神谷奈緒は可愛い。   作:花道

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♯3 波瑠護と神谷奈緒 ③

 

 

 

 

 

 

 翌日、7月10日、火曜日、午前7時。

 気づけば窓枠いっぱいに青空が広がっていた。

 強烈な睡魔が俺の脳に深刻にダメージを与えている。流石にやり過ぎたな、モンハン。そりゃあそうか。昨日買ってからさっきまでずっとやってたんだからな。それにしても今回のモンハン面白すぎだろ。久しぶりに徹夜なんてしたよ。

 そしてさっきまで平気だったくせに今頃になって襲ってくる夢への(ささや)きが恐ろしい。

 そう思いながらもベッドに(あお)()けで倒れこむ。

 眠すぎて学校行くになんねぇな。

 休みたい。

 なんて事を考えていたら、ドアがゴンゴンと2回ノックされた。

 

「……はい」

 

 返事をする。ガチャとドアを開けて入って来たのは制服姿の妹だった。

 

「お母さんが朝ごはんできたから早く降りてこいって」

「わかったー。すぐ行く」

「……、」

「……なんだよ」

「二度寝すんなよ。怒られるのわたしなんだからな」

 

 くそ。バレてたか。

 

「わかってるって。すぐ行くから」

「……寝るなよ」

 

 信用ないな俺。

 手を軽く振ると、ドアが閉まる音が聞こえた。

 その()、睡魔に負けて二度寝してしまった俺は妹から正拳突きと冷たい視線をプレゼントされた。

 すぐに謝ったが許してくれなかった。

 朝ごはんは食べそびれた。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

  神谷奈緒は可愛い。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

 翌日、あたしは学校終わりに、いつものように凛と加蓮の3人で遊んでいた。本当は今日()(づき)()()も来る予定だったんだけど、予定が合わなくて昨日キャンセルのLINEが来てた。2人とも最近忙しいし、しかたないか。

 そんなこんなで、今日も2人とマックに来ていた。最近は学校終わりに3人でマックに行くことが多い。食事制限はしてるとは言っても、やっぱりカロリーは気になるので、ドリンクはアイスティーにした。加蓮はいつものようにポテトとファンタメロン、凛はスプライトを頼んでいた。

 昨日、探していた人にやっと逢えた。その人にお礼を言った帰り、何気なく寄ったゲームショップでモンハンを見つけて、初めて波瑠にLINEを送った。波瑠の返事はそっけなかったけど、まぁ男のLINEなんてそんなもんだろうと勝手に納得した。あと奏のことは加蓮に上手くかわされて彼氏が本当にいるのか聞けなかった。

 アイスティーを一口飲む。なにもいれなかったら、本当にお茶みたいな味だな。

 

「……わたしさ、ずっと気になってることあったんだよねー」

 

 ポテトを摘みながら、加蓮がそんなことを呟いた。

 その言葉に凛が反応する。

 

「気になるって?」

「うん、波瑠君のことなんだけど」

 

 その言葉にわずかに反応する。

 

「波瑠君、わたし達がアイドルだってことに気づいてるのかな」

『……』

 

 凛と顔を見合わせる。

 そう言われてみれば、確かに昨日はそのことに気づいている感じはしなかったし、初めてあった時もあたしのことをアイドルとして知っている感じはなかった。自分が売れていると言えるほど自惚れているわけじゃないけど、最近はそれなりに人気も出てきたと思う。それなりにテレビにも出てるし、雑誌のモデルなんかもさせてもらえているのに、知らないってことはあんまりテレビとか見ないのかな。

 あ、加蓮が悪い顔してる。

 

「ねぇ、今度のライブに誘ってみない?」

「え、それはちょっと恥ずかしいんだけど」

「もう奈緒はまだそんなこと言ってるの?」

「だって」

 

 ノリノリな加蓮には悪いけど、知ってる人に見にこられるのは、やっぱり恥ずかしい。

 それに、

 

「チケットだってもう完売してるのに、いまさら誘えないだろ」

 

 そうだ。あたし達の今回のライブチケットは即日完売だった。今からチケットを用意なんてできるわけがない。

 

「大丈夫だよー。わたしチケット持ってるし」

「……なんで持ってるんだ?」

 

 当然の疑問が頭に浮かぶ。

 

「お母さんとお父さんに来てもらおうと思ってプロデューサーさんからチケット貰ったんだけど、お父さんがどうしても外せない仕事入っちゃって、2人で来たがってたお母さんもそれで行けなくなっちゃったんだ。それでチケット2枚余ってるの」

 

 そう言って加蓮は鞄からチケットを取り出す。

 

「どうする?」

 

 ヒラヒラとチケットを揺らす加蓮。

 ダメだ。こうなったら加蓮は止められない。そう思って凛を見る。スプライトを飲んでいた凛があたしの視線に気づいて、会話に参加する。

 

「わたしは別に良いよ。それに、それは奈緒が決めることだし」

 

 凛も完全に他人事だと思ってる。いや実際凛からしたら他人事かもしれないけど、ここは助けてほしかった。

 ……波瑠がライブに来る。ライブに来るということはあの衣装姿を見られてしまうということ。……ダメだ。やっぱりダメだ。あの姿は見せられない。前にコスプレ姿を見られてるだけにあの姿は余計恥ずかしい。

 

「やっぱりダメだ。今回はまだ早い」

 

 あたしはそう言って腕を組む。

 クラスメイトにすら「あたしに内緒で来てくれ」って言ってるのに、誘えるわけないだろ。

 

「そっか、わかった」

 

 諦めたのか、加蓮はスマホをいじりだした。

 わかってくれたか。こればっかりはあたしも譲れないんだ。せめてあたしが知らないところで話が進んでいたのならまだ良かったが、そういうわけにもいかないだろう。それに、もし来るというのならクラスメイトと同じ様に内緒で来るとか、そんな感じで来てほしい。

 そもそもライブは1週間後だし、もしかしたら向こうもなにか予定が入ってるかもしれない。誘うならもっと前に誘っとかないと、相手に迷惑をかけてしまう。

 だから今回はなしだ。

 また別の機会にあたしの知らないところで誘ってほしい。加蓮なら別のライブでこっそり誘うくらい簡単にしてくると思うから、いつ来ても良いように心の準備だけは怠らないようにしておかないと。

 

 

 

 ♯3 波瑠護と神谷奈緒 ③

 

 

 

 いつのまにか下校の時間になっていて、教室には俺以外誰もいなくなっていた。どうやら俺は朝学校に来てから今までずっと寝ていたらしい。

 誰も起こしてくれなかったのか、起こしても俺が起きなかったのか、どっちなのかわからないが、とりあえず今日の分の授業どうしよう。……明日()()さんに貸してもらおうかな。でも多田さんそういうところは厳しいから貸してくれないかもな。とりあえず真摯に頼んでみるか。

 朝からなにも食べてないから腹減った。

 どっかでご飯食べるか。

 とりあえず帰ろう。

 そう思い、立ち上がる。

 ……そういえば今日学校来てから1度もスマホ触ってないなと思ってポケットからスマホを取り出して画面を見ると、北条さんからLINEが来ていたので、LINEを起動して確認する。なんの用だろう?

 

 

 加蓮

 『今から会えない?』

 

 

 

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