永遠のアセリア ~果て無き物語~   作:飛天無縫

2 / 9
0-02

 

「悠のドあほうーーーっ!!」

 

 壮絶な勢いで大上段から振り下ろされる白き一閃。

 脳天に叩き付けられた『それ』はしなりによって後頭部まで伸び、頭部全体を襲う凶悪な衝撃と化す。

 具体的には、剣道で見事な面打ちが決まったような感じ。

 

 加害者の少女は結果を見ることなく教室の外へ走り去り、被害者の少年は声もなく悶え苦しんだ。

 

「……悠人、大丈夫か?」

 

 傍にいた大柄な少年が、苦笑しながら心配そうに覗き込む。

 

「う……まあ、なんとか……」

「ありゃ、今日はずっと機嫌悪いぞ」

「ちょっと言い過ぎたかな……」

「ま、たまにはいい薬だろ」

 

 大柄な少年がニヤリと笑い、叩かれた少年も力なく微笑んだ。

 その横の窓辺に終始無言で腰掛けていた少年は、一連の流れを見て小さく溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 時を遡ること数分。

 

 トイレから帰ってきた光陰と合流し、教室で4人で話していた時のことである。

 いつの間にか、今朝の遅刻のことが話題に上がった。

 

「ああ~、私、これで今学期中はずっと掃除だよ~」

 

 肩を落としてボヤく今日子。

 

「俺だってテンパイだぞ。後1回で掃除レギュラー入りだ」

「俺もだな」

 

 リーチがかかっている悠人、同じくリーチの光陰。

 

「そいつはご苦労なことで」

 

 我関せずの姿勢でいる匠。

 

 掃除レギュラー。

 これは2年3組のクラスにおいて、負け組の代名詞となっている。

 遅刻欠席・規則違反・成績不振が一定のレベルに達した――否、一定のレベルまで落ちた者は例外なく、放課後の掃除当番を強制的に任命されるのだ。

 それも、その学期中は毎日。

 しかも悠人と今日子の場合、次のテストの結果次第では来学期の掃除レギュラーが決定しかねない王手の状態に陥っているのだ。かかるプレッシャーは人一倍である。

 

「悠のせいっ」

 

 ジトッと今日子が恨みがましい目で悠人を睨む。

 

「どこがだ! 今朝に関しては100%今日子の過失だろ?」

「だ、だってまさか、あんなセクハラされるとは思わなかったんだからしょうがないじゃない!」

 

(セクハラって……高嶺は何をやったんだ?)

【私が思うに、朝起きて寝巻きを脱ぎながら居間に移動したところ、パンツ一丁の姿を目撃されたってとこじゃないかな】

(いやに具体的な想像だな。それじゃ岬は朝っぱらから高嶺家に上がり込んで起き抜けの男を……ハリセンで殴り倒したんだろうな)

【純情さんなんだよ、きっと】

 

 頭の中で【悔恨】と話した匠は一瞬で思考を終えると、何も言わないことに決めた。

 下手に藪を突いて蛇を出したくはないのだ。

 

「おいおい、セクハラったって……なあ、今日子? 俺たち、いっしょに風呂に入ったことだってあるじゃないか」

 

 ――おおおおぉぉぉぉ……!

 

 今日子の勢いを見て、何かおもしろいことが起こるだろうと待ち構えていた周囲の連中が、光陰の発言を聞いてどよめく。

 お前らヒマだな。

 

「い、い、いつの話よ! そんなことここで言わないでってば!」

 

 顔を赤らめた今日子が腕を振り回して恥ずかしがる。

 そんな今日子を見て悠人はニヤリと笑い、わざとらしく大きな声を出す。

 

「今日子がいっしょに風呂入るって聞かなかったんだよな、光陰?」

「うむ、たしかそうだった。仲間外れにするなって騒ぎ立ててな」

「わああぁぁ! な、何言ってんのよあんたたちは!」

 

 勢いよく立ち上がる今日子。

 【悔恨】が指摘した通り純情なようで、こういった種類のからかいには弱いのだろう。

 

「俺たちの裸を無理やりさ……」

「無理やり……何よ?」

「嫌がる俺らの裸をジロジロ見たりしたろ?」

「んなことしてないってばぁ!」

「でも、手で隠そうとすると怒るし……あれの方がよっぽどセクハラだ。なあ光陰?」

「うんうん」

「うぐぐぐ……あ、あたし、購買に行ってくる!」

 

 羞恥に耐えられなくなり、今日子は顔を真っ赤にしたまま教室を飛び出していった――と思いきや、ドアまで行ったところでツカツカと戻ってきた。

 

「どした?」

 

 俯いて顔が見えない今日子に気付き、光陰が尋ねるが返事はない。

 

「……ゆ……」

「ん?」

「悠のドあほうーーーっ!!」

 

 そして話は冒頭に戻る。

 

 

 

 

 

【いや~、今日も痛そうな音がしたね】

(つーかあれってハリセンの音じゃないよな)

 

 これが漫画なら『バシーン!』と擬音がつくところだが、実際に聞こえてくるのは『ボグッ!』という殴打音。

 目の前で見た今でさえ、とてもハリセンで叩いて出る音だとは思えない。何か仕込んであるのではないだろうか?

