庭の広さ以外は質素な印象を受ける日本家屋。
その庭にて一人の青年が何もない空間に蹴りや拳を放っていた。武に精通したものが見ればこれが仮想の敵をイメージして行われる鍛練である事が分かる。だが相手が規格外過ぎる。それを相手にしている青年の動きも一般人では眼で追えない程早く、武人が見れば溜め息が出るほど無駄が無く洗練されていた。何度か仮想敵と拳を交えた後、青年は突如として動きを止める。青年の視界には仮想敵の得物である朱い槍が眉間を捉えていた。青年の貫手も心臓に向けられているものの武器のリーチの差により浅く致命傷になり得ない。青年はイメージを消してゆっくりと構えを解いた。
Side???
俺、
生まれは現代魔法師の頂点に立つ十師族の内の一つ四葉。そう、俺は魔法科高校の劣等生の主人公司波達也として生を受けたのだ。原作通り人造魔法師実験の被検体にされかけたものの四葉から脱走する事で回避することが出来た。まあ、その後原作のお兄さま同様トラブルに愛された波瀾万丈な人生を送る事になったわけだが。
「フォウ」
「おはよう、キャスパリーグ」
構えを解いたのを見計らい駆け寄ってきた比較の獣から分かるようにこの世界は型月とのクロス世界だ。なぜキャスパリーグがここにいるか等は俺の歩んだ軌跡と共に別の機会に話すとしよう。朝御飯ももうすぐ出来るようだし。
「おはよう、桜」
「おはようございます、兄さん、フォウ君」
「フォウフォウ」
シャワーを浴び、着替えを済ませた俺とキャスパリーグを食卓で出迎えたのは義妹の綺堂桜。ストレートの紫髪のこの少女の旧姓は間桐。意図せず蟲蔵で蟲による凌辱を受けていた彼女の元に転移で出現したのが出会いだった。本来辿る筈であった自分の姿と桜の姿を重ねて見てしまったが故に衝動的に助けてしまった。まあ、後悔など欠片も抱かなかったが。今では美しく成長し心から笑える様になった。あの時助けたのは間違いでは無かったと心から思う。
「兄さん」
「うん?」
「制服、似合ってます」
「ありがとう」
ちなみに今着ているのは魔法大学付属第一高校の制服だ。魔法力は原作と変わらないためエンブレムはない。しかし俺としては魔法科高校に入学するのはそこにある貴重な資料を見るため。学力事態は高校に行く必要はなく、むしろ自由時間が多くとれる二科生の方が良いくらいだ。それに俺の容姿と雰囲気ではあの花のエンブレムが浮いてしまう。家では昔ながらの色合いの色無地や浴衣が殆どで外出時も落ち着いた服を好む身としてはこの明るい色合いの制服に華やかなワンポイントが添えられるのは勘弁願いたい。
準備を終え玄関の戸締まりをし、キャスパリーグを肩に乗せて桜と二人で門をくぐる。
「では兄さん、フォウ君、夜は入学祝でご馳走にするので楽しみにしていて下さいね」
「フォフォーウ!」
「ああ、桜が腕によりをかけて作るんだ。楽しみにしている。気を付けて行くんだよ」
「はい!」
桜を見送った後、きびすを返す。これからの三年間、忙しくなりそうだ。