地下鉄内は、通勤、通学時間を過ぎ、ある程度の空きが出来ていた。しかしそれでも、何人かの人々は地下鉄に乗っている。
するといきなり、何かにぶつかったかのような衝撃が車内に走った。
乗客たちは不思議そうに辺りを見回す。
またしても、衝撃、そして、車内の電気が消えた。
「何があったんだ…」
「事故か?」
乗客たちは口々にそう言った。
だがそこで、1人の乗客があることに気がついた。
「この…、電車…。宙に浮いてないか?」
車両は地下空間に蜘蛛の糸のようなもので縛られて、宙吊りになっていた。
そして、次の瞬間、車両が大きく傾いた。
「うわぁぁぁぁ!!」
車内からは悲鳴が上がった。
やがて、車両は上の方へとスルスルと上がっていった。
暗闇の地下空間に電車の噛み砕かれる音が響く。
ZETA専用車、ルーバーが地下鉄の駅の地上出入口の前に停車する。
そして、その中からツバサと、ミハルが降りてきた。
「例の事件の地下鉄ってのはここだな…」
ツバサはそう呟くとレーザーガンを構える。
ミハルもそれを見て、レーザーガンを構えながら、階段を降りていった。
駅のプラットフォームは既に、利用客達の避難も完了していたため、完全なる貸し切り状態だった。
「誰もいない駅ってのも不気味なものね…」
ミハルは呟く。
「なぁに、田舎に来ればんなもん当たり前の光景だ」
「でもこういう都会みたいな無機質さはないでしょ?」
2人はそう話しながらプラットフォームから線路に向かって降りる。
「とりあえず…、歩いていってみよう…」
一方その頃、ルーバーの停っているすぐ側に、黒いワゴン車が停車する。
そしてそこから、例の黒い服の男と、アスハが降りてきた。
男は、今回もサングラスをしている。
アスハもまたしてもメイド服姿だ。
「ZETAか…、先を越されちまったな…」
男はそう呟いた。
「先生…?行きましょう」
アスハはそう言って男を促す。
「そうだな…、行こう、アスハ」
ツバサとミハルは線路のだいぶ奥まで進んできていた。
2人はそれぞれ懐中電灯を持って行く手を照らしている。
「あちこち…、壁が崩れているな…」
ツバサはそっと崩壊した壁に手を当てた。
「ひゃっ」
いきなり、ミハルが小さく悲鳴をあげて後ずさる。
「どうした?」
見ると、その足元にはそこが見えないほど巨大な穴がポッカリとあいていた。
「これ以上の探索は不可能か…」
ツバサは呟いた。
「そうらしいな。ここはこの俺が引き受けよう」
不意に声が聞こえて振り向くと、そこには黒っぽいロングコートを着た男と、メイド服姿の少女が立っていた。
「あなた方は…?」
ミハルが訊ねる。
「俺か…。俺は怪獣研究家の西園寺カズト、そして、こいつは…、俺の助手兼世話役の松前アスハだ」
そう言いながら男はサングラスをはずす。
そして、穴の縁まで歩いてきた。
「なるほど、これくらいの穴ならば…」
そう言うとなんとカズトは、穴の中に飛び込んだのだ。
「先生!」
アスハが叫ぶ。そして、彼女も穴のそばに駆け寄った。
しばらくすると数十メートルほど下で懐中電灯が点滅するのが見えた。
「安心しな!俺は無事だ!」
カズトが下の方でそう叫ぶ。
「信じられない…、こんな高さから飛び降りて無事だなんて…」
ミハルは言った。
穴の底、そこでカズトはあるものを探していた。
怪獣のDNAサンプルだ。
そして見つけた。怪獣の皮膚片を…。
「見つけたぞ…フハハ…、やはり運命というのはこの俺の味方をしてくれているようだ…」
そして、その皮膚片に自分の左腕に装着している金色のブレスレットのようなものを向けた。
皮膚片は紫色の光に包まれたかと思うとブレスレットの中心にあった紫のクリスタルに回収された。
「さて…、帰るとするか…」
カズトはそう呟くと地面を大きく蹴って飛び上がった。
そして、着地した先、そこはツバサたちの目の前であった。
「え、えと…、この下から…ジャンプして…ここまで?」
ツバサは信じられない光景を目にして、唖然としている。
「そうだ。俺はもう目的は終えた。帰るとする。しかし、君たちに最後に言いたいことがある」
「言いたいこと…?」
ミハルは訊く。
「怪獣を倒すな。たとえ何人の犠牲が出ようがな…」
「そんな…、無理だ!現に今回だってもう既に何人も犠牲になっているんだぞ!」
ツバサが反論した。
しかしカズトは続ける。
「怪獣は、美しい、怪獣は強い、怪獣はかっこいい!そんな彼らこそこの地球の支配種には相応しいのではないか?俺はそんな世界を望んでいる…」
「そんな世界…、あなたのエゴだ!」
ツバサが言った次の瞬間、地面が大きく揺れ動き、天井や壁が崩れ始めた。
「なっ、なんだ!」
「怪獣が…、活動を始めたぞぉぉぉぉ!!」
慌てる周りに対してカズトはそう叫ぶ。
だがその時だ。
崩れてきた壁がアスハの上に、倒れてきた。
「きゃぁぁぁぁ!!」
アスハは頭を抱えてうずくまる。
「はっ!」
しかしアスハに直撃するその直前、カズトが手から光弾を放ち、コンクリート壁を砕いた。
「せ、先生!ありがとうございます!」
アスハがカズトに抱きつく。
そんなアスハをカズトは優しく撫でた。
一方その頃、怪獣は地上に出現していた。
二足歩行の蜘蛛のような見た目のその怪獣はゆっくりと市街地を進撃していく。
「いたぞ!」
地上に出てきていたツバサとミハルは怪獣目掛けてレーザーガンを構えた。
そして、次々とレーザーを撃ち込んでいく。
怪獣はその攻撃をくらって、こちらに気がついた。
ゆっくりと進路を変えると、こっちに向かって歩いてきたのだ。
そして、5つある赤い複眼から次々と光弾を発射してきた。
ツバサたちの周囲が次々と爆発していく。
2人は身を低くしてそれを避ける。
それより少し離れたところに、カズトとアスハも現れていた。
「先生?どうしますか?」
「見ていろ、今にウルトラマンが現れるぞ…」
爆発が収まると、ツバサは再びレーザーガンを撃ち始め、そのまま怪獣目掛けて突進していった。
「あっ!ツバサ!どこ行く気!?」
ミハルが呼び止めようとするがツバサはそのまま走っていき、フレイスフラッシャーを展開する。
光に包まれて、フレイスが現れた。
「デュア!」
怪獣の前で構えをとる。
怪獣は、それを見ると咆哮し、口から糸を発射した。
糸はフレイスの腕に巻き付き、その自由を奪う。
そして、怪獣はジリジリとフレイスを、引き寄せ始めた。
それを見ていたミハルがつぶやく。
「やっぱり…、ツバサって…」
さてさて、最終章突入ですねぇ!多分あと7話ほどで完結しますぞぉ!