ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー 作:通りすがる傭兵
思わず活動報告で愚痴るくらいには戦闘参加するだけで死が見えるのでこそこそこういうところで存在感出していかないとね。
「あー負傷者の方はこちらです護衛の方は第2小隊がやってください? え、前線で戦わせろ? だったらそのチンケなマガジンに何発入ってるか数えてみたらどうなのかな?んー?」
「ピエッ」
どこか所属のUZIに無言で指示に従えと威圧をかけまくっている戦術補佐官を横目に、ガンスミスは肌身離さず持ち歩いているいつもの整備セットを広げて銃などの整備を行なっていた。
「はいそこのG41の2Pカラー止まりなさーい、おにーさんには派手にやらかしたの知ってるんだからね、メンテナンスメンテナンス」
「誰だぞ?」
「怪しいもんじゃないぞ、ただちっとばかしそのおてて見せてごらんホラホラー」
「むむむ......」
「ジャウカーン、どうしました?」
「トゥーマーン、変な人がいる」
「どちら様です? ウチのジャウカーンに手を出さないで欲しいんですけど変態」
「このXM8やたら冷たいんだが!?」
こほん、と咳払いして改めて自分の名を名乗るガンスミス。所属基地のエンブレム入ったつなぎ着てるんだからそれでわかってくれという話なのだが、この制度が他所では全く流行っていないのを知るのはこの作戦が終わってからだが、これはまた別の話。
「09地区B基地所属のガンスミスだ。そちらのユノ指揮官には十分仲良くさせてもらってるんだ、何だったら確認を取ったっていい」
「ユノ指揮官?」
「オイオイ、指揮官の名前くらい所属の戦術人形なら把握しといてくれよな。常識だろ?」
「そっちの方が常識知らずじゃないの? ウチの指揮官はキャロル。キャロル・エストレーヤ」
「......知らない名前だな」
「何でも最近変わったらしいですよ、知らなかったんですか?」
「知っといたら伝えてくれよね後輩ちゃん!」
通りすがりの指揮官にサラッと真実を伝えられつつ、しかしガンスミスはめげない。なにせ見たことのない武器に内部機構にレーザー砲ときたものだ、技術屋としては魅せられないはずがない。
「ま、まあ。ユノ前指揮官の知り合いってことでここはひとつ」
「怪しい」
「胡散臭いぞ!」
「さいですか......んじゃ君の後ろのほうにいるガンブレード使いの春田さん、じゃなかったスプリングフィールドでいいよ。あの銃ガタガタだしメンテやっから」
「あれも私の仲間です。こんな怪しい奴に武器を触らせたくありません。しかもこんな戦場のど真ん中で呑気にメンテナンスなど、馬鹿では?」
「今ちょうど小康状態なんだ、そこでやらないでいつやる。戦闘中に武器を壊して後悔させたくないだろ? 俺は嫌だね」
「マスターの許可がない限り触らせませんよ」
「ヘイヘイ」
妙にツンツンした色違いのXM8に冷たくあしらわれつつ、ガンスミスはそこらへんに放棄された武器の中で使えそうなものを探してきてもらい、武器をなくした戦術人形のために修理を行っていた。ダミーが全て使えなくなったとあって担い手のない武器もなかなかに多く、作業もまた膨大。しかもいつ敵が襲ってくるかわからない緊張感、通常だったら手元が狂ったり慎重になりすぎてもおかしくはないが、ガンスミスとて修羅場を抜けてきた人間の端くれだ。
「はーあ、本部から抜けてきたのにまた修理仕事だ、やること変わんねー」
「これ使っていいんですか?」
「持ってけ持ってけ、合う銃がなくても文句は受け付けんからな」
「これで戦える!」
「......壊したのになんか新品みたいになって返ってきた」
「すごいねー」
ぼやきも止めず、銃を取りに来た戦術人形にも声をかけつつ、作業の手は止めないまま。よそ見しているうちにあっという間に一丁の銃を組み上げ、セーフティをかけて壁に立てかける。
「どこもやること変わんね」
「そういう星の元に生まれたんでしょ、諦めなさい」
「......泣けるぜ」
トゥーマーンににべもない言葉を告げられつつ、ガンスミスは今日も働く。
◇◇◇
一方その頃指揮官は。
「本部臨時基地が壊滅、ですって?!」
『はい、着いた先には煙が。正規軍の列車への攻撃が誘爆したらしく......列車の残骸にに隠れて様子を伺っていますがどうしましょう指揮官』
突然手元に残していた予備の通信機がけたたましく音を鳴らしたかと思えば、カリーナからのまず一声が「本部基地が壊滅してます!」だ。思わず通信機を取り落としそうになるが、それをグッと堪えて指揮官としてやるべきことを確認する。
「うちの職員は無事ですか?」
『全員ピンピンしてます、撤収作業に時間がかかって幸いでした。
本部あとに何人か生存者もいるようですし、回収すべきとの声もあります。救護用の設備も揃ってますよ』
「では生存者の救護もしながら残りの生き残りで本部の再建を。置いてった資材を予備発電機で回せば通信の総まとめくらいはなんとかなるでしょう。撤退する戦術人形を逃すには貴方達が必要です。カリーナ、臨時指揮権を与えるのでそちらで情報集約を」
『うえええええ私ですか?!』
「やってください、貴女ならできます」
『わ、わかりましたよう......』
藪蛇だったかも、という最後の発言は聞かなかったことにして通信を切り、周りを見渡す。
彼の眼下には不安そうな目でこちらを見つめる負傷者や、仲間の仇をとると目を輝かせる戦士、戦場でメンタルに甚大なダメージを負い顔を伏せる敗北者。
戦力になるもの、ならないものを見分けつつ、同時に規格外のパワーを持っている面子も観察する。
P基地所属の特務部隊と名乗る『オートスコアラー』。
この場にはいないが、民間協力者『DMC』。
元鉄血であり現在は協力者『リバイバー』。
本部直轄特務部隊『EA小隊』。
他にも強力な部隊がいくつもこの戦場に展開しているという。
「揃いも揃って噂に聞いたりする厄介児、どう扱ったものか」
鉄血の首領と交渉をしてきたというリバイバーからの情報は『フード、マント姿の謎勢力』という第三勢力の存在。一体一体が鉄血のハイエンド、その中でも上位種に匹敵するというそれの正確な数は不明。さらにはこちらと鉄血両方に敵対行為を行なっているらしい。
(たしかにリバイバーの行動はファインプレイのそれでしたね、このままだったら共倒れするところでした。
しかし臨時本部がない以上、情報が錯綜する。ジャミング対策用の有線通信機材しかないうちの指揮車だけで統括は無理です。さらに鉄血との連携も考えるとなると、どこか本部くらいの通信をつけられるような......)
「......マスターからの許可は降りるかしら」
「わからん。得体の知れない男に我々の身体を調べさせるとは思わないが」
視界の隅で会話するオートスコアラー。その所属は、たしか大型の電算施設を持つP基地だったような......
「あ、いいこと思いつきました」
そうだ、そこに指揮させればいいんじゃね?
というわけでP基地には仕事を押し付ける。まともな指揮所あるのあそこの基地だけだもん()
焔薙さんには申し訳ない......
追記)だめでした。というわけでポンコツ指揮官(以下略)を読みに行こう!