月明かりに照らされて   作:小麦 こな

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Afterstory2

 

「え!?う、その……」

 

顔を真っ赤にしたまりなさんがちらちらと俺の方を見る。そのかわいらしい行動にポピパのみんなは興味津々になっている。おたえちゃんは何を考えているか分からないような表情をしているけれど。

 

「俺とまりなさんは付き合ってるよ。恋人同士」

 

そういうと「きゃー!」と黄色い歓声があがる。まりなさんは相変わらずな顔色で軽くみんなに会釈をしていた。何だか親に結婚相手を紹介しているみたいだ。

これ以上はまりなさんがかわいそうだし、本題に入る。

 

「さて、本題に入るよ。ここにポピパのみんなを呼んだのには理由があるんだ」

 

ポピパのみんなの雰囲気が真面目なものに変わる。

 

「今度全国各地のライブハウスが集まって開催されるイベントがあるんだ。各ライブハウスがブースを出して物販したり、ライブハウスの代表がライブしたりするイベント」

「あ、私そのイベント知ってるかも。確か、ロッキンスターフェスとかって言う……」

 

どうやらおたえちゃんは知っているようだ。結構おたえちゃんってこういう音楽の知識が豊富なところがある。それにイベントを知っているなら、話が早いな。

 

「実は、俺とまりなさんで決めたんだけど、君たちPoppin’Partyに手伝ってもらいたいと思っているんだ」

「分かりました!もちろんやらせてもらいます!ね?いいよね、みんな!?」

 

香澄ちゃんはすぐに参加を表明してくれた。

ただ、みんなは違う風に解釈しているみたいだ。沙綾ちゃんも「お店の手伝いでそういうのは慣れてる」と言っている。残念だけど、俺たちはポピパのみんなに物販の手伝いを依頼する為に呼んだわけでは無い。

 

俺とまりなさんは目を合わせる。そしてまりなさんが口を開く。俺たちがポピパを呼んだ理由。それは、

 

「ポピパのみんなには、CiRCLEの代表バンドとして、イベントのステージでライブをしてもらいたいと思ってるの」

「わ、私たちが……CiRCLEの代表バンドとしてっ!?あ、あの、私たちよりたくさん上手なバンドもありますよね?私たちで良いんですか?」

 

意外だった。てっきり香澄ちゃんの事だから「やりますっ!」って言うと思っていた。他のみんなも責任を感じているのか、重たい空気が流れる。おたえちゃんは何やらみんなと違った雰囲気を出している。

 

多分だけれど、おたえちゃんはイベントに出たいと思っている。それが分かったならどう行動するか。おたえちゃんの夢を叶えられるように手伝う事だ。

そんな感情、以前の俺には無かったけれど、今なら気づけるし、行動できる。

 

「もちろんだよ。俺とまりなさんが決めたんだから、胸を張ってくれたら良いよ。君たちは良いバンドなんだから」

「あ、ありがとうございます!拓斗さん、まりなさんっ!」

 

俺は最後にちらっとおたえちゃんの方を見る。大丈夫。君なら叶えられるよ。

 

「やります!私、あそこでライブやりたい!」

 

 

 

 

 

 

夜の九時。機材チェックを終えた俺は、フロア清掃に勤しむ。

あの後、ロッキンスターフェスの詳細をポピパのみんなに伝えた。そしてまりなさんの「新曲をやってみたらどうかな?」と言う提案に賛成らしく、彼女たちは有咲ちゃんの家に向かっていった。

 

今日はポピパのみんなの参加が正式に決まった。これから忙しくなりそうだ。

 

「ね、拓斗君」

「はい?」

 

大きく伸びをしていると、背後からまりなさんが声をかけてきた。振り向くと、にこにこ顔のまりなさんが立っている。

 

「ブースとか物販の事を拓斗君の家で決めない?飲みながら」

 

 

 

「拓斗君の家って久しぶり~。おじゃましま~す」

 

まりなさんは慣れた雰囲気で部屋に入っていく。今日は打ち上げでは無いからアルコール類は控えめ……のはずなのだけれど、俺が持っているレジ袋はちぎれてしまいそうだ。

そのままアルコール類を数本だけ手に持ち、残りは冷蔵庫に入れる。ついでに天然水も。

 

 

「拓斗君。何か思いついた事があったらどんどん言ってね!」

「あ、じゃあ、いいですか?」

 

ビールを飲みながら聞いてくる。

思いついた事ならある。イベント関係では無いけれど。まぁ仕事ではないしこれくらいは聞きたいし、聞いておきたい。

 

「まりなさんって恋愛関係に関しては初心なんですね」

「ゲホッゲホッ!」

 

あ、まりなさんがむせた。顔を真っ赤にさせながら涙目でこちらをにらんでくる。もしかしたらまりなさんって精神年齢が中学生で止まっているのかもしれない。

 

「ひどいよ拓斗君!」

「変な事聞いてすみませんでした。イベントに話を戻しましょう」

 

このままアルコールを大量摂取されるとまた徹夜になってしまうし明日も仕事なのだからそのような事は避けたい。まりなさんは「もう……」と言いながら姿勢を正す。

 

「でも拓斗君は初めての恋人だし、大事な人なんだから照れちゃうよ……」

 

何だか俺の顔がやけに熱くなってくる。涙目で尚且つ上目遣いなんて反則だろう。

にやにや顔のまりなさんに「顔が真っ赤だよ~」って言われ、お酒を飲んで誤魔化す。

 

 

どうやら仲良く二人とも、恋愛に関しては初心らしい。

 

 




@komugikonana

次話は11月16日(金)の22:00に投稿予定です。
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明日の22時にTwitterで次回作「僕と、君と、歩く道」の本文の一部を公開しようと思っていますので気になる方はぜひチェックしてくださいね。
作者ページからすぐ飛べますよ!

では、次話までまったり待ってあげてください。


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