ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー 作:通りすがる傭兵
おはこんばんにちわ、作者です。突然ですが、コラボ回です。
とほくれす さんの「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜いた」とウチの作品のクロスオーバーになりまする。
きっかけは感想欄での軽口みたいなものでした。正直自分も半ば冗談みたいなもんでしたし、とほくれすさんもそう思ってなかったみたいです。その冗談を本気にしたのが今回のきっかけですな。
自分の力量不足をまざまざと見せつけられる事になりましたが......とてもいい経験になりました。
長ったらしい話はこれで終わり、コラボ回楽しんでください。
読めばわかりますが、会話文とかは自分、地の文はとほくれすさんに丸投げという変則的な作品です。ご了承を。
「はぁ? 出張ぉ?」
突然の話だった。指揮官の野郎があんまりニマニマしているから不満が顔に出てしまう。
ってか毎度毎度のことだが仕事場に勝手に入ってくるのどうなんだよ。この前は特例と言うか、まあなし崩し的に大目に見たが普通に仕事してる時に入られたらたまったもんじゃない。
大体お前コッチ系の知識ないから迂闊に近寄られると危なっかしい。一応平気で指とか飛ぶものだって有るんだから、最低でも一言声を掛けるぐらいはしてもらわないと困るんだが。
「ガンスミスさん、最近暇じゃん」
「誰が暇じゃい! このゴーグルが目に入らんのか!」
近眼でも分かるくらいにゴーグルをガンガン指で叩く。昼間に油臭くなってる男に対して暇とは何だ、お前失礼極まりないぞマジで。
でもでもぉ、と何か気色悪い舌回しに嫌な予感が背筋を這う。直感的にコレは変なことをさせられる時だ、脚が思わず明後日の方向に動き出すが仮にも上司。逆らえない。
「じゃー今は何してるのさ~」
「ナガンと演習見ながらダメ出ししてるだろ? 戦闘スタイルに合わせたオプションの考案だろ? ラジオ放送の資料だって集めてる!」
「ええっと…………それで。本業の銃器整備はどちらへ?」
横からおずおずと顔を出したカリーナの一言にウッと声が出る。
ややホコリを被っているバイスと卓上ボール盤は遥か遠く、作業場でも俺とは逆位置だった。
ちなみに今はあの愚弟がまた思いつきで作り始めた、えっとだな…………「ジャッカル」の草案を眺めて唸ってた。
対化物戦闘用13mm拳銃、既に意味分からんと思う。そして専用弾で、全長39cm、重量16kg、装弾数6発。もはや人形にしか扱えない代物だ。
敢えて言わせてもらうなら、慣れた兵士が両手で撃っても肩にガタが来そうな次元。バ火力とはこの事で、SG人形にサブウェポンとして持たせれば辛うじてという。
ジャッカル......平野耕太作、漫画「HELLSING」ラスボス系主人公アーカードの最強拳銃。噂では100万発入りのコスモガン(作者談)、威力は既に拳銃とかではなく、人間に大穴が開くレベル、めっちゃ凄い銃。使う時は大体舐めプだとか。
ちなみに13mmというと弾丸の先の方だけで13mmの意(細かすぎるので後は各自で)。あのハンドキャノンことデザートイーグルが9mmとかを扱います。
大型拳銃で有名なデザートイーグルを引き合いに出しますと。
あちらは全長269mm(=約27cm)。更に重量は2053g(=約2.05kg)。
ですからガンスミスの評価は馬鹿にしているようだが甘めの採点。SG、もしくはMG人形で肩に自信の有るモデルなら片手で扱える、かも。多分無理(byとほくれすニキ)
「…………してないな」
「暇じゃん!」
「うるっせえ!」
