深淵からの異装   作:名も無き二等水兵

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ノートパソコンが壊れたので当分の間はタブレットで投稿します。
台詞内の句点ですが、この回から全て付けます。



第八話

シャルルを連れて第二アリーナの更衣室へ入る。時間はあと6分。これは急がなければ。

「急がせてしまってごめん。ええっと、僕は磯積似仁。呼び名はイソツミでも、ニヒトでも何でも構わない。」そう言って左手を差し出す。

「あっ、いやそれは別にいいんだ。改めて、これからよろしくね、似仁。」シャルルが左手で握り返してくる。男の体温の温かさを久しぶりに感じた。この周りが女性ばかりの環境はもう馴れたが、自分とは別に男がいるのは心強い。

「男子はいつもここで着替えるの?」

「ああ。生徒は普通教室で着替えるけど、僕たち男子はそうはいかない。この更衣室は本来バレー部の更衣室になっているけど、放課後までは着替えのために貸してもらってる。あぁ、そのロッカーは駄目だ。男子はこの列しか使っちゃいけない。」たしかそのロッカーは三年生の副キャプテンのだ。名前は忘れたけど。

「わっ、びっくりした。」ロッカーの中を見たシャルルがすぐに扉を閉める。

「あと5分だ。とにかく急ごう。」上着を脱ぎ、そのまま上半身裸になる。袋からスーツを取り出そうとするとーーーーーーー

 

「ちょっ、まっ、うわっっっ!!!!!!」甲高い悲鳴が更衣室に響き渡る。声の主は、両手で目を隠していた。

 

「ん?どうしたんだ?そんなにびっくりしたような反応をして。」

「いや・・・男の体を見てつい・・・じゃなくて!似仁の肌が白くて・・・」シャルルがややもじもじしたように言う。

「ああ、これか。生まれつきこうだから、気にしないでくれ。」嘘だ。あの日以来、顔だけじゃなく全身が真っ白く染まってしまった。それも、歌舞伎役者のような純白ではなくタイルのようなザラザラとしたものに。血の気の無い色だが、これでもまだ自分は人間だ。いや人間だと思いたい。

 

「それよりも、シャルルは着替えないのか。」話題を無理矢理に変え、ISスーツに袖を通す。

「あっ、着替えるよ。ちょっと後ろを向いてもらえると助かる。」

「恥ずかしいのか。いや、そうするけど。」ここで後ろを向いたままチラチラ見るのは野暮だろう。シャルルに背を向けたままパンツスーツを履こうとしていると、

 

「もう大丈夫だよ。ありがとう。」既に着替え終わったシャルル。まだ7秒しか経っていない。黒を基調とし、腹部とパンツに橙のラインが入っている。

それにしても、着替えるの早くないか。

「そのスーツかっこいいな。もしかして特注品か?」僕の奴も一応オリジナルだが、性能は女子の物と何ら変わらない。

「うん。デュノア社製の特注品なんだ。着易さと発汗性を重視したオーダーメード。

「そういえばシャルルの苗字はデュノアだったか。もしかして社長の息子か。羨ましいなぁ。」容姿良し、礼儀良し、その上家柄も良し。なんだこのハイスペック。

 

「社長の息子・・・か。」一瞬、シャルルの表情が曇る。もしかして地雷を踏んだか。

 

「いや、シャルルの事情も知らずに言ってしまってごめん!」頭を下げる。

「わっ、いいんだそんな。それよりも、そろそろ行かないと・・・」シャルルが壁の時計を指差す。8時49分。あと30秒。

「やばい、ダッシュで行くぞ!!」二人でグランドへ急ぐ。

 

ーーーー

「遅い!」ぎりぎり間に合わず、二人で仲良く織斑先生の鉄拳制裁(出席簿)を受ける。実習は二クラス合同で行うため、一組の生徒だけでなく二組の生徒もいる。当然鳳もだ。僕に対する二組の生徒の印象は一組のクラスメイトと変わらない。鳳を除いて、皆白い目を向ける。遅刻したから仕方ないが。

叩かれた頭を押さえながら、一組の列の最後尾へ。

「ずいぶんゆっくりでしたわね。」セシリアが皮肉ではなく、純粋に驚いたように言う。

「更衣室の説明をしていたからな。な、シャルル。」シャルルが頷いてくれる。話を合わせてくれて有り難い。

「怪しいですが、そういうことにしておきます。」ジト目を向けてくるが、そう言ったきり、セシリアは前に向き直る。もしシャルルがいなかったら

「全く、紳士たるもの時間に厳しくなくてはなりませんわ。いいですか、そもそも貴方は何時も授業が始まる直前に席に着くではございませんか。もっと余裕を持って行動をした方がよろしくてよ。英国の、いや正確にはThe United Kingdom of Great Britain and Northern Irelandの諺に因れば・・・」とこのような流れになる。

ふと鳳と目が会う。ニヤリと笑う。何なんだ今のは。クラス対抗戦の後あまり喋ったことは無かったのだが。

 

「では、本日から格闘及び射撃を含む実践訓練を行う!」織斑先生の声で、一気に引き戻される。集中、集中。

 

 