 

「いつもあんな感じか?」

 

 今日子が飛び出していったドアから目を離し、二人に聞く。

 

「ああ、榎本は今日子のハリセンを見るの初めてか?」

「いや、遠目で見たことはあるけど」

「近くで見ると迫力が違うだろ。まあ今日子の暴力は今に始まったことじゃない。ハリセン振り回すくらい、いつものことさ」

 

 カラカラと笑いながら光陰が答えた。匠が見た限りで言えば、そう言っている光陰こそが一番殴られる回数が多いのだが……当の彼は気にしてないらしい。タフなことである。

 

 しかし何より肝心なのは、この3人と付き合っていく中で、あのハリセンの標的に自分が加わるということである。今日子の機嫌を損なえば、その瞬間あの白い悪魔が振り回されるのか。勘弁してほしい。

 場の空気を読み違えた発言をしてしまう人間を、少々古い言葉でKY(空気・読めない)と言われるが、匠の性格はAKY(あえて・空気・読まない)と表現できるものだ。デリカシーとは無縁なこともあり、自然と狙われることが多くなるかもしれない。

 あの手の人間は気に入らないことを諦めるようなタイプではない。例え匠が回避しても、自分の怒りを発散できるまで今日子はひたすら攻撃を繰り返すだろう。

 

(岬の前では無言キャラを演じていようかな……)

 

 自身のスタイルを変えようとは考えつかない匠が、そんな風にしょーもないことを決心しかけた時である。

 

 ――キィィ……ィィィン

 

 突然、聞き覚えのある耳鳴りが響いた。

 

(!!!)

【匠! これって……!?】

 

 微弱なものだったが、【悔恨】の探知力が逃さず捉え、匠が感じ取ったそれは紛れもなく神剣が放つマナの波動。

 それも、かなり近い。

 

(……高嶺か!?)

 

 近いどころか目の前だった。驚愕しながら悠人に目を向ける。

 見れば彼の上体はふらついており、虚ろな目は焦点を結んでいない。

 

「な……んだ?」

「どした悠人?」

 

 悠人の呟きを聞いた光陰が顔を向けて、すぐに彼の異常に気付いた。

 

「悠人? どうしたんだ?」

「んぁ……誰の声、だ?」

 

 それでも悠人には聞こえていないようで、見えない何かに向かって話し掛けている。

 

(まさか高嶺は神剣持ちか?)

【いいや、気配は感じなかったよ。大体そんな人が近くにいればすぐ気付くって】

(じゃあこれから契約を結ぶのか。でも、剣はどこに……)

【違う、契約そのものはもう感じる。これは神剣が、なんだろ……呼びかけてる?】

 

「おい悠人、どうした? おい!」

 

 光陰が悠人の肩を掴んでガクガクと揺さぶるが、やはり反応はない。

 

「この…こえ……むかし……」

 

 その言葉を最後に悠人は意識を手放した。上半身を支える力が抜けて、椅子から床へと受身も取らず倒れ込む。

 

「悠人っ! しっかりしろ! おい匠、手ぇ貸してくれ!」

「待て光陰。すぐに動かすな」

 

 慌てて悠人を起こそうとする光陰を制し、匠はまず周囲の椅子と机を押しのけてスペースを確保した。続いて横向きに倒れた悠人を仰向けにして、彼の机に掛かっていたカバンを拝借して枕代わりに頭の下に置く。

 

 先程の今日子のハリセンが効いたのか、それとも別の原因か。抱く疑問を全て置いてまずは目前の問題をなんとかする――匠の冷静な行動に光陰は感謝した。考えてみれば悠人は頭から床に倒れたのだ。たしかにすぐ動かすのはまずいかもしれない。

 やはり匠を二人に引き合わせてよかった。他ならぬ光陰の親友で、自身も友人の関係になったからこそ匠は動いたのであり、これが見知らぬ他人のままだとしたら平然と見捨てていただろう彼の性格を光陰はよく知っていた。

 

 そんな風に思われているとは知らず、匠は目先の問題に取り掛かる。

 ただし匠にとっての問題とは『高嶺悠人は一体何者か』ということであり、彼の身体の健康は二の次である。体裁を取り繕うためついでに診ておこう、ぐらいにしか考えてかった。

 介抱役という悠人に接触できる格好の立場を手にした匠はさっそく触診を始めた。

 まずは手首に指を当てて脈を計る姿勢を取りながら、悠人の体内マナの揺らぎを感じ取る。

 

(……特に変化はない。マナ量も標準的な人間と同じだ)

【契約はしていても、まだ神剣を握ったことはないってとこだね】

 

「匠、どうだ?」

「脈には異常無しだな」

 

