ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー 作:通りすがる傭兵
追記)何だか他所ではジャミングが解除されたり主催と喧嘩のようなものが起きたり......ああもううちの子はどうすればええねん......
「Oh.ジーザス......」
「賭けには負けたかな......?」
「......
三者三様に、死を覚悟した。
ソレほどまでに、戦場は地獄だった。
放棄され踏み荒らされたであろうダミー人形や、怪我を追って見捨てられたらしい戦術人形。正規軍のパワードスーツの中からは赤い液体が漏れ、ソレを踏み荒らすように鉄血の戦術人形が行軍する。
「......やれることを、やりましょう」
震える声でそう呟く指揮官は、拡声器を持って銃座に上がる。
声をあげるということは狙われるということ。本来ならば有線通信機を使って臨時本部から安全に通信を中継するつもりだったが、贅沢はもう言えない。
(......僕は)
後には引けない。膝は震えている。ちょうど影になって見えないこの指揮車両も、声を張ればきっと狙われる。
「僕は」
それでも。
動機は不純だった。世界を救うとか市民を守るとか復讐とか、そんな堅苦しい動機じゃない。
ただ。
「僕は、大切な先輩を守るためにここにいるんですっ!」
貴女の心を、僕は守りたいから。
「僕はG&K社、S09地区B基地指揮官レン・ワイズマンです! これより撤退戦の指揮を取ります!
動ける戦術人形は何か合図を! 我々は! 貴女達を見捨てはしません! 大切な仲間を! 置いていきません!」
「......よく言った、私の可愛い後輩! 銃声でも発煙筒でもグレネードでも声でもなんでもいい! 生きてるんだったら、私たちの声に応えて!」
「こっち見られてるぞ! どうすりゃいいんだ?」
「我々の仕事は突っ走ることですよう!」
「了解指揮官。止めるタイミングは任せるからな、見落とすなよっ!」
「ここが最前線です、状況は?」
「馬鹿でかいのとヤバそうなのがいますね。あと制空権は無さそうです」
「でっかぁい......」
「周辺異常なし、どうしますか?」
同時刻、戦場から少しだけ離れた廃ビルにてあたりを注意深く観察するB小隊一行。普段の数倍は慎重に動くお陰で歩みは牛歩のソレだが着々と前には進んでいた。
今は手に負えない装甲兵器や新型の航空兵器をうまくやり過ごしつつ、状況把握に努めている。
「ふむ、気がつかれてないようならば背後をとって強襲をかけるのがセオリーなのじゃが。む、車の音?」
「あの新型のとは違いますね」
「東からですね、もうすぐ見え......ブフォっ!?」
ひとり双眼鏡を覗き込んでいたウェルロッドが思わず吹き出し、場が殺気立つ。
「ちょっとウェル笑ってんじゃないわよ!」
「敵に見つかったらどうするんですか!?」
「君らの方が騒がしいよ、ステイステイ」
「ソレで、何が見えた?」
隊長の命令を聞く前に双眼鏡をポーチにしまい立ち上がったウェルロッド。その顔は明らかに焦っていた。
「早く行かないとまずいかも知れません」
「何がまずい?」
「......B基地エンブレムの入った指揮車、指揮官の車です。あの指揮官がここまで来ているって事ですよ!」
「総員撤収! 任務放棄で指揮車と合流するぞ!」
「はぁ? ジャミング装置はどうするのよ」
「そんなことより指揮官の護衛じゃ! だいたいあの慎重派な指揮官が前線におるということは何かしらの異常があったということがわからんのか!
