ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー   作:通りすがる傭兵

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レポートからの現実逃避は楽しいですね。

というわけで深夜テンションとか鬱気分とかをレッツラ混ぜ混ぜした続きができました。
どういうわけか前後編のはずなのに終わってくれませんでした、不思議ですなぁ。


番外編 ナガンの消失 中編

 

 

 

 

「毎度思うがズボラと言われぬかお主?」

「これでも整理できてるんだが」

「それは整理できない人間の言い訳の通例じゃぞ」

 

 散らかったいつもの整備室でで書類をめくるガンスミスを揶揄うナガン。当の本人は不満げに頬を膨らませた。

 

「わしがおらんとどうにもならんな。居なくなった後が心配じゃわい」

「傭兵時代はしっかりやってこれてたんだ」

「でも昔とは仕事は質も量も段違いじゃろう? いい加減整理整頓すべきだとは思うが。まあ、お主が良いならそれで良いじゃろう」

「お節介なのか投げやりなのかハッキリしたらどうなんだ」

「わしは言うべきことは伝えるが、そこまでとやかく言うつもりはないぞ」

 

 机に腰掛け足をプラプラ揺らしながら、ナガンは当然のように言う。

 

「わしら戦術人形は、いつどこで死ぬかわかったものではないからのう」

 

 

何故笑っていられるのか。

プログラムされたから、もしくは理解が及ばないか。

それとも、自分とは違って兵士だから覚悟していたからのだろうか。

 

 

 

 

 

「という感じでお願い。あれ、どうしたの? そんな怒ってーー」

「場合によっては殺します。今からいう質問には全て嘘偽りなく正直に答えてください」

「し、指揮官さん?!」

 

 ヘラヘラといつものように振る舞った指揮官の眉間に銃口が押しつけられる。それでいても彼女は表情を崩さす、当然だよねと呟いた。

 慌てるのは隣で話をしていたM1911だ。何せホルスターの銃を勝手に抜かれたうえに銃口が上司に向けられている。しかも民間人がいる今日の基地内に限って。

 

「......何故隠したんですか」

「なんのことを?」

 

スライドを無言で引く。

 

撃鉄が倒れ初弾がこめられる。

 

安全装置などとうに外れている。

 

「ナガンのこと、どうして隠蔽したのか聞いているんです」

「私がそうすべきだと思ったからだよ」

「......話になりませんね。まず何がどうしてそのような結論に達したかそのプロセスを懇切丁寧にお話しください」

「し、しきかん! いったいどういう」

 

 発砲する。

 

「少し席を外してもらえますか? 今日は虫の居所が悪いようでして」

「し、失礼しましたー!」

 

 頬をに赤い線を引いたM1911は無言で何度も頷いた後、高性能戦術人形としての機能をフルに活用してこの場から逃げた。

 邪魔者がいなくなりあたりが静寂につつまれる。先に動いたのは銃を向ける現指揮官だった。

 

「2人っきりですね先輩。では吐くもんキッチリと吐いてください」

「そうだね。順序立ててだったかな。でも私はそういうの嫌い。

 

結論から言わせてもらうと、

()()ナガンを助けるべきだと思わなかった」

「......彼女の存在の大きさ、影響力を加味してですか」

「それでも私は助けるべきではないと思った」

 

黙り込む。何かを逡巡しているのか。

 目はまっすぐにこちらに向けたまま、しばらくしてまた口を開く。

 

「先程ガンスミスさんにナガンさんのお話を伺う機会がありました。

ナガンと先輩は一緒にこの基地を作ってきた仲だと。そうお聞きしました」

「そうだよ」

「何故ですか?今では疎遠だったかもしれません、たかが人形だったのかもしれません。

だとしても、冷徹にナガンを切り捨てられる理由が僕には理解(わか)らないんです」

「......そっか」

 

 元指揮官は目を閉じた。

 指令系統を無視した行動は反逆罪に他ならない。その罪に対する刑は死刑すらありうる。そういうものなのだ。

 

それに......良心の呵責が、無いはずがないのだ。

 

「じゃあ辞める。基地やめる」

「どうしてそう論理が飛躍するんですか!」

「わたしだって好きでこうしたわけないじゃない!」

 

反射的に目の前の人物を突き飛ばして、叫ぶ。

自分だって好き好んで死に追いやる事なんてしたくなかった、だけど、こうするしかなかったんだと。

 

「わたしは指揮官だから......人を死なせるわけには......可能性があるなら、できなかった!」

「全然話が見えてこないんです! 回りくどいのは先輩の悪いところですよはっきりと言ってください!」

「わたしは! ナガンを救うために払われる犠牲を許容できなかった!」

 

