ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー   作:通りすがる傭兵

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大変長らくお待たせしました。すまんね


番外編 やきうすぺしゃる3

 

 

 

 

『さあ8回がおわり3-7! 戦術人形チームは9回で5点以上取らなければあとがありません! 今回の試合延長戦はありませんからね!

 しかしこの9回のマウンドには先ほどまでノーヒットのナガンが上がるでしょう。攻略できるのでしょうか!』

『ナガンの乱調を期待するしかないでしょうが、なんとか意地を見せて欲しいですね』

 

 

「急造サードとセカンドが突かれなきゃ十分守れるな」

「前に飛ばされるなとはひどい注文じゃがのう......お主の方は大丈夫か?」

「そろそろ限界だ。キャッチャー難しいわ」

 

 ナガンの質問に、プロテクターを外しベンチで汗を拭うガンスミスが答える。

 

「やっぱりナックルボールは投手捕手ともに負担が大きいですね......本当は9回に登板するのがベストなんですが」

「その点についてはなんも言えない!」

「本職のボクがもう少しリードしてあげるべきでした。しかしそれはそれ、これはコレですカリン」

 

 現場4点リードで有利な立場にある人間チームではあるが、内部事情は全く持って反対。この土壇場で計算が狂い始めていた。

 まず先発の元指揮官の7回での降板。通常のプロスポーツであれば及第点のソレだが、このチームには他に投手はナガンひとり。さらにナガンはナックルボーラー、バッテリーの負担は大きい。

 

 次にガンスミスさんの体力のなさ。普段の昼夜問わない勤務体系のおかげで体はボロボロ、そこに秘密兵器としてのナガンの投手練習への付き合いでここ最近身体をしっかりと休められていなかった。

 最初こそ比較的負担少なめのサード守備で体力温存はしていたが、ナックルボールを止められる捕手がもういないということだけあって負担は大きい。

 最後に、ナガンの登板における守備体型の変更。元々ガンスミスやナガンの適性は内野守備。運動センスの塊である元指揮官はともかく、ショート初挑戦の後輩の守備はおぼつかない。かといって他に守れる人員もいない。

 

 球が前に飛んでいないからバレていないだけであってこのチーム、内野守備はファイアーフォーメーション。

 外野もカリーナのレフト守備は一流のもののそれ以外は素人の草野球。外野も内野と同様ほぼ守備難の炎上まったなしなチームなのである......

 

「でも4点差だ! 1失点2失点は気にするな、確実にアウトを取れば終わり! 勝つぞ!」

「「「「了解!」」」」

 

 

『運命のラストイニング9回表。スコアは3-7と大幅にリードを許す戦術人形チームですが打順は1番からの好打順! なんとか点をとってつないで欲しいものです!』

『バッター1番 セカンド スコーピオン!』

「よーっし!」

 

(足とパワーはある、警戒して行こう)

(ナックル中心じゃ、行けるか?)

(なんとか)

 

 サイン交換を交わして投じた第一球、真ん中少し下のナックルボールを、

 

「ボール!」

(低めは振らない作戦、低めは振らない作戦......)

(見送った......? こいつのことだし狙ってくると思ったんだがな)

 

 続く2球目ナックルボールも見送る。今回はストライクゾーンに入ったもののピタリとも動く気配なし。

 

(ナックルを捨てにかかってるのか? 気になるな、点差もあるし高めにくれ)

(ふうむ......お主がそういうなら投げるが)

 

 第3球は高めに投じられた変化量の少ないナックルボール。

 

「おりゃって......あれ?」

「ファール!」

 

 クリーンヒットではないもののバットの上っ面を掠って後ろへ飛んでいった。明らかに先ほどとは違う積極的なしせいに、ガンスミスは低めは諦めろという作戦だろうとあたりをつける。

 

(しかし9回からで間に合うか見ものだな)

 

 続く4球目、真ん中から下に沈むナックルボールは見送って、

 

「ボールスリー!」

「よーし!」

「焦るな焦るな! タイミングは合ってないんだ!」

 

 バシバシとグローブを叩きながら声を張るものの、状況は芳しくないのが現状だ。

 

(次もナックルだ、これは決まらなくてもかまわない)

(......わかった)

 

 4球目もナックル、しかしこれは外れて四球、続くバッターも四球を選びノーアウト1、2塁のピンチを招く。

迎えるは3番、今日は不調のM14。

 

(タイミングは合ってない。低めに集めれば大丈夫だ)

 