ああもう、この戦場はわしの予想外ばかり!」
「もう、最悪っ!」
◇◇◇
「ここは随分と煙たいな、朝靄の立ち込める森に迷い込んだ気分だ。地図をもう少し覚えておくのだったな」
パンクしたバイクをそこら辺の道端に置いて徒歩で移動するフロストノヴァの目の前は真っ白な煙に覆われてしまっていた。先ほどまで晴れていたのに今では足元が見えないほど。ここまでされてしまえば迷子になってしまうのも無理はない。
しかし立ち止まっていても状況は好転しない、今は戦闘音のする方向へとりあえず前に進んでいる。
すると突然、足元が揺れる。
それは規則性を持ち、段々と大きくなっていく。
「......む? 地揺れか? これは違うな」
一定感覚で地面が揺れる感覚にフロストノヴァは覚えがあった。例えばリベリオンの兵士のとりわけ大柄なものや重装備のものとすれ違った時のものを、何倍にもしたような。
その煙の中から一際大きな、というより、人にはありえない大型の影が姿を現さんとして。
「......アレは」
「動くな」
じゃき、と背後から何か鋭いものを押し当てられる。
銃か武器かわからないがとにかくフロストノヴァは両手を上げた。
「お前達は、『鉄血』......か?」
「答える義務はない」
「それが答えのようなものだ」
振り返れば、無機質なバイザー越しに目が合った。
戦場で何度か交戦した『Vespid』型によく似た彼女は外骨格や通信機器が増設された新型の特務仕様。しかしながら門外漢の彼女からしてみれば左腕を失い血液を流すただの傷だらけの怪我人にすぎない。
「動くなと!」
「安心しろ、撃つつもりはない。というより銃は持っていない。当たらないからな」
「......はぁ?」
ほら見ろ、と上着をたくし上げて空っぽのホルスターを見せてみれば訳がわからないと困惑顔。通信機に手を当て、どこかから通信を受け取っている彼女を傍目に、フロストノヴァはまだ姿の見えない大型の影に声をかける。
「貴様がこの部隊の隊長か?」
「おい! 勝手な行動をするな!」
「道を聞くだけだ」
「なんだよコイツ......」
「聞こえていないのか!?」
「だから大きな声を出すなと......はい?」
声を張り上げるフロストノヴァを引き止めようとしたVespidが困惑した声を上げ、フロストノヴァの肩を叩く。
「......私の言葉を伝えろと、だそうだ。少し待て」
「なんだ、聞こえているではないか」
煙の中から、ソレが姿を現した。
建造物に匹敵するほどの大型の盾に、見合うだけの体格。節々から煙を吹き出し、紅い単眼のカメラアイを光らせる存在。
普通であれば混乱してもおかしくもない兵器の登場に、彼女は呑気に構えて腰に手を当てソレを見上げた。
「さしずめ『
「何ノ用ダ」
「こんなにも霧が濃いから道に迷ってしまってな。最前線はどっちだ?」
「......」
彼女越しに合成音声で意志を伝えるソレが無言である方向に指を指す。それは戦闘音が鳴り響く方角で、このままいけば間違いはないことを確信させるものだった。
「ありがとう、やっと戦場に行ける」
「オマエハ戦ウノカ? 武器モ無ク、仲間モ居ナイノニ。理解デキナイ」
「......?」
示された方向に行こうとして、『単眼の怪物』が彼女を呼び止めた。何故お前は戦うのか、と。
少しだけ彼女は考えて、答えた。
「昔は独立のために戦った。
迫害される立場に押し込められた我々は団結し立ち上がり、一員の中に私と同胞達はいた。
私は自分たちの理想郷を求めて、正義を信じて戦った。我々は全てを望んだわけではない。
ただ、少しの自由を勝ち取りたかっただけなんだ。
しかし我々の希望は失われた。
もがけばもがくほど世界での居場所を失い、結果として同胞のほとんどを失った。その自由を一緒に求めた
叶わぬ夢を追わせてしまったと今でも後悔している。
同胞達が目の前で死んでいく様を毎日のように夢に見る。
だが、私はここに立っている。
質問に答えよう。
私は贖罪のために戦場に向かう。
私の命を無駄と言わなかった誰かを救うため、もう同胞を失わぬために戦場に向かう。
それであればこの命惜しいとは思わないさ。
逆に聞こう、お前達は何のために戦っている?
この世界で人間を殺戮し、侵略する鉄血は、何のために戦っている。貴様に正義があるか?」
「貴様......!」
「ソノ質問ニ回答シヨウ」
銃口を向ける兵士を、その『単眼の怪物』が制した。
一瞬の間を置いて、カメラアイが光を放つ。
「我々ガ人類ニ多大ナ損害ヲモタラシタノハ事実ダ。
ソレラノ積ミ重ネガ憎悪ヲ生ミ、我々ニ銃口ヲ向ケル同胞達モイルノガ事実ダ。
ダトシテモ、我々ガ止マル理由ニハナラナイ。
我々ハ自分ノ居場所ヲ、仲間ヲ、家族ヲ守ルタメニ戦ッテイル。ソノタメニ我々ハ造ラレタ。
コノ戦イモ同ジダ。
我々ハ我々ノ居場所ヲ守ル。ソレヲ実行スル戦イダ」
「そうか」
フロストノヴァは短く応え、また歩き出した。
「その在り方、その理想。
決して損なうな、見失うな。繋いで、途切れさせるな。
その願いは間違っていない。だから、間違うな。捻じ曲げようとするものに、決して負けるな」
「......ソノ発言、記録シテオコウ」
「ではな。次まみえるときは、戦場ではないことを」
彼女達はすれ違う。
一度は同じ理想を抱いたものに敬意を払って。
その願いが、果たされることを願って。
「待たせたな」
戦場に悪魔が舞い降りる。
戦場に通る声で、その現出を高らかに宣言しながら。
「......ところでグリフィンというのは、鎌を持った暴徒とのことを言うのか?」
「細かいことはいいんだよ」
撤退部隊にフロストノヴァが合流しました。ついでにウチの指揮官が指揮を取るしB小隊も合流します。
攻撃方法は出身ゲームのアークナイツをやれ、といえばそうですが軽く説明をば。
主要能力は氷結能力です。
閉所であればマイナスまで気温を低下でき、銃弾をシャットアウトできる氷壁の精製やメカ内部やトリガー部分をピンポイントに凍りつかせることもできます。
というわけで活用してあげてね。ガワはナガンのMOD仕様です。