ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー   作:通りすがる傭兵

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大規模コラボこれにて終幕。
他の作者様と戦力バランスがアレでまー戦闘シーンではちょっとばかり苦労しましたが、雑兵には雑兵なりの戦い方もあるんだぞということを見せられたかなと思います。

長くなりましたが、お付き合いくださった他のコラボ参加者様と、主催様。
お疲れ様でした。


番外編 幕引きは呆気なく 大規模コラボ-END

 

 

 

 

「赤字です」

 

 あの大規模戦闘が終わってから数日。疲労も抜け切らぬまま後処理に駆り出される指揮官は司令室でそう呟いた。

 

「マジ?」

「マジです。赤字も大赤字です」

「本社からの補填出るでしょ」

「出ません」

「なんで?」

 

 思わず書類を書く手が止まり、持っていたペンを握りつぶす戦術補佐官。同様に納得いかないのか指揮官もまた深々とため息を吐いた上で本部からの通達を伝える。

 

「先日の作戦では実にG&K社の投入した戦力の7割が戦闘不能になり、正規軍もまた同様かそれ以上の被害を被っています。

 主目標であった鉄血の防衛ラインについては突破できはしましたが、本筋の鉄血本拠地に侵攻する部隊まで失っては本末転倒。今回の被害はS地区の防衛欄に穴が空きかねるほどのものですので補填するために拠点侵攻用だった戦力もしばらくは動けません」

「戦術目的は達成しても戦闘内容は敗北と同じだからか。

というかよく五分まで持ち込んだもんだよね」

「それに謎の第三勢力まで噛みついてきた。上層部もこっちも頭を抱えるばかりです」

 

 考えることが多すぎる、それに他にもやる事は山積みですからねぇとぼやきながら書類にサインを書き込んでいく指揮官。

 

「鉄血の新型の残骸の回収、第三勢力の機体を構成する砂状の物質の解析。戦術人形の残骸回収は民間業者に委託するとしても、火事場泥棒対策に警備が必要です」

「民間業社への委託料金に、周囲の生存区域へのお礼参り、外部協力者への報酬。

たしかに赤字にしかならないわ」

「正規軍からも別途で報酬があったらしいんですが、壊滅してそれどころじゃないので大幅減額になったらしいですよ」

「えーと、実際にそろばん弾いてどれくらい赤字?」

 

 無言で机の端に置いてある電卓を手に取り、リズム良くボタンを弾く指揮官。数秒ののち戦術補佐官の前に提示されたのは見たくもないほどに桁の多い数字だった。

 

「ちなみにこれ()()()だけですからね? 見込みなので多少は前後しますけど、概ねこの程度です」

「あとここにそれ以外の出費が乗るんだよね」

 

 修理代とか、と思い出したように呟く頃には戦術補佐官はもう机に顔を突っ伏していた。

 

「私がプールしてた予算全部無くなるじゃん......」

「その為の予備費ですので、ええ」

「いくらかちょろまかそうと思ってたのに!」

「目の前で横領宣言されたのですが、これは告発ものですか?」

「冗談に決まってるじゃん。けど、自分が頑張って貯めたお金がなくなるのは辛いねぇ」

「僕の指揮車も廃車です。フレームから機材まで全部ダメになっちゃいました」

「......お金足りる?」

「だから赤字って言ってるでしょう?」

「デスヨネー」

 

 どうしようもない現実からは目を逸らすために仕事に没頭しようと書類を手に取る戦術補佐官。しかしその書類もまた今回の被害を報告するもので。

 

 

『今作戦におけるB基地の被害報告。

 

職員

 死者 0名

重傷者 2名

軽症者 8名

 

戦術人形

 

MF(メインフレーム) 全11体

全損     1体(M1895MOD 追記:回収不能)

廃棄処分予定 2体(MG3、FNC)

損傷重度   3体(MP5、スコーピオン、スペクトラM4)

 

SF(サブフレーム)全40体

 

全損     19体

廃棄処分予定 7体

損傷重度   12体

 

廃棄車両

 

指揮車     3台(全損2、廃車処分1)

輸送ヘリ    4機(全損)

索敵レーダー車 2台(全損)

兵員輸送車   2台(全損1、要修理1)

 

廃棄処分予定の機材及び消費資材については別紙に明記』

 

 

「予算がああああああああああ!」

「戦術人形はともかく車両がですね」

「臨時本部に置いてたやつ全部無くなったの?!」

「ハイ、綺麗さっぱり消し炭です」

「ジーザス......」

 

思わず天を仰ぐ。

 本部要請で駐留させていた機材は本部への攻撃の巻き添えになり全てスクラップ。原型の残る指揮官の虎の子の特設指揮車両は戦闘のあおりでフレームがガタガタになり廃車処分になった。B小隊が使っていた装甲ジープもまた流れ弾で大穴が空き発注元に戻す大型修理を行うハメに。

 作戦において少数精鋭を派遣しそつなく立ち回ってしまったB基地。全体としては被害を少なく済ませたのはいいものの、その所為で本部からの補償金の対象に外されてしまい、おかげで補填金が回ってこないという窮地を招くことに。

 

「ジャミングの影響もあって通信機材も全とっかえです」

「ねえ、年度予算いくら残ってる?」

「赤字って言ってるでしょ残りませんよそんなもん」

「本格的に身銭切った方がいい感じ?」

「まずは人件費の削減からですねぇ、あと娯楽費も削りましょう」

「申し訳ないねえ」

 

