ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー   作:通りすがる傭兵

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実はコラボする時釘を刺していた「ガンスミスには銃を持たせたくない」。その理由は個人的なものでしたが、そのモヤモヤを吐き出したいので書きました。
まあ所謂自己満足的なサムシングのものです。読まなくても一向に構いません。



最初の理由は「戦闘系主人公にぜっっっったいにさせない」という鋼の意思でしたね。書いているISの二次創作も主人公がマネージャーやってたりするので、そういう裏方系の主人公が好きなんだと思います。
というか部活で(以下略)
あとサポ系主人公少ないしいいじゃないのよ。

どうでもいい話その2
とほくれすさん家のウロボロスには「カッコよくないけどくせになる」というよくわからないCVを仰せつかったガンスミスさん。

どんな声だよ(哲学)



小話-4 ガンスミスは銃を持たない

 

 

 

「ガンスミスの信号(れいあつ)が、消えた......?」

「なんじゃとぉ!?」

『ガンスミスの、銃器紹介コーナー!

このコーナーは、銃についてあんまり詳しくない指揮官に......』

「なにやっとるかあいつはー!」

 

前回(カルカノM1891)の事件から事を発した、通称「ガンスミス拉致事件」。

この事件をきっかけに後方輸送路が再編、さらには人員移動を含めたあらゆる移動の護衛が強化されるようになった。

そしてもうひとつ行われたのが、

 

「というわけで、上からの通達で一斉に訓練を行います! 人間諸君、射撃場へ移動!」

人員(人間)の再訓練である。

 

G&K社はそもそもが民間軍事会社であり、ある程度の訓練は行いはすれ、コスト削減のために文官、ガンスミスやメカニックのような裏方職員に訓練は行われていない。

しかし今回の事件を重く鑑みたG&K社上層部は、ある程度の自衛能力が必要と判断。

さらには設備が整い始めコストもかからないだろうという状況も相まって、人間職員の一斉訓練が行われる事になったのだ。

 

「というわけで、ハンドガンの使い方を勉強します!」

 

軍人としては一通りの訓練を受けている指揮官とHG戦術人形の協力のもと、一番基礎的な拳銃射撃訓練が行われるようになった。

 

「意外と当たらないですね......」

「よっしゃど真ん中、俺才能あるんじゃねえの?」

「おい、それ俺の的だ」

「もう少し力を抜いてください、その方が当たるかと思います」

「別に訓練じゃ、そう気張らんでもええ」

「ゆっくりやれば身につくのー!」

 

和気藹々とした微妙に緩んだ空気が漂う屋外射撃場。その中のいちブースにいる元凶、ガンスミスはというと。

 

「真面目にやる気あんのか?」

「ここだけ、ここの噛み合わせだけだから!」

 

案の定というべきか当然というべきか、配られた拳銃の分解整備を始めていた。

 

「あんなあ、お前戦う気あんのかよ」

「75ちゃん、どったのん?」

「どうしたも何もこのあり様だ指揮官」

Cz75が示す射撃台の上には、見事なまでにバラバラになったガバメントが。

それを見て思わず眉間にしわを寄せる指揮官。手グセだろうけど注意しないと、と声を上げる。

 

「ガンスミスさん。真面目にやってください」

「真面目も何もこれでもだいぶ真面目だぜ」

「いくら訓練が面倒だからとサボらないでくださいな」

「......はぁ、真面目にやればいいんでしょ真面目にやれば」

 

綺麗に組み上げたガバメントを台の上に置き、ちょっと荷物持ってくるとこの場を後にしたガンスミス。数分後戻ってきたガンスミスの手にはそれなりに大きなカバンが。

 

「なんだ、自前の持ってんのか」

「まーね、ちゃんと自分の給料で買ったやつだし」

 

消耗品だけどね、と言いながらロックを外しフタを開けると......

 

「ナイフ?」

「スローイングナイフ。本当は年始年末の隠し芸なんだけどなぁ」

 

ほい、と刃の部分を指で挟んだかと思えば、特に気負うでもなく腕を振りかぶり。

 

「......ど真ん中?!」

「あらよっと」

 

3連投。その悉くがまと中央に吸い込まれるように放物線を描いた。

 

「ざっとこんなもんでしょう。銃とか別にいらないじゃん? んじゃお先」

「あ、ちょっと!」

「仕事溜まってるんでー、というよりこれから溜まるんで仮眠とってきまー」

 

スタコラサッサと逃げ出したガンスミス。その背中を、ナガンだけは不審げな様子で眺めていた。

 

 

 

「入るぞー」

「どぞー......って珍しいな。プライベートで入ってくるのは」

「ほとんどラジオ関係ばかりじゃからのう」

 

深夜、ナガンはガンスミスの仕事部屋、整備室を訪れた。灯りは非常灯とガンスミスの机の上のライトだけでありかなり薄暗い。

 

「それで昼間のはなんじゃ?」

「昼間の、とは?」

「とぼけるでない」

 

机に向かうガンスミスの後ろにコンテナを引き寄せ、腰掛けるナガンが言う。

 

「わざとサボったろ、お主」

「......当然だろ? あんな面倒なもの参加するよりかは銃をいじったほうが経験値になる」

「それもそうじゃが......前から少し引っかかる事があるんじゃよ」

 

ナガンは前置きすると、ひとつ深呼吸して告げた。

 

「お主、何故()()()()()

 

ここ数ヶ月で散々顔を合わせてきたナガンからこそ気がついたこと。

この男......ガンスミスは、銃を構えることはありはすれ、一度も引き金を引いた試しがない。それが弾倉に弾のない空撃ちだったとしても、だ。

 

