深淵からの異装   作:名も無き二等水兵

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裏設定
・磯積は二人部屋を一人で使用している。
・生活のための資金は、全て姉の遺族年金で賄っている。
・模擬戦後、カラコンを付けて紅い目を隠している。

・艦娘は元人間なので、その人格は元の人間に強く影響される。逆も然り。

早く一巻部分を終わらせて転校生二人を出したい


第四話

午後八時。篠ノ之との訓練を終え、二人で寮へと向かう。朝の訓練も相まって、もう体はヘトヘトだ。

「あ~体が重い。これを毎日やらないといけないのか。」気分はさしずめ、中学で初めて陸上部に入り、練習初日のトレーニングの量に押しつぶされる新入生だ。

「そう弱音を吐くな。お前にはクラス対抗戦までにISを使えるようになってもらわなければならん。」

「IS・・・って、打鉄じゃなくてイソツミか!?」あの()()()()は、結局「イソツミ」の名前でISとして登録された。表向きはISの新開発として発表されており、織斑先生と学園、それと束さんらが口裏を合わせたらしい。これにより、僕はセシリアに次ぐ二人目の<専用気持ち>になった訳だが、全然嬉しくない。このISは、人の命を奪う兵器なのだから。

クラス対抗戦にあれを使うのは危険であり、今回も打鉄でやるしかないと思っていたのだが・・・

「僕が満足にイソツミを使えないことは篠ノ之もよく知っているだろう!あれが暴走したら相手だけじゃなく、他の生徒にも危害が及んでしまう。わざわざそのような真似をする理由がない。」あの光景を見てしまった以上、篠ノ之、いや先生を止めずにはいられない。

「今回の対抗戦はイソツミのデータ測定も兼ねている。出撃は決定事項だ。それに、1組と2組の試合だけは非公開だから、生徒への危険やISの正体の流布は問題ないだろう。さらに言うと、今回の相手はセシリアと同様、専用機持ちだ。打鉄では話にならん。」

「くっ・・・」僕が唯一のIS操縦者(モルモット)であることを改めて思い知らされる。それに、セシリアとの戦闘で専用機のスペックが尋常でないことを知った以上、専用機にはイソツミでしか対抗できないだろう。毒を以て毒を制すとはよく言ったものだ。

「まあ、そう心配するな。いざとなれば織斑先生が止めて下さる。それにーーー」篠ノ之が一呼吸置き、

 

 

「私は、お前がこの試練を乗り越えられると信じている。」少し微笑みながら言う。

 

 

「えっ、」今まで見たことのない彼女の表情に、言葉が詰まってしまう。

 

「初めはお前のことを、どこか感じの悪い奴だと思っていた。だが、前にセシリアに対して怒った時の表情や剣幕、そして今日の練習での動作や表情を見て、お前が何か強い決心を持っていると感じたんだ。それは細く、けれども決して折れないものだ。そして、私は初めてあいつ以外に誰かの役に立ちたいと思った。だから私は、自分の意思でこうして特訓を行う。だから、諦めるなよ。磯積。」

「篠ノ之・・・・・ぐずっ。」両目から熱い一線が伝う。

「な、泣くなっ!まだ初日だぞ!こ、これでへこたれてどうするっ!」篠ノ之が動揺する。

「いや・・・・一人でここに来て、それで先の模擬戦だったんだ。この学園に居場所がないと思っていたから、篠ノ之の言葉が何よりも嬉しかった。ありがとう。本当にありがとう。」重ねて礼を言い、頭を下げる。

「きょ、今日はこれで帰るからな!明日もお、遅れるんじゃないぞ!」寮の玄関に着いた途端、篠ノ之は走って行ってしまった。何はともあれ、少し勇気が出た。対抗戦まで時間が無い。せめて戦闘中は意識を保てるように頑張らないと。

 

 

 

ーーーー

 

「ふーん。相手は一組の専用機持ちか。それに、唯一の男。まぁ、どうでもいいわ。この甲龍で叩き潰してあげる。そして教えてあげるわ、女と男の違いってやつをね。」

 

ーーーー

 

クラス対抗戦当日。クラスとクラスの意地のぶつかり合いであるこの試合ではアリーナに全生徒が集まって観戦するのが通常であるが、観客席には誰一人として生徒がいない。一組と二組の試合だけこのような措置が採られたそうだが、その方が有り難かった。僕の姿を人気に晒すことはいいものではない。

既に対戦相手である凰・鈴音はコートにいる。出撃ピットには僕と織斑先生、篠ノ之がいた。二人から最後の指示を受ける。

「鳳のIS『甲龍』は近距離戦闘型だ。飛行武器に特化したお前のISとは相性が極めて悪い。とにかく、相手に距離を詰められるな。もっとも、お前が意識を持っていかれないことが前提だが・・・」

「とにかく、強い意志を持て。お前ならやれるはずだ。」

「ありがとうございます。よしー」集中する。

 