ひえ、っと上司にあるまじき情けない声を上げながら早足にカリーナを盾にする。ひっでえの。
この指揮官なあ、大きな声でそんな失礼なことよく言ってくれるぜ。その癖ちょっと言うとこれだから面倒極まりない、何故か俺が悪いんじゃないかと一瞬だけ迷うのだ。多分悪くない。
「じゃあ受けてほしいんだ、みんなで助け合っていかないと。この時代は一匹狼を気取るには極限状態なんだから!」
極限状態なんだから!......この作品始めドルフロの世界はかなりピンチです。ターミネーター(機械反乱)とマッドマックス(核戦争後の世界)、とバイオハザード(ゾンビ)、を足して3で割らない世界といえば伝わると思われる。
「んなお人好しでよく指揮官出来るな、この「ジャッカル」を投げられても言えるかね?」
サンプルでアッチで作ってきた鉄の塊、通称「偽・ジャッカルⅡ」。アホみたいに重かい、銃身で持とうとしたのが失敗だったか手がぐらついてしまう。
偽・ジャッカルⅡ......「Fateシリーズ」より偽・螺旋剣Ⅱが元ネタ。
すぐ爆弾代わりにされたりしないですよ。というか使うなら質量兵器みたいな重さだと思われます。「
「多分言えない!」
「でしょーな」
ジャッカルを置こうとしたが、思わずコンクリートに落として酷い落下音を垂れ流してしまう。
「ってて…………」
「それ凄い重そう、先に白旗上げててよかったよかった」
にへらと笑って答えるさまはいっそ感心する、ちったあ粘ってみせろよ。まあ言ってのけたら言ってのけたで「お前はまるでくそのような女だ」つって引き金を引くがな、綺麗事ばっかの上司なんかゴメンだ。
俺の疑念含みまくりな視線にカリーナは流石に隠し通せないと見たのだろう、指揮官の前に割って入ると身振り手振りを交えながらゲロる。
「まあ特別手当とか毟り取ってるのでただの善意でもないですよ!」
「ほう? 幾らだウォルター」
「ウォルターじゃないです」
何となくこの前読んだ資料に書いてあった台詞を言うだけ言ってみたが、カリーナはよく分からなかったらしい。「ついに狂ったか」みたいな顔をしてる、悪かったって。
指揮官がフラフラと不満げなカリーナの手を持つと、押しのけて俺に顔を至近距離まで近づけてくる。
相変わらず距離感の大雑把な女だ、俺も慣れたからどうということはないが…………公の場とかで酒飲んでこれされたら堪らんよな。男の方が。
とはいえいつものアホ面で笑ってるので慣れてると「うわウザ」くらいの感じになるが。
「手当はねえ、大体給料の1.5」
「よろしい、ならば出張だ」
よろしい、ならば出張だ......出張を、一心不乱の大出張を!!
真面目な解説すると同じく「HELLSING」の世界一かっこいいデブこと少佐、またはモンティナ・マックスの名演説の一説「よろしい、ならば
ドイツ語吹き替え版などさまざまなバリエーションあり。動画サイトで調べれば出てくるので一見の価値あり、戦争の狂気がうかがえます。
「えぇ!?」
「やったー! ガンスミスさんすき~!」
「調子良すぎだ、ったく…………」
さーて、荷物まとめようか。
「とーは言ったものの…………」
「なんじゃ、その不安そうな目は」
なんでナガンがさらっと助手席に乗り込んでいた。これ俺の私有車な訳だけどハウトゥー侵入。ってかそもそもいつからスタンバっていたんだか。
疑念、不快感、面倒くさい。色々こもった視線を鬱陶しそうにナガンは払うとやれやれと言った様子で返事する。
「引率じゃ、い・ん・そ・つ! お主がほっつき歩かんように手綱は握っておけ、と」
「俺は野良犬か何かなんですか」
「確かに目と鼻は良いな。後、興味のあることにはすぐ首を突っ込むのも犬みたいじゃのう」
否定できねえ、畜生が!
