深淵からの異装   作:名も無き二等水兵

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やっと一巻部分終了。

誤字報告をした方、どうもありがとうございます。深夜テンションで書いているのでどうしてもおざなりになってしまう。


第五話

話は磯積が意識を取り戻した時まで遡る。

 

ーーーー

「どうやら磯積が元に戻ったらしい。」織斑先生が、管制用のヘッドマイクを掛けたまま言う。

「本当ですか!先生!!」篠ノ之さんは驚きを隠せない。「訓練の成果か。やったな。」

「喜ぶのはまだ早い。磯積はかなり深手を負っている。あいつ一人ではあのゴーレムを止められないだろう・・・」

先生が再び苦い顔をする。

 

(あれは本当に磯積さんなのでしょうか・・・それとも)

モニター越しにゴーレムと対峙する白い化物(集積地棲姫)を見る。見た目はあの時と変わらない。純白の体に、黒く禍々しい籠手。全身に霧を纏い、ゴーレムを睨みつける。

先生のおっしゃる通り、あの化物の中身は磯積さんなのかもしれない。だが、本当にそうだろうか。意識が戻った()()をして、私たちをおびき寄せて皆殺しにする可能性も否定できない。深海棲艦は人間とは違う。そのようなことを平気で行う連中だ。

 

「・・・そうか。やってみろ。だが死ぬなよ。」先生がチャネルを切断する。

「磯積から協力の指示があった。これより援護を行う。私は凰の救出へアリーナへ行く。山田先生と篠ノ之は此処で待機。オルコットは、・・・・・ゴーレムへの援護射撃を行え。後で指示を出す。」直後、先生はピットを飛び出していく。

 

「・・・・・・。」

このままだと、アリーナだけではなく、この学園が壊れてしまう。あのゴーレムは止めなければならない。早くISを展開しなければならない。だが、それが出来ない。

あの事件以来、一度も展開したことがない。いや、展開を行うことができない。怖い。あの化物が。

「セシリア!!何をもたついている!」篠ノ之さんが急かす。

 

分かっている。

分かっている。

分かっている。

分かっている。

分かっている。けど、どうすればいい。途方に暮れる。

 

 

「磯積君を、一度だけ信じてみてはどうですか。」ふと、山田先生の声がする。「えっ・・・・?」

 

「確かに、代表決定戦で貴方を傷つけたのは磯積君です。ですがあの後、直ぐに彼は貴方に謝りに来ました。当時、貴方はパニック状態に陥っていましたので私は面会を止めました。ですが、彼は泣きながらこう言いました。『彼女に、本当に申し訳ないことをしたと伝えてください。今の僕には、これしかできませんから。』私はあの時、彼が思いやりのある、優しい男の子だと感じました。オルコットさん。人は失敗をする生き物です。けれど、そこから学ぶことができる。現に彼は、毎日ISの制御訓練に励み、自由時間は全て勉強に費やしている。そして、-----今もこうして正体不明の機体と戦っている。」

モニターをみる。そこには、あの化物が凰さんを背中に乗せ、ゴーレムのレーザーを必死に躱す光景が映っていた。その表情は険しい。けれど、絶対に背中の彼女には当てまいとギリギリの間を縫っている。

(彼は・・・・)感情が揺り動かされる。

「彼を手放しに許せ、と言っているのではありません。ですが、彼をもう一度信じてみてはどうでしょうか。オルコットさんなら、きっと出来るはずです。」そう言い終え、先生が微笑む。

 

まだ、彼のことは怖い。けれど、一度だけ彼を。磯積さんを信じてもいいかもしれない。先生の言葉に心が救われた。いける。今ならいける。

 

 

(ブルー・ティアーズ、展開)静かに心の中で唱える。光と共に、見慣れた蒼い機体が現れる。

「先生、有難うございます。篠ノ之さん、申し訳ございませんでした。行ってきます!!」ピットを抜け、アリーナの観客席へ向かう。

 

 

「セシリア・オルコット。観客席に着きました。」

「遅い!・・・と言いたいところだが、今は一刻を争う。磯積が合図をしたら、あのゴーレムの左足の踵を狙え。チャンスは一度だ。集中しろ。」プライベートチャネルから織斑先生の声。いつでも狙撃ができるよう、レーザーのエネルギーの装填を行う。

