いぶそうあれこれ   作:量産型ジェイムス

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 誰がなんと言おうと投稿時間は二月十四日の五十時です。嘘です。ごめんなさい。遅くかったのと長いです。後世界が謎。


バレンタインアモーレ(九章)

 時はその日の朝。色んな意味で都合のいい平和な世界線。相川渦波ならシュ◼ゲだ、と喜びそうな設定だが、生憎本人は知らない。渦波の《リプレイズ・コネクション》により『元の世界』にやって来ていたのは……

 

「わぁー!! 渦波のいた『元の世界』! 綺麗……うわっマリアちゃん! あれなんだと思う!?」

「……あれがカナミさんの言っていた自動車というものでしょうね。『連合国』にあった『魔石線(ライン)』の上を走る列車と少し似ている気がします。あれより速いみたいですが」

 

 早速家の窓を開け放ち目を輝かせるラスティアラ。話を振られたマリアは落ち着いて答えていたが、僅かな驚きは隠せない。

 あのクウネルでさえ混乱していた異世界なのだからラスティアラのはしゃぎようやマリアの動揺も当然なのかもしれない。ディアブロ・シスは奇妙な感じの家そのものに驚いて固まってしまっていた。混乱が少ないのはスノウ・ウォーカーとリーパーであった。

 

「へー意外と広い部屋だね、スノウお姉ちゃん」

「そうだね。何にもないのに……。カナミ、床のふかふかはなに?」

 

 と、あっさりしている。興味はあるようだが、リーパーは『繋がり』から得た人生経験の多さ、スノウはコルクで僕の千年前について聞いた時のような心境が理由だろう。

 ちなみにスノウにはセルドラがこっちに行く時に使っていた魔法で尻尾とかを隠してもらっている。

 

「カーペットっていって固い床に敷いたりするものなんだよ。」

「へぇ……カナミと約束した異世界に連れていくのがやっと達成できたよ……。えへへ」

 

 そういえばそんな約束もあった。ティティーとの帰り道の途中でそんな話もしていたな、と懐かしく感じる。そしてこれから一年も経ってない事にも驚かされる。

 

 

 

 そして僕は異世界にやってきた最後の一人に向き合った。

 

「はぁ……はぁ……キリスト、どうして一人でこいつらを引率しようなんて考えたんだ」

「え? いやぁどうしてって言われても……」

「はぁ!? 僕の『悪寒』が急に強まって急いで来てみれば……」

 

 余程急いで走ってきたのか未だに息を整えているライナーに僕は苦笑する。

 

「みんなには自分の身体能力や魔法で暴れないようにきっちり言い含めてるし、こっちの魔力は薄いから大丈夫だって。」

「安心できない……! 絶対に何か起こる……」

 

 心配性のライナーを宥めていると、待ちきれないのかラスティアラがやってきて言う。

 

「ねぇ! 早く外にでようよ! 今日は買い物に行くんだったよね!」

「ひひっ、私はもっと近くで自動車?を見たいなー。一個一個違うみたいだし」

 

 興奮したままのラスティアラと自動車にご執心のリーパーが催促する。その興奮に乗せられたのか僕もわくわくしてきた。

 

「よーしっ行こうか! 目指すは近くにできたらしいショッピングセンター! ここは田舎だから少し歩くけどレベルアップしてる人は問題ないよ。」

 

 完璧な計画だと拳を握る。しかしライナーには白い目で見られ、大雑把な計画を好むラスティアラはもうすでに扉を開けて出ていっていた。

 スノウとリーパーは「わー!」とは言ってくれたがそそくさとラスティアラについていく。

 唯一感心してくれたのは優しいディアだった。

 

「すごいなカナミは! えっと、リヴィングレジェンド号の時に約束した服を買いにいくんだっけか?」

「ディア……! ああ、それを思い出したんだ。約束した時には考えもしなかったけどこっちの世界の服の方が珍しいかなって」

「確かにそうだな。もしかして出会った時の不思議な服もあったりするのか?」

「パーカーならきっとあるよ。ディアにも似合うかもしれない」

「ほんとか!」

 

