ」

 

「っ……突然変なことを言わないでくれ。照れるじゃないか」

 

 おぉ、普段見れない藤本のデレだ。今のは脳内保存しておかないと損だな。

 

「そ、そういえば妹さんは今いないのかい? 最近よく一緒に登校してるじゃないか」

 

「先に行ったよ。もしいても妹とお前を近づけたりはしないから安心しろ」

 

「そうか……よかった」

 

 なぜだかこいつと妹は仲が悪い……というか、妹が妙にこいつにつっかかってくる。そのせいで藤本は妹が少し苦手らしい。

 

 まぁ、妹も年頃だ。こんな男言葉使ってるくせに見た目は世界美少女コンテスト三連覇とかできそうなヤツなんて気に食わないだろう。

 

「……? 大河?」

 

 コンテスト……コンテストか……こいつにキャッチコピーつけるとしたら……そうだな、『野山に咲く一輪の花のような彼女に、一目会いたくはありませんか?』かな。ベッタベタだが文字通りなんだから仕方ない。

 

「大河ってば……そんなに見ないでくれ。僕の顔に何かついてるのかい?」

 

「んぬおわ! す、すまん」

 

 気付かないうちに見とれてたようだ。なんて危ないヤツなんだコイツ!

 

「……ね、ねぇ? 大河」

 

「ん? 何だ?」

 

「えっと……僕たちは親友だよね?」

 

「いまさら何を言い出すんだ。俺とお前は一生親友に決まっているじゃないか。いいか、

一生だぞ! 絶対だぞ!」

 

「………………」

 

「頼むからそんな悲しい顔をするな。結構こっちも傷ついたりすんだぞ?」

 

「ふふっ……やっぱり変わらないね。……おっと、このままだと遅刻だよ! 走ろう」

 

「やれやれ……もう少し余裕もてないもんかなぁ」

 

 




藤本さんの口調、性格などが某憂鬱のキャラに似ているのは……気にしないでください(汗)

この小説は元々友人に見せるために書いていたものなので……
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