I・アイランドへ
「どうしましょう。」
今私が悩んでいるのは巨大人口移動都市<I・アイランド>への招待状。
何でも私のお爺様がI・アイランドのアカデミーを改築する際の資金を全て出したそうで、そのお礼としてお父様宛に四枚の招待状を出したそうだ。
しかしお父様が植物状態の今、お父様の代わりに私が行くとして、残り三枚はどうするか。
「お嬢様?それはなんなんですか?」
「I・アイランドの招待状よ。」
「それって、世界中の科学研究者たちの英知が集まった島で、個性やヒーローアイテムの研究成果を展示した“I・エキスポ”が開催さている場所ですよね。」
「あなたも行く?」
「いいんでしょうか?」
「あら、私のメイドなんだし当然でしょ?」
あ、喜びの仮面が荒ぶっている。
相当喜んでいるようだ。
あと二人、誰を連れて行こうか。
百ちゃんも持っているから、いらないかな。
「緑谷さんを誘ってみようかしら?」
緑谷さんならとても喜びそうだ。
「I・アイルランドへの招待状を貰ったんだけど、貴方も行きませんか?」
《あ、えっと〜。オールマイトと一緒に行くことになったから、招待状はいらないよ。誘ってくれてありがとう。》
残念。
爺でも誘ってみようかしら?
《残念ながら、その日には依頼のお客様がいらっしゃいます。お誘い頂き感謝いたします。》
爺もダメなのか。
そう言えば百ちゃんは誰を誘ったのかな?
《それでしたら耳郎さんと麗日さんを誘いました。その他の皆様は翌日の一般公開の日のチケットを渡しましたが?》
流石百ちゃん、仕事が早すぎる。
男性陣には明日渡すようだ。
「切島さん、爆豪さん、轟さん、緑谷さんは招待状を持っていらっしゃるから、それ以外・・・。」
ぱっと浮かんだのは小槌さん。
彼は興味あるのかしら?
《俺が一緒に行っていいのか?俺を誘うより、女子を誘った方がいいんじゃねぇか?》
「百ちゃんに先手を打たれたわ。男性陣にも明日渡すらしいし、小槌さんを誘ったのよ。」
《・・・そっか。当日○○空港で待ち合わせでいいか?》
「ええ。」
電話を終えると、こころがニンマリした仮面で私をみてた。
「彼氏ですか?」
「違うわよ?男友達よ。」
さて、もう一人を決めなくては・・・
(小槌視点)
電話を切り静かになった自分の部屋で、私はベットに倒れこんだ。
ベットから悲鳴をあげるが、そんなの気にしている気分ではない。
なんだろうこの気持ちは・・・
心を抉り取られるような・・・
「お兄ちゃん、顔赤いよ?・・・今、治してあげる。」
ベットに倒れこんでいる私をみて慌てだす山女魚を、お母さんはとめる。
「ダメよ、山女魚。宿儺のこの病気は貴女には早すぎるもの。」
「え?まさか・・・お兄ちゃん死んじゃうの?」
涙目になりながら両者を見比べている。
「死にはしないわ。でもこの病気は本人の気持ちに関わることだから、治せないわね。」
お母さんはこの症状に思い当たる節があるらしく、終始笑顔。
かたや山女魚は私を心配そうに見つめている。
「これはね、恋煩いって言う病で人には絶対感染しないわ。」
「ば、馬鹿。そんなんじゃねえよ。」
「何よ、更に顔を赤くして説得力ないわよ?」
「出ていってくれよ。」
「はいはい、反抗期ね。」
お母さんが山女魚を連れ出て行く。
一人になった私は、ゆっくり呼吸する。
再度静かになった自分の部屋。
「俺は知らないうちに彼女に好意を持っていたのか。」
いや、薄々は分かっていた。
ライバルだと思っていた最初の頃とは違い、彼女のもつ人柄に惹かれていることを・・・
気持ちを落ち着かせる。
そして前世の記憶を思い起こす。
「こんなイベントあったか?」
期末とショッピングの間に、こんなイベントがあるとは記憶にない。
それにI・アイルランドも聞いたことがない。
もしかして
「とりあえず準備を・・・」
動き出した体は、数歩動いて止まった。
男子って何を持っていけばいいのだろうか。
男子だから化粧品とかもっていかんだろうし、くしはありか?
