ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー 作:通りすがる傭兵
コラボです。
MGFFM様作「M14EBR-RIの日誌」からアサルト小隊の面子が遊びに来るようですよ?
「L&M社、ねぇ......」
後輩ちゃんから貰った資料によれば、今回の委託はG&K社内部ではなく外部......それも同じPMCからの依頼だそうだ。
もちろん襲撃の可能性も0ではないとのことで死神さんや諜報部隊が軽く暗躍して情報を集めたのだが、社長が旧時代兵器マニアなお陰でいつもかつかつな中堅〜弱小PMCといった風態。その中でも攻撃に重きをおく人形人間混成部隊「アサルト小隊」が今回の依頼人となる。
......電話かけてきたのが傭兵時代のガンスミス仲間だったのは驚きだったけどな。あっちもてんてこ舞いだからって話だったし、こっちも暇だったから二つ返事で受け付けちまった。
事後報告ってことで朝からちょっとした騒ぎになりはすれど、調べてみればダーティではあるものの裏もない割とクリーンなPMC。
万が一も考えて俺に警護に近接格闘と射撃にバランスが良くかつ仲が良いナガンがいつものように抜擢された所で時間を迎えた次第だ。
いつもであればこっちから出向くのだが今回は例外、あちらさんからきてもらう運びになっている。
「柄にもなく緊張してるようじゃないの」
「きき緊張なんてしてねえし?」
「そわそわ歩き回っておれば説得力にも欠けるわ。全くお主は人見知りがすぎるぞ?」
「余計なお世話。というかM21はなんでいるのさ」
「非番だからねー、それにM14の近代モデル使いが来るって話じゃないの。なんか面白い話のひとつやふたつ聞ければいいなーってね」
「M14は? 彼女は連れてこなかったの?」
「あの子はもう遠くに行っちゃった......」
悲しげな目をして遠くを見るM21。
昔は優しげな性格だったはずだったんだが現在のM14にはその面影はない。
今この基地にいるのは笑顔で毒と皮肉を吐き新人を煉獄の炎で身も心も焼き尽くす悪魔のような鬼教官だけである。
せっかくだからとM21も声をかけたらしいのだが「訓練があるからね」と笑顔で答えられてしまえば何も言えなかった、とのこと。
どうにか話を変えないといたたまれなさすぎる!
「そ、そういやM21ちゃんの戦闘スタイルは遠距離よりだっけ? そういうチューンしてるけど」
「そうだよ? でもどうして急に」
「いや、向こうがどんな感じで扱うか気になっててね。そもそも向こうのM14がセミ限定かセミ/フル切り替え式なのか知らないし」
「言われてみれば確かに。あたしはセミオート限定モデルで狙撃に寄せてるもんな。立ち回りもアサルトっぽい動きも出来なくはないけど、基本はスナイパーだもん」
「M14ちゃんは中距離チューンにしてるんだ。スコープの設定も400m基準だし、銃身周りも頑丈に作ってある」
「狙撃銃はデリケートだかんねー。銃剣なんて怖くてつけた事ないよ」
「いやそれはうちが特殊なだけだと思うよ?」
俺の言葉に首を縦に振るナガン。あんな頭のいかれた人形はウチ所属だけでお腹いっぱいだとでも言いたげだな。俺もそう思う。
「ライフルはスタイルによってチューン方法がだいぶ変わってくるし、見合ったパーツも選ばなくちゃならん。
スコープもいろいろリストアップしてやんねーとな。
銃ごとの癖も見抜かにゃならん。いやー、忙しい」
「その割には楽しそうじゃな」
「それが好きでやってんだもの」
「なにそれウケるー!」
「人間そんなもんよ?」
雑談をしていると備え付けのスピーカーから雑音が溢れる。という事は?
