(山女魚視点)
私は警察署に出頭している。
人質をとられたとはいえ、罪を犯してしまったのだ。
相応の処置は受ける覚悟だ。
私はお母さんが人質に取られたことから、穂稀お姉ちゃんに個性を使ってしまったことまで全て話した。
二人の警察官の方は時折質問をしながら、たわ言としてではなく真剣に聞いてくれた。
「・・・成る程な、話は分かったよ。オー・・・八木君、どう思う?」
「私は彼女が嘘をついているような子には見えないし、この話は信じていいだろう。こづ・・・エヘン。山女魚ちゃんだったかな?正直に話してくれてありがとう。」
八木さんと言われた人は、かなり痩せている。
外でなにそれする刑事さんではなく、デスクワークとかが仕事の刑事さんなのかな?
でもそんな課あるのかな?
「私は、どんな刑罰でも受ける覚悟です。」
「・・・そんなことはしないさ。こづ・・・エヘン。山女魚ちゃんにとっていい経験になった。君はまだヒーローになる資格がある。」
「今日はゆっくり休むといいさ。後日呼び出すかも知れないけど、そん時には君のお母さんも東方さんも助け出してみせるよ。」
まだヒーローになる資格がある、そんなことを言われ涙が溢れ出した。
「ありがとう・・・ございます・・・」
リカバリーガールと並ぶような、治療系のヒーローになりたい。
そういう風に決めた。
その為にも勉強を頑張らなくちゃ!
end
(小槌視点)
私は結局、妹を取ることにした。
しかし、それでよかったの?
家に帰ると山女魚はテレビを見ていた。
幾分かいい顔をしている。
警察署に行く前は死んだ魚の目をしていた。
何かいいことでもあったのだろうか?
「お帰り、緑谷お兄ちゃんのお見舞い?」
「ああ、一緒に東方を救い出さないかって言われたけどな。俺は断念たんだ。」
「断念しちゃったの?」
「勿論悩んださ。だが母を目の前で連れ去られて、好きな人を倒そうとした山女魚を一人にできるかよ。」
本当は東方を助けに行きたい。
しかし今言ったことも事実。
分身できのであれば、両方したい。
だが所詮人は一つしか選べない(ただし個性による複製などができる人は除く)。
それに自分が関わることで、原作が変わってしまうことを恐れた。
私は妹を選んだ、これが正しいかはわからない。
「ちょっと屈んで?」
なんだろう、内緒話かな?
目の高さを合わせるように屈む。
「なんだ、山ーー」
ビシッ
頬を叩かれた。
結構痛かった。
「なんで悩んでいるのよ!!私は大丈夫。やりたいことをやって来なさい!後悔しているお兄ちゃんなんて見たくないよ。」
まっすぐな目で私を叱ってくれた。
全く、そう言う所は死んだ親父似だとつくづく思う。
「すまん、山女魚。夕食は一人で食べてくれ。お兄ちゃんは、友達・・・いや、親友として助けに行ってくる。」
「うん、いってらっしゃい。」
今更原作がなんだ。
既に原作と違うことがおこっている(I・エキスポ)ではないか!
瀬呂だって女子になっているし、攫われたのは爆豪じゃなくて東方だ。
原作と異なる私もいるんだ、これならとことん変えてやろう。
家を飛び出し、自転車を飛ばす。
病院には既に轟・切島・飯田・八百万が待っていた。
原作の緑谷のポジションに自分が入った感じだろう。
本来なら35〜40分かかる道のりを、25分で辿り着いた。
人生でこんなに早く漕いだのは初めてかも知れない。
「遅かったじゃないか、もう少し遅かったら行くところだった。」
「すまんな、夕食を作ってから来たから遅くなった。さあ、
「間違いとは・・・言い切れませんね。」
「小槌が
「それっぽいな。」
「俺が王子とか、違うような気がするが・・・」
「じゃあ、
「そういう問題じゃなくてだな!」
緊張感がある程度ほぐれた、これなら大丈夫。
待っていろ、東方。
絶対、助けてやるからな。
end
「久しぶりね、お姉様。よく寝れたかしら?」
「・・・」
「無視?ま、いいけど。」
連れてこられた後の記憶がない。
恐らくコンプレスの個性で、一時的に閉じ込められたのだろう。
体力は戻りつつあるが、それでも反抗するにはもう少し回復が必要。
周辺を見渡す。
ここがアジトだと考えていいだろう。
どこかの無法バーのようだ。
「用心に越したことはないし、これを付けてね。」
絢香に渡されたのは、ミサンガのような何か。
ミサンガの糸の部分が、金属に変わっている。
付けた瞬間、心が読めなくなった?
能力を完全に消された訳ではないみたいだ。
現に第三の眼は開いている。
自分の許容できないものは弾くことにも対応しているらしく、コンマ何秒かの能力解除は時たまあるが基本的に使用は不可能だろう。
「不思議そうな目をしているね、説明してあげる。これはね、着けた人の個性を封じられる特殊な機械を埋め込まれているの。私も髪留めとして使っているの、これがないと茶碗とか何枚も割っちゃうからね。」
そんな機械が発明されていたなんて・・・
発目さんがいたら目をキラキラさせながら、あれでもないこれでもないと言いながら分解するだろうな。
・・・いや、絶対爆発する未来しかみえないから考えるのはやめよう。
《ご機嫌いかがかな?ヒーローの卵。》
「あら、先生。治療は完璧に終わったの?」
バーに置いてあるパソコンから音声が聞こえてくる。
どうやら音声だけのようで、画面を見ても何も映っていない。
奴がオール・フォー・ワンであっているだろう。
「最悪な気分よ。それにしても貴方がこいつらのボス?極度の人見知りなのかしら?姿を見せたらどう?」
《そう言わないでくれよ、
「・・・」
靈洟・・・これが私の本当の名前なのだろう。
《驚いていないね。初耳じゃなかったのかい?》
「・・・・・初耳よ。預かる前に聞いたらしいけど、何も答えなかったと聞いているわ。」
《そうだろう、そうだろう。君が敵連合のボスの娘という事実を知られたくはないだろうね〜。せっかく出会えた預け先に嫌われたくはないもんな。》
私は運良く志村菜奈が見つけてくれたから、預かられることになった。
それを知ったオール・フォー・ワンは、産みの親にもう一人の女の子を産ませた。
それが絢香。
「ちなみに産みの親は“奇跡”、お兄様が“忍術”。この二つの個性を知っているでしょ?」
つまり早苗さんとマミゾウさんの個性元は、産みの母親と兄の個性ということか。
その二つはこいつらがいる前で、使わないことを決めた。
「知らないわよ、そんな個性。かなりいい個性のようだけど、何が言いたいの?」
《いい個性・・・か。それは
失策だ。
鎌をかけられたようだ。
「・・・どんな個性でも、その人のモチベーション次第で変化するとは思いますが?全ての個性はいい個性だと思います。」
《そうだね、そういうことにしてあげよう。さてヒーローはどう判断するかな?とても楽しみだよ。フラン、テレビを付けなさい。》
フランはテレビをつけた。
そこに映っていたのは、遊英の記者会見の様子だった。
備考
・山女魚の未来
リカバリーガールの二代目として有名になる予定。
・例え
攫われた姫って書いていたらピーチ姫だなと思い、他の5人にも例えがないとな〜と考えました。
ヤオモモだけは少し悩みました、女性で知能者が浮かばなかった。
賭ケグルイ?知らねぇ。
・靈洟
穂稀の本来の名前ですが、ほぼほぼ出てきません。