まあ、ある能力があるからこうなるよねー。
「お?切島じゃん。何でこんな所にいるんだ?」
煙の発生場所には、岩山の聳え立つステージのようなものだった。
個性を使用し仮想的である機械のロボットを倒していく、名前は“ヴィラン・アタック”という競技らしい。
MCの人が《タイムは33秒です!》と答えていた。
倒し終わるまでにかかる時間を競っているのか。
「彼もクラスメイト?」
「あ、うん。」
だいぶ女子との会話に慣れたというのに、このたどたどしさは治ることはないだろうな。
続いて出て来たのは・・・
「が、がっちゃんもいるの!?」
緑谷さんが驚く中で、MCが《それではヴィラン・アタック!レディー・・・ゴー!!》と叫んだと同時に爆豪さんは両手から爆破による高速移動で次々とヴィランロボットを破壊していく。
そして叩き出したタイムは、
《す、凄いですよ!クリアタイム15秒です。これは現在トップのタイムです!これを越える挑戦者は果たして現れるのでしょうか!?さぁ、お次はどなたでしょうか!!》
と、MCは盛大に煽る発言をして周りの観客はさらにヒートアップしていく。
爆豪さんが緑谷さんの口喧嘩から、緑谷さんの参加に繋がるコンボはちょっと笑えた。
それを見てた山女魚ちゃんが小槌さんの服を引っぱる。
「お兄ちゃんお兄ちゃん。私、これやってみたい。」
「分かった、個性の使用してもいいぞ。ただし、MCの人に被害を出さないこと。」
「うん。」
《続いて挑戦するのは、頭に結んだ大きな茶色のリボンがチャームポイントの女の子が挑戦です!一体どれくらいのタイムが出るでしょうか!!》
結果から言うと、50秒でクリアした。
個性が分かってまだ日が浅いのに、個性を上手いこと使用している。
ロボットを倒すのに時間を取られなければ、本当ならもっと早く倒せたかもしれない。
「おつかれ、山女魚ちゃん。」
「楽しかった!でもロボットじゃなかったらもっと楽だったのに!!」
そりゃそうだ。
菌を与えて抵抗力を弱めることも可能な個性だ。
ロボット相手では意味がないに等しい。
《す、凄い凄い!》
というMCの声が聞こえてきて全員が見ると、そこには岩山を覆うように氷山が聳え立っていた。
《タイムは14秒!現在1位です!!》
そこにいたのは勿論轟さん。
「おいおい、何でクラスメイトがこんなに来ているんだよ!」
「百ちゃんは株主、お茶子ちゃん・耳郎ちゃんはそのおこぼれ。爆豪さんは遊英体育祭優勝、切島さんはそのおこぼれ。轟さんはエンデヴァーの代わり、緑谷さんは不明。纏めるとこんな感じよ。」
殆どは電話で聞いたから間違いはないはずだ。
緑谷さんが来た理由は知っているけど、皆に話さない方がいいだろう。
山女魚ちゃんが今度は私の服をひっぱる。
「ん?どうしたの?」
「穂稀お姉ちゃんは参加しないの?」
「私はやらないわ。私が参加しちゃったら、次の挑戦者がやる気をなくしてしまうもの。」
「どういうこと?やる気が無くなってしまうって?」
メリッサさんの疑問に答えたのはお茶子ちゃん。
「そっか!メイドさんの個性を使うんだね!!」
「あー、それがあるかー。」
「「???」」
小槌さんの嘆きに首を傾げるメリッサさんと山女魚ちゃん。
「いいわ、やってあげる。実際に見せた方が早そうだしね。」
そう言うと私はMCの人に質問をした。
「一つ確認していいかしら?」
「あ、はい。参加者ですか?」
「参加予定です。スタート合図前に個性での前準備はありでしょうか?」
「ロボットに被害がない個性での前準備は有りですが、被害が出る前準備は無しです。」
それなら咲夜さんでも大丈夫ですね。
「参加します。」
《さーて、続いての挑戦者は着物を纏った女の・・・え、えー!メイド服にか、変わってしまいました。え、え?》
「こっちの方が個性を使いやすいからよ。合図を出して下さい。」