『あーあー、業務連絡、業務連絡。
ガンスミスさんとナガンさんは第1飛行場に来てください、お客さんですよー。
警備部隊のみなさんも準備お願いします』
「あくびをするのはわかるが、客人の前ではシャンとするんじゃぞ」
「今日の仕事は午後からのつもりだったんだよ」
「また徹夜か?」
「そ。どうせ暇だろうしってお菓子の試作してたんだよ。そろそろ秋だしモンブランとかな」
ジトとこちらを非難がましい目で見つめてくるナガンをあしらっていると空気を叩く特徴的なローター音が聞こえてきた。
予算のないPMCらしいといえばそうなのか、輸送専用ヘリではなく重武装が施された灰色の戦闘ヘリを飛ばしてきたようだ。基地のヘリよりも高めの高度を飛っているらしいヘリがゆっくりとこちらに向かって降下してくる。
「うへ、派手な事すんねぇ」
「なあお主よ、どうにも減速する気配が無いのだが」
ほのぼのとした空気が凍りつく。
ヘリはまだ機首をあげる様子はなくどんどんと角度を急にしながら地面への距離を縮めてゆく。
ともすれば何かしらのトラブルが発生して機体操作が不可能になっているように。
「......やばくない? 」
「緊急連絡! 第1滑走路にヘリ墜落の恐れあり、至急救護班に出動をー」
「ぶつかるぶつかるぶつかるー!」
無線に向かって叫ぼうとしたナガンと俺の頭上数mを掠めるようにしてぶわりと強風が吹きつける。
「......死ぬかと思った」
「......あ、あちらのパイロットは随分とお茶目なようじゃの。ほら、尻餅をついていたら格好がつかんぞ」
「いや航空機突っ込んできたらビビるって!」
「こちらL&M社アサルト部隊、隊長のネルソンだ。
急な依頼だったが引き受けてくれて感謝する」
「俺がご指名のガンスミスだ。派手な歓迎どうも」
ネルソンと名乗る若い男がこちらに手を差し出してきたので握手を交わす。敬礼よりはこちらの方がPMCらしいといえばらしいな。
握手を交わしたのを見て部下の面々もそれぞれ自己紹介をはじめてくれた。
「私エレナ、今日はよろしく」
「バラライカだ」
「M200、です」
「FNCだよ、お菓子ちょうだい!」
「今朝クッキー焼いたんだ、持ってけ」
「わーい! これ美味しい!」
「わ、私ももらおうかしら......」
「おう食え食え。量はないから仲良くな」
ふう、お茶菓子にと焼いたクッキーが効いたな。ワイワイと盛り上がり始めた中、ひとりだけ自己紹介もせずもすもすと夢中でクッキーをかじる人物が1人。
「で、そこにいるのが?」
「M14EBR、エマって呼んでやってくれ。おいエマ、自己紹介!」
声をかけると慌てながらも頭を下げてくれた。ん、なんかジェスチャーしてるみたいだがよくわからないな。横着しないで喋ればいいのに。
「クッキーはまだあるから、落ち着いても良いんだぞ」
「いや、あの子は事情があって喋れないの。
でも人形同士なら問題はないし、人間だってこれを使えば問題ないよ」
身振り手振りで挨拶をしてくれていたらしいM14EBR-RI、ことエマ。隣にいたエレナと名乗った銀髪の女性、いや人形か? が代わりに答えなにやら無線らしきものを差し出した。
「スロートマイク。付け方わかる?」
「......いや、もうちょい効率的に行こう。ちょっとまってな」
折角使うんだし、何より人形ってわかったんならこっちの方が親近感出るだろうしな。
えーと、なんか最近小型化に成功したとかなんとか言ってたっけな。軍用ヘルメットより軽いとかほんと、うちの弟は天才が過ぎる。
電源を入れたヘッドギアを被り、スイッチを手で探り当て上に弾く。
意識が一瞬だけ暗転、ノイズに包まれてから再起動する。
おおう、瞬間移動する感覚はまだ慣れないな......
