ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー 作:通りすがる傭兵
実際乗り遅れました。リバイバーと万能者の目の前にいるリーダー格っぽいやつと戦いたかったんだが書いてたら死んでたわ。残念無念また来世。
「いやー、やはり目が眩むなこの高度は」
「......言い出したのは自分とはいえ、ここまでとはな」
高度10000m。
ともすれば地球の輪郭さえ捉えてしまいそうな、空の果ての成層圏。
そこに彼らはいる。
開け放たれたハッチから見下ろす先に広がる朧げに見える大地は、いまなお戦火の炎を燃え上がらせている。
そこに彼らは行かねばならないのだ。
「超高高度からの空挺落下、考えたな」
「地上からではワシらではあの戦場にすら辿り着けん。ならば上から行くしかあるまい、並の高度ではなく敵の手が届かないくらいな」
『その無茶を私にさせないで下さいよう』
「乗り合わせた縁じゃ。それにここまで運んできてくれたことには感謝している」
「幸運を祈っていてくれ」
本来なら5000m程度程の降下に使うパラシュートを無理矢理背負い、しかも2人の降下を同時に行うとなると何が起きるかわからない。最悪、減速が間に合わず地面にぶつかることすら考えられる。
パラシュートを背負ったナガンにパラコードや金具で無理やりフロストノヴァをくくりつける不恰好さも拍車をかける。現場の応急処置、負荷計算など当てずっぽう。
しかし、無理を通して道理を蹴っ飛ばさないといけない時はいつか来る。それが今日と思えば安いものだとナガンは込み上げる恐怖を噛み潰し、口角を釣り上げた。
「笑え、フロストノヴァ」
「何故だ?」
「こんな馬鹿をやる兵士は、きっとお主とワシが初めてじゃ。歴史に名を残すことになるぞ」
「......馬鹿、か」
「不服か?」
「部下にいつも分の悪いほうに賭けをしていつも負けている奴がいた。今までは何故そんなことをするのか分からなかったが、成る程」
フッ、と短く彼女も笑った。
「星屑のような可能性、掴み取ることができたのなら......それを成し遂げた時の周囲の呆れ顔が楽しみで仕方ない」
『降下ポイントです!』
「なるほど、では、そいつを拝みに行くとしようかの!」
パイロットの81式からの降下合図。
壁に灯る青いランプに従い、迷うことなく2人は空へ身を躍らせた。
「クソ、突破口も見えやしねえ!」
「お前対策専用ってのは飾りじゃないな、これじゃ!」
20mm散弾砲によって地面が削られる様に冷や汗をかきながらも地面を蹴り、繰り出される銃槍の突きをかすめ抜ける。
槍ごとリバイバーが彼らに襲いかかる上位個体を蹴り飛ばして仕切り直し、万能者とリバイバー、上位個体の三者が相対する。
一瞬の休息の中、万能者は思考する。
(リバイバーの言う通りよく俺の対策ってのを理解してる。
というより、俺のできることを悉く研究して潰しに行っている感じだ。
レールガンは効かねえのはわかってる以上、撃ちに行くのは好きを作るだけだ。かといって他に武器があるかって言われると、無え。どいつもこいつも取り回しが悪くちゃのんきに構えてる間に蜂の巣か串刺し、盾も散弾銃はともかく、レールカノンでブチ抜かれる以上視界を塞ぐだけ)
「八方塞がり、てか? 認めたくねえなぁ......!」
思わず歯噛みするほどにどうしようもない現実。
今までに感じたことのない屈辱と無力感を味わいつつ、それでも、とレールガンを構える手に力を込める。
「それでも、こいつを倒さなきゃ俺たちの明日は無え!」
