ぐらんぶる secondary creation   作:全て儚き名も無き遠い理想郷

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ISの方でラストまでの展開の構想を練っているのでその気晴らしに書いて見ました。もう少しだけ待っていてください、お願いします。
アニメを見てハマった勢いで漫画を買ってさらにハマったので書いてみたいなぁと思っていたのもあって書きました。
オリ主とオリキャラの情報はいずれ出しますのでご安心を。
アンチは無しで進行していきます。
アンチコメント等も無しでお願いしますね。
感想待ってます。
ISの方がメインなので投稿頻度は遅いです。
こっちは文字数が多いので書けたら投稿という感じです。
それではどうぞ。



第1話 引っ越し

ー千秋sideー

 

俺は古手川千秋。18歳の大学生だ。

姉の奈々華姉さん、双子の姉の千紗姉さんがいる。

父親はダイビングショップの〈Grand Blue〉を経営している。

注意しておくと俺は男だ。名前が女っぽいと言われる事が多いけど男だ。

そして今日は同じ大学に通う従兄弟の北原伊織が来る日。

大学進学を機に引っ越して来たので今日から一緒に住むことになったのだ。

 

「十年ぶりになるのか…」

 

そんな事を考えていると部屋に父さんが入って来た。

 

「伊織を迎えに行くけど一緒に行くか?」

「うん」

「すぐに来いよー」

「うん」

 

 

 

ー伊織sideー

 

ピッ!と自動改札機の音が鳴り、ガタンッとゲートが閉じる。

駅を出るとすぐに目的の人物は見つかった。

 

「お、来たか伊織」

「おじさん」

 

今日からお世話になる叔父の古手川登志夫が右手を上げて笑顔で待っていた。

その後ろの車の中にはスマホをいじっている従兄弟の千秋の姿も見えた。

車の助手席に座りシートベルトをしておじさんの店に向かって車が走り出した。

 

「十年ぶりだね伊織」

「おう。お前が来るなんて珍しいな」

「そう?」

 

後ろの席に座る千秋が声をかけてきた。

それにしても本当に珍しい。

十年前のこいつだったら俺の迎えに来るなんて事はしなかったろう。

静かな印象は相変わらずだな。

 

「大きくなったな、千秋も言ってたが十年ぶりか?」

「それくらいになりますね」

「伊織、これからは家族だ。敬語なんてよせやい」

「あ、はい。わかりました」

「わかってねえよ!」

 

右手でハンドルを握りながら左手で髪をクシャクシャとしてくる。

久しぶりになのか自然と敬語になってしまっていた。

少し照れくさいな。

車の窓を開けると潮風が吹き込む。

 

「海の近くの大学か…」

 

そうこうしてるうちに目的地に着いた。

 

「おじさん、これって」

「おう。俺の自慢の店、ダイビングショップ〈Grand Blue〉だ。」

「ダイビングショップ…」

「立派なもんだろ。俺は車を置いてくるからそこらでも見て待っててくれや。千秋は中に戻ってていいぞ」

「あ、はい」

「うん」

 

千秋はスマホをいじりながら店の中へと戻っていった。

 

「おおー」

 

店の横手に移動すると正面には海が広がっていて思わず声が出てしまった。

どこまでも青い壮大な景色が広がっていて本当に綺麗だ。

そんな感じで海を眺めていると突然と潮風が強く吹いた、潮風によって飛ばされた海の水滴が目に当たり目を閉じる。

目を開けて海の方を見ると、美人がいた。

長い茶髪、ウェットスーツを着ていてもわかるメリハリのついた体型、百人に聞けば百人が美人と言うであろう美人がいた。

美人の人と偶然目が合う、あまりにも突然で少しドキッとしてしまう。

そんな俺を見た美人の人はニコッと微笑む。

 

「あっ、あのっ!」

 

思わず声をかけようとした時だ。

 

「おーい伊織、どこに行ったー!?」

「あっ、は、はい!」

 

