ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー 作:通りすがる傭兵
大変長らくお待たせしました
コミケ頑張りましょう。ぼくは2、3日目にちょっと行ってきます。
人生初だからおわわくわくすっぞ!
今回のお話は今頃の基地の様子を書いてみました。日常って難しいね。
「あれ、きょうの教官さんは?」
「ナガンさんの筈だけど......」
「しまった引き継ぎしてない! 本部は下の事情考えないんだからもー! とりあえず今日は予定通りの実戦射撃訓練、教官さんは非番の誰か連れてくる!」
「モシンナガンさんはやらないんですか?」
「ばっか! そんなの私がサボりたいからに決まってるじゃん!」
「......ていうことがあってさ、大変だったんだよもー」
「指揮官に連絡させてもらいますね」
「待って待って! 春田ちゃん待って! なんでもするから黙ってて! この通りだから!」
「ふふ、冗談ですよ。あと注文のカフェ・ロワイヤルです」
「ども〜」
Bar 『Spring filed』。最近大型改修を経た娯楽室の一角を占領する。木製のカウンターにシックな内装を備えたBar。
カウンターの端で白いボアコートをきたモシンナガンがいつものごとく酒を飲みながら愚痴り、仕切り役のM1903 スプリングフィールドが静かに聞く。
それはこの場所にこればいつでも見られる光景であり、或る種の風物詩のようなものだった。
「あつつ......ほんと、なんで何も言わずに出てったんだか」
「ナガンさんのことですか? 我々とは指揮系統が異なりますし、仕方のないことではないでしょうか」
「いやいやいや、同士に至ってそれは無い。長い付き合いだもの、すぐわかるよ」
「......そういえば、基地初期からの付き合いでしたか」
「3年と少しね。昔はよく小隊組んでたし。ガンスミスさんと同じくらいよ」
今じゃもう疎遠だったけどね、と言いながらコーヒーカップを傾ける。少し焦げてカラメルになった砂糖の甘味とと染み込んだブランデーの香り、そして死神こだわりのコーヒーの苦味と酸味が口一杯に広がった。
「頭硬いし上下関係だとか敬語だとか口うるさいしのは知ってるでしょ? よりにもよってその同士が何も言わずに出てくのはおかしいとおもわない? 私は思うね。同士だったら今ごろ手紙の1つや2つ寄越す筈でしょう?」
「単純に忙しいとかではないのですか?」
「まさかー! 教官の仕事と後方支援のまとめ役と戦略助言の仕事こなした上でガンスミスさんとのラジオをねじこんでるんだよ! タスク管理できないはずがないじゃん!」
考え込むスプリングフィールド。暫くしてある考えに至ったが、彼女はそれを口に出す事はしなかった。
「......きっと本部だと電話する暇もないんです。いつかは手紙でも届くでしょうし、のんびりと待ちましょう」
「はーあ、同士がいないと寂しくなるねェ」
シックな洋楽の中におかわり、という元気な声が響く。
バーの夜はまだ終わらない。
◇◇◇
第一整備室。もうすっかりガンスミスの仕事部屋という認識が定着したここはたいてい夜遅くでも明かりが灯っている。
ひとしごと終えた、と保護メガネを外したガンスミスがひとつおもいきりけのびをした。
「んー、今日も疲れたー!」
「お疲れ様。早く片付けて頂戴」
「......WA2000? なんでいるの?」
よりによって横の作業机にいた自分のことに気がついていなかったらしいガンスミスに対し呆れ顔を見せた。
「私の銃よ、見るのは当然でしょう?というかどうして隣にいて気付かないのよ」
「集中してたからね、声かけてくれれば良かったのに」
「邪魔しちゃ悪いでしょ。私は狙撃中に話しかける馬鹿は嫌いなの」
「いやいや、大丈夫だよ。作業中はいつも話してるくらいだしむしろ話し相手が欲しいくらいさ。ところで何のよう? カスタムの依頼?」
「ヤーパンでは年末に大規模な掃除をすると聞いたわ。それに倣って一〇〇式主導で基地の掃除をするの。
ついでに貴方に整理整頓の概念を叩き込もうと思って。ナガンは甘やかしてばかりだし」
「WAは厳しいなぁ。ナガンもそう思わない?」
いつものように己の相棒に話を振る。
『そうじゃなー。ま、こやつの好きにすればええじゃろう』
そんな投げやりな返事は聞こえた気がするだけで、静かに雪の積もる音だけが場を支配する。
暇を持て余しているように椅子に座っているであろう小柄な戦術人形の姿はここにはないのだから。
