最後らへんが適当ですけど。(オイ
では5話をどうぞ。
秋桜祭。
文化祭とは違い、共同作業による連帯感や、共通の想い出を作り上げる事で、 生徒たちが懐く新生活の戸惑いや不安を解消することを目的に企画されている行事。
それが今日、私立リディアン音楽院で行われようとしていた。そこに眼鏡を掛けた少年と少女が合わせて三人。
「おお!思ってたよりも結構人がいるデスね〜!」
「…………。」
「あ!あの屋台の焼きそば美味しそうデス!」
「………………。」
「わ、何デスかあの仮装………って奏空?大丈夫デスか?」
「え、あ、うん。」
「本当に大丈夫?やっぱり戻った方がいいんじゃない?」
「いや、折角与えられた任務だ。俺は戦えないけどこの任務は何としても達成せねば………。」
「奏空………。」
しかしさっきから目を離すとどことなく上の空気味になっていたりする。
では、何故彼は今回の任務に入っているかと言うとそれは数時間遡る。
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「アジトを抑えられ、ネフィリムを成長させる餌『聖遺物の欠片』もまた、2課の手に落ちてしまったのは事実ですが。
本国の研究機関より持ち出した数も残り僅か……。遠からず補給しなければなりませんでした。」
「わかっているのなら、対策も考えているということ?」
「対策など…そんな大げさな事は考えてませんよ。聖遺物の欠片なんて、今時その辺にごろごろ転がっていますからね。」
ウェルは調と切歌の首に掛けているものに視線を映す。
「まさかこのペンダントを食べさせるの!?」
「とんでもない。こちらの貴重な戦力をみすみす失うわけにはいけません。我々以外にも、欠片を持つ者はいるじゃないですか?すぐ傍に……。」
「だったら私が奴のギアを…………。「それは駄目だっ。」っ、奏空?」
「マリアも知ってるだろう。力を使うたびにフィーネの魂が強く目覚めてしまう。それはマリアがマリアじゃなくなるの同じ。俺は
「あんなにもの傷を負ってまだ戦うのですか?流石にこれ以上無茶をされては計画に支障が出ます。」
そう。戦闘の後、奏空が目を覚ましたのは実に2日後だった。凛音から受けた傷が大きく開いてしまい、治療にかなり時間が掛かった模様。
普通の動きは出来るが、戦闘は当然出来ない。完治するのに一週間掛かるらしい。
「それなのに今回の任務に参加するんですか?」
「それは………。」
「そしたら私がついて行くデス!」
「切歌?」
「私も。マリアを護るのは奏空だけじゃない。私達もマリアがマリアのままでいて欲しい。だから………。」
「調………。」
「……………いいでしょう。ただし奏空、貴方は絶対に戦闘は避けること。戦闘は二人に任せて貴方は早急に退去した下さい。それで宜しいですね?」
「っ………はい………。」
奏空は静かに拳を握りしめた。切歌も調も大切な家族。なのに二人に任せっきりとは、情けなくてしょうがなかった。
「ごめんな、任せっきりで……。俺はお荷物になると思うけど。」
「大丈夫デェス!普段から美味しいものを食べさせているのでこんなの朝飯前デス!」
「だから奏空、安心して任務を務めて。」
「…………すまん。」
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と、言った感じで奏空はここにいるのである。作戦の参加の代わりに戦えないが、計画を進められることは変わりない。
しかし奏空は一つ不安なことがあった。それはリディアンに
だから奏空はここに来るまで浮かない顔をしていたのである。
だがもう引けない。ここは既に敵の陣地。作戦は始まっているのだ。いるのだが。
「お〜!このたこ焼きも中々………」モグモグ
「…………ねぇ。目的忘れてない?それともこれも作戦?」
「ムグムグ……ゴックン!これも作戦デスよ奏空!人間誰しも美味しいものに引き寄せられるものデス。学院内の『うまいもんMAP』を完成させることが捜査対象の絞り込みには有効なのデス!」
「お、おお正論……なのか?」
「切ちゃん。」
「ど、どうしたデスか調?そんな膨らまして……。」
「私達の目的は学祭を満喫することじゃないでしょ?」
「し、心配ないデス!この身に課せられた使命は1秒だって忘れてないデス。」
「とか言いながらタコ焼きムシャムシャ食べてたのは何だったの?」
「奏空〜!お口チャックデス!」
「ムゴッ!?」
そんなやりとりをしていると、三人の目に今回の標的が目に映り込んだ。
