ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー   作:通りすがる傭兵

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線路は続くよどこまでも。

救いはないんですか......?


番外編-Co 北に向かいて死神を討て Ⅲ

 

 

 

 

「この......大馬鹿もの!」

 

ナガンが第一声に発した言葉は罵倒、命の恩人であり、ハンドルを握るガンスミスに対してだった。

 

「馬鹿! 阿保! 間抜け! うつけもの! ズボラ! 人見知り! 内弁慶!」

「おいおい叩くなって」

「どうして助けに来たんじゃ馬鹿者! お主だけは巻き込みたくなかったというのに!」

 

 ポカポカと殴りかかるがガンスミスはそれに対して呆れ顔でため息まで返した上、空いた右手でナガンの眉間をデコピンで弾き飛ばした。

 

「お前はよっっっっっっっっっっっぽど自分のしたことを理解してないらしいな!」

「痛いぞ!」

「やかましい! デコピン程度なんてな、お前が居なくなってる間、どれだけ寂しい思いをしたか、そんでもってどれだけ基地で面倒ごとがたまったか! そのしわ寄せされた身にもなってみろこれくらいのお仕置きじゃ軽いくらいだ!

 

ラジオのお便りがくるけど収録もできないし台本も面白くないやつばっかりできる。

 WA2000が毎日やってきてやれ掃除しろやれ整頓しろやれ精度が甘いやれ新人が生意気だとうるさい。

 他にもあるぞ、元指揮官ちゃんは大荒れするわ後輩ちゃんもぶちぎれて大喧嘩に発展するわ、おかげで基地の居心地がどんなに最悪だったことか。他にも問題が山積みだ!

お前が居ないとうちは回らないんだよ!」

「お、おう」

 

 拳をハンドルに叩きつけ溜まりにたまった不満をあらわに様子におもわずたじたじになるナガン。もう1発と右手をデコピンの形にしてナガンの眉間に向けると、これだけの不満を抱えられるのも無理はないと諦めて目を瞑るが......

 

 帽子をとり、ぽん、と軽く頭の上に手が乗せられる。顔をあげればこちらの方を見ては居ないものの、優しげに2度3度と頭を軽く叩いた。

 

「とにかく無事でよかったよ」

「......おぬし」

「うえー、砂糖を吐きそうってこんな感じ?」

「甘い甘い、他所はもっと甘ったるいのやってるから。こんなの1gにも入らないよ」

「ガバメントお主ちと口を閉じろ」

「こっちだってとばっちりで顔に傷作ったんだよ、冷やかすくらいはやってもいいでしょ?」

 

 もう直ってるけど、とは口に出すはずもなく。

 

「それでこれからどうするのリーダー。あの妙な集団に喧嘩を売ったはいいけど行く当ては? てかそもそもアレ何?」

「うにゅ、私に聞かないでよ」

「そうじゃな......頭の上のこやつに聞けばよかろう」

「おい傷つけんなって修理代給料から差っ引くぞ!」

 

 徐にグリップで車の天井をぶっ叩いたナガンの奇行に思わず叫ぶガンスミスだが、目線を前に戻せばフロントガラス上部に映り込む謎の男と目があった。

 

「おいおい気付いてんのかよ。おっかないねぇ」

「のわーっ!?」

「よそ見するな殺す気かよ」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「で、どうして引っ付いてきたんじゃイーサン?」

「イーサン? 知り合い?」

 

 一度安全な場所で話し合うために物陰に車を隠そうと、元はガレージか何かだったらしい場所に車を止めた。シャッターがわりの瓦礫を積み上げればそれなりの目眩しにはなる。

 そして先ほどから銃を離さないナガンが剣呑な雰囲気で質問すれば、軽薄そうなダミ声で男は返した。

 

「ついさっき殺されかけたりしたところ」

「ふーん......て事はつまり、敵ってことでは?」

「そうなるな」

 

 その発言に銃口を向ける人形たちだが、男は慌てて挙げた両手を振って抵抗の意思がないことを示した。

 

「どうしてわざわざついてきたと思ってる! お前さんたちどこかの傭兵かなんかなんだろ? ロドスに雇われた」

「ロドス?」

「おうまじかよアテが外れたな......」

 

 しまったしまった、と頭を抱えた様子のイーサン。しかし先ほどから首を捻って考え込んでるガンスミスが口を開く。

 