おじさんの声で現実に戻される。

 

「先に中に入ってるぞ」

「今行きまーす!」

 

そういえば、さっきの人。

見覚えがあるような気がしたけど。

 

「綺麗な…人だったな」

 

そう呟いて店の入り口に向かう。

大学進学を機に引っ越してきた海沿いの街。

聞こえてくる潮騒と照りつける陽射し。

今までとは違う環境で俺はどんな出会いをするのだろう。

そんな期待を胸に秘めて店の扉を開けた。

 

「アウトォ!!」

「セーフッ!!」

「「よよいのッ!!」」

 

そこには全裸や半裸の男たちが騒いでいる光景があった。

パタンと扉を閉める。

すぅーっ、はぁーっと深呼吸を一回。

さて、気持ちを入れ直して。

今までとは全く違う環境で俺はどんな出会いを………。

 

「「よよいのよいっ!!!」」

 

全裸や半裸の男たちがジャンケンをしている光景だった。

 

「違う!俺が望んだ新生活とこの光景は180度真逆なんだよ!」

 

その場に四つん這いになって絶叫する。

何故だ!?何故なんだ!

夢の新生活の記念すべき第一歩がこんななんて嫌だァァ!!

 

「伊織、改めてようこそ。俺の自慢の店へ」

 

そんな俺とは違っておじさんは何事もないような態度で声をかけてくる。

 

「おじさん!なんで平然としているんですか!?絶対におかしいでしょう!?」

「うん?ああ、確かによく言われるんだよ」

 

だよな!やっぱりおじさんもおかしいと思ってるよな!

自分の店の中で全裸や半裸の男たちがジャンケンをしてる光景に対して何も思わないわけがないよな!

 

「俺にこのエプロンは似合ってないって」

「俺が言いたいのはそういう事じゃない!」

「なんだ?服装の事じゃないのか?」

「服装です!服装ですけど似合う似合わないの次元じゃないんです!」

 

なんでそんな平然としていられるんだよ!?

おかしいだろ!常識的に考えておかしいだろ!

全裸だぞ!?アレが丸見えだぞ!?いいのか!?いいわけないだろ!

おじさんに現状を見てもらおうとバッ!と後ろを振り返る。

 

「あーあ」

「ギャーッ!!」

 

人前なのに、人の店なのに、パンツを脱いだ!

しかもアレが丸見えだぞ!?男のアレが!!

 

「いつもの光景だが?」

「そんな…!?」

 

いつもの光景…だと…!?

そんなバカな!

この光景が、いつも?いつも!?

いつもあっていいものではないだろ!!

 

「ん?どうしたのさ伊織」

「千秋!」

 

ガシッ!と従兄弟の千秋の肩を掴む。

こいつだけは、昔から常識人なこいつならわかってくれるはずだ!

 

「お前はあれを見てどう思う?」

「いつものことだよ?」

「実家に帰らせて頂きます!!」

 

ダッ!と店の外に向けて一直線に駆け出した。

入り口を出て扉をバタンッ!と勢いよく閉めてそのまま走って行った。

 

 

 

ー千秋sideー

 

伊織、やっぱり驚くよね。

まあ、驚かない方がおかしいんだけどね。

でもこれがここのいつもの光景なんだ。

 

「ふむ。ホームシックか…」

 

父さん、ホームシックなのかもしれないけどあの光景を初見で見せられて逃げない奴はいないと思う。寧ろ逃げずに二度見した伊織の方が稀だよ?

