ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー 作:通りすがる傭兵
「ねぇ、勝負してみない?」
隣でスコアを読み上げていたM21がこちらを見て言った。いきなり言われたので何のことか分からず首を傾げていると、彼女は話を続けた。
「せっかくおんなじような銃を使ってるんだし、1つ腕試しって事で。ただ人型の紙切れを狙ってるよりかはやる気出るでしょ?」
う〜む。つまり勝負をしようと言うことか。でも自分はそんなに銃の腕が良い訳ではないし、自信もそんなに無い。彼女には悪いけど断ろう。首を振って勝負をしないことを伝えるとM21はやれやれとオーバーに首をすくめた。
「ふーん、拍子抜け。傭兵は腰抜け揃いなの?」
今の発言は聞き捨てならないな。
自分が馬鹿にされるのは別に構わない。
が、
ネルソン達を馬鹿にするのは許せないなぁ。
良いだろう。その勝負受けてやる。イエスの返事の代わりに、紙切れの的の頭をぶち抜いてやった。
さぁ、どうやって勝負するよ?
「そうだねー。せっかく部隊で来てることだしチーム戦、と洒落込まない?」
◇◇◇
「......そんで結局俺のスイーツを賭けてバトルする事になったと」
「いやー、どうしてこうなちゃったんだろ」
「俺が知りたいよ」
席を外している間にどういうわけか勝負をすることになったらしい。
景品は俺の秋の新作スイーツ。確かに開発はしていたけどもこのために作ってたわけじゃないんだが。
しかも間の悪いことにほぼ完成といってもいい試作品が何故かちょうど人数分ある。未完成品を出すのは癪だが味はほとんど変わらんので今回は妥協しよう。
それに、
「へぇー、ガンスミスさんの新作スイーツ......ふーん、勝てばいいんだ」
「スイーツ......! スイーツ......!」
「何か面白そうなことをなさっているようですわね、わたくしも混ぜてもらってもいいですか?」
「ゲーム? やるやる!」
外野まで賑やかになっちゃ止められるものでもないとネルソン隊長ともども白旗をあげた。
そうなればとやるしかあるまいとナガンが仕切って結局射撃勝負、ということに相成ったわけだ。
対戦は以下の通り。
・Kord 重機関銃 《バラライカ》VS M2HB
・
・M200 VS Kar98k
・FNC VS FNC
・ネルソン(M27IAR) VS Am RFB
・M14EBR-RI VS M21
「ルールはチーム戦。個人の勝負ではなく全員のスコアを合計し、高い方のチームの勝利じゃ。
勝負についてじゃが、狙撃組は800m先のマトに対し10発の射撃を。アサルトライフル組は200m先のマト10個に速射を行う。
各自微調整が済み次第ワシに声をかけてくれ」
「ガンスミスさんよろしく!」
「よろしくじゃねえ自分でやれよ」
「けちー!」
開幕早々俺のところにライフルを持って駆け込んできたRFBは除き皆真剣にチューンを始めた。
想定される交戦距離よりやや短めに設定してあるということは、それぞれの技量の差が浮き彫りになるということ。さて、どうなることやら。
一回戦目 バラライカ vs M2HB
順当というか当然のごとくバラライカが危なげなく勝利した。そもM2HBは設計が古めなので追加オプションとの噛み合わせが悪く精度にブレが生じやすい。
1980年代設計のKord重機関銃はそこらへんの考慮もできている。要は年代的にちと太刀打ちが難しいのだ。
それでも十分食い下がった彼女には拍手を送りたいところではあるがな。
「むむむむ......」
「ははは、これが時代の差ってやつかな」
二回戦目 エレナ vs G36
実力伯仲で僅差の勝負となったが、総合点はG36の勝利となった。
速射自体はエレナが早かったのだが、速射の速度を下げてまでも正確性を求めたG36に今回は軍配が上がったようだ。
「実戦であれば貴女の勝ちですが、これはあくまでゲームですので」
「納得いかないんだけど!」
三回戦目 M200 vs Kar98k
最新技術vs戦前の遺物といった構図になった狙撃対決。近代モデル改造をしてるとはいえ100年ほど設計の開きがある銃だがそれを補う腕があれば良いこと。
まさかの同スコアでの決着となった。
「なかなかやりますわね、貴女も」
「こ、こちらこそ」
四回戦目 FNC vs FNC
FNC同士でのミラーマッチ。身体の性能は同格、銃は同じ、ならば求められるのは戦闘経験から導き出される最適解がどちらがより最適であると言えるのかどうか。戦場の違いから
「「お菓子お菓子お菓子お菓子お菓子」」
「わかってるわかってる、だからそんな睨まないでよ」
『が、頑張るから』
結果は......最後のお楽しみということもありここからは伏せさせてもらうんだけどね。だから君らは残りの4人にプレッシャー与えるのダメ、離れる!