葛藤の果てに適当な納得を頭に差し込むと、扉を乱暴に閉めつつエンジンをかける。俺の様子があんまり荒れていたからだろうか、ナガンは溜息をつく。
「何だかんだで付き合いは長いじゃろうに」
「…………まあ、M14とか言われるよりは楽だ」
「喜べば良いのかの? それとも比較対象が底辺クラスなのを怒れば良かったか?」
お好きなように。
ケラケラと弾も入ってない偽・ジャッカルⅡを突き付けてくるナガンに、溢れ笑いしそうな妙な安心感を感じてしまったのは確かだ。
――待て、持てるのか。成る程、じゃあ銃の重さに関しては―――――
「仕事病は構わんが、ちゃんと運転するのじゃぞ? わしは銃バカに付き合って死にとうはない」
「ああでも持てるとは言えSGの人形に持たせるしか無いのは一緒か、また振り出しだぞ…………」
「ほれ、着いたぞ」
「言われなくとも…………おお、そこそこ立派だねぇ。ウチ程じゃないけど」
冗談まじりに言ったのを察したのだろう、ナガンが苦笑いする。
――ウチの基地に比べると本当に綺麗にされている。指揮官が綺麗好きなのか、もしくは指揮官が杜撰すぎて手を焼いてしまう甲斐性の有る副官の仕業のどっちかだ。
逆に此処までしなくてもいいだろ、と一瞬思ってしまった。
「ウチは広いだけで薄汚いがのぅ、こう綺麗だと同じ材質なのかすら疑わしいというものじゃ」
「ホントホント、あの指揮官様には清掃関連もしっかりしてもらいたいな。勿論アイツ自身の体一つで」
「…………お主鬼畜じゃな」
だってアイツだし。カリーナがよく困ってるのを見かけるのも有って、どうも優しくしてやろうという感情が湧いてこない。たまには痛い目見とけ。
駐車場が有るほど未来が明るい時代でもなく、仕方ないので大門前にドデーンと駐車する。土地もないし。
未来が明るい時代でもなく......諸事情はネタバレなので伏せますが、人類の生活圏は非常に狭いです。割合とかも言わないけど、一部の土地が使い物にならない。だから土地も無いし高騰しがちと勝手に捏造。
ちなみにガンスミスの車は今は珍しいガソリン車。ガソリンの調達が割と難しいだろうから、例えばプリ○スとかでも独身貴族の玩具と思われるのではないでしょうか。
車の種類はこっちの作者に聞いてください(とほくれすより)、車の設定も勝手に私がくっつけました。後で設定が変わったら、まあそういうことです。
イメージ的には自衛隊の使うジープとかそんな感じ(by傭兵)
シートベルトを外す。
「んじゃま、さっさとお仕事始めましょうか」
「そうじゃのう」
俺が運転席に鍵を差しっぱなしにしていると、ナガンがそれをひょいと抜き取って丁寧に窓をロックするなり俺の所までトコトコ歩いてきた。
――どういうことですかね。
一体俺がどんな気持ちで今の一連の動作を見ていたのか、ナガンに一ミリでも伝わっている感じはない。ケロッとした顔で俺の方を見る。
「ではしばらくよろしく頼むぞ」
「か・え・れ・よ!?」
「――――ああ、ワシとしたことが言い忘れておった!」
ゴソゴソと俺の持っていたケースを勝手に開けて………………待て、何故リード付き首輪なんてものが俺のケースに入ってる。待て、ってか勝手に開けられてるの何で。
ささっとケースを閉めてその謎の首輪を持ったナガンが輝くような笑顔。
「手綱もよろしくと命令されておったのじゃ!」
「だから野良犬じゃねーってのぉ!? せめてその首輪しまえ!」
「えー、おぬしノリが悪いのう…………ちなみにこれは指揮官が勝手に入れておったぞ」
アイツ何考えてんだ、後で慰謝料ぶんどってやる。
ナガンは今の拒否で可愛い動作とかはしない。「お前ノリわるー」って顔に出てるだけ、俺はかなしい。
「悪かった悪かった。わしがぜーんぶわるかった、そうだともー!」
「反省しろっての。あんにゃろう後で覚えとけ…………」
俺の憤怒は中に案内されてからも収まる様子がなかった。案内の人には「コイツラどういう関係だよ」とやや引いたような視線で見られ、歩く人形には奇異の視線が寄せられてきた。
しっかしコイツに反省の色がないのが悪い。首輪って、首輪って! 俺だってちょっとは傷つくわ!?
