月明かりに照らされて   作:小麦 こな

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第21話

 

「ちょっとこれはやばいかもしれない」

 

自室。真夜中の十二時に俺はそうつぶやく。手に持っているのは紙切れ。家のプリンターは不満がたまっている女子大生の愚痴のようにその紙切れを絶えず吐き出している。

 

プリンターの吐き出す愚痴を無視して、俺は出てきた紙を持ち上げる。多分、関西の女子大生ならこう言うのだろう。

 

「めっちゃ最高やん」

 

 

 

ガールズバンドパーティの出演者が決まって一週間。十月に入ってもうすぐ日数が二ケタになりそうである。そんな日に俺は駅前に出かけている。ここなら人がたくさんいると踏んだ。

 

出演バンドの人達は真面目に練習を積んでくれている。香澄ちゃんから聞いた話だと合同練習も行ってくれているみたいだ。技術の交換やアドバイスももらえるし、かなり良い感じである。後は俺がしっかりする番だ。

 

「十一月にCiRCLEでライブイベントを行います。よろしくお願いしまーす!」

 

普通ライブの告知は各バンドごとでやるのが当たり前だが、今回はそう言う事はしない。今回それをしてしまうと実力派であるRoseliaや既にデビューしているPastel*Palettesなど知名度が高いバンドにお客さんが集中したり、目当てのバンドだけ見て帰ってしまうお客さんも出てくる恐れがある。それだとガールズバンドパーティの開催意図から外れてしまう。

 

また、CiRCLEの知名度も決して高いという訳では無い。せっかく出演者も確定したのに「そんなイベントあるの知らなかった」なんて言われてしまえば本末転倒である。

なのでこうして俺は出来栄えのいい(自称)チラシを配っているのだけれど。

 

 

「全然取ってくれない……」

 

さっきから配っているけれど、取ってくれたのはせいぜい五枚と言ったところか。けれど、ここであきらめるわけにはいかない。

 

「ライブイベントを開催します!興味があったらどうぞ!」

 

必死に声をかける。だけれど、結果は変わらない。

 

いつもと同じだ。最初は上手くいくけれど、段々雲行きが悪くなって失敗する。今回は成功させるって決めたのに、何をやっているんだ。

 

もう、今日は諦めようと思った。

 

「♪~」

 

電話?誰だろう。俺は携帯を耳にする。だけれど、声が聞こえるのは後ろの方だった。

 

「てへへ。引っかかったーっ!」

後ろに携帯電話を持った香澄ちゃんとポピパのみんながいた。

 

 

「香澄ちゃんか……今は遊んでるんじゃなくて、チラシを配ってるんだ」

 

あきれた感じで返事をするとポピパのみんなが同じような表情で俺を見ている。

 

「拓斗さんっ!手伝いますよ」

「え?でもさ」

「みんなでやった方が大きな成果になりますから!」

 

そう言って香澄ちゃんたちは持っていたチラシを半分ぐらい持って行って周りを歩いている人に渡し始めた。

 

そっか。

また同じ失敗をしてしまっていたんだ。また自分一人で考えて行動してたんだ。俺はまりなさんを傷つけてしまった時から何も変わっていなかった。けれど、今だから間違いに気づける。今だから他人の事を考えて行動できる。

 

もう、間違えない。

今日から、変わるんだ。

 

 

 

香澄ちゃんたちが来てくれてから、あっという間にチラシが無くなった。それはもちろん、配る人数が増えたから無くなるスピードが速かった訳では無い。その証拠に俺の持っていたチラシも無くなったのだから。

 

「ありがとう、みんな。ところでみんなは駅前で何をしてたの?」

「拓斗さんを探していましたっ!」

「はい?」

 

香澄ちゃんは意気揚々と答えてくれたけれど、理由がぶっ飛んでいる。だけど、頼りにされているのかもしれないと思うと何だか妙に嬉しい。

 

「教えてください!拓斗さんっ!」

 

 

 

 

香澄ちゃんたちと駅前にあるカフェにお邪魔している。教えてくださいって急に言われてかなり焦った。何を?って思うし、思春期男子なら勘違いしてしまいそうなセリフだし。有咲ちゃんが「抽象的すぎてわかんねーだろ!」って言ってたけれど、本当にそうだ。

 

「それで、何かあったのかな」

 

みんなに聞く。ポピパのみんなが困っているなら助けてあげたいし、相談にも乗ってあげたい。パフェをおいしそうに食べる香澄ちゃんは何だか微笑ましい。

 

「それがですね……」

 

代わりに沙綾ちゃんが伝えてくれた。

合同練習でバンド同士上手くいかない時が多々あるらしい。本格派、実力派バンドにアイドルバンド、王道系のバンドもあればサーカスのようなバンドもある。要は方向性がバラバラだからすれ違いも起こる。

 

なるほど、俺の狙いが少し裏目に出てしまったようだ。

 

「それに、パーティって感じがしなくて」

 

珍しく香澄ちゃんもしょんぼりしている。彼女の猫耳も心なしか垂れているように思える。

 

「香澄ちゃんはどんな感じがパーティっぽい?」

「にぎやかで色とりどりで、みんなで楽しくって感じっ!」

 

にぎやかで色とりどりはステージの飾りつけで何とかなりそうだけれど、他にも何か方法があるかもしれない。それに一バンドずつ演奏していたら今までのイベントと変わりない。せっかくのガールズバンドパーティって名前なのに。

 

 

……。もしかしたら、この問題を解決できるかもしれない。

そして上手くいけば、他のライブハウスでも出来ない画期的なライブイベントが出来るかもしれない。

 

 

「みんな、三日後の放課後って予定空いてる?」

 

 

 





次話は11月1日(木)の22:00に投稿予定です。
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昨日見たんですけど、この小説の評価バーがMaxになりました!これも読者のみなさんのお陰です。みなさん、ありがとうございます!これからもよろしくね。

それで記念としてTwitterにて一週間ずつ情報公開します。
①「月明かりに照らされて」の未公開情報(本日23時)
②次回作のタイトル発表!
③次回作のヒロイン、その他情報
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長くなりましたが
では、次話までまったり待ってあげてください。

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