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またここにも浮かない顔をした者がいた。凛音はこれまでのことを振り返る。
ルナアタックから数ヶ月後、ノイズを召喚するソロモンの杖が盗まれて翼とマリアのライブでノイズが現れ、マリアは武装組織フィーネでありその中には生き別れた弟の姿が。
そして2回目の戦いで説得しようと試みたが向こうは拒絶し、その上傷を負わせてしまった。
全ては自分の所為であんな風になってしまいもう彼は自分の元には戻らないだろう。
どうやったら彼は心を開くのだろう。どうやったら彼は考えを改めてくれるのだろう。
「あの……凛音さん………。」
一人抱え込んでいたところを、誰かに声を掛けられた。振り返ると不安そうにこちらを見ていた響の未来の姿が目に映った。
「………ん、ああ、どうしたの響ちゃん。」
「そろそろステージの時間ですので一緒にどうかと思いましたが………すみませんお邪魔でしたか?」
「いやいや、大丈夫だよ。じゃあ一緒に行こうか。」
「…………奏空くんを先程見かけました。」
「………え?」
「彼の他にもマリアさん以外の装者もいました。三人はステージに向かおうとしていましたけど………。」
「……そっか、奏空がね…………。」
次第に声のトーンが低くなるのがわかっていった。
「凛音さん?」
「今あの子が来ても私にはどうすればいいのかわからない。私の生半可な気持ちの所為で傷まで負わせちゃって………。どんな顔であの子に会ったらいいのやら………。」
「…………それでいいんですか?」
「え?」
口を開いたのは未来だった。彼女は凛音を真っ直ぐ見据えてはっきりと言う。
「そんな簡単に奏空くんのことを諦めていいんですかっ!」
「ッ…………。」
「一度突き離されたからって何なんですか!駄目だったらまた挑戦して、また駄目だったらさらに挑戦するって言ってくれたのは凛音さんですよ!」
そう。響が未来に装者ということを黙っていたことがバレてしまい二人の関係が崩れそうになった時に凛音が未来に言ったのである。
そのお陰で響と打ち明けることが出来たのである。未来の言葉を受けて凛音は拳を握りしめる。
「…………私だってやだよ………。やっと奏空に会えたっていうのに向こうは私を遠のいて更に離れていく……。どうやったら彼が心を開いてくれるのか分からないよ!」
「大丈夫ですよ凛音さん………。」
「え…………。」
涙を流す凛音に響は耳元でそっと囁いた。そして見開いてがすぐに何かを覚悟をしたかのような表情になった。
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所変わってここはリディアンのステージホール。そこではのど自慢のようなことが行われて、優勝すると生徒会より願いが叶うとか。
奏空達は翼の後をつけてここまで来たのだ。そこで生徒による歌唱を聴いていたのだが………。
「ねぇ調、電光刑事バンって何?」
「多分アニメの一種。それもかなり古いタイプの。」
「成る程。通りで歌詞が昭和臭かったわけだ。いやぁ世の中にはああいうのが好きな子がいるんだなぁ。」
「言ってることがおじさん臭いデェス………。」
そんなやりとりをしていると次は意外な人物が登場した。ついこの前戦った二課の装者の雪音クリスだった。戦闘では少々荒い言葉使いで気が強い少女かと思ったが、今彼女は頰を赤く染めて恥じらうとは思ってなかった。
と、彼女を見て目的を思い出す。今回は二課の聖遺物を奪取すること。さて、どのタイミングで行動に出ようかと思考する。こんな一般人が大勢いる前で目立った動きは出来ない。どうしたものかと考えていると曲が始まる。
挿入歌『教室モノクローム』
それはとても美しく綺麗な声だった。それに何故だろう、歌詞が心に突き刺さる。
奏空は目を覚まさせるように顔を横にぶんぶん振る。流されてはいけない。彼女は敵であり、作戦の標的である。それなのに歌詞の一つ一つが心に突き刺して来てしょうがない。
奏空は耐えきれず後半は耳を塞いで聴かないようにした。隣を見ると調と切歌は見惚れていた。
歌が終わったのか観客に歓声が上がり会場は一気に盛り上がる。
『すばらしい歌声!柔らかで優しい一曲でした!!みなさん!雪音クリスさんに、今一度盛大な拍手をお願いします!!』
そして拍手が送られる。
流されてはいけない。今回は彼女達のギアを奪う為にここに来たんだ。歌を聴く為じゃない。
奏空が頭を抱えていると観客は再びわっと盛り上がる。どうしたと顔を上げるとそこに奴がいた。
今回の任務の標的であり、彼が今一番会いたくない人物であった。風鳴凛音だ。