ナガンがわざとらしく両肩を抱いて様子をうかがいながらニヤつく。
「おお~、女子に手を上げるとは。こわいこわい」
「今どき男女同権が高らかに叫ばれる時代だ、なら殴られる権利も同等にある! 正義は我にあり!」
「ひねくれた理屈じゃのう…………」
ひねくれてようが何だろうが今この瞬間に俺が正当性を持ってアイツを殴れればそれで構わん!
――なんて阿呆なことを言ってる内に、随分と俺達は奥に来たらしい。廊下の奥の方から見慣れたもこもこコートが見えてくる。
ナガンはちょっと目をこすって再確認すると怯えたように俺の後ろに隠れた。いや、多分別人なんだが
あの一件......小話「Karちゃん狂想曲」の事件を指す。アレ以来Karに酒を飲ませようという挑戦者は中々出てこないし、Karを見ただけで顔を蕩けさせて怯える珍妙な被害者も出ている。ちなみにこの回のKarは指揮官以外だとすごーく優しくハグしてくれます。
「あら、見ない顔ですわね…………失礼ですが、お名前を伺ってもよろしくて?」
ニコリと精緻な微笑を浮かべるKar。前に会った酒で世界を滅ぼせる彼女と本当に同型なのだろうか、丁寧な仕草も柔和な笑顔もまるで別人だ。酒を飲ませてもただ単に可愛い姿が秒で思い浮かぶぞ、これがお嬢様ぢからの差だとでも…………?
ナガンも驚いたように飛び出てくる。
「え、このKarはえらくお嬢様なのじゃのう!? 警戒して損したではないか! ああ、ワシはナガンじゃ。ココには居らんのかの?」
「あの、それはともかく別の私は一体どんな仕打ちを貴方達になさったのかしら…………?」
「酔っ払って辺り構わず抱きついた挙げ句、とうとう基地の機能を短時間だが停止させた――――――ってああそうだ、俺は唯のガンスミスだよ。紹介が遅れて失礼した」
何を言っているのだこの人は、って顔される。そりゃそうだわ、俺もこの目で見なきゃ信じられない出来事だった。ナガンの目を見ろ、これが嘘をついてる目に見えるか。
ナガンの目を見ろ、以降の下り......凄く細かいけど「神撃のバハムート GENESIS」よりファバロ・レオーネの台詞。
ちなみにこの後キメ顔から急に変顔になってビンタされるまでが様式美です。ちょっとした拘りで私が解説しました(とほくれすより)。
とはいえ明らかに不信感を買っている感じ。
鮮血色の瞳が俺達を見透かすように僅かに細められた、突然冷えつき出した視線に一応ベテランの筈のナガンですらその眼に一瞬身震いしている。
――長い、永い時間だった。彼女は突然朗らかに笑うと手を合わせる。
「ごめんあそばせ、嘘というわけでは無さそうね! では要件を尋ねても問題ないかしら?」
「えっとだな、かくかくしかじかで事で
「おい待て、お主本音と建前が逆じゃぞ」
しまった。
思わず冷や汗を流しながら引き攣った笑いをして誤魔化す。やべえ、これで指揮官同士が険悪になったとかだったらどうすりゃ良いんだろ、流石に頭が上げられない人生になっちまう。
――と思っていたが、Karはきょとんとした顔で聞き返してきた。
「…………存じ上げませんが」
「はい?」
「ですから、私は副官をさせてもらっていますが聞いていませんの。仄めかすような事だって、もうそれはこれっぽっちも」
ふう、取り敢えず他の話題に釘付けらしい。助かった。
しっかし変な話だ。うちの指揮官はへなちょこだし要らないことばっかりしてるが、こういう他との話とかはある程度ちゃんとしてるイメージが有った。
そこは怒るというより、何か珍しいなと感じる。
ナガンが仕方なさげに書類を引っ張り出す。
「伝達ミスじゃな、書類でも渡せば納得してもらえるかの?」
書類の上をKarの紅蓮の視線が走り征く。それはとても速い眼の通しようだったが、俺にはそれがちゃんと確認されているのだと叩きつけられるような認識が有った。恐らく漂う雰囲気のせいだろう、彼女には表立たないだけで支配する側として必要とされる、言葉で表現できない征服能力が有る。
目線がやっとコッチに戻ってきた。