五回戦目 ネルソン隊長 vs Am RFB
双方ど真ん中の穴ひとつしかなかったのだが、タイムは0コンマ5秒差でありネルソン隊長が勝利となった。
言っておくが、ピンヘッドを見たことは俺は生まれてこのかた今回だけだしこいつらおかしいよ。しかもこの中で誰よりもタイム良いんだが。
「くっそー、やり込み勢のわたしが負けるなんて......!」
「ははは、伊達に人間で傭兵してねーよ」
((こいつらどうなっとるんや))
六回戦目 M14EBR-RI vs M21
ここで全てが決まるラストゲーム。実は5回戦までの成績は僅かにAS小隊側のリード、しかしその差はほんの僅か。
それこそここの勝敗で全てが決まると言っても過言ではないほどにほんの少しの差なのだ。
「隊長さんはどっちが勝つと思います?」
「エマは勝てないだろうな」
「意外ですね。部下なのに応援しないとは」
「部下だから実力がよくわかるんだ。短い付き合いだけどな。それにーーー」
「あー、そういえばそんなこと言ってましたね。だから急に来たって訳ですか」
チャキ、とボルトが後退し初弾を飲み込む音が聞こえた。お互い準備できているという合図だ。
「自由に始めよ。双方が10発撃ち終わったところで終了と......M21! 人の話は最後まで聞かんかこの!」
ナガンの合図を待たずして引き金を引きはじめたM21。2発3発と撃ち込んでいくがエマは慌てるようすはなく、1発1発丁寧に構えるようだ。
「......こんな所でしょ」
M21が残弾を撃ち切り構えを解く。弾痕は中心を離れてまばらに散っておりそこまで点数は高くはないだろう。だが彼女が慌てる様子はない。
「さて、そろそろかな」
彼女の言葉と同時に放たれた弾丸が的から外れた。
「っ!?」
動揺を隠せないエマに対し、気楽そうに壁にもたれかかるM21がそのトリックを告げる。
「今日の午後って
「!」
「でもまあ、のんびりやればいいんじゃないの?」
ニマニマと悪い笑みを浮かべる様を想像して眉間にしわを浮かべたエマ。切り替えていこうとスコープを覗き込むものの強風のなかで射撃するスキルを彼女は持ち合わせてはいなかった。
◇◇◇
「いやー、なんとか間に合ってよかったよ。あ、これケーキです要冷蔵だから保冷バックに入れといてくださいねあと基地についたらすぐ冷蔵庫に入れる事。さっぱりした味の飲み物をお勧めしたいから紅茶の葉っぱ入れときますね?」
「なにからなにまで、いいのか?」
「こっちが好きでやってんですよ、気にしないでください」
フライトの準備が進む様を背景に隊長さんとお話し。
ついでに昨日の夜仕上げた完成品も渡しておけば100点満点だ。FNCのあの顔見ちゃうと罪悪感がひどいし、エマちゃんが必要以上に自分を責めそうだったもんで仕方なく。
「ところで彼女......エマちゃんは? 随分と落ち込んでましたけど」
「自分で立ち直ってくれるさ。それに、経験値を積めばあの程度の風なんともない」
「期待の新人ちゃんの今後に期待というわけですか?」
なにかM21と話してるらしいエマを指差せば、彼はなにを返すでもなく軽く息を吐いた。
「おーい、そろそろ出発だ!」
『わかりました隊長! 次はかつてよM21』
『もち! 今度は実力勝負で!』
「では、また会う日まで」
「こちらこそ。ご依頼いつでもお受けしてますよ」
差し出された手を握る。
ヘリの中から小隊の面々が名残惜しそうに手を振り続けている。
『そろそろ離陸します。滑走路から離れて』
『了解』
俺の合図とともに高度を徐々に上げていく武装ヘリ。小さな窓からはFNCやエマがこちらをじっと見つめ優しく手を見えなくなるまで振ってくれていた。
「今度も勝つ。なんとしてでも」
「うーんこの畜生」
「なんでよ! 勝てば官軍じゃん!」
「そこが畜生なんやぞ!」
お疲れ様でした
アサルト小隊.....PMC .L&M社部隊のひとつで、戦術人形と人間の混合編成となっている。詳しくはあちらさんの作品で!
ガンスミス......お菓子作れる設定を忘れられている気がする
M21......畜生ムーブをする