ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー 作:通りすがる傭兵
嘘です。さぼくってました。
「ねえナガン、やりにくくない? こう戦術が未発達というか、動きがトーシロ臭いというか」
「元を正せば暴徒の集まり、軍隊経験者は多くとも教官の方はおらんのじゃろう。風は南3m。距離1570m」
「
銃声のたび薬莢が宙を舞い、スコープの先で誰かが倒れ伏す。
廃ビル屋上前線からつごう500mの要所に陣取るM14とナガンはそんなことを話しながら援護射撃を行なっていた。
「ほらまたカバーリングが甘い。足に一発と」
「......命中。そろそろ勘付かれると思うか?」
「私はまだいけると思う、続行しよ」
「では観測を続ける。着弾は太もも中央部じゃ」
「狙いバッチリ。ガンスミスさん相変わらずいい仕事するぅ!」
LWMMGの高倍率スコープの予備を改造して取り付ければM14であっても1km先まで銃弾は届く。戦場での思いつきでは難しい事だが、ガンスミスにかかれば近距離チューンのM14でさえ遠距離狙撃銃に早変わりだ。
「しかし硬いしウザったいね。アーツってのは」
「身体を内部から作り替えていく激痛と恐怖に耐え抜けばじゃがな。それに寄せ集めとはいえ防弾装備まで一丁前に揃えてからに」
「前線組は苦労するねぇ」
「そのための後方支援じゃ......次。敵術師、狙えるか?」
「フードのいけすかない人影なら」
「風向きそのまま。距離1639m」
「あいよっ」
戦術人形の正確な諸元と戦闘経験、それさえあれば後は銃に文句をつけるしかない精密射撃が実現する。今度は頭から血を吹き出して人影が倒れ、護衛らしき影が物陰に散っていった。その機会を逃す事なく黒パーカーの重装オペレーターが道を切り開いてゆく。
「......あの動き、本当に製薬会社の私設軍なのか?」
「うちだって元を正せば民生品だけど?」
「......ま、民間人を戦場に駆り立てるのはどちらも同じか」
「あー、そろそろ限界射程じゃない? 2000mは厳しいよ」
「ではポイントBへ移動する。アーミヤに連絡するか......む」
単眼鏡で戦場を見渡していたナガンが疑問の声を上げ、一方向に目を凝らす。そして無線のスイッチを入れた。
『こちらBeta01フロストノヴァを発見。区域は東-2-1』
『アーミヤ了解。作戦を第二段階へ移行します』
短い返答ののち無線は途切れ、腹這いになっていたM14が立ち上がり砂を払う。て早く狙撃スコープをダットサイトに付け替え銃の先には銃剣を取り付ける。マガジンを10発のものから30発多弾マグに入れ替え、近接装備に意識も外装も切り替えた。
「第二ってことは祭りの時間だね」
「そうなるな。しかし何故よりにもよってお主が選ばれてしまうか」
「いっちゃん強いから仕方ないよね〜」
「......では移動するぞ。この狙撃ポイントは放棄する」
「りょーかいっ」
「てはず通りならばジェシカの部隊と合流のはずじゃが、連絡はなしか」
窓枠に引っ掛けたアンカーにハーネスをかけ、ザイルを伝ってビルから滑り降りながら無線機に手を伸ばす。足元を見ても人の気配はなく、静かな路地裏が広がっているばかりだった。
『こちらBate1。 Chicago1応答を』
『こちらChicago1ジェシカ! 現在戦闘中のため合流は難しいです! お先にどうぞ!』
「あらら」
「......まあこういうこともあろう。損耗は避けつつ前線を目指すぞ」
「潜入ミッションは不得意なんだけど」
「やれと言っている」
「はいはーい」
「西から迂回する」
短く言葉を交わした後に、お互い擬装マントを目深にかぶり、腰を低くしながら走り出した。
「......なるほど、そういうカラクリか」
◇◇◇
「ところでなんで銃使わないんだろうね。剣だのやりだのクロスボウガン、まるで中性だか石器時代だか」
「銃が貴重品だと聞く。なんと発掘されるとかなんとか......整備がなっとらんとあやつが怒鳴っておったのう」
「いやいや、銃身の煤取りをライフルがしてないのはサボってるとしか思えないね。分解整備も知らないし、銃手舐めてんのかって感じ」
「とはいえ、異世界とはいえ見慣れた銃ばかりだったのは面白かったのう」
「Vectorにエンフィールド小銃にデザートイーグル。ガンスミスが手元を見もせず分解を始めた時の表情といえば傑作だったのう!」
思い出すのはつい先日のこと。
『おー、イイ銃持ってるじゃないの!』
『ちょっとー、それ貴重品だから触らな......』
『あ、ごめん。バラしちゃった』
射撃訓練場でエンフィールド小銃を持っていたオペレーターとガンスミスの喧嘩といえばしばらく話題になる程の騒動だった。
『それとさーっきから見てるけどね。エンフィールドの持ち味は連射力なのよ? ワンマガジンこんなもんで打ち切らないと。分間30発くらいしないと』
『え......は......は?』
『あと整備甘すぎ! パーツへたってるし銃身はライフリング削れまくりススたまりまくり! こんなんじゃ当たる狙いも外れるじゃんか! 銃持ってるの集めて講習会するよそこの天使ちゃん! この様子じゃズボラは君だけじゃないんでしょ落ちてる薬莢見るだけでわかるんだからな。
ハーリーハーリー! 』
