深淵からの異装   作:名も無き二等水兵

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原作のIS訓練風景の描写が意外とないので、訓練シーンは想像で書いています。


第七話

「行くぞッ!!」織斑先生が発すると同時に、さっきまで正面に見えていた姿が一瞬で消失する。何処に消えた。もしかして背後を――――――と対処しようとしたその瞬間。

 

バシンッッッ!!!!とアリーナに響く。同時に背中に鋭い痛み。「グゥア八ッ!!」思わず声を上げてしまう。体内から憎悪という憎悪が沸き上がる。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ!!!!!!!!!!!!

 

喧シイッ!!黙レッ!!!!!」頭を青白く、生気のない両手で抱えながら叫ぶ。傍から見れば頭のおかしい奴だと思われるだろう。けれど、こうでもしないと()()()()()()()()()

「落ち着け。奴がここで出てこられては、訓練にならん」先生が竹刀を掌でポンポンと叩きながら、窘めるように言う。「この時間までに一回でも避けられるようになれ」そうして、再び竹刀を構える。

 

いつもの朝のIS(()()をISと言っていいのだろうか・・・)制御訓練だが、先日のクラス対抗戦で漸く、IS装着中に意識を保っていられるようになった。最も、常に意識を集中していないと直ぐに飛んでしまうが。そして、今日から第二段階として、接近戦の対処を行うことになった。僕のIS、イソツミは艦爆や小鬼群を飛ばして攻撃を行い、相手が弱ったところを砲台による一斉射撃で仕留めるという、遠距離攻撃型のISだ。相手が同じように距離を取りながら攻撃を行う場合、こちらは艦爆達をコントロールして攻撃を行うことができる以上、動きをほぼ完全に止めることができる。問題なのは、先日の凰鈴音のように近づいて攻撃する近距離攻撃型のISだ。こちらの艦爆達よりも相手が早い場合、距離を一気に詰められて攻撃をもろに受けてしまう。イソツミの動作は通常のISよりも遅く、また飛行することができない。こちらの攻撃が当たらない限り、とにかく相手の攻撃を避けまくるしかない。

現在、先生が繰り出してくる竹刀の動きを読み、回避する練習を何度も行っている。曰く、「これが避けられなければ、まあ駄目だろう」とのこと。しかし、何度やっても当てられてしまう。背中や脛、二の腕、腰等あちこちに鈍い音が響く。また、装甲などあってないようなものなので、痛みが全身を走る。これでも手加減しているらしいが・・・

 

「もうすぐ朝食だ。最後に一矢報いてみせろ」再び先生の姿が消える。姿を目で追っていては反応が遅れてしまう。気配を全身で感じろ。頭の中で電探、或いは羅針盤をイメージする。これはISであると同時に軍艦でもある。何処だ。何処に潜んでいる。

 

 

 

直後、左後方の空気の流れが僅かに変わった。目で見ずとも、先生が左の肩目掛けて打ってくるのが感じられる。

「ソコダッ!!!」先生の右側目掛けて全身を倒し、視界から外させる。

「ほう・・・・・・」口元が僅かにほころぶのを確認する。しかし、その動作が隙となる。何もない空間に振り下ろされようとした竹刀が、返す刀で右腹目掛けて再びこちらに迫ってくる。

「何ダソノ動キハ・・・・・!?」思わず声に出し、そして。

 

 

無情にも快音がアリーナに響き渡った。

 

 

 

「全く。誰が油断していいと言った」「はぁっ、はぁっ、ぜぇーっ、ぜぇーっ、うっ!!ごほっ!ごほっ!!」痰が喉に絡まり、思わずむせてしまう。「むっ、無理して喋らなくていい。」「す、すみません・・・」

ISを解除し、床にへたり込む。途端に、さっきまで感じていなかった疲労がのしかかってくる。イソツミを装着した後はいつもこうだ。この感触は未だに慣れていない。

「今朝はこれで終わりにする。とっとと着替えて飯を食べてこい。」「あっ、ありがとうございました・・・」地獄のような訓練がようやく終わった。でも今正直食欲無いんだよなあ・・・