遠くからなのに目が合ってしまった。そして彼女はこちらに向けて微笑んだ気がした。奏空は急いで目を逸らす。
やがて会場は静まり、曲が始まる。
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凛音はステージに上がる途中、響に言われたことを思い出す。
『大丈夫ですよ凛音さん。奏空くんが心を開いてくれる方法があります。それは…………。』
『それは?』
『歌ですよ。この世界には歌があるんですよ。奏空くんだって人です。感動だってするはずです。だから…………。』
そう。これは彼に捧げる歌。彼に聞いて欲しい歌。だから奏空、聞いて欲しい。
遠くに眼鏡をかけた彼が目に映り、微笑む。
この歌をどうか耳に入れて欲しい。
挿入歌『君の神様になりたい』
この歌は『命』『家族』をテーマにした曲らしい。その自分の作った曲で誰かが救われればいいと思って、「僕の曲を聞いてくれた人が曲に感化されて命を大事にしたらいいのに」そう言葉を発信した。でも本当はそんなの綺麗事で、『命』『家族』をテーマにした曲に対する共感が欲しかっただけ。自己顕示欲や認証欲求にまみれた存在が、作曲者本人だったという。
苦しいから歌にした。
悲しいから歌にした。
生きたいから歌にした。
「誰かに自分の歌を通して命(愛)を大事にしてもらいたい」と望んでいる一方で、結局自分が作り出した曲は自分のために歌にしたものでしかなかった。それはただのエゴ(自分の利益)にまみれた歌だった。そんな自分のために歌った歌で、誰かが救えるなんてことはない。でも「誰かに自分の歌を通して命(愛)を大事にしてもらいたい」という気持ちも本当だった。
『君』は色々な困難や挫折を繰り返してきて、ただならぬ傷を負っている。自分が歌って叫んで、抱きしめるように優しい言葉を歌っても、『君』の今ある現実は変わらない。
けれど現実はそんな歌で『君』を救えない。だから自分は無力だ。
歌を聴いた傷ついた「誰か」は、「あなたに救われました」「生きたいと思った」と言う。『グジュグジュ』から『かさぶた』にまで心の傷が癒えたんだ。
でもそれは、決して自分のおかげではない。自分の歌はエゴにまみれ、影響力を持たない。変わった(心の傷から立ち直れた)のは歌のせいではない。他ならぬ自分自身の努力・頑張りのおかげである。
時が経っても自分は素敵な大人にはなれずに、自分を満足させるためだけの歌を歌っている。自分自身で、傷ついた誰かを救いたかった。
エゴまみれの自分の歌なんて実際自分自身も好きになれなかった。欲しいのは自分の作った歌に対する共感だけで、やっぱりそれじゃ人は救えない。
『歌を作り残すことで生きた証が欲しい』とか、『曲を称えて欲しい』という気持ちはそんなになくて、ただ、共感してもらいたい気持ちと、『誰かを救える歌』と願っている。
でもそれは無理なことで。
自分のエゴで作った曲で人を救うことはできないし、何よりも、自分の歌が例えなかったとしても、傷ついた人は自分の力ではいあがって足掻きながら、幸せになっていくことができるから。
自分が歌った曲などに頼らなくても、君は君一人で立派に強くて、立ち直ることも前を向いて歩むことだってできる。
でも、もしも一人で立ち上がれない時は、自分の非力な歌を聴いてほしい。君が抱えてきた、痛み辛さ、苦しさを自分が歌うから。
『神様にはなれなかった。』は「(自分の曲で)あなたを救うことはできなかった」という意味。最後の『君を救いたいけど、救いたいけど。』とは「あなたを救いたいけど、それでもやっぱり自分の曲であなたを救うことはできない」という願いが込められていた。
全て歌い終わると会場は歓声に包まれる。今まで人に歌を捧げたことなんて一度も無かった。彼の為に歌った。彼の為だけにこの歌を捧げた。
『風鳴凛音さんありがとうございました!さぁ次なる挑戦者はいますか?飛び入りも大歓迎ですよッ!』
司会者が進める中ある者が席から立ち上がった。
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「飛び入り大歓迎!?そんなの即参加に決まって『ガタッ』デデデスッ!?」
「えっ!?奏空!?」
調と切歌が呼んでくるがその時聞こえてなかった。ただステージにゆっくりと向かっていた。ざわつく会場。スポットライトが照らしてくる。
とうとうステージの上に着いた。ステージには困惑気味の姉。こちらと言ったら恐ろしいほど無表情だった。
「あッ。」
握っていたマイクをひったくると観客の前に立つ。そして歌う前に彼女に向いて一言だけ告げた。