《あ、はい。それではヴィラン・アタック!レディー・・・ゴー!!》
指をパチンと鳴らす。
反応が少し遅れてしまった。
0.3秒くらい進んでしまっただろう。
ゆっくり歩きながらロボットの周りにナイフを展開。
全てのロボットに同じことを繰り返す。
初期位置に戻る。
指を鳴らす前にこう呟くのが決め台詞。
「そして時は動き出す。」
ロボットを全て倒すことに成功ようだ。
《えーと・・・・・機械の故障でしょうか?》
「機械は故障してないわ、私の個性によって1秒でロボットを倒したのよ。」
《スーパースローカメラにも映ってないようですが・・・》
時間停止中に動いているからね。
映っているわけないのだ。
「私の個性の能力の一つよ、こうやって何もない空間に物を出すことができるの。」
ナイフを一本、何もない空間から出して消してみせた。
実際は咲夜さんの能力を駆使して、マジックみたいなことをしているのだ。
・・・ロボットに刺したナイフの回収もしないとね。
・・・・・
・・・
・
「穂稀お姉ちゃん、何があったの?瞬きしている間に終わっちゃった。」
「個性を駆使してロボットを倒したのよ。」
「・・・何も言わん。」
携帯が鳴る、メールが届いたようだ。
その内容を確認し、返事を送信する。
「小槌さん、別行動いたしましょう?三時間後(レセクション一時間半前)にホテルささらぎで落ち合いましょう。」
「お、おう。」
(オールマイト視点)
診察台に横になっている私の体を念入りに検査しているデイブが、さながら信じられないような表情を浮かべている。
「これはどういうことだ!?個性数値が極端に下がっているじゃないか!?」
表示されている機械が信じられないに狼狽えていた。
個性の数値を調べることができる装置で、以前の検査した時にはゆるやかに下がっている。
だがしかし、今回は個性を緑谷少年に渡したことにより一気にガクッと落ち込んでしまっていた。
「AFOとの戦いで負傷したとはいえ、この数値は異常過ぎる。いったい君の体に何が起こったというんだね!?」
「・・・・・」
言えない、東方少女の個性と同様に極秘情報だからだ。
心の中で私は謝罪の言葉を言いながらも
「長年ヒーローを続けていれば、ガタがくるもんさ。」
と言い訳をした。
親友であるデイブやメリッサを巻き込む訳にはいかない。
「このままでは平和の象徴が失われてしまう!他国が敵発生率が20%を越しているのに・・・」
「そんな悲観しないでくれ、優秀なプロヒーローもいる。」
「だが、AFOみたいな敵が・・・」
「その時の為にも、平和の象徴を降りるつもりはないよ。」
それに希望だってある。
外を見れば夕暮れ、パーティーに行かなくては・・・
「また、後で・・・パーティー会場で会おう!」
「あ、あぁ。また後で・・・」
デイブは悲しそうな顔をしていたが、気にしないでおこう。
end
ふぅ〜。
「お疲れ様です、お嬢様。お茶です。」
「ありがとうこころ。なんとか時間ギリギリまでには終わったわね。後は微調整が必要になるでしょうね。」
「お嬢様は裁縫も得意ですよね、不得意なことはありませんよね?」
「あら、私だって不得意なことはあるわよ?」
今の所不得意なことは見つかってないが、私が人である以上何かはあるはずだ。
いや、個性の関係上ないのかも知れないが・・・
「小槌さん達がロビーにいると思うから、迎えに行ってもらえる?」
「分かりました。」
気に入って貰えるかしら?
「穂稀お姉ちゃん、なにしていたの?」
「山女魚ちゃんの服を作っていたの。持ってきてないでしょ?」
「うわ〜あ、可愛い〜!これ穂稀お姉ちゃんが作ったの?」
「手先が器用なんだな。あ、飯田が一時間後にセントラルタワーの七番ロビーで集合だとよ。」
「すみません、私は一緒に行けません。」
備考
・ヴィラン・アタックについて
個性による準備については何も言っていなかったので、ありにしました。