 続いて額、頬、喉、腹の順に手を当てる。急な発熱は感じない。

 

(存在マナが体内で変質してるってこともないか)

【こんなとこでオーラフォトンが顕現したらすごいことになるし、これは助かった】

 

 口元に手を当てる。呼吸は落ち着いている。

 ついでに口を開いて口内を確認。血の臭いはしないので傷もない。

 

(肉体的な興奮もない……アドレナリンの分泌もなさそうだ)

【内臓に傷もないなら肉体に圧力もかかってないんだね】

(あ、圧力と言えば)

 

 閉じられた瞼を開いて眼球を目視。毛細血管が破裂した様子は見えない。

 

【脳も圧迫されてないか】

(神剣の強制力に耐えられなくて気絶したんじゃないのか?)

【でも苦しんでる様子はなかったでしょ? さっきの感じからすると、神剣の方から高嶺君に呼びかけてきたんだよ。早く自分のとこに来い~ってさ。それでこの子の体が慣れない刺激にびっくりしただけだと思う】

 

「なあ匠」

「あん?」

「やけに手慣れてるな」

 

 介護の滑らかな手つきを見て、光陰が感心したように言う。

 実際にはやってることは微妙に違うのだが、傍目からは冷静に行動する匠はまるで救急隊員のようにも見えて、今や3人は教室中の注目の的だ。

 

「ああ……昔、ちょっと教わったことがあってな。その通りにやってるだけだ」

「へえ。それでどうだ?」

「素人目だが特に異常は見られない。気絶してるみたいだし、とりあえず保健室に運ぼう。光陰、高嶺の脇の下に腕を通して上半身を持て。俺は足を持つ」

「分かった。みんな、道を開けてくれ!」

 

 言われた通りに悠人の後ろに回って上半身を持ち上げた光陰を先頭に、匠たちは教室を出た。

 足を抱えた匠は歩いている最中も真剣の表情で悠人を見つめ、【悔恨】との話を続ける。先を歩く光陰がゆっくり進んでくれているので、少し注意を払っておけば後を着いていくことは容易い。

 

(しっかし分からねえ。何で今まで気付けなかったんだ?)

【さあ……そもそも神剣との関係もはっきりしないからね。どういう力を持つ神剣なのかで事情も変わるし】

(この世界にある神剣は見つけられる限り調べたぞ。まさか出雲の【叢雲】と通じたりしてないよな……勘弁しろよ、おい)

【あはは、まさかこんなところに一位神剣があるなんて驚きだったもんね】

(笑えねえっての)

 

 そんなこんなでやって来た保健室。

 鍵が開いてたのに中には誰もいなかったので勝手にベッドを使わせてもらう。悠人を寝かせて、ようやく二人は一息ついた。

 

「ありがとな匠」

「いいさ。それより早く教室に戻れ、もうじき休み時間は終わる」

「お前は?」

「ここに残る」

 

 意外なセリフに光陰は驚くが、既に教師用の椅子に腰を落ち着けている匠を見て悟った。

 

「……サボりか」

 

 人の不幸は蜜の味ではないが、自分の得として利用できるものなら積極的に利用するのが匠の常である。先生がいないのをいいことに、このまま悠人を診ているのを口実に公然と授業をサボるつもりか。

 そもそも匠は学業熱心な性格ではない。授業中の居眠りや早弁はよくあることだ。それらの行為が不自然なほどに自然すぎて、未だに教師に見つかっている場面を光陰は見たことないのだが。

 

「二人も残る必要はないだろ。岬はもう教室に戻ってるだろうし、あいつにはお前から言っといてくれ」

「分かったよ。けど、ほどほどにしとけよなお前も」

「単位のことなら大丈夫さ。必要最低限の出席日数にはまだ余裕がある」

 

 しかも計算尽くときたもんだ。

 その周到さと執念を他のことに発揮できないものかとも思うが、これが榎本匠という人間だと知っていた光陰はあまり深くツッコむことなく保健室を後にした。

 

 暫しの間、静謐が場を満たす。

 

「さて、と」

【どうしようか】

 

 光陰が保健室を出てから数分。

 風を通じて周囲に人気がないことを確認した匠は独り言つ。

 

「俺は『()』てみようと思う」

【……いいの? せっかく集めてるマナをけっこう使うことになっちゃうよ?】

「さっきから考えてたんだ。この考えが間違いだとしても、身近にいる神剣持ちをより知ることができる。そしてこの考えが正しければ……」

 

 ベッドに寝ている悠人に視線を移す。年通算でも数えるほどしかしない真剣な表情だ。

 

「どっちにしろ損はないはずだ」

【あ~あ、きっとこれで一ヶ月分のマナは使っちゃうよ。あの子って燃費悪いし】

「悪いな。気になることは片付けておきたいんでね」

【あ、嫌なわけじゃないよ? 私も会えるの嬉しいし】

 

