ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー 作:通りすがる傭兵
久しぶりな投稿な気がします、作者です。
最近は大学生活をエンジョイしすぎて書く暇がなかったので、これはいかんぞとコラボの話を吹っかけて気合いで書きました。これでモチベーション上がれば良いなあ
焔薙作「ポンコツ指揮官と(以下略)」さんの基地にお邪魔させてもらいます
「......と、来てみたは良いものの誰も居ないじゃないか。朝早過ぎたかねえ。歳をとるとつい早起きになってしまう」
ぽりぽり、とこめかみあたりをかきながらぼやく初老の男性。基地内では死神さんという物騒なあだ名とは裏腹に優しいオジサンで通っている職員の1人だ。
「かといって時間を持て余すのも暇だねェ」
彼の目の前にあるのは鉄条網の張り巡らされた2m強はあろうかというフェンス。そのところどころには監視カメラと赤外線センサーらしきものまで取り付けられていた。
「久しぶりに、すこし頑張ってみるかネ」
タンタンと革靴を2、3度確かめるように地面に打ち付け、軽く背伸びをしてから、
「ほっ」
軽々と身長の倍はあろうかという鉄柵を飛び越えた。
「チョット待って対人地雷とか聞いてないんだけドこんなところにはワイヤートラップとかチョット待って待ってノオオオオオオオオ!?」
◇◇◇
S09地区A基地司令官、ユノは朝に弱い。
彼女が弱冠17歳の少女という事もあるが、新婚らしく夜になるとハッスルしているのも一因ではある。
それはいま語ることではないだろう。
横に眠る自分の伴侶たる戦術人形を起こさぬよう、ゆっくりと身を起こしてからけのびをして、まだ焦点の定まらない目をこする。
「ねむい......」
「ならば朝には紅茶でもいかがかね?」
「飲む......」
「砂糖とミルクはどうするかね?」
「いれる......」
かちゃかちゃと混ぜているらしい音がして、柔らかい茶色になった、白い湯気をあげる紅茶が目の前に差し出される。カップを両手でもち、すこし吹いて冷ましてからずず、と紅茶を一口飲む。
鼻に抜ける紅茶の甘い香りとすこしの渋み、それを柔らかくする合成クリームの風味と砂糖の甘さ。
それをゆっくりと噛み締め、意識がはっきりとしたところで......
「美味しそうです何より、上質のダージリンの茶葉だったからネ。次はお茶の風味を楽しんでもらうためにストレートをオススメするヨ」
「............誰」
「気がつくのが遅くないかネ、あと声怖いんですけド?」
目の前で紅茶を入れているバーテン服の初老の男性がボヤいた。いつもとは全く異なる冷たい声にベッドから飛び起きた戦術人形ーーHG戦術人形のPPKーーが愛銃を手に取り男に銃口を向けた。
「どちら様ですの?」
「そんな野暮ったい質問は聞き飽きたネ。強いて言うなら『死神』カナ」
「まさか、暗殺者の......!」
「そんな事もしていたネェ」
なんの気なしに言い放った一言に2人は凍りつく。
暗部の情報を少なからず持っているPPKは目の前の『死神』と名乗った男の事を知っていた。
(敵味方問わず、関わったものすべてを破滅させる暗殺者。今までに依頼を失敗した回数はたった一回。
最近活動しているといった話は耳にしてはいませんでしたが、まさか指揮官を)
「というわけで早速であるが......」
胸元に手をいれ、ナニカを取り出そうとする男。
それを認めたPPKは引き金を引くが、
「あ、弾丸は抜いてあるからネ。枕元は流石に無用心が過ぎるヨ」
「そんな!」
ならばいっそ指揮官だけでも......!