 盗塁警戒を兼ねて様子見に一球ボールゾーンにストレートを外すサインを出し、確認したナガンが足を上げる。

 同時、ベースからリードを取っていたスコーピオン、89式が飛び出した。

 

「盗塁だ! サードで刺す!」

 

 タイミングは悪くないが球種はストレート。十分に三塁アウトは取れるタイミングのはずだった。

 

「ふ、ぬっ!」

 

 半ばバッターボックスから身を乗り出し強引にバットを振り抜くM14。鋭いあたりでもなかったものの、12塁間を抜けてライト前ヒット。

 

「ヒットエンドラン、舐めた真似を」

「へへーん、どーよ!」

 

 快速を飛ばして全力疾走、ボールがホームに送られてくる前にスライディングしてホームを踏んだスコーピオン。

 

『後がないのにもかかわらずに強硬策に打って出ました! しかしこれが見事に成功!』

『もしフライであればゲッツーの可能性も大きかったはずです。なかなかの賭けにでましたね』

『なおもランナーを1塁3塁に置いて本日好調のNTW-20! 練習ではホームランを連発するパワーもあり、ここで1発出れば試合を振り出しに戻せます!』

 

「......来い」

 

 ヘルメットから桜色の髪を覗かせ、言葉少なくバットを構えるダネル。物静かな彼女だがこの打席においてはそれが不気味さを生み、威圧感のようなものすら発していた。

 

(......敬遠する方がマシだな。今日は好調だし、ミートもうまいが本質はホームランバッター、1発同点もある以上勝負したくないのが本音だ。

 そんなことすればノーアウト満塁、こちらの士気もダダ下がりになるに決まってる。

 ここは是が非でも三振......最善はホームでアウトを取ることだが、現実的にはダブルプレーが理想。

 なんでもいいからアウトを取って流れを断ちたい。頼むぞ)

 

 出したサインにうなずきセットに入るナガン。

 初球投じられたのは、ストライクゾーンギリギリのストレート。ダネルはこれを見逃しワンストライク。

 

(直球狙いじゃないのか? とりあえず次はナックルだ。

外野は定位置すこし後ろ、犠牲フライは仕方ないから長打警戒。低めなら振ってこないはずだが)

 

 続く2球目に投じられたのは真ん中低めのコースにナックル。際どいところではあったがこれを見送ってボール。

 

(......やっぱりか。低めにナックルを集めさえすれば打たれないはずだ。カウントが悪くなったら手を出すだろ)

 

3球目同じくナックル低め。

今度は決まってツーストライクワンボール、追い込んだ。

 

(ピクリとも動く気配はなし。直球狙いに絞ってるか? だったらそんなもん投げさせるかよ。次もナックルだ)

 

ナガン第4球、投じられたのはもちろん決め球ナックルボール。

 

(どう変化するかはわからないけど大体の軌道はわかった。なら、思い切り引き付けて最後の微妙な変化を見極めればいいだけ。

 戦場と同じ、敵をよく見て......)

 

()つ」

 

 真ん中低めボールひとつ外れるくらいのボール球。

 ダネルはそれを目一杯引き付けて、救い上げるようにバットを振り抜いた。

 

「嘘だろっ!?」

『これは目を見張るような大飛球! 流し方向に飛ぶ打球が高々と空に上がる! これは入るか、入るかーーーーーっ!

 

ファールゾーンに入りましたファールです。審判の判断はファール、これには人形側ベンチは意気消沈と言ったところ。逆に人間側は命拾いしたことでしょう』

『あと数センチでホームランだったでしょう、惜しいですね』

 

(あぶねーーーーーっ!)

(し、死ぬかと思ったわい......)

 

しかしホームランと認められなければただのファールボール、カウントは以前投手側有利のまま。

 

では、あるのだが。

 

(困ったな、投げる球がないぞ)

 

 M14のヒットエンドランに見られるように最終回の作戦はおそらく直球狙い、ストレートは投げにくい。

 決め球ナックルは先ほどのファールから察するにタイミングや変化に対応されている。投げられない。

 ナガンが他に投げられるのはフォークとカーブだが、元指揮官の投げるものに比べれば質が落ちる。2安打と好調でタイミングを合わせられているダネルには投げづらい。

 

悩みに悩み、ガンスミスはサインを出した。

 

(アウトロー(外角低め)直球勝負。こまったらここに投げろと偉い人は言っていた)

 

 撃たれるくらいなら気持ちよく吹っ飛ばされたほうがマシ。それに元指揮官のスタミナも幾分か回復してるだろうし、いざとなれば交代してもらうおう。

 

 そういった心持ちの安全策。その意図が伝わっているかはわからないが、ナガンは首を横に振る。

 

