月明かりに照らされて   作:小麦 こな

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第20話

沙綾ちゃんと公園で話した日から二日が経った。あの後、帰り道に香澄ちゃんと遭遇して「さーやと拓斗さんがデートしてるっ!」なんて大声で言うものだから大変だった。

 

今日は、五バンドが集まる日。ガールズバンドパーティの核が出来上がると言っても過言ではないと思う。今日の出来次第でイベントの出来が左右する。

ただ謎なのはRoselia。前情報が無かったのにいきなり連絡が来たから正直焦った。もしかしたら他のバンドの人が教えてくれたのかもしれない。例えば姉妹間とかで。無いか。

 

五バンド集会は午後六時からファミレスで行うことになっている。それまで少し休憩しよう。またこれから忙しくなりそうな気がするから。

 

 

 

六時。みんな時間どおりに集まってくれたのでファミレスの中に入っていく。制服を着た子もいるから何だか周りの目が痛い。

Afterglowからは上原さん。Pastel*Palettesから丸山さん。ハロー、ハッピーワールド!から奥沢さん。Roseliaは湊さん。それとポピパは五人来ている。

 

……ハロー、ハッピーワールド!にあんな子いたっけ。奥沢さんと言うらしいが見覚えが無い。クマは凄く印象に残っているけれど。

 

取りあえずドリンクバーとポテト大盛りを注文する。時間帯もそうだけれど、早く終われば自由に食事してもらおうとは思っている。

 

「みなさん、この度はお集まりいただきありがとうございます。今回のイベント、ガールズバンドパーティを担当する結城拓斗と申します」

 

「まずはガールズバンドパーティの詳細をお伝えします」

 

日時、開催場所、どのような目的かを伝える。

十一月二十四日、CiRCLEで本気で音楽をしたい人達が集まり、尚且つパーティのようにみんなで楽しめるようなイベントを目指す。参加資格はプロアマ問わず、やる気があれば参加可能である。

 

「……という感じだけど、何か質問があったら遠慮無く聞いてください」

 

表情を見る限り、かなり感触は良い。ただ、一人だけ浮かない顔をしている。やはり彼女たちのバンドはこの条件で納得しないだろうとは思っていた。

 

「ひとつ、いいかしら」

 

そのバンド、Roseliaの代表者である湊友希那さんが声をあげる。

 

「どうぞ、湊さん」

「参加資格はやる気があれば良いと言う事はオーディションを行わないのかしら」

「そう言う事で間違っていませんよ」

 

湊さんの言う事はとても分かる。プロは実力と人気の世界。やる気があっても生きていけない。Roseliaは音楽の頂点を目指していたはず。

 

「そう言う遊びのようなイベントなら、断らせてもらうわ」

「湊さん」

 

確かに君たちRoseliaは実力はある。技術ははっきり言ってプロで活躍しているバンドより上だと思う。だけれど、本気でプロを目指すのならば……。

 

「確かにRoseliaって演奏技術は高いね。だけど、君たちには足りないものもたくさんある」

「それは何かしら」

「それはイベントに参加して自分の力で見つけて欲しい。君たちに足りないものがきっと見つかるライブイベントになる。それと」

 

俺は湊さんを強く見る。ポピパのみんなはどうしてか驚いているように感じる。

 

「俺は本気でこのイベントを企画している。遊びなんかじゃないし、それは出演するバンドにも失礼じゃないかな」

 

 

 

こうして集会が終わって、今はポピパのみんなとご飯を食べている。

あの後、Roselia以外は参加をしてくれる事になった。湊さんは「少し考えさせてもらうわ」と言って帰っていった。でも、あの顔つきは前向きに考えてくれている感じがした。

 

「拓斗さんってあんなに真面目になるんだねー。知らなかった」

「うん。敬語、似合わなかった」

 

どうして俺は香澄ちゃんとおたえちゃんにボロクソ言われているのだろうか。有咲ちゃんも頷いているし、沙綾ちゃんも苦笑いだし。俺の周りには敵しかいないのかもしれない。

りみちゃんは……幸せそうにチョコレートパフェを食べている。

 

伝票を見ているとげっそりするから一番遠い場所に置いた。

 

確かに自分らしく無いとは思う。あんなに真面目になって人と話すことなんて無かった。けれど、何故かまりなさんやオーナーも貶されたように感じてしまったから強く言ってしまったところもあった。今度謝ろう。

 

「拓斗さんもやるねぇ~。さっ」

「香澄、サラダが欲しいのか!」

 

何だかポピパのみんなは楽しそう。有咲ちゃんなんて香澄ちゃんの口に大量のサラダをぶち込んでいる。さすがに俺も笑ってしまった。

 

「もごもご……有咲ぁ、ひどいよ~」

「お前、それは内緒だろ?」

「あ、そっか」

 

何が内緒なのか分からないけれど、香澄ちゃんは「てへへ」なんて言ってるし多分大したことじゃないだろう。みんなにやにやしているのも気のせいだ。

 

「♪~」

「あ、電話だ。ちょっと失礼するね」

 

俺の携帯が呼んでいるから、速足で店の外に出る。

 

「結城さんの携帯で間違いないかしら」

「うん合ってるよ。……決めてくれた?湊さん」

 

電話の相手は湊さん。正直あれから二時間ぐらいしか経ってないけれど、答えは決まったようだ。

 

「ガールズバンドパーティに参加させていただくわ」

「大歓迎だよ、ありがとう。それときつく言ってごめんね」

「結構よ。本当に足りないものが見つかるなら」

「きっと、見つかるよ。俺が保証する」

 

 

 

やっと出演者がそろった。これからが本番だ。

 

秋の冷たい空気に触れながら、大きく伸びをする。

そして半分ぐらいの月を見て誓う。

 

 

 

 

みんなを、誰かが見つけてくれるようなイベントにしよう。

 

 




次話は10月30日(火)の22:00に投稿予定です。
新たにお気に入りにしてくださったみなさん、ありがとうございます!

みなさんいきなりなんですけど、小麦こながツイッターを本日19時頃開設しました!
知らなかったでしょ?(笑)
ユーザー情報(左上の作者名をクリック)に載せておきましたので、みなさんぜひフォローお願いします! ヘッダー大募集してます。
小説の情報はもちろんのこと、読者のみなさんとガルパで部屋作ってライブもしたいなって思っています。

ちなみに私、情報難民でツイッターでアカウントを作ったのが大学生にもなって初めてだったりしますのでツイッター慣れてませんがよろしくお願いします。

では、次話までまったり待ってあげてください。

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