「ゲホッ…………ゲホゲホ!」
人間と見紛うような咳。逡巡するまでもなく、それはM4の声。
だが俺はすぐさま助けに行ったりはしなかった。転送は終わった、これなら最悪逃げても決してペルシカは俺を咎めないだろうと予想がついていたからだ。
瓦礫越しで明瞭としない視界越し、M4が悲痛な掠れ声。
「M16姉さ…………ゲホッ……どこ…………」
ふと俺の横を見ると、M16が横たわっているのに気付いた。場違いな感想だが、眠っている(ように見えているだけにしても)彼女はM4の面影が有ってやはり美しいの部類に入るのが分かる。
しかしボウっと見ている暇はない、M16を急いで揺すり起こす。幸い軽傷だったのかすぐさま目を開ける。
「――――――!? M4」
大声を出しそうだったから咄嗟に手で口を塞いで囁き声で状況を伝える。
「待て、噎せこんでるが妹は無事だろうよ。それよりも――――――だ」
「あ、ああそうか。代理人…………悪いな、取り乱した」
少し目を伏せたM16だが、俺は特に気にしていない。これまでに世話になりっぱなしだったからプラマイゼロだ。
すぐに体勢を立て直すM16の切り替えは流石だとしか言いようがないが、今聞こえた声が俺の幻聴じゃないなら果たしてM16は気が気でいられるのだろうか。少しばかり杞憂が脳裏をよぎる。
――いや、杞憂で済むのか。声がした。
「人の心配をしている場合じゃなくてよ、M4A1」
代理人の声。同時に首を絞めるような嫌な音、同時にM4も呻いた。
恐らくだが、その光景がM16の位置からなら少しだけ見えたのだろう。乗り出しそうだった彼女を無理やり後ろから抱き留める形で止める。
「おい! どうするつもりだ、速く行かないとM4が――――――ッ!」
「バカ、落ち着けよ姐さん。まずはタクティクスだタクティクス、戦術。無策に行ってアンタも巻き添え、なんてのが一番M4ちゃんを泣かせるルートじゃねえのかよ?」
中身のないスッカスカな説得だが、理性を屈服させるには足りたらしい。M16の抵抗がしゅるしゅると弱くなる。
問題なさそうなので手を離すとM16が此方に向き直す。
あちらではまた代理人が何やらクレームを入れているようだが此処は放置、お前の言い分に反応してやるほど今の俺は暇じゃない。
「…………立て続けに本当にすまん」
「まあ良いんじゃないか? 俺は身内は纏めて嫌いだったから羨ましいよ」
そうかい、と少しだけ寂しそうな目をする。そんな顔してる場合じゃないだろ、アンタ。
瓦礫一枚隔てればM4と代理人の酷い会話が聞こえてきたが、まずはM16と話を詰めてしまう。
「今、代理人は完璧に油断してる。多分行けるだろうよ、状況はどうだった?」
「…………M4が代理人に片手で首を絞められていた、代理人の方も人工皮膚が割りかし剥げていた…………筈だ」
それは良いことを聞いた、耐久的には落とせる可能性が高そうじゃないか。
――――――そうだな、ちょうどお誂え向きな案があった。
「いや、もう大丈夫だ。私一人でも行けるさ」
M16は俺の提案をあっさりと断った。思わず目を見開いてしまう。
「は?」
「いやいや、アンタはあくまで無理やり付き合わされた身だ。これは結論で言うと作戦じゃない、私のエゴだろう? こんな事に命を賭けるのは馬鹿な人形一体で十分だ」
「いや…………そうだな。まあそうだ」
それは事実だ。
別に俺は此処で逃げ帰ってもペルシカに咎められまい、それはさっきも考えたことじゃないか。確かに逃げてしまって問題はないだろう。
――問題はない。利害的な問題はよ。
行こうとするM16の手を引き止める。冗談かどうなのか、困ったようにM16が笑う。
「おいおい、報酬はないぞ? 次会ったら見逃すからそれで勘弁してくれ」
「いやいや、こっからは俺の個人的な仕事だ」
M16の眉が顰められる、そらそうだろうな。
さて、俺が一般的に言われる薄情な人間かと言うと多分そうだ。冷めていると言った方が良いか?