俺だって慣れてるから何にも思わないだけで普通ならおかしいと思うもん。

 

「店長、今のは誰ですか?」

「叫び声が聞こえましたけど」

 

ジャンケン、もとい野球拳をしていた二人の先輩がひょこっと出てきた。

ジャンケンに勝った先輩の時田信始先輩とジャンケンに負けて全裸になった先輩の寿竜次郎先輩。

 

「伊豆大に入る甥を連れてきたんだがどこかに行ってしまった」

「え?店長の甥って伊豆大生なんスか?」

「この四月からな、千秋と一緒だ」

 

この店はダイビングサークルの〈PaB(Peek a Boo)〉の拠点。

〈PaB〉はダイビングサークルの名の通りダイビングを中心に活動しているが、同時に飲みサークルでもあるのだ。

サークルメンバーの大半が男性なので男グループのノリが強い、そのためなのかさっきのような野球拳で脱いだり未成年なのに強力な酒を飲むことが多い、というよりそれが確定事項だ。

そして、男性に対しての勧誘は強引な面がある。

 

「って事は時田」

「ああそうだな寿」

 

つまり………。

 

「「新人ゲットのチャンスだな」」

 

哀れ、伊織。

 

 

 

ー伊織sideー

 

「なんだったんだアレ…」

 

だいぶ走ったとは思うがあの光景は強烈すぎた。

全裸や半裸の男たちがジャンケンをしている光景、それに加えてアレを平然と店の中で露出する光景。

 

「なんで店の中に裸の連中が…!?」

 

あまりに凄すぎて声に出してしまう。

だが一旦冷静に考えてみよう。

 

「いやでもダイビングショップってそういうもんか…?店の中で着替えるとか…」

 

偶々更衣室が無かったからあんな事になっていただけなのかもしれない。

 

「だとしたら店の中に全裸の人がいるのも普通かもしれな………」

 

ゴオオオオオ!と後ろから体格のいい二人の男が走ってくるのが見えた。

その二人の男は、さっき店の中でジャンケンをしていた二人だった!

 

「待てや新入生〜〜ッ!!」

「新入生確保ぉーーっ!!!」

 

俺を追ってきてる!?嘘だろ!?

しかも全裸の人は全裸のままじゃないか!

 

「店の外だと完全にアウトだー!!」

 

ダッ!と追ってくる二人から逃れるために俺も再び走り出す。

 

「まて新人!なぜ逃げる!!」

「逃げるに決まってるでしょう!?なんなんですか貴方がたは!?」

 

半裸の男が俺になぜ逃げるのかと走りながら聞いてくる。

普通は逃げるだろ!自分を追ってきてるとわかれば尚更逃げるに決まってる!

 

「さてはお前、人見知りのシャイボーイだな!!」

「自分の今の格好分かってます!?」

 

全裸の男が俺がシャイボーイだなと言ってくる。

シャイボーイでなくとも全裸の男が追ってくれば逃げますって!

 

「そんな事はどうでもいい!!」

「良くないよ!?凄く大事ですそこは!」

 

どうでもいいんだったら日本の法律はどうなってんだよ!

 

「とにかく俺たちの話を聞くんだ!!」

「嫌だああああーっ!!」

 

 

 

ー千秋sideー

 

伊織を追って時田先輩と寿先輩が店を出て数分。

あろうことか寿先輩は全裸で外へ駆け出して行ったけど何も言わないようにしよう。

父さんは新聞を読みながら、俺はスマホでモン◯トの周回をしてると店の扉が開いて二人が伊織を連れて帰ってきた。

 

「お帰り伊織、ホームシックは治ったか?」

「おかえりー」

「まあ男はいずれ親元を離れるもんだ、すぐに慣れるさ」

「困ったことがあれば何でも相談してくれ」

「待ってください。どうして俺に原因があるかのような話になっているんですか」

 

時田先輩と寿先輩も面倒見のいい先輩なんだけどね。

 

「違うのか?」

「違いますよ!店に入ったらいきなり全裸の人たちがいたから驚いて逃げたんです!」

 

父さんが平然と「違うのか?」と聞いたの対し伊織は時田先輩たちに指をさしてそう叫ぶ。人を指さすのはいけない事だぞ伊織。

 