 嬉しそうな声で跳ねるディアの手を引いて置いていかれないように後を追った。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 道のりは順調であった。時々通る車をリーパーに解説したり、翻訳魔法《ニューリーディング》をかけ、事前準備しておいた携帯電話(スマートフォン)を渡して使い方を教える。自分の魔法と似たような事ができるそれをスノウがしげしげと見ていた。綺麗な山景色にラスティアラが騒ぎ、マリアは電力で光るものに興味を示し、ライナーが色々気になるものを拾ってたりいた。

 

 問題は着いてから、周囲とは雰囲気の違うショッピングセンターに一同が息を呑み、渦波が想像より混雑する入り口に首をかしげながらも足を踏み入れた。

 

 

 ショッピングセンターで外見上非常に目立つ渦波達御一行は立ち尽くしていた。入り口の端に移動した渦波が額に手を当てて空を仰ぐ。

 

「今日がバレンタインだったとは……向こうにいるとこっちの記念日とかの感覚が……クリスマスとかは布教したけど……バレンタインかぁ……」

 

 渦波の記憶を辿る限りチョコを貰ったのは妹からのみで湖凪ちゃんからも死ぬ前に貰う事はなかった。もしいたらどんな風に、でも湖凪ちゃんは……本当の彼女は………

 唐突に遠い目になる渦波を引き戻したのはラスティアラだった。

 

「ねえカナミ、バレンタインってなーに?」

「えっ……」

 

 現実に戻った渦波は咄嗟に誤魔化す方法を考える。この雰囲気で果たしてどこまで誤魔化せるのか、大人しく白状した方がいいのか。そんな思考はすぐに無駄になる。

 

「どうやら“好きな男の子にチョコを渡す”イベントみたいだねー」

「ちょっ、リーパー!」

 

 どこにあったかパンフレットを手に外套姿のリーパーが止める間もなく簡潔に読み上げた。一瞬にしてみんなの目の色が変わる。ライナーがそれみたことかと目線を向けてきた。うるさい。

 

「へーそうなんだーそんなのがあったんだー。ねーマリアちゃん、ちょっと見ていかない?」

「い、いいですね! チョコってのも気になりますし。スノウさんもそれでいいですよね!?」

「わたしもそれでいいかな……?なんかの記念日みたいだし……?」

 

 にわかに浮き足立ってリーパーのパンフレットに集まっていくラスティアラとマリアとスノウ。異世界のイベント、記念日に強い興味を示す。だが、そこに行かない女子が一人。

 

「俺は……パーカーを……渦波が似合うって言ったパーカーを……」

 

 頭を抱えていたディアをライナーが誘導し、提案する。

 

「お前はキリストと行った方がいいと思うぞ。ここで一旦二手に分かれるんだ。チョコを見に行くラスティアラ、スノウ、マリアとリーパー、そして服を見に行くキリストとお前と僕だ。多分だがああいうのは女だけの方がやり易いだろうしな。」

 

「うーむ、ライナーの言う通り女の子だけで回ろうと思うけど、ディアも行こうよ!?チョコをさ」

 

「うわあああどうすればいいんだー!」

 

 さっきよりも頭を抱えて悩むディア。そしてさらっと分かれる案が既定路線になった。置いてきぼりの渦波が口を挟もうとしたが、ちょっと待っとけと言わんばかりの目のライナーが制した。

 

「なんなのかよく分からないチョコと()()()()とパーカーを買いにいくのとどっちがいいのかよく考えろ」

「あっ……あう……」

 

「カナミ、チョコって何?おいしいの?」「甘いお菓子だよ僕は好きかな」

 

 説得を続けるライナーに小声でチョコとはなんぞやちラスティアラが聞く。好きかなという発言にマリアとスノウがにやりした。

 

「……わかった。俺は渦波とパーカーを買うぞ!」

 

 ディアは納得して拳を突き上げる。えー、と口を尖らせるラスティアラも本人が決めた以上強制はできない。ここでやっと話がまとまった。入り口の端によっていたとはいえ集まっていく視線を気にする渦波が確認をとる。

 

「僕とディアとライナーが服を買いに、ラスティアラ、スノウ、マリア、リーパーがチョコを買うでいいのかな?」

「ああ、決まりだ。さあ行こうか」

 

 