今までも死体漁りに抵抗を感じたことはないし、追ってきた戦術人形を軽く撃つぐらいのことは何も思ったことはない。俺は生きる為には他人を犠牲に出来る。正しくは、それを自覚しても尚出来る人種だ。
だがな。
「
「…………何?」
代理人との会話は進む。時間がなさそうだった。目を丸くするM16を無理矢理に位置につけた。
「ごちゃごちゃ言わずに位置につけよ、姐さん。M4ちゃん、助けるんだろ?」
「――――――驚いたな。薄々気付いてはいたが、やっぱりアンタは甘いらしい」
馬鹿野郎。
誰が冷酷非情なんて言ったんだよ。
「まず手始めに、あなたにはここで死んでいただきますわ」
代理人が幕引きだ、とでも言わんばかりに構える。
M4が咄嗟に目を瞑ろうとする前に、彼女が陰から現れた。
「…………悪いが、そいつをここで死なせるわけにはいかん」
「――――――!?」
代理人が振り向ききる前に、M16が突っ込んでいく。
サイドアームがM16を捉えた。身体とは対照的に驚くほど速く動いたサイドアームは代理人の目がM16を捉える前にM16の足に触れた。
刹那、M16がニヤリとする。
「今だぞ――――――反対だ!」
「okey、美女の腕をぶっ壊せるなんてご褒美だ!」
大回りして反対側から走ってきていた彼が、ライフルを構えて代理人に突っ込む。
代理人は既にM16の方に向ききってしまっていた、存在に気付いても遅すぎる。幾ら速かろうと次の一手、一手だけなら彼女に抵抗権は与えられないだろう。
男の目が確かに標的を見定める。代理人の足元に滑り込みながら、的確にM4の首を掴む左腕の――――――更に関節に撃ち込む。
明らかなオーバーパワー。あっけなく端子さえ千切れ飛んだ代理人の左手と一緒にM4が崩れ落ちる。
代理人はM16の迎撃を諦めたのだろうか、確かに彼の方を見て目を見開きながら
「あなたは――――――まさか、
呟いた。
彼は信じられない速度でボルトハンドルを戻すと、その一言に目つきを鋭くして
「五月蝿えよ、俺は亡霊だぜ? もう死んでるよ」
喉元を撃ち抜く。
殆ど機能を失っている代理人に、これでもかと言うほどM16が弾丸を発砲し続けた。
あそこからは大変だったな。代理人? だっけ、アイツが妙なことを口走ろうとしたから発声機関を潰させてもらったが。
いまどきお団子サイドアーム付きでバトルメイドとか流行るわけ無いでしょ。お前はジ・オか、まあジ・オ好きだけどさ俺。
まあデータをボッシュートした後は流れで逃走祭りよ。何か俺にも妙に人数割かれてたし、用もないからAR小隊とは途中で別れた。まあ元々一人が好きな所もなくはなかったし多少はね?
そう言えばM4ちゃんと姐さん、あの後から何か受け答えが妙だった気がする。心ここにあらずって言うのかね、まあちゃんと作戦指揮は出来てたし大丈夫でしょう! そこまで知らん!
AR15とは合流した時に「あんた、やっぱりそういうの向いていないでしょ」と言われたが、そういうのとはどういうのか聞く前に別れた。次会う――――――事はないだろうし、もう答えは聞けないんだろうな。
思えば今日記を書いているこの瞬間も、横にSOPⅡちゃんが居ないことにちょっとだけ肌寒さを感じる。なまじっか誰かと居るもんじゃねえな…………ああ、くしゃみ止まらん。
U月V日 クソッタレな晴れ
また捕まった。今回は何だコイツラ…………と思ったら404小隊と言うそうだ。俺がエロ画像探して404が表示された時の前世のトラウマを的確についてくる部隊名じゃねえかこの野郎。
既に許せなかった。
【文字数が足りんのでこっから二冊目の拾い物に移すぞ】
M4ちゃんと姐さん、アウトー! 依存ルート!
絶対人形潰すメイドも来てたのでちゃんと書いてみた、流石にゆるバカ日記に戻るから安心して欲しい。意外と主人公の脳内は堅い喋り方だったりする。
身バレしたけど匿名だからな! ネームバリューゼロでやっていくからな!
遂にやって来た例のヤツラ(Not Found)(とうとうガチパクリ)(逃げ切れよ主人公)(404のやべーやつら)(関係性の違いで差をつけろ)