(集中しなさい。合図を見逃さないように。)自分に言い聞かせる。

ゴーレムが化物に対して大剣を振り下ろす。攻撃が間に合わず、直撃する。

「グワワアアアァァァァァァア!!!!!!!」苦痛の叫び声がアリーナに響き渡る。だが、目を逸らさない。

直後、ゴーレムの体が前に大きく傾く。

 

 

「今ダッ!!!」「行きますッ!!」化物の合図。ほぼ同時にレーザーを発射する。

砂煙が舞い、視界が遮断される。しかし、何かが爆発し、ドシィィィィンンという鈍い音。あのゴーレムを倒したのだろうか。

視界が開けたのちに見えたのは、倒れたゴーレムの上に乗り、立ち尽くす化物、いや磯積さんの姿だった。ふと、こちらを向き、屈託のない笑顔を見せる。

「本当にありがとう、セシリア。」そう言っているような顔だった。

 

 

が、その笑顔も一瞬で反転する。何が起きたのか分からない内に、またしても視界が光によって遮断される。最後に見たのは、私の方向へ向かって走り、両手を広げている磯積さんだった。

 

 

ーーーー

 

「お姉ちゃんって、どうしていつも強いの?」

「それはね。似ーちゃんがいるからなの。似ーちゃんがいるから、私は頑張ってお仕事ができるし、怪我をしてもへっちゃらなのよ」

「僕も、お姉ちゃんみたいになれるかなぁ」

「なれるよ。絶対。私の弟だもん」

「じゃあ、僕お姉ちゃんのために強くなりたい。強くなって、お姉ちゃんを守るんだ。」

「まず、その人参を食べられるようにしよっか。今日こそ人参を克服するわよ!」

「うーん・・・」

 

これは、懐かしい夢。もう訪れることのない日常。

 

 

目が覚める。180度見渡してみるに、ここは病院の一室らしい。体のあちこちが痛む。

「起きたか。」低い、女性の声。織斑先生かと思い、体を起こすもどうやら篠ノ之らしい。

「織斑先生は今会議だ。結局、クラス対抗戦は中止となった。あのゴーレムの乱入を考えれば当然だろう。」

その後、自分の怪我について篠ノ之から説明を受ける。黒い機体は、頭部を破壊した後も機能を停止せず、セシリアに対してレーザーを発射したところ、間一髪で受け止めた。打ち所は幸いにも良く、全治10日の全身打撲を負うにとどまった。しかし、もしレーザーが頭に当たっていたらと考えるとぞっとする。

「ありがとう。篠ノ之。それより・・・太ももの上に重い感触があるんだが・・・」

 

今僕はベッドに横たわっているが、上に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。すやすやと寝息を立ており、余程疲れていたのだろう。

 

「セシリアの驚き様は凄かったぞ。『磯積さんが死んでしまいますわ!!』と叫び、先生方から落ち着くように言われても止めなかった。さっきまでずっとお前を看病していたのもセシリアだ。起きたら感謝することだ。」

「感謝するって、何か篠ノ之はまるで僕を心配していないような言いぶりだな。」篠ノ之の言葉に少しムッとする。

「そ、それは済まなかった。私だってお前がいつ起きるか心配していたからな。何なら、この真剣に誓ってやってもいい。」そう言って何処からともなく刀を取り出す。危ないから止めろ。

「分かった分かった。篠ノ之も、ありがとうな。」

「分かればいい。じゃあ、また明日だ。」「また明日。」篠ノ之が出ていき、僕と眠ったままのセシリアが残される。

(雨降って地固まる。セシリアとはこれから上手くやっていけそうだ。)

 

幸せな表情を浮かべて眠る彼女を見て、再び瞼を閉じた。




キャラ紹介その1

・磯積 似仁(いそつみ にひと)
主人公。
中性的な顔立ちをしており、女性と見間違われることが多い。本人はそれを気にしている。
ISへの搭乗により、髪が白く、目が紅く変色する。
付けている眼鏡と姉について侮辱すると激怒する。

IS:イソツミ
セシリア戦後に打鉄が突然変化したもの。命名は織斑千冬。
見た目、性能は集積地棲姫そのままであり、砲台小鬼、PT小鬼群を随伴する。
当然飛べない(少し浮いている)。速度も遅い。
接近戦にはかなり弱い。
その他の性能については不明。


原作キャラの性格は大体そのままにしていますが、話の展開上変えている部分もあります。
次回、艦娘が少しだけ登場。
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