ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー 作:通りすがる傭兵
ま、もうちっとだけ続くらしいんじゃがな!
「やっぱりしんどいのう」
ローディングゲートから弾丸を取り出し、弾を詰めながらぼやくナガン。彼女が身を隠す物陰のすぐそばで、キュンキュンと弾丸が石畳を削る音が聞こえて来る。
「機銃は12.7mm。もらったら即お釈迦か。別働隊のようで、少人数なのが救いではあるが、どうにもならんのう」
さっき叩き割れた手鏡で盗み見た時は歩兵が10人ほどと装甲車が1両。ナガンM1895の装弾数は7発、2丁持ちなので計14発。リボルバーなので戦闘中にリロードするなんて器用なことがまず不可能。装甲車の中にいる人数を考慮しても足りるかどうか判断はつかない。
「全員頭が抜けるなら話は別なんじゃが......人死には望まんし、あのヘルメットのクラスであれば接射でも抜けるか怪しいのう」
ポーチに在庫のあった訓練用の減装ゴム弾に入れ替えつつ作戦を練ってはみるが、ダミーもない1人ではどうしようもないという結論しか出ないのであった。
「相手の気でも引かれるような事があれば、なんとかなるんじゃがのう」
そんな都合のいいものが都合よく起こるはずもないと甘えた考えを一蹴しどうしたものか、と顎に手を当てて考え込もうとした矢先のことだった。
「銃声......2ブロックは先か。申し訳ないが見捨てるしかあるまいよ」
遠くて聞こえにくいが、何か男が話すような声も聞こえる。市民自警団か、はたまた頭のいかれた自殺志願者かと溜息をつくナガンだったが直後の金属を派手に割く耳障りな音に文字通り飛び上がった。
「な、なんだ?」
「橋の方にやべえ奴がいるらしい!」
「お、応援に行くぞ!」
それはテロリストも同じようで、銃撃をやめ踵を返そうとする足音とエンジン音がした。
一瞬意識から自分が消えている。
そう考えた時には、ホルスターを銃に収め直していた。
「抜き打ち勝負か、たまには使ってやらねばな」
戦術人形のクイックドローは、0.1秒を遥かに下回る。
銃声が1発轟いて、まず7人が倒れた。
仲間の異変と銃声に気がついた歩兵3人が振り返って、何が起きたかも分からないままにまた倒れた。
「歩兵は全部! あとは」
「クソガキがっ!?」
「遅い遅い!」
「がってむ!?」
気がついた運転手がドアを開けたのに1発ぶち込んでから親切に閉め直して1人がのびた。
「......ふう」
「油断したがふっ!?」
「しとらんわい」
こっそり後ろから近づいてきたテロリストの顎に1発ぶち込んで1人がダウン。
「一体何が......?」
「さてな、悪い夢でも見とったんじゃろ」
最後に後部ドアを開け放って、2発ぶち込んだ。
そして、誰もいなくなった。
「14発、なんとか足りたか。しかし......別働隊にしては少人数だったのう。ま、関係はあるまい。縛り上げて後部座席に詰め込んでおくとするか」
◇◇◇
「......もうこれ私らいなくていいんじゃないかナー」
「教科書のようなジト目してて草生える」
「草? 草は生えているが、今その会話が必要か?」
「新鮮な反応ドーモ」
しばらく列車に並走して車を走らせてはいるが、どうにも抵抗はしばらくは無い。突入部隊が無事にテロリストを蹴散らして掃討したということで間違い無いだろう。そう指揮官は結論づけることにした。
「やれやれ、呼び出されたかと思えば振り回されるばかりで」
「積極的に飛び込もうとしなかったし当然じゃない?」
「回収任務だけは買って出ましょうか」
車を列車に近づけておーいと声をかけクラクションを鳴らす。電車から車に飛び移ろうとするとそこらのスタントより命懸けだが、あの大立ち回りをこなせる戦闘員なら鼻歌交じりにこなせるに決まっていることだろうと構わずに寄せた。
「もしもーし」
「よかった、救援だな! あんなの相手してられるっか、逃げろ逃げろ!」
のっそりと顔を出したのは、雑多な装備を着た男たち。
車にいるのは、グリフィン制服姿の男女。
とりあえず、互いの指揮官格の人間が叫んだ言葉は一言一句同じだった。
「「敵じゃねーか!」」
テロリストたちが銃を構えるのとフロストノヴァが氷の盾を構えるのはほぼ同時。
「ふぁっっっっっっっっく! 働け超人ども!」
「コラボ相手に罵倒しない!」
「メタ発言が過ぎますがこうでも言わんとやってられませんよ先輩! だいたいコラボなんてのほほんとだべりながらナガンさんとガンスミスさんが相手と銃いじってキャッキャすればいいんですー! 戦闘なんて僕には不向きなんですー! だいたいただの人間に超人的反応を求めるなって話なんですわバッキャロ〜!」
「黙れクソガキ」
「口が悪すぎませんことよ?!」
「いいから反撃してくれ。私は防御で手一杯だ」
「せっかくボケたのにスルーは悲しくなりますねぇ!」
アクセルを踏み込み、無理矢理に射線を切った指揮官。後部座席では戦術補佐官が小銃を構え指示を待っている。
「作戦は?」
「派手にやってください。あとは援護を待つだけで十分です」
「了解指揮官、フロストも派手にやっちゃって!」
「派手に、か。どのように?」
「辺り一面真っ白にしちゃって!」
「了解した」
「......なんて?」
凍りつけ、とフロストノヴァが叫んだ瞬間指揮官の視界が180度回った。思わずブレーキを踏み込もうとする反射神経をねじ伏せ、後部座席に向かって叫ぶ。
「ニャンてことするんですか!」
「ごめん、言いたかっただけ」
「バカなんですね!?」
「可愛らしい噛み方をするものだな、これがあざとさか」
「っーーーーー! もう、いいですっ!」
顔を真っ赤にしながらもなんとかハンドル制御で車をまっすぐに戻し、表面が真っ白に凍りついた列車から離れていく。
「これだけやれば十分ですよもう、さっさと戻る方法探しますよ!」
「えー、もっと派手にやりたかったのに」
「これでも十分派手ですよっ!」
「消化不良だな......えい」
「なんで路面凍結させるんですかあああああああ?!」
「さっきクルクル回ってたのが楽しかったから」
「子供ですか?!」