バラした小銃をそのオペレーターの顔を見て怒鳴ってる間に組み上げ、ワンマガジン分のボルトアクションを数倍のスピードでやって見せろ、安全装置をかけマガジンを外した上で投げ渡す。一連の動作をを1分も経たずにやってのけたのは彼にとっての通常運転だったが、ロドスにとっては目が飛び出すほどの出来事だったらしい。
さらには装備品の扱いの粗雑さにブチギレたガンスミスの大暴れによりついにはドクターまでも駆り出される大規模な講習会になったのだが、ガンスミスは初歩の初歩だと終わった後も不満気だったくらいだ。
「ま、あやつはバカだからの」
「だよねぇ......っと、気がついてる?」
「光学迷彩だけで隠れてると思っておるならおめでたい」
「サーモカメラ内蔵してるからねぇ。ま、人間相手にはそれだけあれば十分だとは思うけど運が悪かったね。
で、どうする?」
「相手に撃たせる。敵を捉えているならば泳がせるべきじゃとは思わんか」
「うーわ性悪」
「なんとでも言え。それにクロスボウなら
「死ぬほど痛いから頑張って避けるね!」
そう軽口を無線で飛ばしあいながら前線へと歩みを進めた。時には物陰に隠れて敵をやり過ごし、時には体術で敵を気絶させ排除する。
距離をつかず離れずに保ちながら気配はピッタリとあとをつけてくる。
「襲って来ないね」
「案内させるつもりか?」
「だろうね」
「プランBを使う」
「プランB? なにそれ聴いてないんだけど」
「覚えておけ。プランBというのはな」
角を曲がり、追跡者の視界から消える。
(......気がついたようだな。だがそれで撒いたつもりか?)
ナガンたちを尾行するファウスト、レユニオン内部でも指折りの兵士である彼はそう心中で笑う。
彼の任務は先の戦闘から突然出てきた
『......どうする? 感づかれたぞ』
「問題ない。配置についているな?」
『ああ』
「潰せ」
彼の真価は集団戦。独自部隊の多角的狙撃と隠密は、あらゆる敵の首を獲ってきた。
のだが。
『......! ファウスト』
「どうした?」
『死んでいる』
「......は?」
『だから死んでるんだ! 身体が冷たい。脈もない!』
『俺たちは死体を追跡してたんだ!』
「囮作戦か。すぐにメフィストと合流する。クソ、フロストノヴァを直接取りに来るつもりか!」
「......やっぱり無理だったのう」
「ま、都合のいい話だったわけで」
目を開ける。
そこは先ほどまでいた廃市街ではなく非常灯の灯る薄暗いカーゴヘリの中。隣では身体の動きを確認するようにM14が立って体操をしていた。
「アーミヤ。ダメだったわい」
「ここまで引き付けてくれれば十分ですナガンさん。しかし、戦術人形というのは不思議なものですね」
「最近の敵には動きで直ぐに露見するが初見であれば、な」
「サブプラン立てといてよかったね」
本来なら敵を排除しながら途中から自律駆動に切り替え同時に多角的に攻める作戦だったが、プランBとしてナガンが用意していた。おかげで厄介な敵部隊を決戦から引き剥がすことができる。
「それで......状況は?」
「あと3分で降下です」
「ウキウキするね!」
「......」
隣で話しかける青髪の女性オペレーター、ブレイズが己の
奥にはドクターが無言で構え、地図を見ながら作戦指示を飛ばし続けている。
「降下作戦はもう数年ぶりか」
「お、びびってんの〜?」
「抜かせ......死ぬなよ」
「わかってるよ。バックアップなんて一月前だし。こんな楽しい事忘れたくないからねん」
ポーチに入っているたった1発分の赤い印の付いた弾丸を確認しながら、冷やかしてくるM14を適当にあしらっていた。
ふと、作戦前にこの弾丸を渡された時のことを思い出す。
『源石って火薬になるんだね......威力がダンチすぎて他の人は使えないけど、ほい』
『なんじゃこれは』
『ナガンの銃なら耐えられるから作った源石火薬の超超強装弾〜!』
『珍しく薬莢を掃除してるかと思えばそんなことしとったのか! いいか、源石というのは核物質よりも厄介なー!』
『わかってるって作ったのは俺じゃない専門家に頼んだから安心しろって!
威力は多分44マグナムを超える。あとアーツが発現するとかなんとか言ってたから、ここぞって時に使ってね』
「......なんそれ?」
「とっておきの銀の弾丸、といえばいいかのう?」
「はぁ?」
「降下1分前です!」
「時間じゃ。さて、最後じゃぞ」
「オッケー! 盛り上がっていくよっ」
ローターが空気を叩く音を聞きながら、後部ハッチが開いていく。
気圧差で吸い出されるようになりながら、しっかりとパラシュートの安全装置と紐を確かめる。
「......お主? パラは?」
「いらない!」
「ドクターは?」
「私が抱えるから大丈夫だよっ」
「お、おう......」
初対面でありながら破天荒な振る舞いと言動を見せるブレイズにドン引きしながら、開ききったハッチの前へ。
「突貫します!」
そう言いながらいの一番に飛び出したアーミヤに続き、ナガンたちも空中へ飛び出した。
「さあ、今度こそ最終決戦じゃ!」
「イェーイ!」
はい。いかがでしたでしょうか。
全然終わらんかった。次ことは最終決戦です!
ちなみに私のドクターはフロストノヴァまだ倒せてないんで動画見てきまーす!(キレ)