「はい、プレゼント」
「「............は?」」
差し出されたのは銃でもナイフでもない、桜があしらわれた包装紙に包まれた、手のひらよりひとまわりほどの大きさの箱。
「銃マニアの彼からの依頼だ。
結婚式の時にはすっかり忘れてたからチマチマ作っていたものがやっと完成したと言っていたよ。
手紙もあるんだが、読みあげる必要は?」
「銃マニア......ガンスミスさん?」
「彼はそう呼ばれてる方が多いネ」
ぽかん、という擬音が似合いそうなほどに口を大きく開けて間抜けそうな顔をした目の前の2人。
それでようやく思いついたか、彼は服装を正してから自己紹介を始めた。
「はじめまして、レディ達。
昔は暗殺者の真似事をしていたが、今は隣の基地で格闘技や潜入術を教えているのサ。
そこの彼女はやたらピリピリしてたけど、もう現役じゃないから依頼は受けないヨ」
「ただの......杞憂でしたか......」
「ねえPPK、なんか......変な人が来たみたいだね?」
「もう、勝手にしてくださいまし」
取り越し苦労だった事に気がつき、へなへなと倒れこむPPKに寄り添うユノ。
さてこれからどうしたものかと思案顔の男だったが、何かに気がついたように天井を見上げた。
「君はえらく部下に愛されてるようだネ」
「うん、みんな大好き!」
「それは良かった、ただまあ......チョット過激過ぎないかネ?」
「お母さんから離れて!!!!」
男の背後の天井板を突き破って飛び出してきた黒い影、そのまま彼の首筋を噛みちぎるようにまっすぐと狙いを定めた一撃は、
「チョット荒すぎるナ」
「へっ?」
黒い影、ことHG戦術人形P7がふわりと床に立った。
彼女が振り返ると、つい先ほどまで手に持っていた拳銃と小型ナイフが彼の手の中に収まっている。
「度胸100点気配遮断も100点、殺気の隠し方と狙いのつけ方は0点。
惜しい、実に惜しい逸材だネェ」
ナイフを両手でお手玉しながら、そうP7を評価する男。
武装を一切剥がされたらしいP7は歯をむき出しにして男の方を睨みつけて唸るばかり。指揮官たるユノもPPKもまだこの男を完全に信用しているとは言い難く、警戒心を強める。
そんな時だった。
「指揮官、ガンスミスが来たぞ」
「あれ、そんな連絡あったっけおばあちゃん」
「どうにかこうにか抜け出してきたと言っておったな。ぬ、ガンスミスから先に行かせとるのがおる、ときいたがお主のことかの?」
「カレは上手く抜け出してきたみたいだネ」
均衡を破ったのは彼女の副官たるM1895ナガン。扉を開け男の姿を認めると、ひとり納得したように頷いていた。
その後ろから声をかけたのは......
「ヤッホー」
「..................誰?」
「本人はガンスミスだと言いはっておるのじゃが」
黒メインのつなぎに作業ゴーグル、手袋をつけ工具箱を装備した業者のような格好をした大柄の女性が久し振りと手を振っていた。
「抜け出してきたってそういうことかネ」
「そゆことー」
「?????」
実はね、と彼女(?)が語った話を要約すると、エイプリルフールで女版ガンスミスを制作したのはいいが使い道に困っていた。仕事を休めと監視されているのでノーマークだったこっちを使って抜け出してきた。
「我ながら天才かと思ってる」
「ワーカーホリック極まれり、というのかねェ」
「ガンスミスさんだけどガンスミスさんじゃない?」
「スミ子ちゃんと呼んでくれたまえ。
早速だけどメンテナンスする銃とかない? そろそろ禁断症状で手が震えだしたんだけど」
「銃がガタついていると数名言っておったな。しかし報酬は支払わんぞ」
「銃が整備できるだけで十分ですよいひゃっほう!
あとP38ちゃん呼びつけといて! イロイロ教えたいからー!」
ほいじゃまた! と嵐のように去っていった女版ガンスミス改めスミ子ちゃん。
白けたような、固まってしまったような雰囲気をほぐすためか、少しばかりの愛想笑いを浮かべながら男が切り出した。
「とりあえず紅茶でも飲むかい?」
◇◇◇
紅茶を飲んで一息ついたところで、思い出したようにPPKが切り出した。
「ところでプレゼントの中身は一体なんなのでしょう?」
「私は知らないよ? 開けてみてのお楽しみってやつだネ」
「じー」
「......爆弾とかそんなものは入ってないからね、ホントだよ?」
「怪しい」
「信頼感ゼロだネエ」
ユノからしてみれば知り合いの知り合い、要は赤の他人とほぼ同義なのだから仕方ない。人嫌いはだいぶ改善されているとはいえ、そう簡単に治るものでもないのだから、さらに彼女をよく知るP7らをはじめとする戦術人形もまた同じ。
しょうがないなあ、と男が折れてプレゼントの包装紙を剥がすと中からはニスで磨き上げられた木製の箱が姿を現わす。
それを特に気にするでもなくパカリと蓋を開けたところで......