(ダメなのか? じゃあインハイ(内角高め))

 

これも首を横に振る。

 

(......じゃあフォークとか? 今日は一球も見せてない)

 

これもダメ。

 

(カーブで緩急をつける。これも見せてない球種だし)

 

 自分のサインに縦に首を振ってくれない。たまりかねたガンスミスは思わず立ち上がりタイムを要求した。内野陣がマウンドに集まる中、ガンスミスが不満げに口を開く。

 

「確かにダネルは今日当たってるし、ノーアウトのピンチだ。どこに球を投げればわからなくもなる気持ちは理解できるがーーー」

「最後の一球、わしに任せてはくれぬか」

「......どこに投げるつもり」

「ストレート、ど真ん中」

「正気か?」

「正気じゃよ」

 

 バッターにとって1番打ちやすいのは当然真ん中の直球。そこにあえて投げ込むという頭のいかれたことを言う相方に対し思わず聞いてしまうのも無理はないだろう。

 

「......いいんじゃないですか? 意外と打たれないかもしれないですよ?」

「面白いこと言うねぇナガン。さすがベテラン」

「オイオイなんで乗り気なんだよ正気とは思わないんだが!?」

「他に案があるのか?」

「それはーー」

「捕手が全て引っ張っていく必要もない。投手に任せることも大事ではないのかね?」

「しかしだな」

 

 食い下がるガンスミスに対し、ことの発端でありバッテリーであるナガンが呆れた顔でグラブで彼の横っ腹を叩いた。

 

「別に()たれても死ぬわけではない。遊びであればそこまで肩肘を張り詰める必要性はあるまいて」

「遊び......」

「お主も言うておうたじゃろう、これは草野球、プロリーグの試合でもなければ何かを賭けている訳でもない。

発起人だからといってそこまで頑張る必要性はないのじゃぞ」

 

 へんに真面目なところがお主の悪癖じゃよ、とぼやきながらもガンスミスをホームベース側へと押し出した。

 

「しっかり構えろ。それがお主の役目じゃろうて」

 

 

 

 

「話は終わった?」

「ああ、考えすぎは良くねえな。ダネル、ストレートだ」

「......予告三振、てことかしら? 余裕ね」

「違うね、ナガンが投げたいっていってるんだ、打たれるわきゃねーだろ」

「そう」

 

 短く返し、バッターボックスで構に入るダネル。こちらもとガンスミスは注文通りミットをど真ん中に構えた。

 

 

 ロジンバッグを地面に投げ捨て、吹いて手から滑り止めの余分なチョーク粉を飛ばした。

帽子のツバを触る合図は了解のサイン。

その目線は真っ直ぐにミットだけを見つめている。

 

 

『さあ、ナガン大きく振りかぶって......!』

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「辞表ね。どこに向かうつもり」

「少し......カナダの方へ行こうと思います」

 

 09B地区執務室。そこには制服でなくロングコートを纏い荷物を纏めたダネルの姿があった。

 指揮官は不満そうに辞表を見つめめつつ、判子を押して自分のサインを書き突き返す。

 

「流石に辞めるのは認められない。こればかりは責任問題にもなるからボクの首が涼しくなってしまいます」

「......そう」

「だけど、君は不幸にも訓練中の事故で全損してしまったわけなんだよね。基地でそのような事故が起きてしまったことにボクは悲しみを隠せないよ」

 

 突拍子もない事を言い出した指揮官に首を傾げるダネルだったが、指揮官は振り返って書類を手渡してきた。

 

「と、言うわけ。部外者はささっと退出してもらえると助かるね」

「......これは」

「このご時世だから戸籍偽造なんて余裕なのよねん。

 

メジャーで大成する事、これがボクの最後の命令(オーダー)

 長い任務になるけどできるね、NTW-20」

「......NTW-20、任務を拝命します」

 

 綺麗な敬礼をお互いに交わし、この場を後にするダネル。

 

「......全く、人間らしくってサァ」

 

指揮官が眺める掲示板の端には、こんな記事が張り付けられていた。

 

『主砲の1発! 逆境を打ち砕く20mm砲!

 

人形と人間のチームで先月開かれた草野球。中盤までシーソーゲームが続くものの、9回表に走者一掃のツーベースをはじめ4安打2HRの固め打ちを披露したNTW-20の活躍によって劇的な勝利を収めました。

対する人間チームは助っ人ナガンが最終回突如崩れ......』

 

 





プロ野球開幕! プロ野球開幕!

やきうの詳細な解説はまたいつか
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