 なぜか押してくるライナーに気圧され、ラスティアラとスノウに財布を渡し、念を押して別れた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「なぁ、なんであんなに強引にしたんだ?」

「全員でチョコ見ていくのはどうみても危険だ。男二人に女四人とか男女比で見ても関係を見ても多分戦争になる。周囲の目も痛いだろうしな。女だけの集団の方が絶対安全だ。人数も少ない方がいい」

 

 全然気付かなかった観点だった。色々考えてくれたらしい騎士に感謝する。しかしライナーはいつバレンタインに詳しくなったのだろうか。疑問をよそにライナーは続けた。

 

「そして僕があの常識外れのやつらが何かやらかさないように影から見張っておこうと思うんだがどうだろうか、我が主」

「え? 場所とか分かるの?」

「行く時リーパーのやつと同じパンフレットを拾った。結構詳しく書かれてるしオススメの通りに回るはずだ」

 

 思わず問いかけた質問で疑問は解消された。行き先の見当まで付いてるのなら止める理由もない。強くても女の子なのだからライナーがいれば心強い。

 

「騎士ライナー、僕の代わりにラスティアラ達を守ってほしい」

「了解だ、我が主」

 

 そういって人混みの中に消えていった。

 ディアと僕だけが残された。僕もディアもまったく気付きはしなかったがデートである。

 

「カナミ? パーカーはどこにあるんだ?」

「あっ、三階だった。えっとエスカレーターは……」

 

 

 

 

「それではーチョコレートを湯煎して溶かそうと思います!」

 

 もう一方のチームはチョコレート作り教室に参加していた。スノウは買おうと言ったが、パンフレットおすすめの手作り教室に他の人が惹かれたので多数決で決まった。飛び入り大歓迎のもので、スタッフはその美しい女の子達を喜んで迎いいれた。

 

 

 リーパーが言う。

「湯煎ってなんだろねー?」

 スノウが言う。

「お湯をかけるのかな?」

 マリアが言う。

「溶かせればいいのでは?」

 ラスティアラが言う。

「これがチョコかぁ……」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「カナミ、これ似合うか?」

「おぉ、似合ってる」

「ほんとか!?」

「ほんとだよ。やっぱり白が似合うね、ディアは」

 

 ぱあっと笑顔になるディア。

 試着室で着替えて見せ、それを褒める僕。「お似合いです~」と褒める店員がこういうのもどうでしょう?と別のパーカーを出してくる。

 最初は義手に驚いた店員だが何かと気もセンスも利くようでディアの可憐な一面やボーイッシュな一面を強調するパーカーを見つけてくれる。僕にはセラさんに言われた通り服のセンスはなかったのでとても助かった。

 

「これはどうだ?」

 

 グレーカーキのパーカーのディアがでてくる。光沢感が強いそれもディアに映えている。

 

「いいと思うよ。シンプルなデザインなのもいいと思う」

 

「ベロアパーカーも似合いますねぇ……お客さん可愛いからお姉さんも燃えます!」

 

 正直全部似合っててかわいいと思っているが、ディアや店員さんにしか分からない何かがあるのか話し込んでまた別のものを渡している。

 ふと向こうの四人を心配する。ライナーの心配ぶりを思い出し楽観が少し収まったのか急に不安になっていった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

「あの……お客さん……」

 

 指導員が気付いた時には遅かった。

 

 リーパーは良かった。何かと器用で他の参加者を覗きこみ真似して初めてには中々のものが出来上がりつつあった。

 

 残る三人は三者三様特徴的なチョコが出来上がっていた。

 マリアの焦げた匂いのする黒めのチョコ。

 スノウのお湯を入れたりしてブルーム現象を起こした白っぽいチョコ。

 全く作業が進んでいないラスティアラのチョコ。

 

 リーパー以外は料理は得意と申込書に書いてあったのだ。美人で手のかからなそうな参加者はとても喜ばしいものだった。しかしチョコレートを写真でしか知らないと思わず、他の参加者に気を払っていたのだ。

 明らかに指導員の落ち度であり、うまくいかなかった事をどう攻められるかと戦々恐々とする。

 

 しかし三人は振り向きもせず完成間近の自分のチョコを見て言う。

 