『そこで聞いてろ。』
「えっ…………。」
言った瞬間会場は黄色い声援が上がる。そんなつもりで言ったわけじゃないが。
そして曲が始まる。
挿入歌『命に嫌われている』
「命を大切にしろ」「生きてればいい事がある」そんな歌は世の中に溢れていて
それを聴いた人は実際に元気をもらうかもしれないし、世の中一般に見たときにそれが正しい意見かもしれない。
でもその考え方の本音は「価値観の押し付け」で、
自分はいなくなっても自分は悲しくないけれど、自分の周りにいる人がいなくなってしまうのは、本当に悲しい事だからいなくなって欲しくない。
結局自分がよければ他は全て"他人事"。
「自分が誰かを嫌うことで誰かを傷つけているかもしれない」そんな事実があるかもしれないことは、自分自身のファッション(遊び)でしかないから気をつけない。
そんなことをしているのに「平和に生きよう」なんて言っているのはおかしいんじゃないか?
悲惨な事件などに影響された「命の歌」を歌った誰かの歌をまた誰かが聴いて感化されて行動を起こす。
そして少年は凶器を持って走る。
「命を大切にする」ではなく「命を奪う」という考えに走る。
もしかしたら誰かを傷つけてしまうようなそんな情報も簡単にメディアは流す。それを「誰かを傷つけたい歌」と。
命を大切にしようと言っているのに誰かの命を傷つけているような人達も、簡単に命を捨てようとする人も「軽々しい」
他人にとって自分の命はどうでもいいかもしれない
だから「命に嫌われている。」
大切な人を失って、生きる意味がなくなって毎日一人で過ごしていくことに辛くなる。
どんな人にも生命にもいつか「命の終わり」が来る。
「誰にも知られず朽ちていく」というのは周りに誰もいないという意味に等しい。
将来もしかしたら周りの大切な人は先にいなくなって、自分はただ一人で誰の記憶にも残らず命を終わらすかもしれない………。
それが怖いから、不死身になってずっと生きていくSFを妄想している。
自分一人になることが一番怖くて、自分はいなくなってもいいけど、大切な人には生きていてほしい。
「自分の命に執着していないのに生きようとしている矛盾。」
そんな矛盾を抱えて生きていることに対して、自分の中でおかしいと感じていることを「怒られてしまう」と少年は思う。
そして、周りがいなくなって一人になることが怖いから、周りと関わるのを避けることにした人に対して
「ずっと一人で笑えよ。」は、
「一人でも笑っていける?」という問いかけなのかもしれない。
今ある幸せに気づけずに、環境や過去を嘆いている今をもっと幸せにするんじゃなくて、後悔ばっかりする。
そして、本当の別れ(命の終わり)を知らないのに、さよならすることばかりを恐れている。
過去を嘆いてばっかり、将来の終わりを怖がる
そんな人に、もっと今ある幸福に目を向けてほしい。
絶対に死はいずれ訪れるもので、いつも世界のどこかで誰かの命に終わりが来ています。
自分にくるのも明日かもしれないし、明後日かもしれない
本当に言いたかったのは「生きろ」ではなく「大切なあなたが生きていればいい。それだけでいい。」
人それぞれに色んな「葛藤」や「想い」があるかもしれないけれど、必死に足掻いて生きてほしい。
簡単に命を終わらせて欲しくない。
辛い時だとしても、足掻いて生きてほしい。
曲が終わる。会場は一瞬しんとしたが、次第に拍手が送られ歓声が上がる。
再び彼女の方を向くと口を開いたままポカンとしていて吹き出しそうになった。
そしてまた一言。
「仕返しだ。」
それも悪戯っぽく。やってやったと言わんばかりに。そしてステージを降りて会場を後にした。
会場の外に出てベンチに座って一息つく。
初めてだ。あんな大勢の前で歌って、感情を込めて。でも恥ずかしくなかった。
何故だろうと考えていると、目の前に飲み物が差し出された。誰だと顔を上げると。
「はい、あったかいものどうぞ。お疲れ様奏空くん。」
ガングニールの装者、立花響がそこにいた。
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逃げようとはその時考えてなかった。その後普通に話したりした。
「なんで奏空くんはあの時歌ったの?」
「…………仕返し。」
「し、仕返し?」
「そ、あんな歌聴かされて気分悪くしたからその仕返しにって。」
果たして本当だろうか。彼の歌った曲は凛音の曲の答えのような歌詞だった。まるで凛音に言っているようにも聞こえた。本当はこの少年は戦いたくないのでは?彼女に会いたいのでは?