購買でゼリーでも買ってこようかと考えていると、アリーナから出ようとした織斑先生が振り返る。

「そういえば磯積。今月のタッグトーナメントの相手は決まったか?」

「相手ですか。」脳内にあるカレンダーを呼び出す。

6月の最終週に、IS学園では学年別のタッグトーナメントが行われることになっている。学園の生徒は強制参加で、同学年の生徒とペアを組んで2VS2のダブルス戦を行うことになる。何でも、短期間での訓練及び先天的才能の評価と2機のISによる相互作用のデータを測定するためらしい。相手が決まらなければ学園側が抽選でペアを決定させるが、特別ルールとして専用機持ちの生徒は専用専用機持ちの生徒と組み、相手も当然専用機持ちになる。当然、僕にもそのルールが適用される。

(今、1年生で他に専用機持ちなのはセシリアと鈴音か。イソツミと相性がいいのは接近戦ができる鈴音だけど、この機会にセシリアと仲良くなりたいなあ・・・)中々難しい選択だ。

 

「・・・・積。磯積!聞いているか。」「あっ、すみません。えっと、まだ相手は決まっていません。」

「そう言うと思ったさ。届出は二週間後が締め切りだ。まぁ、こちらもお前の悪いようにしない。だから安心して学業に励むことだ」そう言って、今度こそ先生がアリーナを出ていき、入口の扉が閉められる。

「今回のタッグトーナメントは来賓としてIS技術者たちがここに来るはずだ。自分のIS(深海棲艦)を晒して大丈夫なんだろうか・・・・」

先日のクラス対抗戦では、学生の感染を禁止することによって、イソツミを見た生徒がパニックに陥り、試合どころでなくなることを防ぐことができた。だがタッグトーナメントではこうもいかない。当日は来賓の他に、上級生も観戦することができる。1年生の、それも特定の個人の試合のみ非公開とすることは運営的にも、体裁的にも難しいはずだ。

「悪いようにはしない」と先生はおっしゃっていたが、そこのところはどうなのだろうか。

 

(まあ、なるようになるだろ。もうすぐ始業だし、とっとと教室に向かうとしよう。)いちいち心配しても仕方がない。頭の隅に放り投げ、走って更衣室へと向かった。

 

 

 

ーーーー

「やふぁい(やばい)、ひかんうぁはい(時間が無い)!!!!!」現在8時39分21秒、只今、教室棟の渡り廊下を全速力で爆走中。左手にカロリーメイトを持ち、右手のペットボトルの水で流し込む。

訓練が終わったのは8時10分。そこから着替えてアリーナを出たのが8時15分。購買のある棟に着いたのは8時20分。ここまでは順調だった。ここまでは。

(購買は混んでいた。これは仕方がない。僕と同じく朝練を直前までやっていた生徒や、寝坊して朝食を取れなかった生徒が始業前によくここを利用するからだ。だが、それは問題ない。問題は――――――)

 

「なんへへいーうぁはいんだ(何でゼリーが無いんだ)!!!」

 

菓子パンや紙パックの飲み物はまだ残っていた。が、ゼリーだけが残っていない。売り切れ。

何処かでゆっくりと食べるわけにはいかないから、移動中にさっと食べるしかない。当然、先生たちに見つかるとまずいから、パンは難しい。だがゼリーなら一分も足らずに、口に流し込むことができる。10秒メシ万歳。

だが悲しいかな、他の生徒も同じことを考えていたのかもしれない。4種類あったゼリーはきれいさっぱり無くなっていた。昼頃には入荷されるらしいが、それでは間に合わない。パンよりはマシだと、仕方なくカロリーメイトを購入して今に至る。

朝食を抜いて昼まで我慢すればよい、とも考えられるが、1時間目は野外での実践訓練だ。腹ペコでは体が持たないだろう。それに、腹が鳴ってクラスメイトに笑われるのは勘弁してほしい。あまり良くない自分への印象が更に悪くなるのは避けたい。

そうこうしているうちに、現在39分50秒。40分が始業時間。この時間までに教室にいないと即遅刻となる。最後の角を曲がると同時に、カロリーメイトを食べ終える。行ける、このチャンスは絶対に逃してはならない―――――――

 

(うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!!!)心の中で叫び、全速ダッシュ。生徒や先生は誰もいない。今日は悪くない日だ。カチッ、カチッ、カチッ、カチッ、カチッ。五回目の秒針が進む音。まだだ。まだ終われない。