 ゆらりと立ち上がり、ベッドの横で悠人を見下ろす。静かに呼吸を繰り返す姿を見つめ、匠は左手で自分の顔を掴むように右目を覆った。

 

(久しぶりにやるな……頼むぜ)

 

 呼気を整え、集中する。真剣にならなくてはいけないのだ。何しろ匠はこれから、本来ならばありえない『奇跡』を起こそうとしているのだから。

 

 内面に心を飛ばす。心に浮かぶイメージに意志を伝え、器を思い描く。

 心に浮かぶ器は、それだけでは何の意味も持たないただの妄想の産物でしかない。それはあくまで鍵だ。鍵を頼りに内包された無数の存在から選定し、マナを代価として己のものとする。

 それこそが匠の力――『彼女』から授かった権能を用いて匠が編み出した、彼にのみ許された唯一無二の能力。

 

「第一段階の開放を宣言する」

 

 宣言と同時に、匠は自分の中に回路を仮想する。そこを流れるマナの量によって選定できる存在が決まる。

 現在の匠が内包するマナは、かつてに比べれば笑いたくなるほど極僅かしかない。数年に渡ってこの世界からかき集めているのだが、マナが酷く希薄なこの世界の生態系になるべく影響を出さないよう慎重に集めているので、未だに全盛期には遠く及ばない。

 それでも、今回呼び出す存在にはこれで十分。

 

「見据えろ――【鷹目(たかめ)】」

 

 マナが渦巻く。エーテルが収束し、オーラフォトンが顕現する。

 精神と肉体を一致させるのは一瞬だけでいいのだ。繋がりを得た瞬間に言葉を紡げば、彼らは必ず応えてくれるから。

 

 右目に凝る力を感じて、匠はゆっくり手を離した。黒い瞳は紅く染まり、円を描くように浮かぶのは三つの巴文様。

 【鷹目】――匠が内面に保存している眼球型の永遠神剣である。

 

【…………む……某を呼び出すのは何年ぶりですかな】

 

 匠の脳裏に、大人の男の低い声が響く。【鷹目】の声だ。

 

「よう【鷹目】、4年ぶりってとこか」

【おお、主殿。久方ぶりにございます】

【やほーい【鷹目】君。おひさしー】

【うむ、【悔恨】殿も御壮健で何より】

「んで、ここで再会を祝いたいところだが、生憎こっちの懐が寂しくてな」

 

 盛り上がりかけた脳内会話に釘を刺して【鷹目】を悠人に向ける。

 はっきり言って余裕はない。懐が寂しいという匠の言葉通り、ただでさえ少ないマナから搾り出して【鷹目】を呼んだのだ。これから発動させる能力もそれなりにマナを要する。それに、寝返りも打たず寝入っている悠人もいつ目を覚ますか分からない。やることは早く済ませたかった。

 

「悪いがすぐやるぞ」

【ふむ……そのようですな。語らうのは後の楽しみにいたしましょう】

 

 眼球であるが故に、【鷹目】の能力は『視』ることに特化している。純粋な戦闘力で言えば最下位に相当し、実際の位もそうである。

 だが、【鷹目】には有象無象の神剣とは隔絶した能力があった。マナを目視することでその動きや存在を形として捉え、持つ性質を色で見分けることさえ可能という反則級の洞察・解析能力である。この目の前では、ありとあらゆる魔法――防御障壁や、攻撃のための波動も含めたマナの力は一目でその正体を看破されてしまうのだ。

 そして今、匠は【鷹目】によって悠人の精神世界への介入を試みようとしていた。悠人と神剣の関係を探るために。

 

「我が名は榎本匠。担う剣は【悔恨】なり。我らの名と威を以って、永遠神剣第十位【鷹目】へと頼む。彼の者の心へと忍び込み、人と剣の世界を我が前に現したまえ」

【御意】

 

 水に潜るような感触と共に、匠の視界は闇に染まった。

 

(………………………………ここだ!)

 

 音さえも消えた闇の中で【鷹目】にマナを送り、狙い過たず『開く』意志を伝える。

 瞬間、闇に切れ目が入ったかと思うと、匠の周囲は広大な宇宙空間のように姿を変えた。

 人と剣の精神世界――侵入成功である。

 

(よーし、潜れたぞ……お、高嶺見っけ)

 

 遮蔽物のない見通しが利くこの空間で見つけるのは容易かった。悠人の姿をした彼の精神体は支えもなく、匠から離れたところに浮いている。

 そして、その悠人と向かい合うように一振りの剣があった。

 剣と呼ぶことが憚られるような無骨な印象を受けるそれは妖しく、ぼんやりと薄蒼く輝いている。

 

(これが、高嶺の神剣か……)

 

 離れた距離はそのままに、さっそく【鷹目】を向けて契約と関係を探る。

 この神剣がどれだけ悠人から離れていたとしても、こうして繋がりを持っているなら繋がりそのものを探れば真相は分かる。呼びかけるためにわざわざ道を作ってくれているのだ。それを『視』ることは匠からすれば、丁寧に舗装された道を悠々と歩くようなもの。

