今回は短め。
午前六時。いつもより一時間ほど早く起き、アリーナへ向かう。更衣室でISスーツに向かい、スタジアムへ。勿論、眼鏡も忘れない。
「遅いぞ。」スタジアムの中央に織斑先生が立っていた。白黒のジャージを羽織り、腕を組んでいる。
「すみません。訓練ということで、緊張してよく眠れませんでした。」
「御託はいい。磯積には、一日も早くそのISを制御してもらわないと困る。時間がない。ISを展開しろ。」
昨日先生に指示された訓練だが、不特定多数の生徒に
「何ぼさっとしている。早くやれ。」先生に急かされる。いかんいかん。集中集中。
(--------来い。)内に潜む魔物を呼び覚ますように、心の中で呟く。
直後、何かに引きずり込まれるような感覚。視界が閉ざされ、首を絞められる感覚に陥る。
「あァ亜ア唖アあ亞啞アああ阿アあ!!!!!!!!!!!!」 自分のものとは思えない叫び声を上げ、またしても意識が頭から零れ落ちていく。
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「ふむ。やはりそう簡単にはいかないか。」
「アラアラ。
「お前に用は無い。用があるのは「似ーちゃん」の方だ。」
「アラ、ザンネン。モシココガウミノウエナラ、オマエヲチリヒトツノコサズツブシテアゲルノニ。」イソツミは憤怒と興奮の入り混じった笑みで応える。
「アナタ、ニーチャンにワタシヲセイギョサセルトイッテイタワネ。ソレハムリダワ。ワタシノ"チカラ"ハ。ニーチャンニハオオキスギル。ワタシハアノコヲ、コワシタクナイ。」
「それを決めるのはお前じゃない。あいつは、自分の意思でお前を使うと決めた。なぜお前はあいつの力になってやろうとしない。」
「ワタシガイルカラ、イーチャンハナニモガンバラナクテイイ。オマエニナニカヲイワレルスジアイハナイ。」
「くだらん。それはエゴというやつだ。」
「ダマレ!シッタソブリデイウナ!オマエトイルトフユカイダ。」聞く耳を持たず、イソツミはそのまま消滅する。
「あれ、僕は何を?」溶解したISから現れた磯積が起き上がって言う。やはり、展開中は意識を失っているのか。
「・・・あいつを見ていると、なんだか昔の私を思い出す。」
「昔、ですか。」
「ああ。私は以前、弟と二人で暮らしていてね。自分が外で仕事をしている間、家事は全部弟に任せてばかりだった。弟に申し訳ないと思っていたが、その一方で自分が外で稼ぐ以上、仕方ないと思っていた。ところがある日弟が、学費が安く、就職に強い私立の高校を受験したいと言ってきた。何でも、早く自分に楽をさせたいらしい。その時こう思った。いつまでもあいつに甘えてはいけない、と。」
「確かその高校って、藍越学園ですよね。倍率が厳しいんじゃ・・・」
「ああ。弟は、そこに入るために毎日10時間勉強していたな。最初は合格ラインに全く届かなかったが、成績を少しずつあげていき、ついに合格してしまった。本当、自慢の弟だよ。」思わず、笑みが零れてしまう。
「・・・先生が笑うところ、始めてみた気がします。」
「むっ。無駄話が長くなったな。再開するぞ。」その後、磯積に何回もISを展開させたが、意識を維持することはできなかった。最後の方には、イソツミも「モウ……カエレッ…ヨォ………ッ!」と言わんばかりだった。
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織斑先生との訓練を終え、食堂へ急ぐ。いつもは焼鮭定食だから、今日はパンを食べようかと思っていると、セシリアと会う。おはよう、と声を掛けようとするとーーー
「ヒッ!こ、来ないでください...」と拒絶され、行ってしまった。
「・・・・」昨日、織斑先生と病室で話をした後にセシリアの下へ行き、彼女に謝ろうとしたが、山田先生に止められてしまった。彼女は模擬戦の後にノイローゼに陥り、通学できるもののISの展開ができなくなっているのだそうだ。そして、張本人である僕のことを思い出す度に激しい頭痛を起こすという。容体が安定するまで、彼女に関わることを極力避けるべき、と断言された。何もすることができない自分が恨めしい。
定食を注文し、番号札を持って席に着く。食堂には同じクラスメイトもいるが、目を合わせる度に皆、目を背ける。僕に対しての認識は。『ISを操縦できる稀有な男子』から『代表候補生を酷い目に遇わせた最低な奴』に180度反転したようだ。不幸中の幸いか、僕のISの正体は知られていない。下手に弁解すればぼろが出ることは間違いない以上、このまま時間の経過を待つしかない。
因みに、唯一反応してくれたのが篠ノ之箒だ。最も、彼女は「午後5時に剣道場へ来い」とだけ言って、そのまま去っていったが。
カウンターまで定食を取りに行く。ロールパンにスクランブルエッグ、ウインナーのプレート、温野菜のサラダにコーンポタージュ。ごく普通の朝食。一人で黙々と食べ、返却口へ。食堂から出た途端、話し声が一段と大きくなったような気がしたが、関係ないと思い教室へ向かう。
朝のSHR。山田先生が、クラス代表が僕に決まったことを報告する。セシリアが辞退したためだという。正直辞退したかったが、先生が笑顔の裏で無言の圧力をかけており、承諾せざるを得なかった。クラスメイトの視線が刺々しいものであったことは言うまでもない。ちらっと篠ノ之に目線を向けるが、我関せずというようにそっぽを向く。入学してまだ一か月も経っていないのに、早くも孤立してしまう。これは非常にまずい。
その後、いつものように授業を受ける。今までと違うのは、僕に話しかけてくる人が誰一人いなかったことだ。
放課後。篠ノ之に指定された時間よりも五分前に剣道場に着く。更衣室に入ると、剣道具と道着が並べてあった。ISの訓練なのに、なぜ剣道なのだろうと疑問だが、仕方がないので身に着けることにする。一応、中学は剣道部に所属していたので、これ位はなんてことはない。
剣道場に一礼して入ると、篠ノ之が正座をして待っていた。
「来たか。」「ああ。」正座をして、お互いに礼を行う。
「お前の事情については織斑先生から聞いている。生徒が放課後にISを使用することは原則禁止だから、こういう形をとることになった。それで、だ。山田先生が授業で、ISは操縦者の精神と同調することにより、操縦者の行動を認識して武器を呼び出す等の行為を行うことを覚えているか。」それらしいことを言っていたような。
「逆を言えば、同調が上手くいかなければISは動かないばかりか、返ってISに精神を持っていかれることがある。そして、お前の機体は特にそのリスクが強い。それを防ぐためには、操縦者、つまりお前の精神をより強いものにしなければならない。」
「大体わかった。織斑先生との訓練がハード面でのもので、これはソフト面での訓練というわけか。」
「そうだ。説明はこれくらいにして、早速行なうぞ。」篠ノ之はそう言い、面を着ける。同様に面を着け、
試合形式で打ち合う。当然ながら、全く歯が立たなかった。意地で面を一本取ったものの、それだけである。
好感度はもうこれ以上落ちることはないと思うのでご安心ください。