月明かりに照らされて   作:小麦 こな

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Afterstory5

 

「みんな今日は一日よろしくね!」

 

ロッキンスターフェス当日、俺たちCiRCLEのブース前でまりなさんがみんなに言う。みんなとは俺と、ポピパのメンバーの事。

 

「あ、あの、まりなさん……。こ、これがイベント会場……ですか!?」

「大きくてびっくりした?」

 

香澄ちゃんは予想以上の会場の大きさに驚いているらしい。確かに大きいけれど、こんな大きな会場で演奏が出来るポピパは素直に羨ましい。

 

「ねぇ……チラシはどうしよっか?せっかくみんなで作ったけど……」

「確かに……ここだとちょっと手作り感が強すぎるかもね……」

 

沙綾ちゃんとりみちゃんの会話を聞くと、どうやらポピパのみんなはチラシを作ってきたみたいだ。流石に準備が良い。俺の出番はなさそうだな。

 

「え、何々?チラシ作ったの!?チラシなら……」

「みんな準備が良いね。そのチラシで宣伝しちゃって!」

 

まりなさんは俺がチラシを作った事を言いそうだったので遮った。俺はまりなさんの目を見る。ここは、彼女たちに任せましょう。

 

「でも、この会場だと雰囲気とは合わないですよね?」

「チラシ、ちらっと見たけどすごく良かったしポピパらしいよ。良いチラシだよ」

 

沙綾ちゃんはあまり自信ないみたいだけれど、やっぱり本人たちにしか出せない味があっていいと思う。俺の作ったチラシはお蔵入りにしよう。

 

「本当ですか!?」

「うん。嘘は言わないよ。自信もって配っておいでよ」

 

そう言って香澄ちゃんたちはたくさん人がいそうなところへ走っていった。ポピパの元気を少しは分けて欲しいなって思う。

 

「拓斗君。良かったの?」

「はい。あのチラシの方がポピパらしいですよ」

 

まりなさんは「そっか」と言って俺の作ったチラシが入っている段ボールをブースの奥にしまった。俺たちは物販準備に取り掛かる。

 

「拓斗君って入ってきてから何だか変わったね。かっこいいよ」

「照れますからやめてくださいよ」

「でも!お説教が一つあります!」

なぜだろう。怒ってるまりなさんもかわいい。

「ポピパのみんなにTシャツ渡すの忘れてるよ!」

「あ……」

 

とても重要な事を忘れていた。

 

 

 

俺はポピパ全員分のTシャツを持って彼女たちを探し回り、やっと見つけることが出来た。手に持っているチラシが無いから全て配り終えたらしい。

 

「みんなお疲れさま」

「あ、拓斗さんっ!」

「サボり?」

 

香澄ちゃんは元気があってよろしい。だけどおたえちゃん、サボりなんかじゃないよ!きっとおたえちゃんは俺のことが嫌いなのかもしれない。

 

「みんなに見せたいものがあって」

 

俺はポピパのロゴが入ったTシャツを見せる。

 

「このポピパTシャツ見てみて」

「わっ!ポピパのロゴが入ってるよ!ほら、香澄!」

「拓斗さん!私、これ欲しいです!」

「私も欲しい!」

 

香澄ちゃんとおたえちゃんがすごく欲しがっている。自分たちのバンドのロゴ入りは欲しくなっちゃう気持ちは分かる。でもこれはみんなにあげるものだからね。

 

「これ、みんなの分だから。貰ってよ」

「ま、マジですかっ!?やったー!」

 

まさかの有咲ちゃんが一番喜んでいた。もっと飛び跳ねて喜んでも良いよ?そして胸がぷるんっと……やめよう。俺にはまりなさんがいるんだっ!