「......俺の仕事は整備だよ。別になんの意味にもならんさ」

「抜かせ。銃は撃って始めて整備の良し悪しがわかる、それを怠るお主ではない。

試射と称して何度も何度も本人を呼びつけるのは、はっきり言って手間じゃろう」

「本人が扱うんだし当然だろ」

「それを踏まえても多すぎる。

 

 

 

......隠し事があるんじゃろう、お主。

銃を握らない理由がそこにある。違うか?」

 

作業の手が止まる。

図星のようじゃな、とナガンは言葉を続けた。

 

「話してはくれんか?」

「個人的なことだ。あまり語りたくはないな」

「そうか......ならば」

「でも今日のような、もう昨日か。訓練に顔を出さないで済むなら楽になるし、面倒ごとはないに限る」

「......」

「でも他言は勘弁な。当事者以外ではヘリアンさんしか知らない。指揮官にも話してないんだ。そこだけ宜しく」

「わかった」

「そうだな。

 

ーーーー銃ってのはジャンク山からものの10分で作れる、て知ってるか?」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

あん時は、といよりハイスクール時代の頃か。俺も年頃ってやつで、色々とやんちゃしてたわけよ。

女の子をナンパしたりだとか、麻薬もやった。あと酒とタバコはみんなやってたな。

人より違うところがあるとすれば、俺には人より技術力があったという事くらいだ。

 

そんである日、度胸試しとかなんとか銘打って街の外に出てな、近くの廃墟にお邪魔したことがあってよ。

廃工場だったのかな......そん中には旋盤とかフライス盤とか、要するに金属加工の設備がまるっと一通り残ってたんだよ、無傷で。

ガッコーでうるさい先生のそばで、言われた通りに操作してたもの......そいつを自由に動かせる、て事実を理解した途端舞い上がったね。

 

金属パーツなんて道を歩けば落ちてるようなもんだし、学校の廃材を見繕ってちょろまかすくらいわけない。

そんなわけで何作ろう......ってなれば、答えは決まってたよ。

 

銃だ。あの頃から大好きだったからな。

 

設計図は自分で引いた。

弾丸はアルミを使えばいくらでもできる。

火薬は落ちてる弾丸を拾って分解すれば好きなだけ手にはいる。

 

知ってるか? ライフリングは旋盤あれば掘れちまうんだ。特別な機械なんてなんもいらないのさ。

 

そんなわけで出来ちまったんだよ。

リベレーターより不完全な代物が。

銃身は細径の鉄パイプ、引き金部分は溶接して作った。弾丸もお手製。

 

弟と連れ立って意気揚々と出かけて、ちょっと見てろと立たせて、いちおう保護ゴーグルをかけて......んで、引き金を引いた。

 

 

気がついたら手が血まみれで、弟が目を押さえてのたうちまわってた。

 

 

 

銃身が衝撃に耐えられなかったんだよ。

そんで鉄片グレネードみたいに弾け飛んだ。幸か不幸か、弟の目に突き刺さって潰した。

そんだけの話だ。

 

あれから銃を握るたびに吐き気がする。

引き金に指をかけた途端、弟の声が聞こえるんだ、痛え、痛えってな。

 

今でこそ弟は義眼で一般人より視力が良いくらいだし、俺も銃をいじる仕事についてる。

だいぶトラウマ自体は薄くなったんだが......引き金を引くことだけはできない。

 

 

◇◇◇

 

 

「......そんだけの話さ。

別に誰かを殺したわけでもなし、悲劇的な結末があるわけでもなし、つまんないだろ」

「たしかに面白くはない、のう。

最後にひとつだけ、質問いいかの?」

「何なりと」

「......なんでこの仕事やっとるんじゃ?」

「なんでだろうなぁ。銃が好きだから、かな。

そこんところ、俺にもようわからん」

「ハハハハハ、ようわからんと来たか!

やはり人間というのは奥深いのう」

 

答えに満足したのか、ナガンは席を立った。

 

「指揮官には伝えておこう。こやつの場合、そこらのものを投げつけた方が早いとな」

「さーんきゅ、面倒ごとがなくなって心が軽い」

 

ガンスミスがひらひらと手を振る。それに合わせてナガンも手を振り返す。

 

「それでは、また明日じゃ」

「ああ、また明日」

 

 

 

 

「マジでなんでこんな事してるんだろうな」

 

誰もいない中、ひとり自問自答する。

銃のことは好きだ。

デザイン、機構、名前、積み上げられた歴史、生まれるまでの先立の努力。全てを愛しているといっても過言ではない。

 

銃のことは嫌いだ。

どう足掻こうと銃は殺戮兵器。そこに善意などどうあがいても存在しない。他人を傷つければ、それだけ不幸になる人間は増える。

 

ただ惰性で続けているだけなのかもしれない。

 

弟への贖罪も兼ねて入った傭兵部隊は、トラウマのせいでつまはじき。結局雑務や銃整備の裏方周りばかり。

そこをグリフィンのお偉方にスカウトされて、言われた仕事は人形の銃の整備をしろと来た。しかも在庫は旧式銃ばかり。

それでも何だかんだ言いつつ何年もここの仕事を続けている。

昔は銃を見るだけでも吐き気がしたってのに、毎日見てるばかりか夢にまで出てくる始末だ。

 

俺は俺で何がしたいんだろうな。

今とりあえずできることといえば、ベストの仕事をするだけ。

使う奴は別に人形だから暴発しても死ぬことはねえってのに、毎度毎度全身全霊で、ちりひとつ、歪みコンマ1ミリも許さないような追い込みようだ。自分でもアホらしい。

 

「ほんと、何で続けてるんだろうな」

 

そこんところ、自分でも分からん。

 


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