 やりたくないなぁ、というため息がシンクロする執務室。リストラまでとはいかないもののしばらく職員には節約生活を強いることになるだろう。

 

「......まいにち戦争起きないかなぁ。何も考えずに指揮だけ一生やってたい」

「物騒なこと言わないでくださいよ!」

 

戦争で一番面倒なのは、結局事後処理なのである。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「そろそろ本格的に俺も遺書を書くべきだと思うの」

「不思議と前線に駆り出されるからのうお主。どうしてこうも引っ張り出されるのか」

「俺が知りたい」

 

 珍しく今日はお休みを貰っているガンスミスではあるが、所定ポジションということでいつもの仕事場にいる。その隣には今回の作戦で微々たる活躍を見せたナガンの姿があるのもいつもと変わらない。

 ただいつもと違うのは、彼の整備台には何のパーツも載っていないどころか、綺麗になんにもないところだろう。

 自然と、ガンスミスの目線がナガンの腰に寄る。

 

「......メンテしたくない?」

「昨日自分でやった」

「ちっ、今日明日は何もしなくていいって拷問だよなぁ」

「今日明日はゆっくり休めというありがたいお達しのまちがいじゃろうに」

「そこまで疲れてるかといわれると、あんまり」

 

 余裕だ、と腕をぐるぐると回して見せるガンスミス。実際作戦当日は車で駆り出されるばかりで気力は使えど体力を使い果たしたわけでもない。

 それに整備以外の業務があった臨時本部とは違って、終盤の臨時司令部では銃器整備ばっかりやっていたものだから気力も上限までばっちり回復している。

 この元気はつらつな様を指揮官が知っていれば「じゃあ働いてくださいよう!」と仕事を回しただろうが彼らはもうしばらくは執務室から出られそうにない。 

 そんなわけであってなぜか元気なのに仕事がない、なんて宝の持ち腐れのような状況ができてしまっていた。

 

「元気じゃのう」

「まだ若いからかな」

「嘘つけ今年でさんじゅ」

「気にしてるんだから言わないでくれるかなぁ!?」

「ガンスミスいるー? 私のワルサーのメンテナンス」

「よっしゃ仕事ぉ!」

「したいから道具だけ借りるわよ。ガンスミスは休みって指揮官から聞いてるから」

「ふぁああああああああああああああっく! 右の作業台使えバッキャロー、うわーん!」

「あ、逃げた」

「......いつまで経っても子供と同じじゃのう」

 

 ガンスミスとしては戦場に駆り出される時よりも銃をいじれない今の方が地獄、なのかもしれない。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

B基地の敷地の端には、戦没者を祀る慰霊碑がある。

 現在では戦術人形が主体の戦場で死者など出る方が珍しいのだが、昔はそうではない。人間と人形が共同戦線を張ることも少なくなく対戦術人形の戦術もまだ固まっていない黎明期には相応の死者がでた。

 S地区は最初期から最前線であり続けている。当然、死者も他地区と比べて相応に多い。

 

だからこそ、ここには慰霊碑がある。

失われた命を忘れるなと。

 

 今でこそ花を手向けるものは少なくなってしまったが、今日もまた誰かが慰霊碑に祈りを捧げている。

 例えば、フロストノヴァのように。

 

「前回は手向ける暇も、無かったからな。

花よりこちらの方がお前達は好きだろう」

 

 まだ雪の残る慰霊碑にフロストノヴァは花ではなく彼らの喜びそうな甘い飴の袋を置いた。

 

 戦いが終わったあと、彼女に付き従っていたスノーデビル小隊の面々は姿を消した。彼女自身が風に聞いた噂によればなんでもあの地域一帯はそう言った「よくないもの」を惹きつける地形であったらしく、先の戦闘では実際に『戦術人形や戦死者の霊を見た』という発言をする人物もいたほどだ。偶然が彼らを戦場に引き寄せたのだろう。

 

奇跡は、二度は起こらない。

 

 あれから彼らを見たものは誰もいない。フロストノヴァは戦後処理の中探し回ったが痕跡すら何も見つかることはなかった。

 残っているのは、彼女の全盛期でありながら相反して病に侵されていない都合のいい肉体と、彼らの代名詞である民族模様が織り込まれた白いローブ。

 

 彼らが纏っていた装束や武器は、雪のように溶けて消えてしまっていた。彼らの存在を証明する記録もなく、戦場にいたものの記憶にしか彼らの勇姿は残されてはいない。

 

 

彼らは何故自分の目の前に現れたのか。

その疑問は、彼女の中で謎のままであり続けるのだろう。

 

Rset In Peace(死者よ、安らかに眠れ)

 

同胞達よ、地獄に私が行くまで待っていてくれ。

......まだ少し、時間がかかるかもしれないが」

『ゆっくりでいいさぁ、姉貴』

『俺たちの分まで生きてくれや』

『残りの人生楽しんで』

 

 突風が吹いて彼女のフードを捲り上げたその時、幻聴かもしれないが彼女は誰かの声を聞いた。

 

「......ああ」

 

太陽の光に目を細めながらも、雲ひとつない青空を仰ぐ。

 

空は彼女が掴み取った希望あふれる未来のように、曇りなく蒼く、眩しく、輝いていた。

 

「寄り道も、悪くない」

 

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