「......だな、気合入れてくぞッ!」
吼える万能者。同調し雄叫びを上げるリバイバー。
それに呼応し、力を込めて跳びかからんと身体を沈める上位個体。三者三様に、ここが正念場だとと己を奮い立たせる。
それはまさに古代の
『こちら正規軍α小隊、目標ポイントに到着した』
『司令部了解。リバイバーさんの援護は可能ですか?』
『無理だ、俺たちではどうしようもない。アレは、次元が違いすぎる......!』
自立兵装でありながらその判断は正確で
鋼鉄に覆われた身体でありながら誰よりも素早く、
素早くありながら、矛盾したように装甲は堅牢で、
その武器は戦場の誰よりも破滅的な威力を持つ。
もし攻撃をすれば、此方に命はないことは馬鹿でもわかる。流れ弾ですら即死級の威力、狙ってなくとも巻き込まれて死にかねない。正規軍のベテラン兵長は己と部下の命を守るために選択を下す。
『これ以上は無理だ、撤退する!』
『了解しました。
クソ、折角のリーダー格で段違いの強さなんですよ、こいつを倒せばこの戦闘に決着がつくような虎の子に決まってます。それを倒せば戦闘が終わるってのに、彼らに任せるしかないってことですか......!』
通信に漏れてしまった指揮官の悔しそうな声のように、戦場はどうしようもないこう着状態にある。
質と量で押す第三勢力相手に対して、すでに消耗しているG&K社と鉄血はいくら同盟を結んだところで消耗戦に持ち込み耐え忍ぶくらいしかできない。
この戦局を打破できるような奇跡的な一手を、誰もが欲しいていた。
「......ならば、その命令を聞き届けよう。
奇跡とは願うものではない。努力の先にある結果、偶然が積み重ねた必然に手が届くまで足掻くこと」
誰かが応える声がする。
「絶望的な現実にある未来を、耐え忍んだ同胞達よ。
忍耐に報いよう。理不尽の悉くを覆そう。
その絶望を、希望に変えてみせよう」
誰かが叫ぶ声がする。
「この戦場にいるすべての兵士たちよ!
我々が、この戦いを終わらせにきたぞっ!」
誰かが空を仰ぎ見た。
誰かが空を指さした。
絶望を示すような曇天はもう青く晴れ渡り。
その青空を裂く、流星が流れる。
流れ星は空を駆ける。
「......もしかしなくとも風で流されておるな」
「ならば翼を作ろう、これで目的地まで飛べるはずだ」
「いやそれをされると減速用のパラシュートの展開がぁあああああああ?!」
「パラシュートが速度に耐えきれずねじ切れた時はどうなることかと思ったが、なんとか生きているな」
「金輪際お主と空挺降下はやらん、けふっ」
不自然に積もった雪をかき分け顔を出す2人。案の定パラシュートは開かず、フロストノヴァが機転を効かせ落下ポイントに細かい氷を大量に生成することでクッションにしなんとか五体満足で着地したのだ。
「ここは目標ポイントそのままじゃが、さて、万能者とリバイバーは一体どこへ」
いったのじゃろうな、と言いかけた彼女の目の前をレーザーの光が貫いていった。思わずのけぞり尻餅をついたナガンだったが、フロストノヴァはそのレーザーの発振地点を捉えていた。
「どうやら味方らしいな、行こう」
「危うくメザシになるところだったわい」
「......締まらないな」
「放っておけ」
尻についた雪を払い、立ち上がったナガンはズンズンとそのレーザー光の放たれた場所へと向かう。
暫く歩けば、途中から現れた航空機や大型戦術人形の影、その側で何やら作業に勤しむ戦術人形の姿を捉えた。
と、同時にナガンの通信機が鳴る。
『こちらリバイバー及び万能者、敵上位リーダーユニットの一機を撃破した!
