45に力が入ってるのはもう許してくれ。好きなんだ、流石にあんな娘と付き合いたいとは思わな(銃声)
あ、そうだ(不死身の唐突マン)。俺は美少女と同じくらいイケメンが好きです。ホモじゃねえよブ○殺すぞ。
B月D日 天候:雪 忘れられない雪景色になった。
今日は酷い雪だった、少し前にも有ったが天候が不安定みたい。
視界が取れないことも有って、今日の彼の狩りには私も同行することになったのだが――――――
「Nice Shot! 狩りはともかく狙いを外さない感覚は忘れられねえなあ」
悪戯っぽい歯を見せた笑顔と同時に、ボルトハンドルを引き戻す音。45には『彼女』の姿が重なった。
決して嫌いだったという訳ではないが、他人の空似と言うにはよく似ている立ち姿は少し気味が悪い。そして『彼女』に関しては、コートのモフモフ以外の全てがあまり好きではなかった。
撃ち殺したらしき鹿を見ながら彼は感心したように頷く。
「まあ今日は保つ筈だ、焼くしかないのが何ともつまらんが飯に困るよりは――――――ッ!」
言葉の途中、息を切る音と共に彼が後ろに振り返る。
45も勿論それには気付いた。後ろからゆっくりと迫る足音は、少なくとも1つ2つと笑って言える数ではない。
「不味いな、数が多そうだ!」
声は足音に掻き消された。
それは直ぐ様走り出す、獲物が構える前に一撃を。あらゆる生存競争で重要なのは強さよりも結局は疾さ。その点に於いて今回の45は敗者だった。
「狼!? 何でこんな所に…………ッ!」
「馬鹿野郎! そんな事より避けろってんだ――――――ッ!」
彼が叫ぶが間に合わない。群れの内数匹が45に向かって飛びかかる、文字通りの俊足を完全に避けきることは叶わないだろう。
少なくとも片腕の損傷は免れない、辛うじて判断して片手を振り上げて目を瞑る。
――――が、何時まで経っても痛覚は信号を発しない。代わりにポタリ、ポタリと近くから液体の滴る音。考えるべきではない可能性に、無いはずの鼓動が少しだけ速まった気がした。
恐る恐る45が目を開く。嫌な予感はあっさりと当たってしまう。
「あー、無事かねレディ…………いややっぱ痛いなぁ――――」
流れているのは血で、流れたのは右腕からで、流したのは彼。
数匹に噛みつかれた腕を思い切り振り払うと、宙に浮いていた狼達が呆気なく雪の上に投げ出されてしまう。
後ろから抱き着く形になっていた45を、彼は無理やり右腕で横手に回す。その動作は振り払う、薙ぎ払うと言ったものに限りなく近いのが45の焦りを加速させる。
それに気づかれたのか、彼の右手が確かに45の肩をしっかりと掴んで引き寄せてみせた。
「え…………何で?」
「はあ? 何でと来ますか、隊長殿は馬鹿だったらしい」
彼が小さく息を吐く。その白く曇った吐息が消えたのと同時だったろうか、汗の滲んだ不敵な笑顔。
「お前らを助けるのが俺の仕事だからだよ――――――」
また矢継ぎ早に飛びかかってきた狼相手に、彼は45を抱き留めながら思い切り後ろに飛ぶ。慣れた動作で片手で一匹の眉間を撃ち抜くと、左手だけでボルトハンドルを操作し終えてしまう。
服に滲む血の温度に、その量に何故か45の頭は滅茶苦茶になった。
「右腕、大丈夫なの!?」
「らしくねえぞ? えらく動揺するな――――――っと、受け取れ犬っころ共!」
また撃ち抜く。ノールックに近い振り向きざまの射撃は圧巻の一言だが、45にはそれを評価するメモリ領域の余裕がない。
――こういう時はどうすれば良いんだっけ。
考えて、考えるが考えるほど雁字搦め。45自身も驚く程、彼女は明らかに動揺していた。
彼の右腕を見るほどに尚更。収まることなく続く乱れに彼女は対応しきれない。対照的に落ち着いたボルトアクションの音が響く。薬莢の乾いた排出音が、血塗れの彼女に染み渡る。
「う、動けるよ! 離して!」
「腰の抜けた女風情がほざきよるなあ! ってか、コイツラ引き時を弁えろってんだ!」
ピボットターン。彼女が振られると同時に雪景色が巡る、嫌にゆっくりな気がしてまるでスローモーション。ロマンチックにメリーゴーランド。
ようやく自分がマトモに立てていないことに気づく。力の入りようもなさ気な湿り気を帯びた右腕は、実のところ彼女を支える点に於いて正しくまだ働いていた。
彼が小さく舌打ちして発砲。Kar98k、残り装弾数一発。
「ヤバイな、流石に片手のリロードまでは出来んぞ! 後一発で帰ってくれよバカ犬共――――――ッ!」
彼は私を庇った結果、右腕に大怪我を負った。しかもその後出血の貧血で倒れたから、柄にもなく焦っちゃったよ。
あの時は私をしっかりと掴んでいたはずの右腕だが、狼を追い払った後はめっきり動かなくなってしまったらしい。意志力というのはあまり信用しないけど、今回ばかりは強く言う気は起きない。