(こんなところで・・・・・・終わってたまるかぁッ!!!!」自然と声に出る。1年1組の教室の扉に右手を伸ばす。そして、思い切り横に開く。瞬間、視界が開かれると同時に、

 

 

キーンコーンカーンコーンッ、と始業のチャイムが鳴った。既に両足を教室内に踏み入れている。やった。間に合った。

 

 

何物にも耐えがたい達成感を噛み締めつつ、自分の席に着こうとする。が、背後から謎の気配。「何だ、これw」と言い終わらない内に、

 

バチーーーーーーーーーーーン!!!!!と頭の上から突然の衝撃。これは、()()簿()()

 

「全く、始業までに席に着かなければ遅刻と4月に言っただろう、馬鹿者。磯積は放課後に教室を掃除した後、反省文を提出すること。さっさと席に着け。」

教室を見渡すと、セシリアと篠ノ之がやれやれと頭を抱え、布仏さん(クラス対抗戦以来、親しくなった。彼女は僕を「いっしー」と呼ぶ)は笑いを( ̄m ̄〃)と堪えている。

あーあ、やっぱり教室で食べればよかった。

 

 

ーーーー

「今日は皆さんに、転校生を紹介します。入ってきてください。」山田先生が扉に向かって呼びかけると、そのまま扉が開かれ、転校生らしき生徒が入ってくる。

そして、転校生が入ってきた瞬間、クラス一同絶句し、一気に騒めきだす。なにせ、彼女、いや彼は男子用の制服を着ていたのだから。

 

「し、静かにしてください。ほ、ホームルームですよっ!」

「静かにしろ。喧しいぞ!」織斑先生の一喝で、教室が静まり返る。そして、山田先生と共に壇上に上がった彼が、挨拶を始める。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、皆さん宜しくお願いします。」転校生—―――シャルルと言った少年は、ぺこりと一礼する。つられて僕も一礼。すると、彼と目が合い、微笑み返してくれる。なんて礼儀正しいんだ。やはりフランス育ちは違うな。おそらくデュノアが苗字のはずだから、どこかの貴族の出身だろう。外国の貴族は良く知らないが、このIS学園に転入する位だ。余程の家柄じゃなければ外国からの転入は難しい。

金髪を短く切りそろえ、整然としつつもどこか人なつっこい雰囲気。それでいて礼儀正しい立ち振る舞い。美しい。もし僕が女性だったら、思わず求婚していたかもしれない。そんな突拍子もないことを思いついてしまうのは――――イソツミの影響なのだろうか。いや、それは無い。

 

「こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国より転入してきまs」

「キャーッ!!男の子!!」

「しかもうちのクラス!!」

「素敵!守ってあげたくなっちゃう!!!」

「ん~地球に生まれてよかったー!!」

クラスメイト達が一斉に騒ぎ出す。あれっ?僕の時はこんな反応じゃなかったはずだぞ。確かこう、ざわっ、ざわざわっとしたような。やはり第一印象か。そうなのか。

 

「静かにしろっ!!次からはこれを使わなければならん。」織斑先生がそう言って、黒い出席簿を取り出す。あれ無茶苦茶痛いんだよな。

「これでHRを終わる。各人は直ぐに着替えて第二グランドへ集合。これから2組と合同でIS模擬戦闘を行う。磯積は、デュノアの面倒を見てやれ。解散!」織斑先生が言うと同時に、女子たちが一斉にISスーツが入った袋を持って着替え始める。早く教室を出ないといけない。

 

「君が、磯積君だね。始めまして。僕はシャルル―――」左手を差し出してくる。握手のつもりだろう。

「自己紹介は後だ。早くここから出よう。男子はアリーナで着替えないといけないんだ。」左手を持って、シャルルを連れ出す。

「急ぐぞ!とにかく時間が無い。」「う、うん。」左手を持ったまま正面玄関へ向かう。これ以上遅刻するわけにはいかない。

 




シャル登場。もう一人の転校生は一連のイベントが終わったら出します。

戦闘描写より、人物の内面を書く方が楽しいです。だが原作がバトルラブコメである以上、戦闘描写は避けられない。

時間があれば週末にもう一話投稿できるかも。
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