ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー 作:通りすがる傭兵
自身の眼を使わず、双眼鏡を覗き込んで冷や汗をかくWA2000。一度双眼鏡から眼を外しゴシゴシと眼を擦った上で、もう一度覗き込む。
それでも目の前の光景が変わるはずもなく、彼女の目の前には地獄絵図が繰り広げられていた。圧倒的弾幕と暴力で、友軍と正規軍を文字通り溶かすように食い破る、悪夢のような光景が。
「ちょっと冗談が過ぎるでしょう......?」
『Fox2、どうしました?』
「Fox2からFoxリーダーへ。第三勢力の登場よ。それもなみの軍隊じゃないわ、正規軍の部隊と同じかそれ以上」
『FoxリーダーからFox2へ。詳細を知らせ』
「ケッタイなパワードスーツに重武装よ。種類はビームに実弾、ランチャーとSG人形相当の盾ね......やばっ」
飛んできた流れ弾に思わず身をかがめたWA2000、頭を起こした先には溶解した山肌が無惨な様を晒していた。
「威力については人形は1発で全損ね......他に悪いニュースがあるんだけど聞きたい?」
『なんじゃ?』
「A小隊がいる場所にちょうど流れ込んでるわね」
『......それを速く言わんかい! A小隊へ撤退連絡急げ!』
「間にあうかしらね」
ふん、とため息を漏らすWA2000。それは諦めではなく同情からくるものだ。あのA小隊......B基地屈指の
「うちの消費資材と迷惑状がどこまで増えるかしらね」
『賭けでもしますか?』
『私は指揮官が倒れるに10000賭けます』
『スペクトラって真面目に見えてお茶目よねー』
『清濁併せ持たなければ、生き残れませんよ』
◇◇◇
「とりかじにげろー!」
「うわー!」
頭を抱えてたったかと廃市街を逃げ回っているのはB基地のマークを制服に縫いつけたMP5とスコーピオン。後ろからレーザービームや20mmクラスの銃弾が山ほど追いかけてくるが、小柄な体躯で上手いことかわせているらしい。積まれたバリケードや、屋内屋外を目まぐるしく飛び交うパルクールめいた曲芸に流石に銃口が追いつかないのか、それとも気持ちよくなって狙いをつけていないだけなのか。
「ヒャッハー!」
「良い戦術人形は死んだ戦術人形だけだ!」
「エリちゃんを泣かす奴に朝日を拝む資格はねぇ!」
『おー物騒物騒、呑まなきゃヤッテランネーな隊長!』
『やってらんねー!』
通信の向こうでは重度のアル中であるAK-47がいつものように資材にこっそり混ぜ込んでいるスミノフウォッカをラッパ飲みし、隊長の割に部隊をまとめるつもりのないFNCが飴をバリバリと捕食している音が聞こえる。
「MG3は?」
『ソッチが襲われた瞬間に装備担いでそっち行ったよ』
『戦場がモグモグ勝利がムグムグ私を呼んでいるとか叫んでたっけバリバリ』
「あはは、らしいね! あといい加減咀嚼音電波に乗せるのやめなよ」
『隊長命令、気にするな』
「職権濫用!」
「あ、ここ袋小路だ」
「あっ」
そらよそ見をしながら走ってるからそうなるよ、とどこからか聞こえてきそうな状況に陥ってしまう2人。さあ捕まえた、と言わんばかりにパワードスーツの部隊もジリジリと2人の距離を詰める。
「あそびは終わりだ」
「殺すべし殺すべし殺すべし」
「フィーヒヒ」
三者三様に下卑た言葉を発する彼らだが、彼らは知らない。
ここにいるのは歴戦の戦術人形であり。
折り紙付の問題児と規格外の馬鹿であることを。
「よいしょっと」
軽い掛け声で廃屋から建材のH鋼を溶接部を力だけで引きちぎり引っこ抜くMP5と。
「えい」
ジャケットのジッパーを下ろしぴょんぴょんと飛べばバラバラと山のように多種多様な手榴弾の山(炸薬十倍ガンスミス印のやべーやつ)を足元に作るスコーピオン。
「じゃあ」
「そうだね」
「「サッカー/野球しようぜ!お前がゴール/ボールだ!」」
キックオフにプレイボール。コールをかける審判は自分つまりルールも自分。最後に立っている方が勝ちというシンプルなルールのもと、全てが間違った殺人スポーツが始まる......!