 

 そんな風に気楽に考えていたからかもしれない。『視』えたものがもたらした衝撃は、匠の想像を絶していた。

 

 ………………

 …………

 ……

 

「お願い……誰か……佳織だけは…佳織だけは……!」

【我は力……】

「!?」

【我は汝の願いを、汝の求めを叶える力を持つもの】

「誰? 何のこと?」

【我と契約を結べば、願いを叶えよう】

「願い……? 佳織が助かるの? どうすればいいの?」

【契約は魂に刻まれる。この記憶は消える。汝の願いを叶えるか?】

「佳織を助けて! お願い!」

【汝の求めを叶えるならば、等価の代償を求める。願いの深さだけ、我の求めを叶えなくてはならない】

「佳織を助けて! 佳織が助かるなら、ぼくは! ぼくは!」

【契約は結ばれた。願いを叶えよう……心せよ。我と汝の契約が結ばれたことを】

 

 ……

 …………

 ………………

 

【主殿、御気を確かに!!】

 

 【鷹目】の言葉で我に返った時、匠の視界は元の保健室に戻っていた。いつの間にか放心していたらしい。『視』た光景の衝撃はそれほどに大きかった。

 

【しっかりして匠。頭痛くなってない?】

「ちっとな……でも平気だ」

 

 【悔恨】に言われて気が付いたが、少しだけ頭痛があった。この手の辛さには慣れているので気にもならないが。

 そんなことよりもたった今『視』えた情報――悠人と繋がっている神剣はこの世界にはない。

 

(別の世界、だと……!?)

 

 目の前の少年が外界との繋がりを持っているという事実は、匠を大きく動揺させた。

 

「【鷹目】、もう一仕事してもらうぞ」

【如何いたしますか?】

「道を辿る。どっちだ?」

【畏まりました。暫しお待ちを……】

【がんばれ【鷹目】君。私の分のマナも少し送るから】

「……どうだ?」

【これは……南南西を示しておりますな】

「よしっ!」

 

 【鷹目】の言葉を聞くや否や、匠は机に置いてあった適当な紙に素早く走り書きを残すと、踵を返して一目散に走り出す。

 行き先は窓。下駄箱に向かって靴を履き替える手間さえ惜しみ、上履きのまま外へ飛び出した。床を踏み切る時も、窓を開け閉めする時も、全く音を立てないのはさすがと言うべきなのか。

 後には、ベッドで規則的な寝息を漏らす悠人が一人残された。

 

 

 

 

 

   ***

 

 

 

 

 

 保健室を後にした光陰は、やや早足で教室に向かっていた。

 のんびり歩いても次の授業には間に合うだろうが、今日子への説明と保健室へ飛んでいこうとするであろう彼女を引き止める労力を考えると、少々急がなくてはならない。

 

(まあったく、うちのじゃじゃ馬姫様はよ)

 

 今日子の心配で染まった顔が容易に思い浮かぶ。自分が殴った直後に悠人が倒れたと知れば、当然その原因は自分にあると考えるだろう。そして本気で申し訳なく思うのだ。

 攻撃する時は絶対に手加減しないのだが、自分が悪いと思ったときには本気で心配する。そういうところが周囲に慕われる今日子のいいところであり、光陰も好ましく思う彼女の美点の一つである。

 

(それにしても匠のやつ。なんだかんだ言ってても、協力してくれる気なんだな)

 

 光陰の策を聞いて全身で『私やる気ありません』と主張していた姿とは裏腹に、こうして関わったばかりの悠人を保健室に運んでくれた。加えて、保健室に先生がいなかったので悠人の側にいてくれる(誠実とは言い難い動機ではあるが)

 きっと自分と似た何かを悠人に感じたのかもしれない。性質の似た者は仲の良し悪しが極端になりやすいと言われるが、光陰には二人は仲良くなれるという確信にも近い予感があった。

 大切な人のためなら我が身を惜しまない悠人の献身的な優しさと方向性は違えど、匠もまた光陰が知る人間の中では飛びっきりの優しさを持っているのだから。

 

 今年の夏のことである。学校から帰る途中だった光陰は道端で不思議なものを見かけた。

 猫である。それもかなり痩せ細って息も絶え絶えな今にも死にそうな野良猫だった。それだけならかわいそうに思い、仏門に属する者としてお経の一つでも唱えようかと考えるところだが、その場にいた別の存在が彼の動きを止めることとなった。

 榎本匠――当時は光陰も若干の苦手意識を持っていた人物だ。その匠が無表情で猫の隣に座り込んでいたのだ。猫を助けようともせず、しかし最後を看取っていようという雰囲気も感じられず、不気味なほどの平静で座っていた。

 見てしまったからには無視(猫も匠も)することもできず、声をかけることにした。

 

『よう榎本、何やってるんだ?』

『ん? 碧か。特に何も』

 