人形用の回線は、と。これかな。
『あーあー、テステス。聞こえてるかい?』
『割り込み? あの、どちらさまで?』
『俺だよ俺、ガンスミス。目の前にいる人形ちゃんさ。今はスミ子ちゃんと呼んでくれたまへ』
『か、変わったことをなさるんです、ね?』
おお案外可愛らしい声、じゃなくて。
『こっちの方がニュアンスが伝わりやすいだろう? それに、クローズドにしとけば後ろのこわーいチビッコとも話さなくて済むしな』
『聞こえておるぞー』
『......物事そううまくいかないモンだな』
『あはははは』
さて小粋なジョーク? で場を和ませたところで本題だ。こいつは人間の隊長さんにも聞こえるように声に出すのを忘れない。
「そんじゃ仕事の話に入ろう。
俺にはメンテナンスをして欲しいって事だったな。
カスタムも時間があれば承るところだがまずは整備だ。
さ、出すもんだしな」
「戦術人形はリンクを切るのを忘れるでないぞ」
各々背負っていた銃を机の上に置く。
置き方でも結構性格が現れるんだが、みんな丁寧に扱ってくれてるようでなにより。
「M200チェイタックとは珍しいもんが出てくるな。それにKord機関銃......おいおい、スコープまで乗せてるとか随分と面白い事するじゃないの。
隊長さんのM27もなかなか良い面構え。真面目そうに見えてやっぱり真面目だった。
うーわこのスコープ高いやつじゃん! それに
FNCはカスタムは無しか。いじりがいありそうだぜ」
『あ、あのー......?』
「......っと、申し訳ない。ちょっと興奮しすぎたな」
「お主の悪い癖じゃぞ」
「ごめんて」
「おあついことでー」
客人の前だってのにナガンはいつも通り脇腹を小突いてくるのはやめろって。それとM21、棒読みがすぎるぞおまえ。さて、仕事モード仕事モードと。
「......みたところ大きな損傷はM14くらいか。こんなでかいキズ何やらかしたんだか詳しくは聞かないが、銃身にダメージ通ってるからちょっと時間かかるかもな。
他の銃はバラして見ないとわからん。それにパーツ在庫がない銃が半分だからな......ま、俺の頑張り次第としか言いようがないな。
ところで皆さんサブアームもあるでしょう? 出せオラ」
◇◇◇
「なるほどー、君はオールラウンダーになりたいと申すか。ならばこの銃身とこのオプションとアレとこれとそれと」
『あ、あのー、そこまでしなくても......』
「いやいやいや名指しで指名してくれたんでしょうだったらその期待に答えずにはいられまいてっと中距離用にダットサイトも差し上げよう任務ごとに使い分けたまへ」
『あ、これ凄い。くっきり見える』
「でしょ? 高いからねソレ」
「いーなー、羨ましいなー」
エマちゃんとおしゃべり中。
どことなく自己評価が低く感じるM14だなあと感じていた。服装や髪に気を使ってる訳でもないし、思考回路もM14のそれとは大違いで妙にかしこまってる。
PMCだから面白い経歴の持ち主なのか、はたまた中身が別物なのか......
『どうかしましたか?』
「いや、なんでもない」
ま、そんなわけ無いわな。
「はい取り付けおしまい。
調整のために試し撃ちして欲しいからレンジまで来てくれる?」
『わかりました。せっかくですし、隊のみんなも呼んでいいですか?』
「そうだねぇ......いいよ。弾代くらいはコッチで持つとも伝えといて」
暇を持て余すくらいなら銃撃ってた方が有意義になるか、と許可を出した。俺の裁量で済ませられる範囲だしな。
エマが連絡したのを確認してからシューティングレンジに案内する。今は席を外しているアサルト小隊の面々だが、そこは御付きのナガンが案内してくれるだろうて。
ありゃ、今日は珍しく人が多いな。空いてるのはと。
「シューティングレンジ6番使ってくれる? 他は使用中だから邪魔しないようにね。俺はちょっと調整用の道具持ってくるから。
M21、的とかスコアの見方とか教えてあげて」
『わかりました』
「かしこま!」
次回に続く!