虚さん、できれば部外者としてそっとしておいてくれても、あ!どこ行くんですか!
篠ノ之さんがまた織斑さんを見ています。
織斑さんは相変わらず彼女の視線に気づいていませんね。
篠ノ之さんの視線の先に気づいたのは偶然でした。
私の席は後ろ方なので授業中に教壇の先生に目を向けると彼女が視野の端っこに入ります。
ある日、篠ノ之さんが見ているのが明らかに先生ではないことがあったのです。
彼女の髪型は頭の向きを推測するには便利でした。
ただその角度はほんの少しだったので違和感を感じただけで視線までは判りませんでした。
その時はちょうどISの講義中。
私には更識さんの
人間観察をしていると気付きましたが、織斑さんは時々授業に付いていけなくなる時があります。
イギリス代表候補生を下した技能はすごいと思います。
ですが男子には将来ISの開発、整備に携わる仕事を目指していなければ
かくいう私も適性があると気付かなかったので、同じような状況だったのですが。
いよいよ織斑さんが思考停止して動かなくなったその瞬間、篠ノ之さんのポニーテイルがさらりと揺れました。
織斑さんの表情は未だにわかりませんが、織斑先生が険しい面持ちになり、山田先生がオロオロするくらいはっきり変化しているのでしょうね。
織斑さんが動かなくなる→篠ノ之さんのポニーテイルが揺れる→織斑先生の険しい面持ち
このルーティン度々繰り返されるので確信できました。
篠ノ之さんは誰にも気づかれないように織斑さんをチラ見し続けていますね。
少しお気の毒です。
彼女の並び位置だと授業中織斑さんと見つめ合うことはありません。
せっかくの幼馴染というのに。
これでは、私が血の涙を流しながら爆発すればいいのにと悔しがるところまでゲージが溜まりません。
= = = = =
休み時間です。
普通の学校に通って進学する予定だった私では、この学校の生徒は苦手なのかもです。
ひとりでトイレに行くか、教科書に目を通すくらいしかやることがありません。
「マッチー、学校慣れた~?」
布仏本音さんたちが声をかけてくれました。
「はい、付いていくのが精一杯ですが」
「大変だよねー、いろいろと~」
布仏さんは、文字通りのほほんさんです。
更識さんが何かあれば相談するように言ってくれていますから、関係者なのでしょう。
だとしたら、彼女の雰囲気はどこまで本音なのでしょうね、本音さんだけに。
「あれー、どーしたのー?
顔真っ赤だよー」
「は、はい。
自分でもくだらないことを考えてしまったと反省しているところです」
あー、恥ずかしい、高校生にもなって小学生並みの発想でした。
「あ、あの、ひとつお聞きしたいのですが?」
「何かなー?」
本人に聞きづらいので彼女に聞こうと思います。
布仏さんは相変わらずですが。
「更識先輩の妹さんのことなのですが・・・・」
「何?」
布仏さんの表情が一瞬凍り付いたように感じました。
敵意を向けてこられたと言っても外れていないかも知れません。
「今すぐというわけではありません。
薫子さんに姉妹の仲がうまくいっていないとお聞きしましたので」
「それ、マッチーに関係あるかなー」
布仏さんの口調と表情は普通?ですが、かすかに含みがありました。
「私は部外者かも知れませんが、そうでもないかも知れません。
私は更識さんのことが嫌いではありませんから・・・・」
少しひきつった微笑みかも知れませんが、精一杯の努力をして言ってみました。
「すぐじゃないんだねー」
「はい、私
「・・・・そのうち、かんちゃんを紹介するよー」
「はい、ありがとうございます」
少しホッとしました。
「マッチー、敬語は要らないよー」
他の人が聞くとどうという言葉ではありません。
「! 癖なのです。
おかしいでしょうか?」
「うーんとね、お嬢様の関係者になったらお友達だしねー」
布仏さんの言葉の意味は勘違いしそうです。
「布仏さんはお友達になっていただけますか?」
「ダメー、マッチーはマッチーだよねー」
どうも予想が当たったようです。
ただ私のような一般学生がそのようなことはまずないと思うのですが。
「授業を始めるぞ、全員席に着け」
織斑先生が教室に颯爽と入ってきました。
織斑さんの囲んでいる方々におひとり見慣れない方が。
中学生でしょうか?
ツインテールの似合う子が混じっていて、その子は織斑先生を見て怯えているみたいです。
織斑さんの周りは今日もカラフルでにぎやかです。
布仏さん、の本音はどこに?
あのー、妹さんをそのように。
・・・・!あっ、また!
もう逃げるくらいなら、私がここに来なくていいように手配してくださいよ。