ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー   作:通りすがる傭兵

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エイプリルフール(大遅刻)


小話-9 エイプリルフール

 

 

 

 

 

 

「エイプリルフールってのはウソをついていい日だとか。確かヨーロッパの風習だっけな。

そんな事はどうでもいいんだ。こういう日はちいとばかし面白い嘘をついてみる、ってのはなかなか定番だよな。

兄貴もそう思うだろう?」

「確かにそうだが締め切りオーバーだろこれじゃ」

「てへ?」

「正直その顔はキモいわ」

「辛辣ゥー!」

 

 

 

 

 

 

ガンスミスの朝は遅い。

しばらく貰った休暇も半分ばかりが過ぎ、今までおろそかにしていた身の回りの整理に深夜まで手間どりこんな時間になってしまったと心の中で愚痴る。

部屋にストックしてある保存食を食べる事すら億劫なぐうたらぶりを発揮しながらふらふらと食堂に向かって歩いていた。

 

「おはよーガンスミスさん! 髪切った方がいいんじゃない?」

「......おはよ、そうだな、そうするか......」

 

いつでも元気なスコーピオンがすれ違いざまの手を振り、ガンスミスも力なく手を振り返す。そういえば伸びたな、と肩に届かんとする髪をつまんだ。

 

「......やっぱ長えなあ。ここまで長いとやっぱそれっぽい」

「おはようございます、今日は遅いですね」

「部屋の整理だ、やっとかないとWA2000が怒る」

「彼女は綺麗好きですからね」

「隣いいかい?」

「どうぞ」

 

ピークも過ぎガラリとした食堂では、ウェルロッドがひとり食後の紅茶を楽しんでいた。折角なので隣に座りトーストを一口。焼きたての香ばしい小麦の香りとサクサクの食感を味わいながら雑談にふけっていると、

 

「だろうと思ったわ!」

「あ、ワルサー。どうしたんですか?」

「何度教えれば気がすむのよ!」

「また整理の話ですか?」

「今度こそ綺麗だと思ってたのに! 収納の中グチャグチャじゃない!」

「だって入らないんだもーん」

「うだうだ言わない! 整理整頓していた方が便利でしょう、どうしてそんなこともわからないのかしら!」

「アーアー聞こえなーい」

「もうっ!」

 

聞きたくないと耳を塞ぐガンスミスに怒り心頭になったWA2000。こうなったら力ずくでと耳を塞いでいる手を無理矢理にとって、

 

「............?」

「どうしたんです固まって」

 

むにむにとガンスミスの手のひらを触るWA2000。

つまんでみたり撫でてみたり、伸ばしてみたり頬ずりしてみたり。

 

「WA2000?」

「ワルサー?」

「............まさか」

 

何か思いついた様子のWA2000はおもむろにガンスミスの胸に手を伸ばし、

 

「ひゃん!」

「いやいや、そんな冗談みたいな......」

 

ふにふにふにふに、

 

「あの、ちょっと、待っ......」

「............」

「食事中に失礼ですよ!」

 

ふにふにふにふにふにふに、

 

「だ、駄目ぇ......」

「ガンスミスさん顔赤いですけど大丈夫ですか!」

「成る程ね」

 

何か理解した様子のWA2000は、大きく息を吸い込んで、一言。

 

「なんで私より胸大きいのよ!」

「理不尽!」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「ガンスミスさんが女になったとかマジ?」

「にわかには信じられんのじゃが」

「実際そうなのよ、脱がせて確認もしたわ」

「それはもう強引に」

「......ああ、だから丸まっとるんじゃな」

「もうおむこにいけない」

 

場所を移して司令室。出撃任務から戻り合流したナガンと元指揮官が見たのはやれやれと肩をすくめるWA2000と真顔の後輩、そして部屋の隅っこで毛布をかぶって三角座りをするガンスミス。

 

「......まいっか、見せろー!」

「わわわっ!やめろよ!」

「気になるから見せて」

「心配とか心情を推し量る良心は無いんですか」

「親の腹のなかに忘れてきた」

「だからクビになるんじゃないですか?」

「ちょ、それは禁句で」

「なんつったオラァ!?」

「ひい、キレた! 地雷なのこれ!」

「オラ面拝ませろやああん!?」

「もっと女の子らしい言動して!」

 

なんやかんやで毛布をひっぺがされ、もとい使えなくレベルに引き裂かれたガンスミス。

その姿はというと、

 

「パッと見......髪伸びただけじゃあ?」

「もっとシャキッとしてください、シャキッと」

「服がダサいのう」

「もっと身の回りに気を使いなさい!」

「なんか思ってたんと違う!」

 

心配どころか辛辣と平常運転なセリフに思わず両目を覆ってまた伏せるガンスミス。この基地の上層部には良心と常識を投げ捨てたやつしかいないらしい。

 

「そうではなく、女の子らしくなさすぎてわからないのでは? わたしには十分女性に見えますけど」

「カリーナだけが良心だよぉ〜」

「って、カリーナいたんだ」

「最初っから居ましたけど!?」

 

それはともかく、と唯一まともらしいカリーナが涙目のガンスミスに向かって優しく語りかける。

 

