ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー   作:通りすがる傭兵

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注)今回は銃器解説ではありません。ただの息抜きです。
とりあえずKar98kで遊ばせとけばオマージュになるってじっちゃんが言っていた。

コメディって難しい......あの人凄いねんな......


小話&番外コラボストーリー
小話-2 Karちゃん狂想曲。


 

 

 

 

 

 

 

ナガンがなんの気もなしにいつもの場所を訪れると、ガンスミスが一張羅の綺麗な作業着に着替えていた。

 

「おはよう。珍しいな、それを着るとは」

「ん、ああ。なんせ新しいライフル戦術人形が着任するって聞いたからな。ご挨拶くらいしとかねえと」

「仕事柄付き合いがあるからか。勤勉じゃな」

「まーな、給料分は働かねえと」

「ついでにわしも行っても構わんか? どうせ基地案内とか頼まれるじゃろうし、暇じゃし」

 

というわけで指令室を訪れる事になった2人。

 

「もしもーし、お邪魔しますよーっと」

 

階級は違うとはいえ気の知れた中である、挨拶もそぞろにドアを叩いて、扉を開こうをドアノブを捻るが、

 

「どうした、鍵でも?」

「いや、なんか突っかかってるみたいで」

 

とはいえ、成人男性のガンスミスに開けられないほどではない。そのまま無理矢理に部屋に押し入って、

 

「......え」

 

顔から血を流し、仰向けに倒れるカリーナを目にした。

 

「カリーナ?! おい、カリーナ!」

「これは......!」

 

腰のホルスターから銃を抜き辺りを警戒するナガンを横目に、ガンスミスは倒れたカリーナを引き起こし事情を問いただす。

 

「......う......」

「カリーナ、おい、なにがあった!」

 

うめき声をあげ、意識が戻ったか目をうっすらと開くカリーナ。ナガンもあたりの安全を確保したか、膝をついて彼女の言葉に耳を傾ける。

 

「......あ、れは......マズイ」

「何がまずいんだ、説明できるか」

「幸せ.......過ぎます......がくり」

 

「「は?」」

 

意識を失い力の抜けた顔がどうにも襲撃とか事故とはは無関係そうな、とにかく幸せそうな顔をしていて。

 

「......よく見たら鼻血じゃね?」

「ティッシュでも詰めておくかのう」

 

テキパキと鼻血の処理をし、ふと異常に気がつく。

 

「そういや指揮官は?」

「いつもは詰めておるんじゃが、まさか」

 

奥の自室かのう、と奥まった場所に備え付けられた指揮官の部屋に向かうナガン。

 

「指揮官、寝坊かー、起き」

「えーい」

 

しゅばん、と目にも留まらぬ速さでナガンが部屋の中に引きずり込まれ、パタンと扉が閉まる。

 

「ぎゃああああああ、ああああああ、あう」

「んふふふ......」

 

ドタバタと抵抗する音が悲鳴のフェードアウトとともに消え、静寂が指揮官室を包み込む。

「な、何が......」

「やばいんだよ」

「はっひぃ?!」

「私だよ私、スパナ振りかぶらないで!」

 

机の死角からひょっこりと顔を出す指揮官。この短時間で何があったのか、神妙な顔で語り出した。

 

「......キッカケは、新しく来たライフル戦術人形。そこからはじまったのよ」

 

 

 

 

その日私は、新しい人形がどれだけカワ、いえ優秀か楽しみにしてたの。カリーナも一緒にいたわ。

着任してきたのは、Kar98kちゃん。

ちっちゃくて白髪で、コートがモコモコで軍服姿と相まってカワ、じゃなくて、この前の合同作戦でも随分と活躍してくれた子。

ほらこの前の紹介の時見かけた時一目惚ちゃって、要請たくさん出しちゃった。そしてら別の基地が転属を受け付けてくれたらしくね、今日来る事になったの。

そんでついにきたんだけど......最初から様子がおかしかった。

顔も赤かったし、足取りも覚束なかったし、えへへへー、って。

 

とりあえず無難に挨拶して、いちゃい、じゃなかった、基地の案内とかしようと思ったら、急にカリーナに抱きついて。

 

『おねーちゃんのハグで癒されてください!』

 

 

 

「あの上目遣いとモコモコの魔力には誰も勝てないわ。M1895ちゃんもきっと......」

「心配して損した」

「ひどい!」

「たかがハグだろ。そんなもん多少はまあ思うところもあるだろうけど、カリーナみたいにああも大袈裟に」

 

やれやれと肩をすくめるガンスミス。

その時、どさ、と何かが崩れ落ちるような音が聞こえた。

ゆっくりと、壊れた機械のようにぎこちなく音の発生源の方に振り向く2人の目に飛び込んできたのは、

 

「と、とろけてしまうのじゃ......へへへ」

「さあ、おねーちゃんとハグしましょ?」

 

見せられないくらい蕩けた顔のナガンと、この前スプリングフィードがプレゼントした酒瓶を抱えるKar98k。

心なしか、Kar98kの顔が赤い。

 

「......こりゃまずいな」

「でしょ?」

 

2人は、一目散に逃げ出した。

「なんでああなったんだよまったく! 俺の知ってるKar98kはもっとお淑やかな、深窓の令嬢みたいな感じの女の子だったぞ!