左手でボルト操作をしていたから気づかなかったけど、彼は基本的に右利きの筈だ。「不便だからガキの頃に右利きにされた」らしい、結局世話は私がする他ない他ないという結論になった。
何故か416が交代で良くないか、なんて言い出したがこれは私の不手際が原因。私が責任を取るのが妥当な線だろう、実際そう言えば416も黙りこくった。
今度は9も含めた三人で食料調達に出向いたが、彼は元々サポートハンド無しでも野鳥を撃ち落としていたので問題はないようだ。
自分ではあまり分からなかったことだけど、どうやら私はいつもより動揺しているみたい。9が言うには「いつもならこの程度の怪我、そんなに気を遣わないよ」との事らしい。
とはいえ私の落ち度だし、人間の腕は私達と違って替えが効かない。そういうのも反応の違いに出てるんじゃないのかな。
食事は案の定。彼は柄にもなく食器できちんと食事を摂る人種で、そのスタンスは例え右腕がなかろうと曲げたくないらしい。「食い方まで動物だと自分が猿かなんかだと思えてきちまう」だそう。よく分からないけど彼の口に食事を黙々と運んだ。
日記も私が書く羽目になった。どうせ盗み見るから変わらないということらしい、どことなく複雑な気分。
字が達筆だとまた笑われた。幾ら人形とは言っても言われて許せることと許せないことは有ると言うと、あっさりと謝られたのでそれはそれで拍子抜け。
夜番をG11と交代しようとしていたのだろう、416が仮眠を取る直前に「あなたが、へえ」と此方を見て笑っていた気がする。何故だろうか、理由はよく分からない。
久しぶりに、ちょっと眠い。
C月E日 天候:快晴 肌が焼ける、なんて思いたくなる。
起きたら彼の腕がお腹に回っていて少し飛び退いた。どうやら疲れて眠ってしまったらしい、9は私を見て妙な笑いを浮かべていた。変なの。どうやら彼は寝ている時に近くに居る人間を抱き寄せる癖があるらしい、9の実体験なんだとか。
そう言えば、応急処置のために彼のザックを漁った時に中身があまりに適当だったので少し注意しておいた。せっかくの協力者にいきなり死なれても困る、まさか救急キットの一つもないとは驚きだ。
それに彼の装備品には近接戦の対応力が欠けすぎている、ナイフなりハンドガンなりを持っておいて欲しい。次拾ったら押し付けてしまおう、無いよりはマシだ。
事情を聞くには「怪我をしたことがなく」、また「マトモに接近されたことが無かった」らしい。その場しのぎみたいな言い訳だったのに、何となく理解できてしまったのは私が毒されたのか彼がそれだけ異常なのか。
どうやら昨日の一件で意外と無理をしていたようで、今日歩かせてみると右足首を思い切り捻っていて歩けないみたい。流れ的に私が肩を貸しながら道中を行くことになりそうだ。
――――――それは良いけど、スキップを要求したり足でテンポを踏めとかよく分からない要求は辞めて欲しい。辞めるように言ったら「お前はママか何かかよ」だって、何なのこの人。
それと私が人形だという実感がイマイチないのか、疲れてないかだとか交代してもらえだとかしきりに変な勧めをしてくる。「人形だから問題ないよ」とは言っておいたが、彼の気分の問題みたいだ。
あんまり心配性なので適当な世間話で誤魔化す。会話を弾ませておけば彼もそんな瑣末事には気が向かなくなっていった。
食事も段々と慣れてきた。彼も最初は嫌がっていた、というか恥ずかしがっていたフシが有ったが若干慣れてきたと見える。そうしてもらえると私も楽で有り難い。
時々「それやめてくれるか?」と顔を赤くしてスプーンをどけてくることが有る。普通に食べさせてるだけなのに、羞恥心のポイントが奇妙だ。
あんまりしつこいので、日記の文字を変えてみた。戦術人形だからそれくらいは出来るが、「丸っこい文字。それお前っぽい」と妙に彼は喜んでいた。上機嫌に頭をガシガシと撫でてくるし、一体どうしてしまったのやら。
最近小隊の皆が私を見てニヤニヤとしてる、気持ち悪いや…………。
高評価オイテケ…………ランキングヨコセ…………(乞食が下手)
右利きライフルですが、彼は左利きなので左でボルトハンドルを引きます。これは俺と同じ、分かりやすいから。片手操作は極まるとカッコイイ。
ところで乙女チックな展開って興味ある? 俺は有る。
※追記(2018/10/07)
この話数の描写で最後に「Kar98k、残り装弾数二発」って有ったんですがどうやら装弾数を六発と勘違いしていたらしい。よって、一発に修正。
Kar98kファンとして生き恥を晒したことを此処に謝罪しながら感謝の0-2周回一万回をキメてきます。