ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー 作:通りすがる傭兵
今日も今日とてなんとやら、お久しぶりです。
バレンタインもすっ飛ばして懲りずに番外編ですね。ほんへはどこ......?
とはいえ今回はコラボですので真面目にやります。
というわけで、こちらは派遣まで。
鮭酒 様 作『終末世界にて碧い竜は地を清める』
https://syosetu.org/novel/198601/
とのコラボになります、それでは!
「ガンスミスさーん、依頼が来てますよー」
「あいよー」
あの事件からやっと1ヶ月が経とうとしている。
基地の雰囲気はまだギクシャクしてお世辞にもいいとは言えないが、いつも通りの馬鹿騒ぎができるくらいには戻ってきた。
ナガンの帰還とともに組織再編も進んだらしいのだが、俺にとってはどこ吹く風。いつもの如く銃の整備をしてたまにラジオもやり、ちょくちょく他所から飛び込んでくる整備依頼をこなす。
そう、こんな感じにね。
「ご無沙汰してますーガンスミスさん」
「ああ、お隣さんのL85ちゃんじゃあないの。依頼ってのはまた君らの基地からかい?」
「今回は友達から言伝を頼まれていましてー。銃器整備の依頼をしたいということでー、頼まれた訳なんですー」
「なるほど。じゃあ早速場所と依頼内容を」
「......考えなしというかなんというか」
ナガンのぼやきは聞かなかった事にしてと。ふんふん、流れの戦術人形で、有事の時に備えたいから銃のメンテナンスが入り用で、さらにすんでる場所も暗いから電気配線も見てやってほしいって?
「わっかりました引き受けましょう!」
「ほんとですか? ありがとうございますー!」
いやあ人助けもできて整備欲も満たせてお金ももらえる。なんと理に叶った仕事であることか、やはりこれが天職というもの、素晴らしい!
ペコペコと頭を下げていたL85ちゃんではあるが、他にも仕事があるとのことで去ってしまった。君の銃はデリケートだから早くバージョンアップすべきだと言いそびれてしまったが、問題はそこじゃあない。
「......指揮官ちゃんがいるということは裏でもある? いつもは言付けだけして帰る、おかしい」
「察しのいい人は好きですよ」
「なんじゃなんじゃ、やっかいごとであるならば口出しはするぞ」
「確かにそうなんですよね......
まず依頼先の基地の場所。ここはもともと研究所だったらしいです。誰が、どんな目的で、いつ建てたか。それは明らかではありません、危険すぎます。
そしてそこにいる流れの戦術人形。規約上、戦術人形は廃棄されても一応はG&K社に権利があります。要は、ルールによって彼女らは連れもどさないといけないんです。
最後に、そこの振る舞いです。
最近ここらでは未帰還になっていた戦術人形が元気で戻ってくる事例が相次いでいます。それだけであれば喜ばしいことですが、彼女ら曰く口を揃えて『廃墟から資材を得た』なんて言ってますが、うちの基地そこまで廃墟多くないです。となれば」
「ここで救助活動が行なわれていると?」
「その通りです」
ナガンの意見にうなずく指揮官ちゃん、なんだかきな臭い空気になってきたな。
「となるとつまり......どゆこと?」
「僕が思うに、彼女らが指揮官と仰ぐ何者かがいますね」
「わしも同意見じゃ、戦術人形だけでここまで積極的には動けぬ。とっくにどこかの基地へ身を寄せているはずじゃ」
「でも引き受けるって言っちゃったし、今更断りは入れにくいぞ?」
「ガンスミスさんなら引き受けると思ってましたよ、それくらい織り込み済みです」
大きくため息をついてから指揮官ちゃんが説明を始めた。そういえば後輩ちゃんとの付き合いもだいぶ長くなってきたっけ。
「ガンスミスさんは普通に仕事するだけで結構です。ついでにG&K社規約についてしっかりと伝えることが僕からのお願いです。
あとはそうですね、彼らが指揮官と仰ぐ何者か......その人物をこちらにスカウトするのも悪くないですね」
ウチはいつでも人手不足ですし、と付け足したところで指揮官ちゃんが思い出したように指を鳴らす。
「モチロン無料とは言いません。この依頼料は僕のポケットマネーから支払いますよ」
「こやつにスパイの真似事は無理だとは思うんじゃがなぁ」
「普通にしてればいいんだろ? ついでに言伝を頼まれた感じでやればいいってんなら引き受けるさ。場所は?」
◇◇◇
「まさかこんなところに研究所があったなんてな」
「峠を超えた先となると、何やら後ろめたいものを感じてしまうのう」
「全く。人体実験でもしていたんだか」
「さてな」
このまま道なりに行けばもうすぐじゃ、とナビゲート担当を買って出たナガンが言う。山道で若干入り組んでいるから近所とはいえないが距離的にはだいぶ近いとか。
「......と、もう道のりだから案内は不要か。
この湖をぐるりと回れば研究所跡じゃ。入り口は分からぬが、出迎えくらいはあるじゃろうて」
「おお」
視界が開ける。山の頂上付近、森にぽっかりと開いた湖が目に飛び込んできた。
一見するだけでとても澄んでいて、最近では滅んで映像風景だけだった自然の風情、それに近しいものを感じる。
「少し降りてもいいか?」
「よいぞ、わしもそう思うていたところじゃ」
長時間運転で凝り固まった身体をほぐしながら大きく息を吸い込む。いつも吸う排気や有機溶剤、そういった工業系の匂いとは無縁な自然のまっさらな空気。
「「実家(あちら)を思い出すなぁ......」」
無意識に感嘆の声を漏らす。
「......て、人形までそんなこと言うか?」
「言いたくなっただけじゃよ。そのうち話すと思うが......ん、通信か。少々古いコードじゃが......もしもし?」
耳に手を当て何かを話し込むナガン。と同時にチカチカと視界の隅が何やら点滅を始めた。水の反射でもなし、これはモールス信号か......?
「ミズウミカラシキュウハナレルベシ、キケン?」
「......よく分からんが離れた方が良いらしいぞ。すごい剣幕じゃ」
ナガンも似たようなことを言われたらしく、素直に車に戻る。エンジンはアイドリング状態だったから発進には手間取る事はないが、
「一体何があるのやら。湖にヌシでもいるのか?」
「ヌシとな?」
「湖の中でもひときわデカいやつの事さ。日本じゃ蛇だか魚だか、そこに住む神様のことも指すんだ」
「神様に喧嘩を売っている人形が聞くことではなかったな。まあ良い、神様でもいるなら御利益貰えるかも知れぬの」
「どこでそんな言葉ならったんだ?」
「わしの博識さを舐めてもらっては困る」
どれひとつ拝んでやるか、と助手席から興味本位で顔を出すナガン。その時だった。
莫大な音量の水音。
それも大魚が跳ねるといった生易しいものではない。
まるで、ウン十メートルサイズの巨大なものが跳ねるような......運転中とはいえ振り向いてしまった。思い返せばよく事故らなかったなオイ。
「な、んじゃそれはぁああああああああ?!」
「......俺、悪いことしたかな」
そんな呟きは、降ってきた大量の水にかき消された。