「…………ええ。間違いありません、彼のサインですわね。大方彼が適当に了承してしまったのでしょう――――――――もうっ! こういう事になるからちゃんと仕事をなさってと私は常日頃から言っているのに――――――!」
何やらKarはココの指揮官殿に大層ご立腹みたいだ。彼方に思いを馳せたぐらいから人が変わったように子供っぽくプンプンとし始めてしまった。
まあ、何というか愛嬌があるのはKar98kの共通項では有るみたいだ。その指揮官とやらが怒られたがっている感じはなんとなく察せてしまった。
俺達を案内する気らしく、つかつかと歩き出すのだが不意にまた振り向く。
「あっ。一応安全のため武装はお預かりしても問題ないでしょうか?」
「「アッハイ」」
怒っていたかと思えばまるで平時の落ち着きでそんな事を言い出す。普通は情緒不安定に見えるというか多分怖いのだが、何となく彼女はそれを表情豊かだと思わせるような魅力、ないし色香のようなものを纏っている。
凄まじい切り替えだ。こりゃ指揮官が仕事しなくなるのも分かる、彼女がやりすぎなんだ。
「指揮官さん! お客様ですよ!」
「客!? いや待つんだKar、というか何か怒ってるよな!?」
怒られ慣れしすぎてドア越しの声の張り方で機嫌が分かってるぞ、此処の指揮官。Kar98kプロファイリングの第一人者とかそういうレベルだわ。
慌ただしく物を直すような音。ナガンと見合わせて「この二人一緒に仕事してやっと釣り合い取れるやつだな」と無言の同意を得た。
オッケー、オッケーと息絶え絶えの声がするまで僅か一分。だいぶバタバタしてたな、無視して扉を開けていく。
「失礼します」
「ああー畏まらなくていいよ、敬語使われるほどマトモな指揮しないし」
「そう? じゃあ俺はS09地区〇〇基地所属のガンスミス、人手足りないってのはマジでいいのかね?」
((なんでこの二人は普通に速攻でタメ口…………?))
そんな目で見るな、コイツはなんとなく警戒に値しないって印象なんだ。
はい?、とKarと何処と無く似た呆けた顔をする。コイツら、ひょっとしなくてもデキてるな? 何か分かる、コイツラは見れば分かるわ。何だろうな、修羅場に近づいてるのに甘ったるい空気が漂ってる。
「それはマジだな、うん。でも人呼んだっけか~…………?」
「――――――――――――し・き・か・ん・さ・ん?」
「ヒエッ?! そういう事か!?」
事情がようやく飲み込めてきたのか、ゆっくりと歩み寄るKarに冷や汗を流しながら指揮官が弁明を開始する。健闘を祈るぜ。
「待て、話し合おうKar! というか思い出すお時間とお慈悲をくれ!」
ナガンと俺はもう張り付いた笑顔のKarに近寄ることすら出来ない。本当に前来たKarちゃんとはえらい違いだ、何というか…………うん、違うんだよ。とはいえじゃれ合いの範囲内では有るみたいだが。
えらい違いだ......小話「Karちゃん狂想曲」のKarのモデルは「グリフィンの戦術人形はキワモノか!?」のKar98k。今回も拙作の「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜いた」のKarを扱っております。似て非なるもの、こっちの方がやや原典に近い。
――うーんうーんと唸る指揮官。巫山戯ているから分かりにくいが、真面目にしているとその顔はかなり整ったものだというのが分かる。女としての感性は持ち合わせていないつもりだが、雰囲気も有ってギャップでゴロゴロ女を引っ転がしていそうな印象すら見える。
突然手を合わせた。
「ああそうだ! めっちゃ可愛い声のゆるふわ女の子から電話きてサインしたわ! アレ人手よこすってやつだったのか~! あーそーゆーことね完全に理解した!」
あーそーゆーことね完全に理解した......大川ぶくぶ作「ポプテピピック」のポプ子が元ネタ。ポプ子然り、この台詞を言ってのけたキャラが理解した試しがないのはお察しの通り。此処の指揮官はそういう人です。