「それに俺が歌い終わった後の顔ときたら。『意外っ』みたいな顔すんな。俺だって歌うよ……。」
「…………ねぇ、奏空くん。」
「ん?」
「もうやめない?啀み合っても戦っても何も解決しないよ。私達は言葉を交わし合える人間だから。争ったりしなくていい。話し合えば分かり合えるよ。」
前にもそんなことを言っていた気がする。でもその時自分は否定していた。そんなの無駄だ。意味がないと思っていた。だけどよくよく考えたら確かにそうかもしれない。喧嘩していても話し合って最後は仲良くなっている。一々手を上げずに解決できることだってある。話し合いというのは悪くないと思い始めた。
だけどここではいと言えばマリア達を裏切ることになる。マリア達は家族のようなものだ。家族を裏切ることなんて出来ない。ましてやマリアを護らなくてはいけない。
向こうにつけばマリア達を裏切る。マリア達につけば凛音が悲しむ。一体どうすれば?
奏空が唸っていると響が提案する。
「じゃあさ、話し合いは一旦置いていて………凛音さんに会ってみる?」
「え…………。」
「ほら、ずっと会ってないでしょ?だから会って色んな事話してみたら?凛音さんも話したい事いっぱいあるだろうし。」
話したい事。それはこっちだっていっぱいある。彼女は別にこちらにつけとは言っていない。話してみては?と言っているのだ。
話したい。彼女と一緒に話したい。料理を食べさせてあげたい。色んなことをしてあげたい。
「…………だけ。」
「え?」
「話すだけなら……良い。」
「本当!?やったぁ!じゃあ早速呼んでくるね!」
ぱたぱたと駆け出して行って見えなくなる。まるで子供みたいだ。(自分もだけど。)
するとポケットが震えた。ウェルからの通信が入ってた。ボタンを押して通信に出る。
「えっと、何でしょう?」
「奏空、貴方に新たな任務を与えます。」
「風鳴凛音を生け捕りにしろ。」
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一週間後、凛音は廃工場に来ていた。あの学祭の後響から奏空と話したいと言ってたので、行ってみたら置き手紙があった。
内容は『一週間後に廃工場で待って欲しい。』と。
側から見れば罠っぽいがその時は疑いもしなかった。奏空に会えるという気持ちでいっぱいだった。
「奏空〜?来たよ〜。どこにいるの〜?」
凛音が呼びかける。隠れているのかと思った次の瞬間背後から気配を感じた。
凛音はばっと飛び退く。流石は風鳴の名を冠する者。気配を感じるのも姉に劣らない。
「…………何もする気だったの奏空?」
気配の正体は奏空だった。右手に白い布を握りながら立っていた。
「それ、眠らせる薬品が染みてる布よね?そんなの何で話し合いに必要なの?」
彼女が問いかけても彼は俯いたまま何も喋らない。握ってた布をそこら辺に捨てる。
「…………凛音。」
「?」
「すまない……………。」
次の瞬間、シンフォギアを纏って襲いかかってきた。
挿入歌のところは実際に流して読んでみてください。奏空くんや凛音の心情がよく分かりますので。