――皇暦2010年、八月十日。神聖ブリタニア帝国は、日本に宣戦布告した。
極東で中立を
両国間には、日本の地下資源“サクラダイト”を
根深い外交上の
本土決戦に於いて、ブリタニア軍は人型自在戦闘装甲機“
その威力は予想を遥かに超え、日本側の本土防衛線はナイトメアによって、
日本は帝国の属領となり、自由と、権利と、そして名前を奪われた。
エリア11、その数字が敗戦国日本の新しい名前だった。
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終戦7年後、2017a.t.b.
ブリタニア人居住地
……なんだ? 騒がしくなったぞ
ブリタニア軍部の一室、イザックが
「よぉ、なんかあったのか、パーティ」
部屋に入って来たパトリックに声を掛ける。
「あぁ、ポリスの連中が動いている。反抗勢力が“ここ”から医療機器を盗ったらしい」
犯行グループはトラックで逃走しているとか。
「じきに終わる、時間の問題だろう。まぁ、軍の管轄じゃあないから――」
『ブリタニア帝国第三皇子、クロヴィス殿下、会見の時間です』
トウキョウ租界全体に放送音が響く。
『帝国臣民の皆さん。そして勿論、協力頂いている大多数のイレヴンの方々も』
「良く言う……服従の間違いだろう」
パトリックが呟いた。
『分かりますか? 私の心は今、二つに! 引き裂かれています! 悲しみと、怒りの心にです。
しかし、このエリア11を預かる私が、テロに屈する訳にはいきません!!
何故なら、これが正義の戦いだからです! 全ての幸せを守る“正義”の』
先日、オオサカの方で
『さあ、皆さん。正義に殉じた八人に、哀悼の意を捧げようではありませんか』
『黙
「俺は59人に捧げよう……ファーラム」
亡くなったのは八名ではない。“ブリタニア人”死者、八名なのだ。
イザックはキルティア式の祈りを捧げる。
「さて、今日は暇――」
『アラート1発令、アラート1発令。第四、第七……』
「オイまじかよ、なんの情報も――」
パトリックの無線機に通信が入る。
『AK隊、私だ』
ジェレミアだ。
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「――最初の手さ」
「ん?」
学生が二人、バイクとそのサイドカーに乗った二人が話す。
「なんで、キングから動かしたの?」
「王様から動かないと、部下が付いてこないだろ?」
「……あのさぁ」
「なに?」
「ルルーシュって、社長にでもなりたい訳?」
「まさか、変な夢は身の破滅――!」
クラクションに気付くと、巨大なトレーラーが後ろに接近していた。
「うわぁっ! なんですかっ!?」
操縦する、青髪の少年は慌ててハンドルを切る。
と、痺れを切らしたトレーラーは急に曲がって――
ドォォォォン
曲がった先のビルに衝突した。
「あの……俺達の
「まさか……? なんだ?」
サイドカーから降りてトレーラーに目を向ける。
「おい、ルルーシュ。エナジーの線が切れたみたいなんだけど」
「あぁ……」
ルルーシュは見入っていた、なんだか分からないがトレーラーから目が離せなかった。
「リヴァル、なぁ、あれって……」
「おい。こっちこっち」
「うっひゃー、
「何々? 事故?」
「酔っぱらってんじゃないのぉ?」
「バカな奴ぅ」
「おい誰か、助けにいってやれよ」
……チッ。どいつもこいつも
「? ルルーシュ、おいちょっと!」
ルルーシュはトレーラーに向けて走る。そこになにが待つかも知らずに。
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『テロリストは、地下鉄構内に潜伏している。貴様たちの目的はテロリストが奪った兵器を見つける事にある。
イレヴンの居住地、シンジュクゲットー地下鉄構内を探索せよ。発見し次第“コール”を送れ。ターゲットの回収は、我々親衛隊が執り行う。貴様達は――』
無線を切った。
「情報は十分。ナイトメアが相手じゃあないが、機動訓練程度に考えようぜ」
AK部隊は、既に地下にいた。事前にジェレミアから命を受けていたからである。
装備はAKライフルを中心にした戦闘用、必要は無いだろうが。
「――。パーティこっちだ。大型の物体が落ちた音がする」
特徴的なローブを纏ったイザックが言う。
「……すっげぇ聴力。俺は雑音しか聞こえないけど」
バンガ族は、言ってしまえばトカゲの進化形だ。嗅覚、聴覚は人間を大きく上回る。
「――ッ!