「なんだ伊織、お前は俺たちが好きでこんな格好をしていると思っているのか?」

「違うんですか?」

「否定はしない」

「変態だ…」

「まあ聞け後輩、この格好には理由があるんだ」

「そりゃ理由もなく全裸になっていたら文明レベルは原始時代にまで遡りますよ」

「温故知新というヤツだな」

「ツッコミませんからね」

 

賢明な判断だ伊織。

この二人、いやこのサークルの先輩全員の偶にあるこのような言動に一々ツッコミを入れていたら身がもたない。基本はみんないい先輩なんだけどね。

 

「それで、全裸だった理由は何なんですか?」

「うむ。実はだな、タンク準備のジャンケンをやっていたんだ」

「タンク準備?」

「ダイビングに使う空気の準備だ。外に置いてあっただろう?」

「ああ、アレの事ですか」

 

潜る時に背負うタンクの事だろう。

俺は奈々華姉さんや千紗姉さんとは違ってダイビングはやったことないからちょっとした知識しか知らない。

 

「それをお客さんが使う場所まで運ぶ係をジャンケンで決めていたってワケだ」

 

うちはダイビングショップだからサークルの人以外にも一般の人も利用するのでサークルの人が手伝ってくれる。そういう面でもいい人なんだけどね。

 

「はあ、それで?」

「それで、とは?」

「いやタンク準備はわかりましたけどそれが全裸と何の関係が?」

「何を言っている。野球拳をしたら全裸になるのが常識だろう?」

「貴方がたは野球拳以外のジャンケンを知らないんですか!?」

 

野球拳だけがジャンケンではない。

小学校とか中学校でも経験してきた給食のジャンケンとか、高校だと教室のゴミを捨てる人を決めるジャンケンとか色々なのがある。

だがそのどれにも野球拳のような全裸になるルールは存在しない。

先輩たちがちょっと特殊なだけだ。

繰り返しになるのだが基本先輩たちはいい人だ。

 

「いや聞くんだ後輩、誤解しないでほしい。俺は脱ぐつもりはなかったんだ」

「はあ…」

「ただ自然と脱げていた。俺の言っている事わかるよな?」

「いいえ微塵も」

 

寿先輩の言葉に伊織は一言で尚且つわかりやすい反応を示す。

 

「くだらない事を話していないでそろそろタンクを運んでくれ」

「「ういーす」」

「千秋も手伝うんだぞ?」

「うん」

 

さてお手伝い、お手伝いっと。

丁度周回が終わったのでスマホを机の上に置いて外に出ようとする。

 

「丁度いい機会だ。伊織も一緒に行ってみるか?」

「どこへです?」

「海だよ海、なんなら千秋について行けばいい。千秋、伊織を頼むぞ」

「うん。ほら行こう、伊織」

「あ、ああ」

 

伊織を連れて外に出て店の裏手の道具のある所に向かう。

 

「へえ、これがダイビングの器材か…」

「そうだよ。ウェットスーツにさっき話してたタンク、これら全部を今から運ぶんだよ」

「へえー。お前もダイビングをやってるのか?」

「俺はやってないよ。ちょっとの知識があるだけ、昔から泳ぐのが苦手でな」

「そっか。学部は?」

「文理学部」

 

そんな感じで伊織を話していると寿先輩が台車を押してこっちに来た。

 

「ほいほい、ちょっとどいてくれ」

「あ、お手伝いします」

「おおー、悪いな」

「……」

 

伊織が何か言いたげな表情で寿先輩を見ている。

 

「ん?なんだ?」

 

それに気づいた寿先輩が伊織に声をかける。

 

「いや、きちんと服を着るんだなって思って」

 

まあ、抱いても仕方ない感想だ。

店に入って一番に見た光景に加えて店の外で追いかけられて連れ帰されてあまりにも強烈な会話をしたら自然とそうなるのも無理はない。

 

「おかしな事を言うヤツだな。全裸で人前に出たら変態だろう?」

 

…本当にこう言う事を言ってくるのだから溜まったものではない。

しかもこれが寿先輩に限った事ではなくて時田先輩や他の先輩もだと言うのだからツッコミを入れる気も失せる。

 

