月明かりに照らされて   作:小麦 こな

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第18話

 

「「「「「私たちにそのイベント、出演させて下さい!」」」」」

 

そんなにお願いされるなんて思ってもいなかったから度肝を抜かれたけれど、俺の答えは決まっている。

 

「こちらこそよろしく。Poppin’Partyのみなさん」

 

 

その後、今後の事を詳しく教えて欲しいらしく、俺は再び席に座る。ついでにカフェオレの追加注文もした。

 

「今後の事と言ってもあまり決まっていないけど、十一月下旬に開催するつもりだよ」

 

そう、ほとんど白紙の状態なのだ。決めていたのは開催日時とポピパには絶対に参加してほしいという漠然な事以外考えていない。

 

「拓斗さん。私たちも手伝いますよ」

 

まじか。こんなところに天使がいたわ。何このポニーテールの似合う天使。お嫁に欲しいわ。そして毎日チョココロネを食べたい。でも、りみちゃんも天使が似合いそうだな。今までは冗談だけれど、正直手伝ってほしいものがある。

 

「ありがとう。もし良かったらポスターを作ってくれたらうれしいのだけど」

 

俺は絵心が皆無だったりする。オスのカブトムシを描いたつもりなのに、見た人から「何この気持ち悪い蜘蛛」って言われた。カブトムシと蜘蛛は足の数が違うのに。

 

「まっかせてー!私絵が得意なんだよねー!」

 

どうしてだろう。香澄ちゃんが言うと嫌な予感がする。折り紙にマジックで目を書き足して「キラキラドキドキするっ!」なんて言い出しそう。楽しそうで良いけれど。

 

「拓斗さんっ!私パーティみたいなライブがしたいです」

 

香澄ちゃんの言葉を咀嚼する。なるほど、パーティか。良いかもしれない。

多分香澄ちゃんは楽しくみんなとパーティのような音楽がしたいと考えていると思う。俺は本気で音楽がしたい人達の集まりと訳したい。せっかくpartyには二つの意味があるのだから。

 

今、決めた。このイベント名なら上手くいくような気がする。音楽を本気でしたい出演者たちが熱意を込めて音を奏でて、出演者お客さん問わず全員が楽しめるpartyのようなイベント。

 

 

「そうだね。イベント名はガールズバンドパーティにしよう」

 

みんなと協力すれば、こんなにも早く物事が決まっていくんだ。良い方向に。

まだまだ不安はいっぱいだけれど、大丈夫な気がする。

 

 

 

「そうだ。みんな、この四つのバンドで知り合いっているかな?」

 

俺はポピパのみんなに箇条書きのメモを渡す。そこにはこの辺りで活動していているバンドの名前が書いてある。

Afterglow。何度かCiRCLEのスタジオを使ってくれたこともあるバンド。

Pastel*Palettes。最近デビューしたアイドルバンド。

ハロー、ハッピーワールド! 音楽業界でもあまり知られていない隠し玉。

そしてRoselia。誰もが認める実力派バンド。

 

イベント名が決まった後に頭の中に記憶していて、尚且つこのイベントにぴったりなバンドをピックアップした。この五バンドが揃えば面白いかもしれない。

 

結果から言うと、知り合いがいた。香澄ちゃんと同じクラスにPastel*Palettesのメンバーが、沙綾ちゃんの知り合いにハロー、ハッピーワールド!のメンバーが。

さらに幸運なことにこのコーヒー店の店員さんがAfterglowのメンバーだった。

 

香澄ちゃんと沙綾ちゃん、お店の店員さんである羽沢つぐみさんにはこういうイベントがあるから興味があったら連絡してきて欲しいと伝えておいた。

 

「よし、もう六時だし今日は解散にしよう。みんなありがとう」

 

あまり遅くまで話に着き合わせるのは悪いし、楽器を持ってきているから彼女たちにもバンド練習があるだろう。後は教えてもらったメンバーや関係者から興味を持ってくれるのを待とう。もちろん機会があったら会って話をするつもりもある。

 

ガタン!!

 

いきなり音がしたから驚いて音のした方向を向くと香澄ちゃんが立ち上がっていた。彼女が発した言葉で、俺は公式を初めて知った中学生のような気持ちになった。

 

「うーん!イベント楽しみっ!今からみんなで有咲の蔵で練習しよっ!」

「あ、ちょっ、待てって!すみません結城さん。失礼します」

 

今まで難しかった問題なのに、公式を使えばすぐに解ける。そっか。

 

今まで香澄ちゃんが誰かに似ているけど誰かは分からなかった。けれど、今やっと分かった。香澄ちゃんのあの明るく、前向きな姿勢はまりなさんに似ているんだ。だからポピパのみんなも香澄ちゃんに着いていくのかもしれない。何も見えない真っ暗な道を明るく照らしてくれるのだから。

 

香澄ちゃんはそのまま走ってお店を出て行き、有咲ちゃんはお礼を言って走っていった。後の三人もお礼を言って追いかけていった。突然の事だったから思わずポカンとしたけれど。

 

まだ出演バンドも一つしか決まっていないのに香澄ちゃんは楽しみと言った。その期待を裏切らないようにしよう。もう誰かを悲しませるような事はしたくない。

 

そこから俺はネットカフェに行った。目的はチラシ作り。家ではだらけてしまうからネットカフェを使う。

出演バンドのところには、まだ誘えてないのに五つのバンド名を書いた。

 

 

たまにはまりなさんや香澄ちゃんみたいに前を向いてみよう、って思ったから。

 

 

まりなさんの夢を現実にしたい、って思ったから。

 

「私はね、音楽を本気でやりたくてウズウズしている子達を誰かに見つけてもらえるようにって思ってここで働いているんだ」

 

面接の時に聞いた言葉とまりなさんの笑顔が俺を後押ししてくれているように感じた。

 

 





次話は10月27日(土)の22:00に投稿予定です。

この小説を新たにお気に入りにしてくださった方々、ありがとうございます!
また評価10の最高評価をつけていただきました 師匠@ゲーム実況もしてますさん!
同じく評価10の最高評価をつけていただきました MairoMurphyさん!
評価9の高評価をつけていただきました 新庄雄太郎さん!
この場をお借りしてお礼申し上げます。本当にありがとうございます!

私がハーメルン様に投稿して1ヶ月経つんですね。はやっ!(笑)
通算UAが1万を超え、お気に入り数も150超えたんですよ。
日間ランキングも10位に入っていました!(10月26日午後9時)
これらすべて読者のみなさんのお陰です。本当に感謝しかありません。

記念と言うには軽いですが、今週は明日と明後日も投稿しますのでお楽しみに!

では、次話までまったり待ってあげてください。
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