「チョコって焦げた匂いがするんですね。意外です。」

「これがパンフレットにあったホワイトチョコ?うまく白くならないね。難しい」

「あれ?みんなもう完成するの? 早いなー」

 

 指導員の呼びかけには気付かないほど周りを気にしてなかった。異世界の云々より渦波の発言で燃えているからだろう。

 慌てて失敗を隠し指導として話しかけ軌道修正を謀ったが遅すぎた。せめてもの償いとして何とか二人分の体裁は整えたというのだから優秀ではあっただろうに。

 

 

 教室は終了した。多くの参加者は成功し盛況であったが、指導員らの頭はあのチョコを笑って包装している二人と落ち込む一人、渡されて困惑するであろう人への同情で占められていた。

 

 四人が料理教室にありがとうございますと声をかけフロアに出るとライナーに遭遇した。

 

「もう終わったのか……早い」

「あれ? どうしているの?」

 

 ライナーは手を後ろに回し答えた。

 

「い、いや気を回してキリストと二人っきりにしようと思ったのとさっさと合流できるように案内してきたんだ」

「ふーん」

 

 少しトーンの低い、まるで落ち込んでいるかのような声でラスティアラが言った。

 無論ライナーの言葉は嘘である。途中目を離してもいたが、湯煎の時から監視はしていた。彼自身チョコを判定出来るほど詳しくはなかったが。そしてラスティアラ達は「こっちだ」と言って歩き始めたライナーに談笑しながらついていった。

 

 

 

 

 僕は息を呑んでいた。

 

「ぉお、いいと思うよ。かわいい……」

 

 ディアは先程の白のパーカーのシリーズでもっとシンプルで自分よりサイズの大きいものを着ていた。ディアのかわいさがよく顕れてると思う。

 

「よしっ、やったぜ」

「えぇ、やりましたよ! お客さん!」

 

 思わず口に出た感想を聞いたディアと店員さんはとても喜んでいた。ディアと店員さんがハイタッチしている。この数時間ですごく仲良くなったみたいだった。

 

「俺はこれにする! カナミ? いいか?」

「勿論。店員さん、長いことありがとうございます。」

「いえいえ、いいものを見させてもらいました。お買い上げありがとうございます! レジはこちらです。」

 

 レジで支払いを済ませる。またきてくださいねと手を振る店員さんにディアが大きく振り返した。上機嫌のディアを連れて店からでると、ラスティアラ達とライナーと鉢合わせた。

 

「ライナー!?」

「ぴったりだったか。こっちが終わったから連れてきた。ラスティアラがカナミはここにいるってうるさいから来てみたら……ほんとに当たってたとは」

「ほら、ライナーの言ったとこに行かなくてよかったでしょ?()()()()()()()()

「ああ、僕には無駄だったが、お前があってたよ。良かったな」

 

 得意気に言う元気なラスティアラを適当にあしらうライナーに視界の端の『切れ目』の気配を僅かに感じつつ声をかける。

 

「そろそろ世界に気付かれるから急いで帰ろうか」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 こうして僕は今の自分の世界に帰ってきた。特に世界について仲間に説明することはなく。外を見てみればもう日が沈む頃になってしまった。

 

 帰るとラスティアラは早々に走っていってしまった。そしてその場に残ったスノウとマリアから。

 

「カナミ……分かってるとは知ってるけど……バレンタインチョコあげる」

「ありがとう。チョコ作り教室で手作りだったって聞くし、大事に食べるよ」

「えへへ……隠し味も入れてみたし楽しみにしてね。多分ホワイトチョコだと思うよ」

「多分……?」

 

 一抹の不安を抱くが、家族以外から貰った初めてのバレンタインチョコに塗り潰された。

 

 スノウの前にマリアが出てきて、チョコを渡される。

 

「カナミさん、バレンタインチョコです。……本命チョコというのです。」

「うん、ありがとう。」

「初めてで少し焦げてしまいましたが、食べてくれると嬉しいです。」

「勿論味わって食べる。マリアは料理の才能があるんだし、大丈夫だよ」

 

 僕は気持ちのこもったものを貰う感動を感じた。二つのチョコからは二人の想いそのものを受け取ったような重みを感じる。傲慢にももらえるとは思っていたが、改めて貰うと本当に嬉しいものだと思った。