「…残念です。初対面の先輩でなかったらブッ飛ばしていたのですが」

 

伊織は伊織で凄いな。

いくらそう言われても仕方ない事をやっていたとはいえハッキリ言える奴もそういない。大抵は俺みたいに何も言わないで受け入れるのが普通なのに。

 

「その台車にタンクを乗せたらいいんですね?」

「手伝ってくれるのか?すまないな」

「いえ、これくらい別に」

「ありがと伊織」

「いいっていいって」

 

三人でタンクを台車に全部乗せ終わるとガラガラと寿先輩が台車を押しながら話し始めた。

 

「今更だが自己紹介な。俺は寿竜次郎、伊豆大機械工の二年だ。四月からは三年だがな」

「あ、同じ学科なんですね」

「そうなのか?」

「はい」

「それで名前は?」

「北原伊織です。機械工学科に入学することになりました」

「そうか。千秋君も伊豆大だったよな?」

「はい。僕は文理学部ですが」

「そっか。まあ何にしてもサークルに同じ学科の後輩が入るのは嬉しいもんだな」

「入るとは一言も言ってませんけどね」

 

忘れてはならない。新入生の勧誘、特に男性に対しては強引だということを。

 

「そんなもの、目を見ればすぐにわかるさ」

「そうですか」

 

寿先輩の言葉に対して伊織は死んでも嫌だと言わんばかりの全力の拒絶の表情を浮かべる。

それから寿先輩がどこからか入部届けと朱肉を取り出して伊織の親指に朱肉のインクをつけて押すだけの状態で先輩と伊織の攻防があったけど何事も無かったかのように寿先輩が伊織に聞いた。

 

「ダイビングに興味は?」

「興味はありますよ」

「おお、そうなのか」

「はい、なんだか大人の趣味って感じだしお洒落っぽいし」

 

まあ確かにダイビングって聞くとそんなイメージがあるよな。

実際のところダイビングはかなりお金がかかるしね。

 

「リア充ってヤツだな」

「でもやる気はありませんよ」

「?なんでだ?やってみたくはないのか?」

「いや、やってみたいとは思わなくもないですけど…」

 

伊織は少し恥ずかしそうに顔を赤くして言った。

 

「俺、泳げませんから」

 

そんな伊織を寿先輩は少し見た後、ハハハと笑った。

 

「ははは!お前さては国語が苦手だろ!」

 

バンッ!と伊織の背中を叩く寿先輩。

 

「な、なんですか急に?」

「いやいやだってな。「やりたい」か「やりたくない」かを聞いてるのに「できる」「できない」で返事をするなんて文法がおかしいだろ」

「いや!でも海に潜るのに泳げないなんて…」

「そんなもんは後からどうにでもなる事じゃないか」

「どうにでもなるってそんな簡単に…」

「最初から自分ができるものだけ選んでいたら何も始まらない。大事なのはお前が興味を抱いているかどうかだろ」

「……」

 

伊織は少し驚いたような表情を浮かべるとまた無言に戻った。

 

「店長の甥って事はよくこの店に来るのか?」

「来るというか大学に通っている間はおじさんの家でお世話になる予定です」

「居候の身でね」

「そうか。それならそのうち一緒に潜る機会もあるだろ」

「…どうでしょうね」

 

寿先輩の中の伊織はサークルに入ってるって前提なんだろうね。

 

「おっと上がってきたみたいだな」

 

そう言った寿先輩の視線の先にはウェットスーツに身を包んだ女の人が海から上がってきていた。奈々華姉さんだ。

海の様子を見に潜っていたんだった。

 

「あ…!」

 

伊織はもう既に会ってたのか。

 

「下見お疲れ様です。どうでした?」

「うん。あの透明度ならナイトダイブも大丈夫そう」

「じゃ、予定通りタンク置いてきます」

「ありがとう、宜しくね」

「ウス!」

 