そして今、万能者が以前I05地区で使った標的のみ狙い撃つ戦略兵器の発射準備をしている発射まで時間がかかる故、それまでの護衛が必要だ!手が空いてるやつはこのポイントまできて援護を頼む!』
「大物は食いそびれた、か」
「不服か?」
「ないといえば嘘になる。お主の全力を一度拝んでみたかったからのう」
「あの時私は全力で戦ったが、それでも不服か?」
「身体中鉱石塗れで半分死人だったじゃろうが、それを全力とは呼ばん」
軽口を叩き合いながら歩みを進めれば、瓦礫と砂の山の上に立って何か指示を飛ばしているらしい人影が見える。武装をつぎはぎにくっつけた不恰好なシルエットのパワードスーツを身に纏ったその男性は2人を認めると声を上げた。
「ヨォ、援軍か?」
「S09B基地所属のM1895、貴君に加勢しに来た。ロートルじゃが好きに使ってくれ」
「フロストノヴァ、よろしく」
「リバイバーだ、よろしく。2人だけか?」
2人と軽く握手を交わした彼があたりを見渡すが足音もしない。残念ながら、と前置きした上でナガンがその質問に答えた。
「まともな戦術人形では太刀打ちもできんからな。まともじゃ無いやつしかココには連れてはこれん」
「09基地にはやたら強い戦術人形がいるって聞いたが、もしかしてお前さんか?」
「多分
「......お前さん戦術人形じゃねえな。生身の人間、か?」
「それは必要な質問か」
「いや、援軍だったらなんだっていい。猫の手でも借りたいんだ」
とにかく、と強引に話を切り替えたリバイバー。
「俺たちがやる事はさっき通信で連絡した通りだ。万能者が戦術兵器を使えるようになるまであいつを守る。多分敵も感づいて集まってくるだろうし、もしかすればリーダー格も来るかもしれん」
「なるほど、あの戦力がこちらに全て集まって来るとなれば......最悪じゃな」
「だろ? 俺1人でも何体かはやれるがそれ以上は無理だ。それも何かを守りながらなんてもっと無理だ」
「こういう時若造は意地張って援軍を呼ばん時があるからのう、自分の状況をしっかり把握できておる。いい戦士になれるなお主」
「お、おう......ってアレ、お前さんの相棒は?」
「フロストノヴァか、そこら辺ほっつき歩いておるんじゃろ。さ、詳しい状況説明を頼むぞ。
お主らの戦略兵器なぞ風の噂でも聞いた事がないわい。それに」
『......戦略兵器は個人が持っていいものではないですがこの際は無視しましょう。さて、
同時刻、念入りにあたりに目を配るサイクロプスの隣に誰かが座った。センサーを向ければ、見たことのない反応を持つ誰かということしかわからない。
しかし、何故かつい戦場ですれ違ったあの小柄な戦術人形ではないか、という仮説が浮かびすぐに証明された。
「先程ぶり、か。また会う時はと言ってみたが、互いに戦場で会う定めらしい。
しかし、肩を並べて戦える事は誇りに思う」
ソレに音声発信装置は積まれてはいない。その機能は不必要だからであり、もしあったとしても配下の戦術人形を中継すればよかった。だが、ここは2人きりだ。
「......言葉は話せないとは思っていた。申し訳ないが、一方的に語りかける事になってしまうな」
「合縁奇縁とはよく言ったものだ、戦場の縁はどこに繋がっているかわからない」
「......たった一時の休戦関係。だが、目的は同じだ。家族のため、兄弟のため、同胞のため、仲間のため。
所属は敵対しようと、盾を構え、剣を取る理由は同じだ」
「安心して背中を預けられる」
そうか、とそれは頷いた。
浮かんだ言葉はとてもそれのAIでは論理的に説明がつかないものであり、普段ならバグのようなものとしてすぐに消去してしまうようであったが、何故かそれを重要なファイルにしまい込んだ。
レーダーの端に反応を捉える。
「......敵か」
頷く。すると彼女は何故かソレの肩に飛び乗った。
何故、と問いかけようと首を傾げる。
「こちらの方が景色がいい」
たしかに高所を確保する事は論理的だ。
だが、足場が不安定で動きにくくはないだろうか?
「......なに、問題はない。それにお前の盾が護ってくれると信じている」
理解不能な論理だが、なぜか納得はできた。
そうか、と頷いた。
「では、征くか」
眼下に広がる敵の大群を見据えながら、また頷いた。
ああ、征こう、と。