「今日はまず戦闘を実践してもらう。鳳、オルコット。前に出ろ。専用機持ちならすぐに始められるだろう」

「どうしてわたくしが・・・ぶつぶつぶつ」

「なんで磯積にやらせないのかしら・・・」二人が不満そうに前に出る。

「あれ、似仁は専用機を持っていないの?」シャルルが不思議そうに尋ねてくる。

「あっ、いや、僕は専用機持ちじゃないんだ。単にISを操縦することができるだけだ。ISに乗ったのも入学式以来全くだよ。」息を吐くように詭弁を垂れる自分が嫌になる。僕のISは、いやISのような何かは学園内でも極秘になっている以上、秘密を知る者は少ない方がいい。

「・・・そうなんだ。じゃあ、ISについては僕の方が先輩、ということになるね」

「というと?」

「一応、僕もセシリアさんや鳳さんと同じように、専用のISを持っているんだ。『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』って言うんだけど。」

「何かかっこいい名前だ。カスタムⅡということは、何かオリジナルの機体があるのか?」

「うん。『ラファール・リヴァイヴ』が基になっていて・・・って、そろそろ先生の説明があるみたいだ。」と、肝心要のいいところでシャルルが切り上げてしまう。それにしても、『ラファール・リヴァイヴ』にしろ、『ブルー・ティアーズ』にしろ、『打鉄』にしろ、ISの名前はセンスがあるのが多いな。それに比べ自分のは・・・止めだ。一々自己嫌悪に陥るのは良くない。

正面を見ると、セシリアと鳳は既にISを展開させている。前のやる気のなさはどこへやら、やる気満々、といった様子。きっと、織斑先生から「ここで代表候補生としての意地を見せてみろ」となどと発破をかけられたのだろう。

「それで、その対戦相手とやらはどこへいらっしゃるのかしら?」セシリアが周囲を見やる。

「慌てるな。お前達の対戦相手はーーーーーー」織斑先生が窘めようとすると、

 

 

「うわーーーーーーーーっっっっっ!!!!!!ど、どいてくださーーーーーーーーーーーーーい!!!」

 

 

と、聞き覚えのある声がこちらに向かってくる、、、、、てこっちに!?

「まずっ、よっ、避けきれない!!!!!????。」何か質量のある物が後ろの方から向かってくる。衝突すれば怪我は免れない。だがイソツミを展開すればまずいことになる。

「もう駄目だーーーー!!」思わず頭を抱えて身を伏せようとする。周囲から悲鳴が上がる。死を覚悟したその時。

 

 

ズシィィィィィンンンン!!!! とした衝撃音。けれど体に何か痛みが走った感覚は無い。

「助かったのか?」顔を上げる。するとそこには、ISを装着した山田先生を受け止める、『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』らしきISを展開させたシャルルがいた。

「大丈夫ですか!?デュノア君、磯積君!?」山田先生がオロオロしながら僕達に話しかける。普通だったら、「何やってんだこの野郎!?」的なことを叫んでもおかしくない状況だ。

しかし、そのような感情はすぐに打ち消される。

「似仁、大丈夫?怪我は無い?」シャルルが顔をこちらに向け、自分ではなく僕の安否を気遣ってくれる。

 

「あっ、ああ・・・・」やっと、ようやくシャルルに注目する女子の気持ちが理解できた気がした。

彼は、人間として、一人の男性、いや紳士として余りに出来すぎている。

 

だから、助けてもらった礼よりも先に、こんな言葉が先に出てしまった。

 

 

「一生、着いていきます。」 「えっ、どういう事?」

 

 

ーーーー

「静かにしろ、バカども。全く。」先程の出来事によって再び叫び声を上げる生徒たちを黙らせようと織斑先生が手を叩く。

「すみません本当にすみません全て私が悪いんです大変申し訳ございませんーーーーーー」ペコペコ頭を下げながら僕に謝ってくる山田先生。

「大丈夫です。気にしないでください。それよりも、早く授業を再開しましょう。」

「そ、そうですね。生徒に指摘されるとは、私も教師としてまだまだですね。」そう言って、エンジンを吹かせながら先生が戻っていく。

「似仁は優しいんだね」シャルルは既に待機状態に戻っている。

「シャルル様の慈愛の心に比べたら、私のものなど比べものになりません。」

「ちょっと、な、何か身体がこそばゆいな」シャルルが居心地の悪そうな顔をする。流石に心の中に留めて置くことにする。

 

「アクシデントはあったが、これからオルコット達と山田先生に戦闘を実践してもらう。各自、よく観察するように。」

「ニ対一ですか!?山田先生としても無理があるんじゃ・・・」鳳が驚いたように言う。

「教員を舐めてもらっては困る。今のお前達は、山田先生に手も足も出ないだろう。」

「燃えてきた。全力で行くわよ!」「代表候補生としての力を今、お見せするときですわ!」二人が臨戦体勢に入る。二人とも、反応が分かりやすいなあ。

 

「い、行きます!」先生がライフルを構える。瞳が弱々しいものから、冷静な戦士のものへと変わったように見えた。

 

「始めッ!!」織斑先生の高い声と共に、戦いの火蓋が落とされた。




磯積のキャラが安定しないのは私の責任だ。だが私は謝らない。




・・・久しぶりの投稿なのでそこは大目に見てください。
人物の呼び名が明らかにおかしい場合は修正しますのでご指摘ください。
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