あんなゆるふわおねーさんハグ魔じゃねえ!」

「私だってわかんないもん!」

「責任者お前だろ責任取りやがれ!」

「ふふふ、恥ずかしがらないでいいんですよ〜、おねーちゃんの胸元に飛び込んでくださ〜い」

「「ひい、来たぁ!」」

 

いかに様子がおかしいとはいえそこは戦術人形。人間の脚力とは比べものにならない程の速度で2人に追いすがる。

 

「どうするどうするどうする、このままじゃ追いつかれるぞ」

「だからどーしろって」

 

言うのよ、と言いかけた指揮官がガンスミスの視界から喪失する。

 

「恥ずかしがらなくていいんですよう?」

「きゃああああああああああああ!」

「くそ、それなりに距離があったんだぞ、一体......」

 

ふと目に付いたのは、壁面に刻まれたまだ白煙をあげる足跡。

 

(まさか、壁を蹴って飛んできたってのか!)

「おねーちゃんに不可能はないんですから、ぎゅー」

「ふへぁ......」

「すまん、お前の犠牲は無駄にしない!」

 

尊い犠牲を払い、ガンスミスは前へ進んだ。

 

「さあ、おねーちゃんがいっぱい撫で撫でしてあげますからねぇ」

「ふにゃあ......」

 

 

 

 

 

「どっこいしょのせっ!」

 

頭から飛び込み、そのまま手をついて一回転。空中で体をひねり、着地と同時時のドアへ駆け、閉める。

鍵をかけるには飽き足らず、てじかにある椅子机を積み上げ臨時バリケードを作る。

 

「ちょっと、何してるんですか、これじゃお客さんが」

「いいから、誰も入れちゃならないんだ!」

 

スプリングフィールドの戸惑いの声を一括し、息を整えようと座り込むガンスミス。

 

「何があったんですか、こんなに急いで」

「なんと説明すればいいのか......」

 

ハグしたら幸せのオーバーフローでぶっ倒れて意識が飛ぶ、なんて話誰が信じようか。

平時のガンスミスだってこんな話を聞けば鼻で笑い飛ばすだろう。だが、その現実をしかと目にした以上、信じるよりほかはない。

 

「ともかく、中に誰も入れるな、誰もだ!」

「どうしたんですかぁ?」

 

間延びした少女の声がカフェ内に響く。

無言で静かにするようにハンドサインすると、理解したらしいスプリングフィードもおし黙った。

 

「あれ、おかしいなぁ。確かに声がしたんですけどねぇ......」

 

むむむ、と可愛らしいうなり声が遠ざかっていくまで誰も動かない。かつかつと響くブーツの足音が消えたところで、ガンスミスはやっと胸をなでおろした。

 

「ぷはっ、一体なんだったんですか?」

「俺にもさっぱりわからん、ただ、アイツにだきつかれちゃ絶対にいかん」

「なんでハグしちゃいけないんですかぁ?」

 

遠ざかっていったはずの声がする。

「きゃっ」

「私は、おねえちゃんなんです」

 

スプリングフィールドが目にも留まらぬ早業で足を搦めとらせ押し倒される。

 

「だから、いーっぱい撫で撫でしてあげますね?」

「あっ、え、その」

「ぎゅーっ!」

 

また1人犠牲者が積み上げられる......

 

「......んふふ、あなたは優しいですね、そんな可愛いオネーちゃんには、妹の私もご褒美をあげちゃいます、ぎゅーっ」

 

......事もなく、スプリングフィールドの腕がKar98kの小柄な体を優しく包み込む。

 

「......新しい場所で緊張してるんでしょう? だったら、安心して下さい。ここは、あなたの妹や弟がたくさんいる場所ですよ、ねっ」

「えっ、あっ、うん、はい」

「だから、安心して下さい。みんな、あなたの事を大切に思ってますよ」

 

よしよし、と押し倒されたままで頭を撫でられるKar98kの目に涙が浮かぶ。

 

「......だって、転属だって......みんなから、いらない子って言われて、よくわからないところに行かされて、それでっ」

「うんうん、不安だったでしょう? でも大丈夫、おねーちゃんは、みんな好きだから」

「ふえっ、えぐっ」

「不安なら泣いていい、心配なら相談すればいい。基地のみんなは、仲間だから。

背中を預けて預けられて、そうでしょう?」

 

早朝の基地に、か細い鳴き声が木霊する。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「こうして今回の騒動は幕を閉じた。

ただ、ひとつ解せない事があるな、しーきーかーん?」

「はうっ」

「なんでKar98kの顔が赤かったんだろうな、まるで酒でも飲んだみたいに」

「ひいっ」

「場合によっちゃお仕置きもんだよな。なんせ基地が一時的に麻痺したんだ、原因はしっかり突き詰めとかねえと」

「ふひぃ」

「ところで......カリーナ曰く、一緒に缶ジュース飲んだんだってな。お近づきの印とか言って」

「へ、へー、そうなんですかぁ」

「ところで、この前缶チューハイの大量購入履歴があったんだよなぁ、誰だとお思う?」

「ほう、それは気になりますね」

「......」

「......」

「......」

「......私がKarちゃんに酒飲ませました」

「始末書、明後日まで、100枚」

「そんな殺生な!」

「だったら半月カフェ出禁にすんぞこのエロ指」

「始末書100枚書きます」

「よろしい。ちなみに通常業務も宜しくな。この前の苦情がたーっぷり来てるってカリーナ言ってたしな」

「へあっ!? き、聞いてないんだけど、カリーナ、ってあれ」

「カリーナは今日から一週間有給使って旅行中だから。1人で頑張れよ、それじゃ」

「鬼、悪魔、鉄血兵!」

 





(ただ、割と抱き心地気になる。せっかくだからハグされとけば良かったな)

そう思うガンスミスであった。

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