「だってそうでしょう! ナガンを助けようにもこの基地は万全とは言えなかった! 部隊再編、再訓練、消耗品の補充、何もかもがたりてない。そこに私事で部下を動かしたら確実に防衛ラインは崩れる。

そこを鉄血に襲われる可能性を考えたら、って! 考えたら、考えたら! そんなことできない!」

「その程度()()()()()()()()()()()()! 相変わらず周りが見えていないんですか!?」

 

銃を投げ捨て胸倉を掴み、壁際に叩きつける。背中から抜ける鈍い痛みに呻くのも御構い無しに後輩からの口撃は続く。

 

「いいですか!? ここにガンスミスさんが捜索に使用した監視衛星、隣のP基地には千里眼持ちのナデシコ指揮官もいるんです! 隣の08基地にだって頼んだっていい! 誰かに相談さえすれなどうにでもなったはずです! どうして誰にも相談せず握りつぶしたんですか! いまだに自分が指揮官だと勘違いしてるんですか!

 はっきり答えてくださいよ先輩!

これはあなたの悪癖が、人に頼ろうとしないあなたが引き起こしたことなんです! なんとか言ったらどうなんですか!

 黙ってないで答えてください! 何か一つでも言い返したらどうなんです! ええ!」

「うるさい!」

 

言われなくとも分かっている、これは自分のせいだ。ナガンを殺したのは自分なんだ。

あれからずっと、自分の中で誰かが言い聞かせていた。

それを正当化できる理由を見つけて、ごまかしてきた。

 

勝利のための犠牲だった。

民間人を守るためには仕方ないことだった。

そもそもこの程度で済んだことを喜ぶべきだった。

 

「私は間違ってない」

「間違ってます! あなたは彼女を見捨てた! 助けられる可能性を自ら切り捨てて!」

「違う違う違う違う! 私は指揮官としてこうするべきだった! 戦術補佐官として最良の手順を踏んだ! 私がナガンを殺したことは間違いなんかじゃない!」

「人殺しに間違いもクソもあったもんじゃないでしょう! 善悪をそんなものに押し込めて語らないでくださいよ!」

「そこまで」

 

 ゴム底の作業履特有の鈍い足音。この足音の主は何人といるが、指揮官に気軽に声をかけられる人物となれば自ずと限られてくる。

 

「ガンスミス、さん?」

「……そういえば置いてきぼりでしたね」

「はいそこまで、二人とも頭を冷やして。銃声がしたもんだから急いで飛んできたんだけど、どうしたのさ」

「っーーーーー」

 

顔を伏せたまま元指揮官はこの場から逃げ出した。

すれ違う最中、彼女は泣いているようで、悔やんでいるような。どんな表情をしていたかガンスミスにはわからなかったが、現指揮官は何も言わない。

 

「本気の喧嘩なんてらしくないじゃん、もしかして痴話喧嘩? それとも何か大切なこと?」

「……当の本人がこうではやる気も失せますね。でも、これが指揮官の務めですし」

「なんか言った?」

「ガンスミスさんには大切なお話があります。落ち着いて聞いてください」

 

M1895ナガンは、MIA、戦死扱いとなりました。

 

「やっぱりそうか」

 

納得していたように、それでも、受け入れることが難しいのか。眉をしかめ、深々とため息を吐く。

 

「ガンスミスさんはナガンさんととても仲が良かったです。だから、このような事態になってしまったのは自分の責任です、だからーー」

「別に責めたいわけじゃない、遅かれ早かれ覚悟してた事だ。それにーー」

 

 

 

『え、わし、勝手に殺されとるのか? 確かにちいとばかし生死の境目は彷徨ったがの、なんとか生きておるぞ』

 

「………… はいいいいいいいい?」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「ううむ、驚かそうと思うて生存連絡はこちらからというのは悪手だったか?」

 

09P基地のベッドの上でポツリと呟くのはそう、いつの間にか死んだ事扱いにされていたナガン。

 

「つながりましたか?」

「ああ、感度良好じゃ。あやつが誘拐されてから携帯を持つようになって助かったわい」

「そもそも携帯は連絡手段ですよ?」

「はてそうじゃったかのー」

 

医師を務めるPPdhー41に対しおどけてみせるナガン。その様子はお世辞にも万全とはいえない。人工皮膚は未だつぎはぎまみれ包帯だらけ、顔にも手足にも裂傷をの後遺症が痛々しい。だが大切な機能には何一つ欠けはなく、会話程度には十分。それでもベッドに寝かされているのは手足がまだ完成していないからだ。

 

「今では見ない旧式パーツ、崩壊液技術があるとはいえ設計図がないことには一苦労です。よくこんな体で無茶ができますね」

「人生にはやらねばならぬ時がある、たったそれだけのことじゃ」

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