MP5の構えるバットは推定1t以上、長さを十m超のH鋼。
さて問題、これをフルスイングした時に発生する威力はどれくらいでしょう。
答えは簡単。身をもって知ればわかること、だ。
「死ねぇ!」
「「「ぐああああああああああああ!」」」
『実況のFNCさんどうですか?』
『うーんこれはいい
ロリポップな外見から繰りだされる物騒な言葉とともにフルスイングされたバットの軌道にいた哀れな
推定数百キロあるであろうパワードスーツがゴムボールのように飛ばされる常識からかけ離れた光景に呆気に取られるが、そのDFの隙をFWが見逃すはずがない。
「くらえ私のファイアートルネード!」
「こんなのが効くかあああっついいいいいい?!」
「私の黄金の右脚ィ!」
高く飛び上がったボレーシュートから放たれた
厚い装甲とはいえ高熱にさらされ、中身をオーブンのようにこんがりと焼き上げられる逃れられない痛みが彼らを覆い、混ぜ込まれた通常炸薬の衝撃と鉄片、ついでにスモークと閃光とクラッカーの紙吹雪が彼らを覆い尽くす。
外側にいたおかげで害を免れた彼らのうちいくつかは反撃に移るが、MP5の
「打撃も守備も一人前よ!」
「走塁はヘタクソだけどね」
「なーっ!?」
「くそ、コイツらどうなってやがる!?」
「ただの戦術人形じゃねーぞコイツら!」
「祭りの場所は......ココかぁ?」
「新手か?!」
彼らの背後、太陽の光を背負った廃屋の上に誰かが立っている。
13基地所属のM61バルカンに勝るとも劣らない弾幕馬鹿は、B基地にもいる。
最近配備された弾薬箱を背負う専用装備を手に入れてしまったが故に初出撃の次の日には装備をひっぺがされ出撃禁止を喰らったのはいうまでもなく、そろそろ立て篭もり案件を起こされそうなので仕方なく指揮官が作戦部隊に編成した馬鹿の集まり(総勢1名)。
「我ら生まれた時は違えど」
「弾幕を張る時は同じ」
「同じ銃に忠誠を捧げた同志達」
「7.62mmを愛し、分間1150発に愛されたモノ」
「そう、我らこそは!」
「
「殺せ」
「あ」
「まだ名乗ってる途中でショー?!」
『お約束は守らないのねワハハハハ!』
号令と共に一斉射撃で建物ごと吹っ飛ばされる人影。圧倒的弾幕で塵も残さず灰になったことを確信したパワードスーツ群は今度はお前だと2人に銃口を向けるのだが。
「「「「「G&K社マシンガンラバーズMP3!」」」」」
「「「「with MP5!」」」」
なにも、 このMP5は一点モノではなく罷り間違って量産されてしまった代物なのだ。彼女らの前で両手をかざしキッチリとフォースシールドを展開した無傷のMP5に護られた彼女達MP3は、最強の矛として成立する......!
「撃ち方はじめ」
「「「「待ってました!!」」」」
「撃ち返せ!」
「「「「オオオオッ!」」」」
リーダー格の掛け声と共に、両陣営が引き金を引き絞る。
互いが互いに火花を散らし、一方的にパワードスーツに弾痕が刻まれていく。
「それがどうした! 7.62mm程度で我々の装甲に傷は付かん!」
「圧せ! 近接戦闘に持ち込めば我々の勝ちなんだ!」
「この程度どうということはない!」
「10倍はもってこい10倍! ははははっ!」
だが彼らにとっては想定内。もし自分たちを倒すのなら倍はもってこいと挑発をかけるリーダー格であろう人物の言葉に彼女は引き金を引き続けながら、にたり、と口角を釣り上げる。
「ヘェ、
「なに?」
ジャキ、というボルトを引く音が戦場に轟く。それも多種多様、スライドを引く軽い音も、ボルトを引き次弾を装填する音も、派手にマガジンを差し込んで銃を叩く音も、ポンプアクションで次弾を込める音も。
そして彼女らの隙間を縫って様々な銃口が突き出される。HG、SMG、AR、RF、MG、SG。様々な銃身と、様々な口径が黒々と敵に顔をのぞかせた。
近代にあった戦列歩兵のように。
古代ローマにあった槍衾のように。
隙間なく、法則なく、整列する。
「あの御仁は10倍で良いと言ったねみんな。なら100倍で行こう。この戦場にいる戦術人形全員がが我々の同志だ。弾が出るならそれはマシンガンに他ならない、そうだろう同志たち!」
「私が! 私達が! マシンガンラバーズだ!」
「いやそうはならんやろ」
敵の冷静なツッコミなどどこ吹く風。引き金を引く指は止めない。銃声轟く戦場で声を張り上げることこそ、マシンガンの
「死なぬなら 死ぬまで撃とう ホトトギス」
「撃ち方はじめーい!」
「敵が死ぬまで引き金から指を離すなー!」
トリガーハッピーは死ぬまで治らないとは誰が言ったか。
戦術人形と正規軍を蹂躙していたはずの謎の軍団の一角は、ちょっとだけ規格外の戦術人形とただの戦術人形の一団によって一掃された。
「死ぬ死ぬ! 味方の流れ弾で死ぬーっ!」
「たーまやー!」
『銃弾で前が見えもっきゅもっきゅしゃっきりぽん』
「隊長その効果音は何食べてるの?!」
やっちまったZE☆