この不遇な貴族に平穏を! 作:苦楽
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例の報告を受けた翌日、デュランはアクセルの街にやってきていた。
目的は当然、ダスティネス=フォード=ララティーナにかけられた死の宣告という呪いを解くことである。
自分の判断ミス(納得いかない部分もあるが)で大貴族の令嬢を死なせたとなれば、物理的に自分の首がはねられかねない。
そのため、デュランが生き残るには呪いを解くしかないのだ。
しかし、その呪いは腕利きのアークプリーストが何人いようとも解呪できないほど強力な呪い。解くには、呪いの使い手である魔王軍幹部ベルディアに解かせるしかない。
本当ならば騎士団を派遣するのが一番リスクが少ないのだが、魔王軍の幹部に対抗できる人材など王国にはデュランを含め数人しかいない。
そのため、しかたなくデュランが赴いたというわけだ。
「はあ、頭痛が痛い」
「大丈夫ですか? 働きすぎて馬鹿になってません?」
「失礼なことを言うな、貧乏女」
「貧乏女はやめてください!?」
「すまんな。ちょっと懐と心が寂しい、貧乏アークウイザード」
「フォローになっていないうえに余計にひどい!?」
涙目になってつっこんでいるのはレイン。王国王女の教育係であり、驚異的に貧乏ではあるが一応貴族である。
さすがに魔王軍幹部相手に一人では不覚をとるリスクがあるので保険で呼んだのだ。
「でも、何で私だったんですか? 正直、王国の冒険者に頼んだ方がよかったのでは?」
「そりゃ戦力的にはその方がいいだろうさ。だが、奴らは払う報酬が高い上に、使い勝手が悪い。戦功を狙って独断で動いこうとするし、言うことはきかないし......その点、レインなら安く済むし、連携もしやすい」
「私使い勝手で選ばれたんですか!?」
「あー、あとレインなら多分断らないだろうと思ったからさ」
「だからフォローしようとして余計にひどくなってますよ!? もう!」
レインは頬を膨らませてそっぽを向いてしまった。
拗ねてしまった理由が分からずデュランは困惑する。もっとも、功利主義のデュランにとって、女心を察するとはフェルマーの最終定理を解くよりも難しいことである。
デュラン眉を困らせながら。
「怒らせたのならば謝ろう。しかし、共に戦う上で貴様が1番適していると言う言葉に嘘は一つもないぞ」
「ほ、本当ですか?」
「ああ、レインがいれば負けそうになったらテレポートで逃げられるからな。その時は頼むぞ……って、おいこら! やめろ脇を掴んで持ち上げるな! 地味に足がきついんだぞ! やめ、やめろー!」
□
「そういえば、どこに向かってるんですか?」
「アクセルの冒険者ギルドだ。さすがにギルドに一言言わずに幹部に戦闘を仕掛けるわけにもいくまい」
本当ならこっそりと倒してしまいたいところなのだが、魔王軍の幹部という存在が急に消えたら混乱が起こる可能性がある。それで一番割を食うのは国の要人であるデュランなのだ。ただでさえ忙しさに殺されそうなのに、自分から仕事を増やすのは避けたいのが本音である
「あと、ついでに使えそうなやつがいたら、懸賞金を餌に雑魚の相手をさせようとも思ってな」
「大丈夫ですか? アクセルの冒険者のレベルでは足手まといになるのでは?」
「最悪俺が支援すれば雑魚ぐらい相手にできるだろ。それに使い物にならないのなら、連れて行かなくても問題ない」
本音で言えば魔力を温存していたいから、極力雑魚のアンデットは他に押し付けたいと考えているのだ。
ギルドに到着した。
ギルドの中に入ると、デュランとレインに視線が集まった。
「すごい見られてますね」
「ふむなぜだろうな」
見慣れない金髪碧眼の美男美女が入ってくれば誰でも見てしまう。
しんと静まりかえっているギルドに、ががっと椅子を引きづる音が響いた。くすんだ金髪の男はつかつかとデュランたちに近づいてくる。
「おいおいお子様よ。いい女連れてるじゃねえか。しかし、おまえさ......ごはあああ!?」
デュランのアッツパーカットがさく裂する。男は最初に座っていた机に飛び込んだ。
「言葉に気をつけろ三下。ちなみに俺は14歳、立派な大人だ!」
「あああああ、ちょっとデュランさん! 机が壊しちゃだめですよ! 誰が弁償すると思ってるんですか! たしかに身長小さいの気にしてて、お子様扱いされるのが嫌なのはわかりますけど!」
「ええい、わざわざ繰り返すな!」
「おいてめえら俺の心配しろ!? 普通なら死んでるぞ!?」
「知るか。貴様から絡んできたんだろうがチンピラ」
「チンピラじゃねえダストだ! いいか、お前ら。俺はこの街ではそこそこ名が通ってる冒険者だ。この街で背中を気を付けたくないなら、仲良くしておいて損はねえぜ」
新参者であるとみて大きいことを言っているのかと考えたが、一人自分たちにかみついてきたところを見ると案外本当なのかもしれない。と思ったのだが。
「名が通ってるって悪評で有名になってるだけだろ?」
「そうだな」
「むしろあんたの方が恨み買ってるんだから、人のこと言う前に自分の背中を気にしなさいよ」
「おい、仲間がやられてんのにその言い草はなんだ!」
どうやらすべて虚言だったようだ。仲間らしい人間からも心配されない人望のなさに、一瞬でも警戒した自分がバカらしいと、デュランは呆れた。
「時間の無駄だったな」
「そうですね」
ダストを無視して受付に行く。後ろから声が聞こえてくるが、殴られた時に実力差を察したのか絡んでくる様子はなかった。
「騒がせたな」
「すいません。壊した机は後でこちらで弁償しますので」
「あ、あのー、あなた方は?」
2人の独特な空気に受付嬢のルナは戸惑い気味に対応する。
「ああ、申し遅れた。俺の名前はデュランだ」
「同じくレインです」
「俺たちはアクセルの救援要請を受けてきた王国の人間だ。これから魔王軍幹部ベルディアの討伐に向かう」
「なるほど......って、ええええええ!? あなた方が王国の......?」
「おい、今どこを見て首をひねった」
デュランの睨みにルナは露骨に目を逸らす。
「はい。こちら冒険者ギルドです。本日はどのような御用ですか?」
「誤魔化し方が露骨すぎるだろ......」
「肝が据わってらっしゃいますね」
レインは苦笑いを浮かべる。
デュランはため息をつく。
「まあいい。そこでベルディア討伐に向かうにいたって、道中の雑魚の相手をする冒険者を募集したい。報酬はベルディアの討伐報酬の一部である300万エリスだ」
「なるほど......クエストの受注は承りましたが、危険なクエストになりますので、受ける冒険者がいるかどうか......」
「いないなら、いないで構わない。明日出発前にもう一度ここに来る。クエストを受ける人間がいたら教えてくれ」
「はいわかりました」
このすば完結おめでとうg......