「アンタついでにぼったくられてる訳だが、マジで大丈夫か?」
「そマ? 快諾したのは良いけど内容が不平等条約すぎだろ…………」
絶対コイツ詐欺とかにすぐ引っかかるわ。美人局持ってくれば億の借金でも抱えてきそう、要するに馬鹿だな。
もう俺達も呆れて声も出ないという感じだ。ニュアンス的に仕事がなくて金だけぶん取るような外道鬼畜な事はしなくて良さげだが、にしたってこれは杜撰極まる。Karが怒るのも仕方ない、俺だってウチの指揮官がこんな事したら説教するだろう。
Karが指揮官に向かって怒り始めた。こりゃ長そうである。
「指揮官さん! だから仕事はちゃんとやってくださいと何時もアレほど!」
「いや~此処まで来ると俺も平謝りだなアハハハハ!?」
「笑っていれば誤魔化せると思わないでくださる!?」
おーおーやってるぞ痴話喧嘩。
「あの二人、何というかアレじゃな」
「ああ。眼の前でノロケられてるのと大差ない」
何だろうな、どっちも結局は「許してやろう」「許してもらえるだろう」って前提があって揉めてる感じが凄い。要はモーション? 実は立場は指揮官が上? そんな感じ。
其処らの話は「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜いた」を読み、その眼と感性でお確かめ頂ければと思います。
読むと話を数倍理解できるかと(by傭兵)
「そうじゃなー。まあ仕事はあるらしいし、不満はないじゃろ?」
「まあそれは無いけどよ。俺はこの阿呆がちゃんと仕事できるかが本気で心配だ」
くすっとカンカンなカラビーナ嬢を横目にナガンが笑う。
「できた副官に恵まれておるようじゃのう。まるで夫婦じゃ」
「そうなると俺もナガンと夫婦になるん…………だが……………何だその顔」
突然黙り込んだのでふとナガンの方を視線を寄せると、無言で不満げな顔をこちらに向けている。じとりとした視線が薄いようで分厚い壁を幻視させる、幾ら何でもクルものが有るぞこれは。
そんなに嫌かよ、いやできた人間でも無いけどさあ……。
「そんなにイチャイチャする関係でも無いんじゃがな」
「んー、だったらビジネスライクな関係? なのかなぁ…………」
ナガンの問いかけにふと考え込む。人と人形の付き合い方、それは人それぞれって事だろう。とはいえ人と機械が仲良くするってのはこの世界の歪さを感じる。
歪だろ? だって俺達は機械と殺し合いだってしてるんだから。半世紀も前の人間からすれば不思議でたまらない光景の筈だ。
とはいえ、2人を見てると結婚した同級生を思い出す。初々しい関係ってのは、見てる他人をやきもきさせるもんだ。
――さて。二人のイチャコラも終盤のようだ、決め手は指揮官のこの一言。
「まあ俺も悪い! だけどKarがやってくれると思うとついつい手が抜けてるんだ、これだけはご理解いただきたい! 決して俺も適当にしようというわけでもなくてだな――――――」
「――――――!? そ、そういう事を言えば言い逃れで、出来ると思ったら大間違いですからね!?」
「「Karはチョロいんだなあ」」
「お二人方まで! 失礼でしてよ!?」
だってチョロいだろ今の。ナガンも高速で頷いてるぞホラホラ。
さっきまでの冷たい視線は嘘幻もしくは狐ばかしの類ではないのか。というぐらい顔を真赤にしてオタオタと反論するKarはまさしく昔で言う所のチョロインのそれ。だからいちゃつくなっての。
奥の手を残していたらしく、最後に
「だー! 言いたくはなかったが、プレゼント探してたら仕事おざなりだったんだよ!? 悪かったって!」
とトドメのようにノロケけてみせた指揮官。別段恨みはないが、世界に数少ない独身男性の代表としてコイツを許すべきではないと何かが訴えかけてくる。
戦場においての上官の死因は部下による誤射だと聞き及んだことがあるが、その気持ちが痛いほど理解できて辛いったらありゃしない。
熱っぽい上目遣いの視線を寄せるKarを見てると、吊り上がった口元がヒクつく…………殺すか?
