ポケモン二次創作短編集   作:rairaibou(風)

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ある大真面目なポケモンの食性

 それは、まるで無機質な、人工物のような存在だった。

 彼こそが食物連鎖の頂点、天敵は殆ど存在しておらず、ただただ、いたずらに命を弄ぶ事を天に許された存在だ。一族の中でも最も巨大な彼の体格は、彼が常軌を逸した強さを有していることを物語っている。

 彼は生まれついてのキラー、本能の中に殺しをインプットされた凶悪にして凶暴な存在。人間ですら、ポケモン博士すら、彼の生態を、行動を理解することは出来ない、彼は人間の常識という名の固定観念の外にいる存在だった。

 足は早くない、むしろじっと一点に留まって狩りを行う。その辛抱強さは生物の中でも随一だ。否、むしろその辛抱強さこそが、彼を生態系の頂点へとカテゴライズさせる最も大きな要因でもある。

 小さな獲物で腹が膨れぬ事を彼は知っている、彼はもっともっと大きな獲物を食べたい。

 彼は息を潜め、獲物を待つ、擬態は完璧、強さも完璧。彼が敗北することは少ない。

 だが、それでも、獲物を捉えられないときもある。辛抱の狩りだ。彼はそれに心荒れることはない。最後に勝利するのが自分であることを、彼は知っているから。

 彼は傍らにあった木の実を食らってその場を凌ぐ。好きな味だった。

 

 

 

 それは、暖かく、優しい傘のような存在だった。

 森のポケモン達は、彼の傍が大好きだった。いつも生活の中心が彼であって欲しかった。

 彼らは、大冒険のもとに手に入れた食料の一部を彼に分け与えていた。

 その理由はたった一つ。彼に飢えられては困るからだ。

 彼の傍にいれば安全だった。自分達の身を脅かす捕食者は彼を嫌って近寄らず、故に、彼の周りにはいつも弱いポケモンたちばかりがいた。

 彼はその優しさ故か、狩りが下手っぴだった。弱いポケモンである彼らから見てもそれは顕著だった。

 まず色合いが良くない、あんなにも毒々しい赤に近づくものなどいるものか。

 そしてあの踊りが良くない。あんな不格好な踊りで一体何を呼ぼうというのか。

 だが、その色とその踊りのお陰でモロにバレてる彼の存在こそが、自分達を安全足らしめている事を彼らは知っている。

 

 

 

 人間は、ヤグルマの森のモロバレルとその周りのポケモンたちとの相利共生の存在を理屈では知っている。

 はっきり言おう、モロバレルは捕食者としては三流どころの騒ぎではない。五流六流それ以下だ。森という場所であんなに目立って何をするつもりなのか、人間にはさっぱりわからない。その模様がモンスターボールによく似ていることは有名であるが、もっと言えば彼がモンスターボールのデザインが決定する前からそのような姿であったことは最も有名であるし。そもそも大きさが違いすぎる。恐ろしい話、そもそもモロバレルの食性、そもそも何を呼ぼうとしているのかというところもまだよく分かっていない。端的に言えば、彼が何をしたいのか、人間は誰も理解していない。

 だが分かっているのは、彼らが他のポケモンたちからのカンパで食生活を成り立たせているということ、妙なもので、その生活を成立させることには、やっぱり強さが必要であるということだ。

 そして数々の研究から、モロバレル本人は狩りに対して大真面目であることも分かっている。その結果に、やはり人間は頭を抱える。

 モロバレルというポケモンは、人間の常識という名の固定観念の外にいるようだった。




モロバレル

モンスターボールの カサを みせつけ えものを おびきよせようとするが だまされる ポケモンは すくない。
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