「見れば見るほど妙な顔だよなぁ。水色の髪といい灰色の肌といい......」

「何だおっさん、サヴラは見た事ねえのか」

「サヴラ?」

「お前らよっぽどの田舎者なのか?」

 

 ほれほれ、とイーサンが徐に声をかけると、青い爬虫類然とした尻尾が彼の背中から覗く。ファンタジー世界のような信じられない光景に固まる一同と、キョトンとするイーサン。

 

「おいおいなんだよ。そのバケモンでも見るような目は、見せ物じゃねえの」

「......話せば長くなる。今は無視して進めて欲しい。

お主の目的は? 何故お主はここにいる」

「ちょっとばかしあてが外れたが、まあいいか。

 お前さんらの会社にちょっと雇って欲しいんだ。レユニオンはもうウンザリなんだよ」

「あの組織を裏切ると」

「そうなるんじゃないか?」

 

 無言で銃を構え、照準を合わせ続きを促すナガン。それに対してイーサンはやれやれと首を振る。

 

「だってあそこのメシ不味いんだよ。メシは1日1回あればラッキー、それもかったいライ麦パンを塩水を変わらないスープでふやかして食べる。やってらんねえ」

「そりゃやってらんねーわ......」

「それで? それだけか」

「それだけだが?」

 

静寂が場を支配する。

 

 食の問題というのは、案外侮れない。こと軍隊においてはそれは顕著であり、厳しい規律に守られる軍人の数少ない楽しみでもあるからだ。部隊の士気を高く保つため、食事に力を入れる軍隊は多い。

 例えば護衛艦ごとに特色を持つという自衛隊海軍の「金曜のカレー」や戦車に湯沸かし機を取り付けいつでもお茶が淹れられるようにしたイギリス軍、水の貴重な砂漠でパスタを茹でたという与太話の残るイタリア軍など、食と軍隊の逸話は数知れず。現代保存食で有名なフリーズドライ製法も、開発が進んだのは軽量でも美味しい軍用糧食開発のため。

 

それくらい食事と軍隊は切っても切り離せない。

 

 しかし、戦術人形は食事が不味くても文句なく稼働する。士気なんてあって当然であり、そもそも不満を漏らさない。

 

つまるところ、食事に文句をつけるなんて頭がおかしい、なんてことを考える戦術人形も多いわけでーーー

 

「それだけじゃないじゃろう。吐け」

「信じてもらえないか?」

「その程度で裏切れるなら軍人ではないわ。二重スパイをやるつもりならもっとマシな嘘をつけ!」

「ストーップナガン! その人本気だから! 飯がまずいのは死活問題なんだからーっ!!!」

「......本当か?」

 

 手が滑って発砲しかねないほどヒートアップしてたナガンを止めるべく、ガンスミスが思わず擁護に入った。心底胡散臭い物を見るような目で見るが、その真剣な頷きようと信頼からとりあえず信じることにした。

 

「それに、道案内(ガイド)役は欲しいだろ? 」

 

 こちらの足元を見透かすような発言も決めてだったかもしれない。どうする、と違いに責任を押し付けるように目線だけで話し合って、ナガンが代表して答えた。

 

「依頼は道案内。報酬は......ロドスへの口利き」

「ーーーそれで、雇ってくれるんだな?」

「臨時雇用じゃ。報酬も出来る範囲は限られる」

「とっかかりができただけマシってもんだ。

俺はイーサンだ、よろしく」

「......ナガンと呼べ」

「じゃあ、まずは状況説明から。これも依頼のうちだからな」

 

よっこらせ、とその場に腰を下ろし、ガンスミス達にも座るように促す。指示にしたがって腰を下ろす一同を見渡し、舌で唇をぺろりと舐めてから口を開いた。

 

「じゃあ最初にーーー」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

「と、いうところだ」

 

彼が話してくれたのは、ごく簡単なことばかり。源石(オリジニウム)という新しいエネルギーの発見と、それに伴う弊害によって生まれた「感染者」という存在。

 虐げられた彼らが産んだ戦乱と、彼らを救おうとする組織「ロドス・アイランド」。

 

「それは救いようがないな......」

 

 話を聴き終わったのち、唯一の人間であるガンスミスが思わずそう言いたくなるくらいにこの世界は詰んでいる。

 「感染者」は身体の内部から肉体が源石に置き換わりいずれ死亡し、そしてそれは新たな「感染者」を生む。これを遅らせる治療法はあっても完治は不可能、不治の病であり必ず死ぬ病。