 

「はーい! 次はアタシ! スノウお姉ちゃんとマリアお姉ちゃんとライナーのお兄ちゃんとお兄ちゃんのぶん! はいっ」

 

 リーパーは小さなチョコを作ったようで、包装が二人とは違った。同じ教室だったとは聞いたが、柔軟な対応のある教室なのだろうか。

 

「リーパー、これを作っていたのですか。どうりで包装が違うと思いました」

「ありがと、リーパー。ラスティアラのぶんは?」

「さっき寄り道したときに渡したんだよー」

 

「寄り道って……」

「キ、キリスト! 友チョコというのがあったらしく、僕もさっき買ってきた。これからもよろしく」

 

 遮るように渡されたのは有名なチョコレートだった。あのパンフレットそこまで書いてあったのか。

 

「……そうだったんだ。ありがとう。夕食までの間に食べさせてもらうよ」

 

 僕の納得に安心したらしいライナーは「じゃあ何かあったら呼んでくれ」と去っていった。マリアとスノウにリーパーも仲良く話ながら自分の場所に向かっていった。一瞬仕方ないですね、かわいい、と断片的に聞こえた。が、それは僕の知る限り誰にも該当しない。

 

「俺も……チョコ作ればよかったのかな?」

 

 少し肩を落としたディアの不安げな言葉が耳朶を打った。

 

「そんなことない。パーカーのディアはとってもかわいかった。それがディアからのバレンタインだって」

「それでいいのかな?」

「いいに決まってる。それくらい今日のディアはかわいかった」

 

 自分でも歯の浮く台詞だと思うが、これでいいと考えた。バレンタインにのってないからといってディアが引け目に感じる必要はない。

 

「……次会うときには絶対来てくる。多分夕食だけど、そこでみんなに自慢するから」

「来るときクウネルに見つかるとうるさいと思うから気をつけて」

「ああ、わかった」

 

 ディアはかっこよく笑ってじゃあ、と駆けていった。

 

 

 急に一人になって静かに感じる。

 随分と賑やかだったなと思い返しつつ、チョコを食べるために自分の部屋に戻った。貰った四つのチョコを見てにやつきながら部屋に帰る。が、部屋のすぐ近くに来た時。

 

 

 不意に物音がした。

 

「ーーっ」

 

 振り返ったが、誰もいない。僅かだった物音はもうしない。不審に思いつつ部屋の扉を開けた。

 

 

 机に見覚えのある紙袋が置いてあった。窓が開いていた。見覚えというか今手に持ってる紙袋だった。

 確信をもった僕は机の前に座って貰ったチョコを置いた。

 

 一つ一つ開けてみる。

 

 

 マリアのチョコは器用にも炎のような形で焦げていた。

 スノウのチョコはまんまるで油脂が分離したのか白い。

 リーパーのチョコは四角くて甘そうで小さい。

 ライナーのチョコは板チョコ。

 

 最後の紙袋を開けるとチョコが二つでてきた。一つは色は普通でもぐちゃぐちゃになってしまっていて、もう一つはこの時期に売ってるハート型のチョコだった。

 

 紙袋の中にまだ何かが入っていて、取り出してそこ手紙を読む。

 中身を読んで違和感や仕方ない、かわいい、が少し無理矢理だが繋がった気がした。つい笑ってしまう。

 

 

 

 

みんなの分もハッピーバレンタイン!!

  

  手作りは完成しなかったから

 

   買ったのも入れてあるよ。

 

 来年こそ手作りで手渡しするからね。

 

 

     Love,Lastiara Whoseyards




「つまりライナーは監視してる時近くの店で買ったんだよね」
「すまない。二手に別れて『悪寒』が収まって気が抜けた時にパンフレットの友チョコを見て……」
「そしてラスティアラは僕と時間を合わせると称して新しいチョコと手紙を書いたと」
「形だけでも整えられなかったのが悔しかったらしい」
「……味はリーパーに次いでおいしかったのに」
「どうした?」
「いやなんでもない」
「何はともあれ何事もなくて良かった」
「いやまだ僕にとっては終わっていないんだ」
「え?バレンタインデーは終わったじゃないか?」


「はぁ……ホワイトデーどうしよっかなぁ……」
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