 突然声をかけられても驚くことなく平然と匠は応えた。

 特に何も――なるほど、確かに特別なことは何もしてる様子はなかった。本当にただ座っているだけだ。

 そういえば、と光陰は思い出す。この日、匠は学校に来ていなかった。朝のHRで担任が何とも言えない微妙な顔で「またか」と呟いていたのが聞こえたので、例の如くサボりだと判断されて誰も言及しなかったのだ。

 彼が突発的に学校に来なかったり大幅に遅刻してきたりすることは周知の事実だ。連絡は一切ないので教師陣も初めこそ咎めはしていたのだが、今はもう諦めて大して気にされていないらしい。

 

 その時光陰の脳裏に、ある突飛な想像が過ぎった。根拠のないほとんど直感のようなものだが、不思議と間違っているとは思わなかった。時々こういうことがある。頭に浮かんだ閃きが理屈抜きで正しいと考える時が。

 想像の勢いに任せて尋ねた。

 

『ひょっとして、朝からずっとここにいたのか?』

 

 制服を着ているし鞄も持っている匠の姿を見る限り、少なくとも登校しようとはしていたのだろう。その途中でこの猫を見つけて、それからずっと動かずここにいた。これが光陰の想像だ。

 

『え? あー、そうだけど。そういえばもう夕方か』

 

 さすがに腹減ってきたな――腹に手を当ててぼやく匠を見て、光陰は唖然としてしまった。

 たしかに自分はそういう想像をしたが……まさか本当にずっとここにいたとは。

 

『えっと……理由を聞いてもいいか?』

『聞かなくても、お前ほどのやつなら察しは付くんじゃ――あ』

 

 言葉を切った匠は、光陰を見上げていた顔を急に猫へと向けた。そして溜息を吐くと立ち上がり、大きく伸びをすると歩き出した。

 

『お、おい榎本、この猫は……』

『今死んだよ』

『え』

『だから、もう俺がここにいる意味はない』

 

 その言葉を聞いて、さらに想像を加速させた光陰は小さく笑って匠に声をかけた。

 

『なあ榎本』

『んー?』

『家に来ないか?』

 

 何となく、匠のことを知りたくなった。この機会を逃がすと損をするという予感があった。

 それとは別に、もう息を引き取った猫を抱き上げる。当初の予定通り、お経を唱えて自分なりに弔うつもりだ。こんな道端で朽ちるよりも自分の寺――仏の近くで眠らせてやりたい。

 

『タダで何かが食えるなら行くぞ』

『……お前って、正直だな』

 

 自身の欲望にストレート過ぎる匠の言葉を聞いて軽く苦笑しながら光陰は思った。

 

 恐らく匠は、一度温もりを知ってしまえば失われる時の絶望がより深くなることを身を以って知っている人間なのだ。

 手を伸ばして触れた指先に微かに残る温もりだけで充分だと思い込もうとしても、触れ続けていなければ温もりの余韻などすぐに消えてしまう。それならばずっと抱き締めていたいけど、抱擁は束縛と紙一重だ。束縛する者はその瞬間から喪失に脅えることになってしまう。

 例え助けようと決めたとしても、必ず助けられるとは限らない。人は万能ではないのだ。猫を助けようとして助けられなかった場合、猫に助かるという幻想を与えるだけ与えて死なせるかもしれない。

 故に温もりを与えることはしなかった。しかし、放っておくこともできなかった

 人も猫も同じだ――誰だって、独りぼっちは寂しいから。

 だからせめて死の間際くらい側にいてあげようとした。そして態度で伝えたかった。

 お前は独りじゃないんだぞ、と。

 

(まあ、今になって思えばかなり無理がある考えだけどな……)

 

 それでもあの時の感覚は間違っていないと信じている。だからこそこうして友人関係を続けているのだ。光陰にとっては、これまでに会ったことのない種類の人間である匠の態度は一つ一つが新鮮で、彼の癖の強ささえ受け入れられればとても愉快で優しい性格を感じられる。

 ……当の本人が積極的に誤解を受けようと言わんばかりに捻くれた態度を貫いているので、榎本匠という人物を理解している者はほとんどいないのだが。

 

 そうやって過去を回想しながら歩いていたら、いつの間にか教室に着いていた。

 教室に入った光陰を見つけて、さっそく今日子が寄ってくる。

 

「光陰! 悠、どうしたの?」

 

 既にクラスメイトから何があったのかは聞いたようだが、保健室まで運ばれた悠人のことがやはり気になるらしい。

 自分の予想通りの顔をする今日子を見て、光陰は彼女を安心させるように笑顔で口を開く。

 

「落ち着け今日子。悠人なら大丈夫だ」

「本当?」

「匠が見るには、特に異常はないってさ。俺の目にも変なとこはなかったし、たぶん過労とかじゃないかな。どうせバイトのやりすぎだろ」

「そう……あれ、その榎本は?」

「保健室に残って悠人を診てる。先生がいなくてさ」

 