「経緯はわかりませんが、なってしまったのは仕方がないです。わたし達が女の子の暮らしというものを教えます。女の子にはそれ相応の準備とかがあるのですよ」

「でも元指揮官てだいたい髪ボッサボサで休日は芋ジャージでテレビ見て」

「アレは反面教師でお願いします」

「アッハイ」

「先輩はズボラですからねぇ」

「無頓着と言いたまえ」

「ソコは胸を張るところなのかのう......?」

 

とりあえず服とか色々変えましょう、とカリーナがガンスミスを引っ張っていった。

そして取り残された後輩ちゃんはというと、

 

「本人が居ないから言いますけど、結構なんというかその、イイおっぱいしてましたよね」

「あれ肩こりそうだよねぇ」

「......帰っていいかしら」

 

 

「というかそもそも、アレが本物のガンスミスさんだという保証がないんですよね」

 

後輩ちゃんがポツリと漏らした一言に場が静まる。

だってほら、と前置きして後輩ちゃんはさも当たり前だと言うように言う。

 

「うちの警備がザルだとは言いませんが、あのような変化では別人を疑う方が妥当でしょう?」

 

今の時代人間の1人や2人簡単に用意できますし、とナガンやWA2000の方を見ながら呟く。

 

「......銃見せればわかるんじゃない?」

「まあそれもそうですね。ちょうど新型人形がウチに配備されるようですし、その反応を見て決めましょう」

「ニセモノと信じたくはないがのう」

「雰囲気や話しぶりは似ているのよね、それだけじゃ証拠にはならないと?」

「疑いの目を持つことが不信とは違いますよ。

今回ばかりはトラブルの予感がしますが。

ボク嫌な予感だけは当たっちゃうんですよね......」

 

そんな時こんこんとドアをノックする音。

 

「ちょうど彼女が来ましたか......どうぞ!」

「こんな服しか着ないんですか、もっとオシャレしましょうよ」

「ひらひらのスカートなんて着れないって」

「失礼しまー」

 

司令室の廊下側の扉から入ってきたのは、白いパーカーに銀色の髪、星のアクセサリがついたピン留が眩しい小柄な女性。

少々やる気が無さげのようにも見えるが、タレ目と濃い化粧がそうさせて見えるだけらしい。

ただ、この場にいた彼女を除く全員が驚きのあまり固まる。

 

「AA-12着任しましたー、って、こりゃタイミングまずった?」

「もうすこし引き伸ばせると思ったんだがなぁ」

 

()()()()()()()()()()()!?」

 

興が冷めたとジト目になるAA-12と首に手を当ててアチャーとイタズラが失敗した時のような気まずさを露わにするガンスミス。

 

「いいいいい一体どう言うことなんじゃだだ誰か説明をぷぷぷりーず!」

「ええとアレがそうなってそれで?」

「ドッキリ成功なんですか、これ?」

「仕方ない、早いけどネタバラシと行きましょう」

 

瞬間ぷっつりと糸が切れたように地面に倒れこむガンスミス。それを見ていた面々はさらに訳がわからないとパニックはどんどん大きくなる。

ナガンはショートしたように同じことを繰り返し、元指揮官はやろうとすることはてんでバラバラ。WA2000に至ってはオーバーヒートで自動シャットダウン、カリーナがガンスミスの方を見たまんま大口を開けて固まってしまうしまつ。

 

「メディーック! メディーック!メディーック!!」

「ええとまずは人工呼吸してAEDを口に貼って心臓マッサージは肩を叩いてあわわわ」

 

「へーい、エイプリルフール!」

「エイプリルフール!」

「ドッキリ大成功?」

 

「「「は?」」」

「......なるほど、これは面白い!」

 

笑顔で物陰から飛び出してきた()のガンスミスとその実弟プログラマー、AA-12の掲げる『ドッキリ大成功』の看板。

それを見た後輩ちゃんだけが一本取られたと目を抑えて膝を叩いて笑い出す。

カオスはまだまだ終わらないようだ。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「簡単に言えばガワだけ作った人形な訳ですわ」

「その人形を動かしてたのは俺って話」

「私はただデザインを流用しただけの赤の他人でーす」

 

簡単に説明すると、

 

まずプログラマーがガンスミスを女にしたような人形と、遠隔操作できる機器を開発。それをガンスミスが動かせばあら不思議、女になったガンスミスが爆誕するという寸法だ。

声もボイスチェンジャーを通してはいるもののガンスミスがしゃべっているのだから本人と同じ。体の動きもトレースするのだから、そっくりで当たり前なのだ。

 

「......で、なんでこんな事したの?」

「エイプリルフールだから」

 

 

 

「「「「は?」」」」

 

「だってエイプリルフールは嘘ついてもいい日なんでしょ? だったらデッカいのを一発やってやろうと思ってね、いや結構頑張った!

んじゃ溜まった仕事があるからこれにて、バイビー!」

「......まあそう言うわけだ。よろしく」

「機材丸ごと置いてっているって事は......」

「これ頑張ろうと思えば作業しながら動かせるんだよ。実質自分が2人いるから超早い」

「そっちじゃないよつっこむところが!」

 




女体化ガンスミス=AA-12

なお、暫く作業用として働く模様。
たまに他所基地にドッキリとして送りつけてやるからな。
なお人形なので特定の人間には1発でバレそうな模様。

版権モノとのクロスオーバーってあり?

  • いけるやん!
  • いかんでしょ
  • そんなことより続きをどうぞ

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