 

 

 

ポピパのみんなにTシャツを届け終えた後、俺はCiRCLEのブースまで戻る。これだけの人数がいるからきっとまりなさんも大変なんじゃないかな。

戻っている最中にあったごみ箱に目が移る。ごみ箱が中身を「見ないで」って言っているように感じた。それを無視して中を覗いてみると、ポピパのチラシが捨ててあった。

 

「仕方ない事だけど……」

 

ブースやイベント、特にスタジオで働いている人間からすれば良くある光景。だけれどポピパのチラシは手作りだし、捨てられているのを見たら香澄ちゃんたちが悲しむかもしれない。そう思ってポピパのチラシを出来るだけ回収した。

 

ごみ箱は「ごめんね」って謝っているような雰囲気を出していた。

 

 

俺はごみ箱から拾ったチラシを空の段ボールに入れて奥に置いた。その後まりなさんと二人で物販販売を行った。売り上げは決して良いという訳では無いけれど、ポピパのライブ後に期待したいところだ。

 

午前の部終了のアナウンスが響く。

 

「まりなさん、落ち着いたらご飯食べませんか?」

「そうしよっか!……拓斗君の奢り?」

「自分の分は払ってくださいね」

 

何だか学生のような掛け合いににやっとした。まりなさんは「けちー」って言っていたけれど、仕方ない。……今回だけですよ?

 

「まりなさん、拓斗さん。ただいまー」

「あ、沙綾ちゃん。おかえり」

 

ブースを午後の部に向けて整理をしていると、ポピパのみんなが帰ってきた。何だか香澄ちゃんはふてくされているような感じだ。多分すべてのブースに回れなかったのかもしれない。

 

「まりなさ~ん、拓斗さん。聞いてくださいよぉ!」

 

香澄ちゃんの話によると、チラシが他のごみ箱にも捨てられていたらしい。その話を聞いてやっぱり心がもやもやしたけれど、彼女たちは音楽でみんなを振り向かせるって聞いて安心した。

 

まりなさんは俺の方を見てウインクした。どうやら俺の作ったチラシの出番らしい。

 

「またみんなで円陣組んでみないっ!?拓斗さんも、そしてまりなさんも入ってくださいっ!」

「え?私も……いいの?」

「せっかく誘ってくれたんです。入りましょうよ!」

 

ポピパのみんなの中に俺たちも入る。まりなさんは香澄ちゃんの隣で、その隣に俺、そしておたえちゃんと並ぶ。その後はりみちゃん、沙綾ちゃん、有咲ちゃん。

円陣はガールズバンドパーティの時も組んだけれど、やっぱり少し恥ずかしい。けれど、あの時はいなかったまりなさんも円陣に入れて、やっとCiRCLEが完成したんだなって思った。

CiRCLEには円陣と言う意味もある。俺と、まりなさんと、そしてみんなと揃えれた。

 

「まりなさん、掛け声お願いします!」

「わ、私が!?」

「「「「「「お願いしまーす!」」」」」」

「もう、拓斗君まで……わかった。やってみるね?」

 

 

「Poppin’Party!思い切ってやってこいっ!気合い入れていこうっ!!」

「「「「「「「ポピパ!ピポパ!ポピパパ!ピポパー!」」」」」」」

 

 

「まりなさん、意外と掛け声ベタですね」

「もうっ!拓斗君!……恥ずかしかったけど、なんか嬉しかったな」

「俺もです。やってやるかって気持ちになります」

 

ポピパのみんなは本番に向けてステージに向かったはず。それに間に合うまでにお昼ご飯を食べないといけない。ちょっと急ぐか。

 

「まりなさん、拓斗さんっ!CiRCLEのブースにお客さんだってっ!」

 

あれ?香澄ちゃんたちが戻ってきている。それに今は休憩中だから物販はしていないのだけれど。

 

「すみません、今休憩中……」

 

香澄ちゃんたちが連れてきた女性を見て一瞬、息が止まった。

 

 

 

 

 

「やっほ。拓斗」

 

 




@komugikonana

次話は11月22日(木)の22:00に投稿予定です。

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ついに残すところ、あと2話となりましたね。最後までお付き合いよろしくお願いします。

では、次話までまったり待ってあげてください。
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