 

「来い、---------()()()」唱えた瞬間、意識が黒く塗りつぶされる。次々に押し寄せてくる憎悪の波。やはり、まだ駄目なのか。

 

 

 

ーーーー

「ウフフ、トオイトコロカラヨクキタワネ。オジョウサン。」

「深、海、棲、艦・・・・・?」突然現れた怪物に思考が停止する。何故奴らが陸にいるのか。

「アラアラアラ。ワタシハ、ニーチャンの『アイエス』トシテウマレカワッタノヨ。アイツラノテゴマニナルノハキニクワナイケド、ヨカッタワ。コレデオマエヲシズメルコトガデキル。」

「そうなの。じゃあ私もあんたを叩きのめしてあげる。私、一度お前らを殺ってみたかったのよ!!」双天牙月を構え、戦闘態勢に入る。

「オシャベリはモウイイワ。サア、イキナサイ。」化物が丸い球体のような物を飛び出しながら後退する。おそらく距離を取りたいのだろう。

 

「そうはさせないッ!」直進し、間合いを詰める。そのまま叩き斬る。

「ソウハサセナイ!!」直後、化物が鬼を化した生物を吐き出す。囮にするのか。ならばそれごと斬るのみ。

「喰らえ!!」ザシュッと鈍い音。

 

 

「ガアアアアァァァァァァ!!!!!!??????lアリーナに響き渡る断末魔。「オノレオノレオノレオノレェ!!!」

「まだ終わりじゃないわよ!!」右足を突き出して前蹴り。そして顎目掛けてアッパーを喰らわせる。

「ゴブッ」血のような、黒い液体を口から垂れ流す。攻撃が効いているようだ。いける。これなら化物を仕留められる!

さらに一発斬撃を喰らわせようとしてーーーーーー

 

ズドォォォォォンンン!!!!!!背中に強い衝撃が走り、そのまま前方に吹き飛ばされる。「ぐっ!」

 

 

ーーーー

「予想していたが、ここまで磯積が追い込まれるとは・・・・」イソツミに取り付けてあるダメージカウンターを確認する。開始10分で、全体の8割5分が削られている。一方の鳳のシールドエネルギーの残量は49.イソツミが長期戦に持ち込んでも、先にダメージが一杯になるだろう。

「磯積のISは飛行するための装備が存在しないから、行動範囲も限られる。それに、移動速度も通常の機体と比べて遅すぎる。今回は完全に相手が悪すぎる。織斑先生、先程から鈴音が出している衝撃は一体何ですか?まるで、見えない手が磯積を殴るような・・・」篠ノ之が尋ねてくる。

 

「あれは、衝撃砲ですわ。」奥で静かにコートを見つめていたセシリアが答える。

「空間自体に圧力をかけて砲身を形成し、余剰で生じる衝撃それ自体を砲弾化して撃ち出す。仕組みが分からない人には、箒さんが今おっしゃったように見えます。」

「オルコット、大丈夫か。無理してここにいる必要はない。」IS操縦者として見学させてほしいと自ら申し出てきた時は驚いた。

「正直、怖いです。ですが、見なければならないと思ったのです。あの怪物の正体を。」オルコットは言う。

「そうか。」これ以上言及はしない。彼女が決めたことだ。

 

 

「織斑先生!」緊迫した表情でコートを見ていた篠ノ之が叫ぶ。「どうした。」

「磯積の体が光っています!!!」

 

ーーーー

「マサカ、ココマデニンゲンニオイツメラレルトワネ・・・・モウナンネンブリカシラ・・・・・」化物が満身創痍で呟く。武器の黒い塊はボロボロで、体のあちこちから液体が流れ落ちている。

「あんたも、なかなかやるじゃない。でも、次で仕留められる。覚悟なさい!」一方こちらは、装備の大部分がやられ、双天牙月の片方は折られてしまったが、片方は何とか生きている。動きが鈍くなっている以上、確実に切りつけることはできる。

「ナメルナァ!オマエハココデシズンデシマエェ!!!!!!」直後、化物が豹変し、赤いオーラを纏う。

そして、これまで与えた傷が全て元通りになる。武器も同様に修復され、再び丸い球体や小鬼が飛び出してくる。いずれも、その目は紅く染まっている。

「サァ、イクワヨ・・・・!ドコマデヤレルカシラァ?」化物が下卑た笑みを浮かべ、再び距離を取り始める。

「逃がさないわ!ここで死ねッ!」刀を構え、そのまま斬りつけるーーーー

 

刹那。ズドドドドォォォンン!!!!!!という音と共に、アリーナ全体に強い衝撃。そして、バリンッと遮断シールドが割られる音。何者かがここ(アリーナ)に侵入してきたッ!?