「居ないわよ、アイツは」
「......そういえばそうだった。本部に戻ったんだっけ?」
「元指揮官からはそのように聞いているわ。挨拶のひとつもないなんて失望したわ」
「急な話で暇もなかったんでしょ?ラジオはどうするかな......」
「やめるには丁度いい機会じゃないかしら、最近忙しいでしょう?」
つっけんどんに、それでいて事実を突きつけるWA2000。最近
少し俯いて、しかしはっきりと彼は答えた。
「......頻度は下がるけど続けるよ、楽しみにしてくれる人がいるからね」
「顔も見ない相手にそこまで尽くす必要はあるかしら。疑問だわ」
「感想を貰えるのはうれしいけど、そういうのでやってるんじゃないから。ただ強いていえばー」
「強いていえば?」
「ナガンと喋るの。けっこう楽しかったんだ」
整備室の明かりが消える。
いつものように、それでいて何かの終わりを示すように。
「はぁ〜〜どうしよどうしよどうしよ」
元指揮官こと戦術補佐官アリサ・マクレーンはひとり頭を抱えていた。
SV-98の口止めはすんでのところで成功したが、ナガンMIAの話は少数に漏れてしまった。その多くは古参だったためか口を噤むことに同意してくれたものの、10人を超える人形、人間がこの秘密を知った事になる。
間の悪い事にこの防衛戦中不在だった現指揮官、そしてナガンと1番仲が良いであろうガンスミスの2人にはこのことを伝わってはおらず、その心労も彼女の頭痛に拍車をかけていた。
「ダミーは回収できたけどメインフレームは行方不明。反応も切れてるし、ワザと隠すような理由もない。ここら辺に電波遮断できる地下空間もない。
鉄血もただ攻めてきただけで組織的な行動は見出せなかった。というかP基地から謝罪が来るということはユノちゃんがらみの事件だろうし100%ウチは無関係の被害者」
むー、と唸りながらS09地区外縁の地図を表示する。
09地区東部廃市街区域に表示されたマーカーはナガンの反応が最後に確認された場所だ。
ここは鉄血兵はいないがとにかく入り組んだ街並みであることが有名で、増改築した街並みに地図は役に立たず、老朽化の目立つ建物が倒れ道を塞ぐ。
ここで行方不明になったダミーも少数であるが存在し、人間については言わずもがな。ここを拠点にする盗賊がいるという報告も少なくない。
そのような危険地帯だ。捜索となれば大いに戦力を割くことになり基地の戦力は削がれる。
それを知って鉄血が何もしないはずはなく、襲撃直後で戦力再編中のこの基地の防衛能力は低い。
それでも心優しい彼はきっと捜索のために部隊を編成するだろう。
大切な仲間であり、先任の人材であり、本部所属であり、基地のムードメーカーであり、教官を務められる練度の高い戦術人形。
戦力として、
人形として、
人として、
あらゆる面で必要になる
ナガンと一緒にこの基地の始まりから現在まで同じ時を過ごしてきたものとして、彼女を助けたいという情もある。
しかしそれは戦術補佐官であり、元指揮官としての彼女は許容できなかった。
大規模攻勢の後、それを見計らったような同規模の襲撃は
ここがただの前線基地であれば、ゴーサインを出したかもしれない。
しかしここはS地区外縁部の重要な防衛ラインでもあり、小規模であるがこの背後には街がある。
一体の戦術人形と、何百何千もの人命。
天秤にかけるには対価が重すぎた。
無言で指揮官の机を漁り書類に承認判を押す。
訓練学校時代からの長い付き合いである以上、嫌でも物の配置の癖はわかる。例えば、結婚指輪と婚姻届を机の二重底の引き出し奥に隠しているとか。
それに道具類も半分以上は指揮官時代手に馴染んだもの、手続きマニュアルも当然頭に入っている。
「アナログ方式はよく非効率なんだの言われるけど記録は消しやすいのはメリットかな。あいつ現代っ子だからアナログ弱いし」
あとは適当な重要書類に混ぜて本部に郵送してしまえば晴れて真相は闇の中。書類さえなければいかに人形が口を滑らせようとも我関せずで押し通せる筈だ、と心の中で呟く。
報告書を軽く振ってインクを乾かしながら、改めて書き損じがないか確認する。
これを本部に提出すればナガンはあらゆる名簿から抹消され、09B地区所属
「そう割り切れれば、良かったんだけどねぇ」
もうすぐ歳の瀬。書類を茶封筒に入れる作業を終えた元指揮官。
窓の外に降り積もる雪を見ながら彼女はそうひとりごちた。
「寂しくなるなぁ......」
年末最後の投稿になるかと思います
それではみなさま、良いお年を。