「彼らしいといえばそうなんだけど」
「......なぜそんな渋い顔なのです?」
「うーむ、でも今のご時世相応しい贈り物なのかねェ? ほら」
くるりと180度回転させ、皆に見えるように角度を傾ける。
彼女らの目に飛び込んできたのは、
「わあ、綺麗!」
「美しいですわ......」
「なにこれ、すっごーい!」
「なるほどあやつらしいのう」
PPKの持つつや消し黒の塗装とは正反対の、鏡のようの景色が映るまで磨き上げられた銀色のハンドガン、ワルサーPPK。
ペアルックならぬペアガン的な? と能天気な声がガンスミスを知るものたちの脳裏に聞こえた気がした。
「彼の事だから実戦にも充分耐えられる代物だと思うヨ。ホルダーもあるし、せっかくだから下げてみたりとか?」
「......私にはまだ早いかな」
「おや、なにか理由でもあるのかネ?」
「......まだ覚悟が足りない、と思う。
人は嫌いだけど、傷つけるのが怖いから」
「なるほどネ」
「でも、覚悟はいつか持たないと。だから、その時まで大切に保管させてもらいます」
ユノは箱を閉じ、それをゆっくりと机の上に置いた。
しばらくはあの箱が開かれることは無いだろうが、これもまた銃のあり方のひとつだろうとガンスミスは言うに違いない、そんな気がしていた。
「傷つけるのが怖い......ならば、格闘術を習ってみるのはどうかネ?」
「格闘術?」
「こやつは運動神経からっきしじゃぞ、そんな芸当出来るはずないじゃろう」
「お母さん運動音痴だもんねー、すぐ転ぶし」
「荷物を持っている時などは不安になりますわ」
「そんな風に思ってたの?!」
「......運動神経なんて動いてるうちに覚えるモノだヨ? センスある無しはあれどたどり着く先は皆同じようなものだからネ」
散々な言われようなユノに対し男がフォローしたところで、真剣な話だと声色を切り替えた。
「銃や剣は加減が効かないものだ。引き金を引けば一定の質の攻撃が約束されている。故に加減が難しい、だからこそ君のような意見を持つものも少なくはない。
だったら私は格闘技をオススメするね。
殺すも生かすも自分のさじ加減で決められる。やりすぎに関してはどうにもできんが、相手を殺さずに倒す術を求めているなら、格闘術に勝るものはない」
「......」
「そして格闘術に長けた人間が目の前にいるのだが?」
「......時間は、ありますか?」
「奇遇なことに今日はずっと暇なんだヨネ」
◇◇◇
「久しぶりに教えがいのある弟子だった」
「あれ、帰ったんじゃなかったんです?」
「ちょーっと指導をネ」
基地への帰路、いつのまにか車の中にいた男に驚きつつも、スミ子は車を走らせた。
「しかしどういう風の吹き回しです? 全くの赤の他人でしょう、彼女は」
「いやなに、ちょっと娘に似ていてネ」
「あんた娘居たんですか?!」
「
「らしい?」
「昔の話サ」
窓の外を、いや、過去を見つめているのだろう男は、ポツリポツリといつものふざけたような言い回しとはうってかわって静かな声で語った。
「20年程、いやもうすこし前の話だ。
一度グリフィンの高官を殺せ、との依頼を受けてね。それで本社の職員として潜入していたんだが、そこで出会った女性と一夜を共にしたのだよ。
一目惚れだったね、アレは。
結局彼女とはそれっきりだったんだが、風の便りで娘が生まれたとかそんな話を聞いた。
表立って支援することはなかったけど、あしながおじさんよろしく匿名でイロイロ送ったりはしたよ。
それから何年か経って、彼女が死んだと聞いた。
正義感が強かったからね、何か怪しいことに首を突っ込んでしまったらしい。気が付いたころには娘も行方知れず。おそらくもう死んでいるだろう。
そう思うとついお節介を焼いてしまった。あの娘が生きていれば、ちょうど彼女くらいの歳だったんだ。
......一度もあった事もないくせに。
それだけの話だよ」
「......帰ったら一杯やらないか?」
「今夜は私が奢るよ」
「そうだな......んじゃ、どっかで生きてるかもしれない娘にでも乾杯するか」
「その前に君の脱走がバレないといいネ」
「安心しろ、さっきバレてナガンに通信越しに怒鳴られたばかりだ」
「尻に敷かれてるネェ。彼女いいお嫁さんになれるよ」
「あんな鬼嫁は願い下げだ。もうちょい可愛くて優しいので頼む」
「あっはっは、私も同感だヨ」