AK分隊が通路に入ったその時、道の反対から人が来た。
相手はブリタニア軍の装備だが、武装が無い。
「こちらは、ブリタニア軍特務-ジェレミア・ゴットバルト辺境伯
彼は銃は構えたまま言った。
「は、ハッ。
名は日本語だった。即ち彼は、
……名誉ブリタニア人か
下士官位の
「そうか。貴官の任務は?」
「自分の任務はテロリストに奪取された特殊兵器の奪還、であります」
「同業か、どうするイザック」
「多い方が良いだろう、こっちだついて来い」
軍位で言えばAK部隊の方が上位だ。
「――!?」
イザックの顔を見て、スザクはそれどころではないかもしれないが。
「あれか?」
トレーラーは辿り着いた先にあった。亀裂に捕まったらしく、前輪が崩れた床で空転している。
「カバー」
物陰に隠れる。
「距離50メートル。イザック、行けるか?」
「下から回り込んでみよう、援護頼む」
イザックは崩れた床の穴に身を落とした。
「あの、特務殿」
「なんだ?」
「あの人は一体……」
「少し込み入っていてな。先ずはコールだ、枢木一等兵」
「? これは自分の功績では……」
「良いから、手柄を
「い、イエス・マイ・ロード」
スザクは装備の一つを叩く。
「コール、完了しました」
「よし……?」
不意に、トレーラーの荷台が開く。
「――ッ!」
「待て枢木!」
スザクは全力で走る。
「今の内に、上からよじ登れば……!?」
ルルーシュは例のトレーラーからの脱出を図るが、戦闘服の男に阻まれる。
ルルーシュが気付くが早いか、男はとび蹴りをくらわす。
「グッ!」
両の腕を顔前に置き、ルルーシュはそれを防ぐが、彼は体術を心得ていない。
衝撃を殺せず後方に倒れる。
「ブリタニアgッ」
男はルルーシュの首元を捉えた。
「殺すな、これ以上……!」
「待て! 俺は」
「しかも毒ガスなんて……とぼけようとしても――」
「だからァッ!!」
ルルーシュは男を振り払う。
「どうせその毒ガスだって、ブリタニアが作ったんだろう……!」
「お前……?」
「“殺すな”? だったら、ブリタニアをぶっ壊せ!」
「ルルーシュ?」
男はマスクを外す。
「僕だよ。スザクだ」
「!? お前、ブリタニアの軍人になったのか?」
「君は? まさかこれ……」
「何言ってんだ――」
「枢木一等兵! 退避だ!!」
パトリックはトレーラーに積み込まれたカプセルを見ていた。
今、開く。
「クッ……」
スザクは、持っていたマスクをルルーシュに押しつける。
「毒ガスじゃ、ない……?」
入っていたのは長い緑の髪を持つ少女だった。
「……答えろよスザク。毒ガスか? この子が?」
枢木一等兵と学生服の少年は知り合いだったらしい。
AKの二人は遠目から二人を見ている。
「……どうする?」
「やべぇモン見つけちまったな……? 何か来る。おい枢木――」
急にライトが、スザクともう一人に当てられる。
「この、猿……!」
AK部隊は咄嗟に隠れる。見た所、ブリタニア軍親衛隊。確かターゲットの回収担当部隊だ。
「名誉ブリタニア人にはそこまでの許可を与えていない!」
「しかしこれは、毒ガスと聞いていたのですが!」
「答弁の権利は無い」
……確かに、こいつは劇薬だ。特に上層部にとっては特にな
イザックは思うが、今は出れない。無暗に庇えば己も危険になりかねない。
「……だが、その功績を評価し、慈悲を与えよう」
親衛隊の隊長は拳銃を差し出す。
「枢木一等兵、これでテロリストを射殺せよ」
「ッ。彼は違います。ただの民間人で、巻き込まれただけです」
「貴様ぁ、これは命令だ! お前は、ブリタニアに忠誠を誓ったんだろう」
「それは……。でも出来ません」
「何?」
「自分はやりません。民間人を撃つなんて、彼を撃つ様な事は……」
「そうか……では、死ね」
「――!?」
差し出した拳銃をスザクに押し当て、ためらい無く撃った。
「あの野郎!!」
パトリックが銃を構える。
「パーティ待て! 駄目だ、今その方法では
「見た所、ブリタニアの学生の様だが不運だったな。女を捕獲した後、学生を殺せ」
「イエス・マイ・ロード」
……ブリタニアのクソ共め
トレーラーの中、操縦席の男はまだ生きていた。
意識が薄れながら、彼はあるスイッチに手を掛ける。
……日本……万歳
トレーラーが爆発した。
……今しかない!