 今日子への説明を続けながら、光陰は保健室に残った二人のことを思う。

 

(大丈夫だ。きっと上手くいく。仲良くやっていけるさ)

 

 

 

 

 

   ***

 

 

 

 

 

 光陰の見解は、ある面から見れば実に的を得ていたのだが、別の面から見れば全くの見当違いであった。

 彼がその事実に気付くのはかなり後のことである。

 

 

 

 

 

   ***

 

 

 

 

 

 光陰が教室に戻り今日子に会って次の授業が始まった頃。匠は神木神社に来ていた。

 境内に登るための階段の麓に立ち、目の前の階段をまっすぐに睨んでいる。

 呼吸は荒く、瞳はぎらつき、今まさに獲物に襲い掛からんとする獣を思わせる様は、誰も見たことがない切羽詰った姿だった。

 

「おい、【鷹目】」

【はい、間違いありませぬ】

【ウソでしょ……こんな近くにあったなんて】

「お手柄だぜ。お前じゃなきゃ見つけられなかった」

【勿体無いお言葉です。ですが、某はもう……】

「ああ、無理させちまったな。ありがとう」

【じゃ、またねー】

【御二方、また会いましょう……】

 

 会話を終えると同時に匠の右目に浮かぶ巴文様が消え、瞳の色も元の黒に戻った。

 

「っく、はあ……はあ……」

【匠、大丈夫?】

「はあ……ああ、『視』た時間も短かったし大したことはない」

 

 突然息を乱した匠だが、心配する【悔恨】の言葉に無事を伝える。【鷹目】を顕現したリスクを感じるのは久しぶりだったが、極力マナを消費しないよう断続的に『視』て、使った総合的な時間を短くするようにしたのでそれほど大きな負担にはなっていない。

 それよりも今は目の前のこれだ。今まで気付けなかったが、【鷹目】が示した情報を知った今の匠の感知力は【悔恨】が操る風を通じて目の前の存在をたしかに捉えていた。

 

 悠人を『視』た後、保健室を飛び出した匠はその足で学校を後にした。それから【鷹目】が示したこの場所を目指してまっすぐ走ってきたのである。

 そして、見つけた。

 彼の目には空間の綻びが『視』えていた。人間の目には決して分からないであろうそれも、かつては当たり前のように利用していた匠には見慣れたものだった。

 門がそこにあった。

 

 人払いの結界が張ってあるわけでもないのに誰もここを溜まり場にしていないこの神社を、匠は前々から怪しいと思っていた。

 初めて訪れた時からずっと記憶に残っていたのだ。気配が漏れて気付かれないように何重にも陣が敷いてあったが、匠からすれば十分すぎる違和感を覚える場所だった。気になってちょちょいと調べてみれば、唖然。何故か上位永遠神剣が隠されているかのように奉られているではないか。

 何故こんなものがあるのか。今の今まで疑問であったが、先程の出来事を通じて確信した。これは悠人を監視する者の神剣であり、その者はこの神剣を通して悠人を見守っている。

 ならばここに門があるのも頷ける。あの神剣の主はここの門を、この世界における起点として利用しているのだ。

 

 そして最も重要なのは、悠人から感じた神剣の気配――契約を匂わせるマナの波動を辿っていたらここに着いたということ。匠は最初から神木神社を目指していたのではない。マナの気配を辿ってきたら自然とここに足を運ぶことになっていたのだ。

 遠くない内に悠人は世界を超える。ここの門を通って。

 

(じゃあ……ここを使えば)

 

 この世界から出られる。匠にとっては牢獄にも等しいこの世界から。

 それも、予定よりも遥かに早く。

 

(出られれば……またやつらに会える)

 

 己の悲願を果たせる。

 何年もかけて慎重にマナを集めなくてもいいのだ。

 

(ははは……なんだよ、こんな裏技があったんじゃねえか)

 

 言うなれば、牢の壁を根気強く掘り続けて外への道を作るのではなく、鍵を持つ者が出入りする際にこっそり便乗する、といったところか。

 

 意識が内に沈んでいく。心の底から表れたのは無限に続く悔恨の情。

 

 忘れない、忘れられるはずがない。

 あの時の悔しさを、あの時の恨みを。

 己の全てが意味を失ったあの時から、この思いは常に自身と共に在り続けたのだから。

 今だって、こんなにも憎んでいる。

 みんな殺せ。

 全てを壊せ。

 一切合切を消し去ってしまえ。

 片時も忘れていない思いが、今も変わらずここにある。

 あの思いを、忘れてたまるものか!