いや、持っていったらナルシストだと思われないだろうか。
なんで私こんなに悩んでいるよ〜。
end
○○空港に到着し、小槌さんを探す。
結局もう一人は決められず当日を迎えてしまった。
「小槌さん、待ちましたか?」
「いいや、ついさっき来たところだ。そちらのメイドは?」
「はい、私はお嬢様専属メイドこころと申します。今回の旅行の付き添いとしてまいりました。」
喜びの仮面が荒ぶるこころ。
本当に楽しみなのね。
こころが近づき、小声で呟く。
「ところでお嬢様、どうしますか?」
チラッと振り向くと、女の子が慌てて隠れた。
「それじゃ行きましょうか、そこに隠れている君もどうですか?」
「や、山女魚!どうやってきたんだ!」
「飛んできた。」
飛んできた?
妹さんは無個性だと聞いたのだが・・・
「親父、山女魚を・・・はぁ⁉︎二人で温泉旅行!ちょっ!」
「親戚とかいないの?」
「いるのはいるけど、今から迎え呼ぶとなると出発時間に間に合わねぇ。」
「飛行機乗れるの?」
キラキラと目を光らせる。
「山女魚ちゃん、飛行機初めて?」
「うん。」
このまま帰らすのもかわいそうだ。
「私達と旅行行こっか。」
「わーい。」
「大丈夫なのかよ?」
「もう一枚あるから、大丈夫よ。」
荷物検査を終え、飛行機に乗る。
「この飛行機もしかして・・・」
「私のプライベートジェットよ。」
「凄〜い、広〜い。」
はしゃぎ回る山女魚ちゃん。
「小槌さん、山女魚ちゃんに個性が?」
「あぁ、ハズレ個性だけれどな。無個性だと思っていた山女魚にとっては、それすら別にいいみたいだけれどな。個性は菌。」
空中に漂う菌となって飛んできたわけね。
「山女魚ちゃん、一緒に連れて行く条件を言うわ。①個性を使用は、私かお兄さんが許可した時だけ。②私かお兄さんと一緒にいること。分かったかしら?」
「うん。」
飛行機が飛び立つと、山女魚ちゃんは大はしゃぎ。
暫くすると、山女魚ちゃんは夢の中。
小槌さんはそんな妹を温かい目で見ている。
到着したロビーは、オールマイトのファンでいっぱいだった。
囲まれているオールマイトも大変そうだ。
全てのファンにファンサービスをし終え、私は声をかけた。
「お疲れ様です、オールマイト。ここでも人気ですね。」
「東方少女と小槌少年、久しぶりだな。後ろの二人は初めましてだね?」
「はい、お嬢様専属メイドのこころと申します。」
兎の仮面ということは、緊張しているようだ。
「は、初めまして。小槌 山女魚です。」
山女魚ちゃんは小槌さんの後ろに隠れてしまった。
恥ずかしいらしい。
「ここから離れましょう。またファンに囲まれたら困りますから・・・」
「そうだな、東方少女。そうだ、君達も私の友人と会ってみるかい?」
そのままの流れで私達もついて行くことに。
移動中、ヒーローオタクでもある山女魚ちゃんは緑谷さんと仲良くなりつつある。
緑谷さんもヒーローオタクなのかしら?
「ライトおじ様。」
私達と同じくらいの女の子が、オールマイトの友人?
いや、違うわね。
友人の子供さんといったところか。
案内されてやってきた場所は、どこかの研究室。
「ようデイブ、元気だったか!」
「トシか?久しぶりだな!」
昔からの親友であるオールマイトとデヴィットは久々の再会を喜び固く握手を交わす。
「紹介しよう少年、こちらは―――」
「デヴィット・シールド博士ですよね!個性研究の第一人者‼︎天才科学者と呼ばれる大物で、オールマイトのコスチュームやサポートアイテムの開発を担ってて、その成果は―――「あー・・・少年。今はそのくらいにしとこうか」あ、すいません。つい・・・」
「紹介の必要はなかったかな?デヴィットだ、よろしく。」
私達がデヴィットに会った一方で、危険も近づいていた。
「ブツは受け取った、予定通りで助かる。なに?オールマイトがここにいるだと?いや、大丈夫だ。予定通り事を進めるぞ。」
備考
特になし