イザックが飛び出す。撃たれて倒れるスザクを掻っ攫い、手近な穴に飛びこむ――。
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「逃げられただと!? それでも親衛隊か!」
『申し訳ありません。爆風はほぼ、上方に拡散したのですが、岩盤が――』
「何ゆえお前達だけに教えたと思っている!」
『た、探索を続行します』
G-1ベース、超大型作戦車両内は第一次作戦の失敗を知った。
「……作戦は次の段階だな」
クロヴィスが言う。
「しかし殿下……」
「あれが外に知られたら、私は
そして、
「第三皇子クロヴィスとして命じる。――――シンジュクゲットーを壊滅せよ!」
『相手は名誉ブリタニア人にすらなれない屑共だ。一匹残らず抹消せよ』
「当然」
ジェレミアは、前線でナイトメアを駆る。
『ジェレミア管理官、バトレー将軍が第二方面軍の指揮をとってほしいと――』
「参謀がいるだろう。折角の前線、楽しませてくれよ」
壊滅が始まる。
「? 居ないって?」
G-1の隣、特派の大型車両でロイドが疑問する。
「前線に投入されたみたいで」
「ランスロットを連れて来たのに?」
「どうしますか?」
「
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「ケアル……ケアル! クソッ、ポーションは……なんで効かないんだ!?」
「お、おいイザック何を……?」
……くそっ、どうなってんだ!?
「なんでもいいから、早く救急に……! 駄目だ、名誉ブリタニア人の下士官は……」
救急医療機関の利用を認められていない。
「じゃあ、パーティ、コイツを見捨てるってのか!?」
「他にアテが無いんだよ!」
スザクの傷を抑えつつ、二人が叫ぶ。
「待て……一つだけある」
イザックが言う。
「どうせ他に無い! さっさと連れていくぞ! で、何処だ!?」
「――特派だよ!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「グッ!」
ルルーシュがあのトレーラーから少女を連れての逃走に成功したのも束の間。
また親衛隊に捕まった。彼は隊長の男に突き飛ばされ壁に背を打ちつける。
「“テロリスト”の最後にふさわしいロケーションだな」
「お前ら……!」
「まぁ、学生にしてはよく頑張った。流石はブリタニア人だ。
しかしお前の未来は……今、終わった」
拳銃を構える。
と、例の少女が
「殺すなぁ!!」
少女が叫ぶ。が、その弾丸は発射され、
「ッ!」
彼女に当たる。
「おい!」
彼女そのまま倒れた。
「出来れば生かしておきたかったが……上にはこう報告しておこう。
我々親衛隊は、テロリストのアジトを発見し、これを殲滅。しかし、人質は既に
どうかね学生君」
……なんだこれは? スザクも、この子も……そして終わるのか? 俺も、何一つ出来ないまま、あっさりと……ナナリィ……!
『終わりたくないのだな? お前は』
……!? なんだ……
『お前には生きるための理由が有るらしい』
……
『力が有れば生きられるか?
これは契約、力を上げる代わりに私の願いを一つ、叶えて貰う。
契約すれば、お前は人の世に生きながら人とは違う
異なる
王の力はお前を孤独にする。その覚悟がお前にあるのなら』
……良いだろう、結ぶぞ! その契約!!
一瞬の後、ルルーシュは立つ。
「なぁ、ブリタニアを憎むブリタニア人は、どう生きればいい?」
「貴っ様主義者か!? ――ん?」
「どうした、撃たないのか、相手は学生だぞ?
――それとも気付いたか。撃っていいのは、撃たれる覚悟の有る奴だけだ!」
「な、何だ……?」
「ルルシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる……貴様たちは、死ね!」
「イエス・ユア・ハイネス!!」
親衛隊は皆、銃を手に取る。
「
隊長の声を合図に、引き金を引く。
――“あの日”から、俺はずっと嘘をついていた。“生きてる”って嘘を。
名前も嘘、経歴も嘘、嘘ばっかりだ。
全く変わらない世界に飽き飽きして、でも“嘘”って絶望で諦める事も出来なくて、
だけど手に入れた。“力”を。
「だから!」
魔神が生まれた日だ。