 

「でもただ一人で死にたくないから巻き添えで死んでくれってか、迷惑この上ないな」

「1人で死ぬより有意義な死を迎えたいのさ。奴隷のように使い捨てられて道端で死ぬより、戦って死ぬ方が100倍マシってもんだろ?」

「それにこの世界の感染者への弾圧は半端ではないのじゃ。先の大戦でのユダヤ人の如く彼らは排他され、拒絶され、息絶えてゆく」

「それが誰にでも起きうるのさ。俺だってそうするし、されたからな」

 

 さも重要ではないとでもいうように、呆気からんと自分は感染者だと言い放ったイーサン。驚き少しだけ距離を取ろうとするガンスミスに対して気にするなと言葉を続けた。

 

「俺はまだまだ軽いもんさ。症状が進んでるやつは身体の表面に石が浮かび上がってくる。人に感染るようになるのはそれからだ。今は安心していいぜニーサン」

「お、おう......」

「それにすぐ感染るわけじゃないから安心しろ。ま、食べたりすりゃあ一発アウトなんだが、そんな馬鹿そうそういないしな」

「......皆事情は分かったな。

 では、ロドスの戦力はどこに布陣しているかわかるかイーサン。早いところ運んでやらねば、ジェシカは間に合わん」

「ちょっと待てよ、地図は......ここだな」

「テーブルありますよ」

「お、ありがてえ」

 

 瓦礫の山から引っ張り出してきた机の上に地図を広げながら、手渡したペンでどんどん書き込んでいく。

 

「現在地がココ。でー、俺らの拠点はこの付近。

つい1週間前にロドスで戦闘があったのは、7ブロック先。

でリーダーは市庁舎に布陣してるから、攻めるとすればここじゃねえの?」

 

 彼が丸をつけたのは、市庁舎から少し離れた商業施設。ここにも敵が布陣していることはメモしてあるが、ここからなら市庁舎がよく見えるなど作戦本部としては申し分のない立地。

 

「ワシとしてはその隣の病院を目指すべきじゃと思う。そこに医療器具が残っている可能性もある、応急処置を考えるならここじゃ」

「オーケー、ならそこにしよう。ART、指揮は任せる」

「かしこまり!」

 

 ピっ、と軽いふざけた敬礼を返してからてきぱきと指示を飛ばし始めるARTを見て口笛を吹くイーサン。

 

「コイツは随分と調教されてんね。幼女愛好者の歪んだ形か? やになるね」

「......なんか勘違いしてるようだけど、俺はロリコンじゃないし彼女らは」

「ハイハイ。ただの少年兵だろ?」

「言い争う時間も惜しいんじゃ! いいから!」

「後で説明するから真面目に聞いてくれよな!」

 

 たくもー、とぼやきながら車のエンジンをかけようとキーを捻るがなかなか始動しない。そろそろオーバーホールかねぇ、とかけ直すがやはりうまくかからない。

 

「おいおいお主こんな時に限って故障か?!」

「おかしいな、ちょっとボンネット開けてくる」

「早くしろ!」

 

 どこかさっきぶつけたかな、と首を傾げつつロックボタンを押そうとかがみ込もうとして。

 

鋭い風切り音と、何か突き刺さるような鈍い音。

 

「きゃああっ!」

「LW!?」

「「総員降車、戦闘態勢!」」

 

 荷台から転げ落ちるLWMMGに驚くIDWには目もくれず、ドアを蹴破り物陰に身を隠すARTとM1911。

 

「ボウガンとはまたややっこしい! 狙撃手は?」

「違う、焦らないでARTちゃん。これはーー」

「これは本命ではない! 気を緩めるな!」

 

 ナガンの発言と同時に、外から突き破られる外壁。

 

「総員突撃! GO! GO! GO!」

「つっこめー!」

 

 くぐもりながらもハッキリと通る掛け声を合図に雪崩込み、砂煙の中から姿を表す謎の部隊。

 

「私の教え子をこんな風にするなんて」

 

 負傷したLWMMGを物陰に引き摺り込み、抜いたボウガンの矢を握りつぶしながらM14が銃を構える。

 

「最っ高にソソるじゃない......!」

 

 左手に銃剣を構え、ひとり舌舐めずりをしながら。

 

 

 

 

 

 

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