 

 思考を終えると、匠は彼方を見据える。視線の先にあるのは先程までいた浅見ヶ丘学園。そこの保健室で横になっている――

 

「高嶺、悠人……」

 

 小さく開いた口元から、一つの名が零れた。義妹思いで知られる同級生。友人によって引き合わされた気に入らない少年。

 その少年を『視』た時の衝撃を思い出す。こことは異なる世界に存在する神剣と結ばれた契約。それが履行されるまでの残された時間。

 

 唇の端を軽く吊り上げ、吐息よりも小さな呟きを漏らす。

 

 ――使えるな。

 

 非情。

 冷酷。

 そんな人としての性質を表す言葉など、今の彼には程遠い。

 

 鬼が、そこにいた。

 

 

 




【やほーい。今回から私もけっこう喋れることになったけど、このコーナーは私【悔恨】が担当することになりました。どーぞよろしく!
 さてさて、ノンビリした前回に比べてかなり物語的に加速しました今回なのですけども、相変わらず核心に触れないように作者が気を付けて書いてるつもりだから、もし何かしら察しちゃっても言わないであげてね】
【恐らく、読者諸氏は様々なことにお気付きでしょうが、心の奥へ秘めておかれるのがよろしいと思われます】
【あれ? 【鷹目】君もここに来たんだ】
【ええ。作者によればここは『神剣の、神剣による、神剣のための予告コーナー』なのだそうですので、某も参加させていただこうかと】
【そっかあ。これからよろしくね】
【しかしこうして出られるのは、その回毎で出番があった神剣のみだそうです。某が次回も参加できるとは限りません。作者も基本的には【悔恨】殿を中心として進めていく方針なのでしょう】
【あらら、そうなの。神剣同士でおしゃべりできることって少ないから大切な話し相手なのにな……じゃあせっかくだからパクりの説明は【鷹目】君がやってみる?】
【はい。その役目、喜んで承ります。それでは皆様方、僭越ながらこの【鷹目】が今回主殿が使用した某の能力、写輪眼についての説明をさせていただきます】

   がたがた ごそごそ(←立ち位置交代の音)

【改めて、初めまして。某、位は十位、名は【鷹目(たかめ)】と申します。以後お見知り置きを。
 写輪眼とは『NARUTO』(岸本斉史/ジャンプコミックス)に出てきます血継限界と呼ばれる特殊能力の一種で、本質を見通す洞察眼の一つです。血継限界とは『NARUTO』に登場するいくつかの一族にだけ遺伝で伝わる能力のこと。そして写輪眼は、三大瞳術の一つと謳われております。
 その能力は本編で語られておりますように、あらゆるチャクラの動きや存在を捉え、その性質を色で見分けます。チャクラとマナという表現の違いはあれど、某の能力もこの一点に集約されます。戦闘力はほとんど持ち合わせておりませぬ某でも、殊洞察に関しましては自負があります故、主殿も度々某を頼ってくださるのです】
【しつもーん。【鷹目】君が消えた後、匠が急に息を乱したのはどうして?】
【それは主殿の体が普通の人間と変わりないからです。本来この写輪眼は、うちはと呼ばれる一族にのみ発現する資格を持つ能力――いえ、体質なのです。よって主殿が写輪眼を使うと、うちはの者に比べて非常に大きな負担がかかります。
 その例として『NARUTO』では、はたけカカシが写輪眼を長時間用いた後に自力で立ち上がれなくなるほど消耗しているでしょう? あれは彼の体が写輪眼の行使に適応していないからです。主殿も似たようなものとお考えください】
【なるほどー。少なくとも今の匠じゃ写輪眼を使うのはけっこう大変なのね】
【さて、そんな写輪眼ですが今回は戦闘に利用したのではなく、別の用途で主殿は使われました。目的は、高嶺悠人の精神世界への侵入です。
 『NARUTO』の第二部、疾風伝にて、うちはサスケが写輪眼を用いてうずまきナルトの精神世界に入り込み、彼の身に封印された九尾の妖狐と対面しております。主殿はこの方法を模倣して高嶺悠人の心へと忍び込み、彼と契約した神剣を覗き見たのです。とは言うものの干渉はせず少しだけ見てすぐ戻りましたが、それだけで十分だったのでしょう。
 これにて写輪眼の説明は終わりにいたします。御清聴、真にありがとうございました】

   ごそごそ がたがた(←立ち位置を戻す音)

【説明ご苦労様。どうだった?】
【少しばかり緊張しました……これほど長々と話したのは久しぶりですので】
【あー、分かるかも。でもこうやっていっぱい話せるのって楽しいよね!】
【そうですな。それだけに、主殿の今後の活躍が気になるところであります】
【うんうん。それじゃ今度は次回予告やるね。
 門を見つけて狂喜する匠は、自分の計画を大きく前倒しすることに決めた。
 そして学校に戻った匠の前に現れる、ご存知、我らが白髪の偏執狂! 初対面となる二人は壮絶な舌戦を繰り広げる。
 少し前まで乗り気でなかった勉強会を、匠はどうやって乗り切るつもりなのか? マジメにやるか、茶化して遊ぶか、それともサボるか。怠け者の勉強方針にご期待ください!】
【登場人物が増えるのも楽しみです】
【それじゃあこの辺で。ばいばば~い】
【またお会いしましょう】

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。