「プレゼント、ですか?」
「ああ、お前に似合うとっておきのだ。ずいぶん悩んだんだぞ?」
さっさとこの夫婦漫才をやめろ、さもなきゃスパナを持った右手が抑えられなくなる。
はい! という訳で後書きはとほくれすが担当します。今回はコラボ元になっている「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜いた」のキャラで行きますが、よろしくお願いしますね。
さてさて、私をまず何人の方がご存知かが不安要素です。まあメジャーどころと言って良さげなものですと「わたしがウロボロスだ」と「世界は愛で満ちている」の作者、と言えば分かりますか? 分からない? それはどうしようもないですね。ピンときてもらえるよう精進しま…………せん、別に知らなくても貴方は死にませんから。お好きなように読書をお楽しみください
何となしに感想でお話した後、「まあ送ってこないだろうなー、割と書きたいなー」と思ったら台本が飛んできたので、作者監修のもとで地の文および台詞の微調整を担当しました。弄りすぎて「とほくれすさんの話なのでは?」と言われた時あちゃーって思いました。
この文体の時はえっと……此処で言って良いのかな。まあ「R-18同人誌の長い導入」みたいな内容を書いているので新鮮でした。ガンスミスにえっちな事言わせられませんからね、参った参った。
ちなみに好きなのはKar98kです、言う意味ないねははは。ボルトアクションも好きです、ガシャコーンガシャコーン!ってやるの楽しくないですか?
持ち方にも性格が出ますよね。ボルトアクションライフルは木製が多いのも好き。勿論今回出てきた「ジャッカル」だとか454カスールオートマチックも好きです。後はWA2000だとか、AR15とか416も好きですね! キャラも実銃も好きな子達です。
えー、もう700文字超えちゃいそうですね。じゃあそろそろ締めましょう。
まず通りすがる傭兵様、ガンスミスを合法で書かせて頂き有難うございました! 解釈違いが起きたのは苦笑しましたが、とはいえ出来るだけ合わせたつもり。ゆるしてね。
そして特に私に興味のない読者様、アクの強い文章をお見せしてしまって大変困惑されたでしょう。苦情はとほくれすへ。
そしてKar98kと女誑し指揮官がイチャイチャするR-17.5小説、「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜いた」をよろしくお願い致します。
中高生の方にはちょっぴり刺激が強い描写はありますが一応健全です。イケメンが好き、ときめいている女の子が見たい、赤面してるのが好き、ちょっと大人な描写に飢えてる等々…………あんまり大声で言えない性癖を回収していると今気づきました。
まあそんな小説ですので、よければ足をお運びください。Kar98kと乙女ゲーチックな指揮官が貴方を砂糖塗れにしてみせましょう。
――さて。締めが長いですね。
それでは「ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー」の益々のご発展とリクエストの激増、及びKar98kの出番の増加を願いつつ後書きと致します。
左様なら。また何処かの作品で出会えた時は、まあどんな喋り方でもそれが私ですので慣れてくださいね?