「くっ・・・・・・」土壇場でISの向きを転換させ、衝撃の主へと備える。が、直後に空中から閃光が走る。「あれは―――――」反応するも遅い。

 

ズダーーーーーーンンン!!!!レーザーが直撃する。

 

 

ーーーー

どこからか聞こえる衝撃で目が覚める。何も見えない、何も聞こえない暗い空間。これは、以前経験したことのある感覚だ。前と違うのは、外の光景が鍵穴のようなものを通してうっすらと見えることだ。

そして、その光景を見て絶句する。

 

巨大な、漆黒の機体とその足元で俯せに倒れている少女。

 

何だこれは。僕、いや()()()()は確かクラス対抗戦として凰とISで戦っていた。だとするならば、倒れている少女は凰だろう。彼女だけならまだよかった。彼女の上に、存在してはならないものがいる。

(あの化物は何だ・・・・)あれは、普通のISではない。全身に装甲を有し、両手には巨大な剣とレーザーライフルを有している。外見だけ見れば、どこかの人型機動戦士を思い出させる。これは外部からの侵入者だ。最早試合どころではない。彼女を助けなければ。

鍵穴へ向かって手を伸ばそうとする。しかし、強い力で引き戻される。

 

『ナンデ、アイツヲタスケヨウトスルノ。アイツハニーチャンヲコロソウトシタノニ』

『アレハモウタスカラナイワ。ソレヨリ、ハヤクフタリデニゲマショウ。イマハココニバリアーガアルケド、ソンナモノタアイモナイワ』

『ワタシハ、ニーチャン二シンデホシクナイ。デモ、アイツハシズンデイイヤツダカラ』

『イキマショウ。ニーチャンハワタシガマモッテアゲル』

 

やはり聞こえてくるこの声。けれど、もう逃げるわけにはいかない。あの決心を、篠ノ之を裏切るわけにはいかない。

 

「僕は、皆を守るためにこれを使いたい!!!力を貸してくれ!!!!!」鍵穴に両手を突っ込む。瞬間、世界が開かれーーーーーー

 

 

ーーーー

「あァ亜ア唖アあ亞啞アああ阿アあ!!!!!!!!!!!!」叫び声を上げると、あの空間で見ていた景色が眼下に現れる。

『磯積、応答しろ!くっ、まだ駄目か・・・・』オープンチャネルから織斑先生の声が聞こえてくる。

「先生、()ハ大丈夫デス。」ISの影響からか、発音が覚束ない。

『お前、イソツミではないな?』

「ハイ、僕ハ1年1組出席番号1番、磯積似仁デス。」

『やっと意識を保てるようになったか。まあいい。早く凰を連れて逃げろ。』

「イヤ、ココデ僕ガヤツヲ食イ止メマス。先生タチノ助ケヲ待イタノデハ、マニアイマセン。」

『お前の装備はもう残っていないはずだが。』

「確カニ、ヤツヲ止メル武器ハ残ッテイマセン。デスガ、ヤツヲ()()コトハデキマス。勿論、先生方ノ協力ハ必要デスガ・・・・」

『そうか。やってみろ。だが死ぬなよ。』通信が途切れる。先生に感謝すると同時に、眼前の相手を見る。

 

(兵器は、深海解放艦爆と艦爆Aceがそれぞれ2基と、砲台小鬼が1基。最早無駄射ちはできないな。)

考えていると、化物がレーザーを放ってくる。凰を背中に乗せ即座に回避行動をとる。間一髪。

「磯積!!」振り返ると観客席に先生がいた。手荒な真似になるがやむを得ない。

 

「受ケ取レッ!!」凰の体を、先生目掛けて放り投げる。彼女の体の軽さと共に、自分自身の身体能力の向上に驚く。

「おっと。」凰の体を抱きしめる。上手くいってよかった。

「準備ヲ、オ願イシマス。」そう言って、再び怪物に向き直す。とにかくやるしかない。

 

直後、怪物が大剣を振り下ろしてくる。頭上直撃だが、艦爆を発艦させ衝突、威力を相殺させる。

が、衝撃までは殺せない。

「グワワアアアァァァァァァア!!!!!!!」全身に押し付けられる。だが、奴が持っている大剣の重量は大きすぎる。今の攻撃で、体が大きく前に傾いた。これが、唯一のチャンス。

 

「今ダッ!!!」「行きます!!!!!」

 

ズドズドズドンンン!!!! ()()()()()()()()()()()()()。勿論狙いは左足だ。集中攻撃により、左足が滅失しバランスがまたしても崩れる。

「喰ライヤガレ!!!!!」残った艦爆を全て発艦。目標は残った右足。外側から爆撃を行い、化物の体を完全にひっくり返す。

ズシィィィィィン!!!!怪物は何が起こったか分からないというように、そのまま仰向けに倒れた。

起きられる前に体の上に乗り、最後に残った砲台小鬼に命令する。

 

 

「目標、頭部中央!撃チ方始メ!ウテーーーーーー!!!」アリーナに轟音が響き、そのまま意識を失った。

 




次回で一巻部分が終わる予定。
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