どうやら今日の海の様子は良いらしい。

寿先輩と奈々華姉さんのやり取りを見ていた伊織は終始奈々華姉さんに見惚れていた。どうやら気づいていないらしい。

 

「あ」

 

奈々華姉さんが伊織に気づいたのか伊織の元に向かう。

 

「いらっしゃい伊織君」

「は、はいっ!初めまして!」

「初めまして?」

 

やっぱりだ、伊織のやつ奈々華姉さんのこと忘れてる。

 

「あはは、私のこと忘れちゃった?」

「へ?」

「従姉妹の顔を忘れるなんて伊織君ってば冷たいなぁ」

「奈々華さんでしたか!いやぁ、気づかったです」

「千秋君はすぐにわかったの?」

「こいつはすぐにわかりますよ。昔っから全然変わってませんから」

「そうなんだ」

 

失礼な。昔から変わったことなどいくらでもある。

昔よりも外に出るように心掛けているし、ちゃんと他の人とコミュニケーションを取るように心掛けてる。

それから三人で移動して姉さんのウェットスーツを洗っていた。

 

「すみません。気が付かなくて」

「十年ぶりだもんね。気付かなくてもしょうがないよ」

「俺のことはすぐにわかったみたいだけどね」

「なんて言うか…。奈々華さん、綺麗になってたから。千秋は同性だし昔から変わってないからすぐにわかったよ」

「ふふっ、ありがとう」

「…なんか腑に落ちないな」

 

昔から変わらないってそんなはずないと思うんだがなぁ。

それにしても、いつも見てるのであまり実感はないがやっぱり他から見たら奈々華姉さんは綺麗なのだろう。伊織が見惚れてた事からそうなのだろう。

 

「でも千紗ちゃんに会ったらもっとびっくりしちゃうわよ」

「そうなんですか?」

「姉の私が言うのもなんだけど、千紗ちゃんったらとびっきり可愛くなったんだから」

「へえ、それはちょっと会うのが楽しみなような緊張するような」

 

千紗姉さんってそんなに可愛くなったのか、家族だからかあんまり気づかないけど案外気付くもんなんだな。

 

「あ、千秋君は何のサークルに入るか決めた?」

「まだ決めてないかな。取り敢えずは一通り見てから決めようかな」

「時田君たちのサークルに入るならお姉ちゃん、サポート頑張るからね!」

「まだわかんないけどね、一応は視野に入れておくよ」

「うんうん。伊織君は時田君たちのサークルに入るの?」

「いえ、その予定はありません」

「そうなの?ダイビングは嫌い?」

「多分、嫌いじゃないと思います」

「じゃあ、何で入らないの?」

 

奈々華姉さんからすれば疑問なのだろう、ダイビングが嫌いじゃないのにどうして乗り気じゃないのか?と。

 

「せっかく男子校を卒業したので距離を取りたいんですよ」

 

へえ、伊織って男子校だったのか。

俺は共学だったからな、男子校は男子校で色々あるのだろうか。

 

「距離を取るって何から?」

 

奈々華姉さんの疑問の言葉に伊織は「決まってるじゃないですか」と言うと店の扉を開けて言った。

 

「こういう男子校のノリってやつからですよ!」

 

店の中では〈PaB〉のメンバーが騒ぎながら飲み会をしていた。

寿先輩が全裸でジョッキ一杯のビールをメンバーの前で一気飲みしている光景だった。

男子校のノリがどんなものかはわからないが俺はなんとなく伊織の言いたいことがわかった。確かにこれは厳しい気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回

「言わせるものか!」

「それはこっちが正しくないですか!?」

「だっしゃあーっ!ナンボのもんじゃい!」

「お前、変わりすぎだろ…」

「話を聞いてくれ!」

「じゃ、さようならゴミク……虫ケラ」

「あの人、重度のシスコンでブラコンなんだ」

「この十年であの人に何があったんだ!!?」

第2話 十年


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