ドールズフロントラジオ 銃器紹介コーナー 作:通りすがる傭兵
「ンー、ここのケーキは絶品ですねぇ!」
「ワンホールをペロリとあっちゅーまに、胃袋どうなってんだ?」
「すいませーんケーキお代わりで!」
「ハーイ」
諸々の事件が全て解決した一行は、今回の事件のことの発端だろうと言う『喫茶 鉄血』のカフェテラスにてコーヒーブレイクと洒落込んでいた。店内では同じく世界を渡り、この街を守ることに協力した面々が同じようにコーヒーを楽しみ、スイーツに舌鼓を打ち会話を楽しんでいることだろう。
「しかし、ガンスミスさんたちまで居るとは。縁とはかくも数奇な巡り合わせですねぇ」
「一回来たんなら縁はつながっちまうってのがこの世界のルールらしい。半分くらいは驚いてないし来たことがあるんだろうさ」
「この世界は不思議だな。平和で穏やかだ」
「鉄血がいなかった古い時代の一コマですよフロストさん。我々が目指すべき光景でもありますが」
「それを言うためにわざわざ私を巻き込んだのか?」
「まさか、戦力とでしか捉えてませんよ」
「このクソ指揮官は照れちゃってさあ」
「ちょ、やめてくださいよ先輩!」
「いつもの光景だねぇ......」
じゃれあいだした2人をみてガンスミスはそう呟いた。ナガン
しかし大規模作戦や今回の事件を通じて、その溝は埋まりつつある。より相互理解を深め、たがいのほの暗い部分を見せ合い、恋人らしく自己をさらけ出している。恋愛としては不器用な2人が歩き出す様が、ガンスミスとっては少しばかり微笑ましい。
「ところでナガン、合流までなにしてたのさ」
「スクリーンの保安官の物真似じゃな。最近のOSアップデートでガンスピンやら細かい動きが滑らかにできるようになってな、SAAの教えも相まって、なんとか14発全弾叩き込んでやったわい」
「おおこわい怖い。投げ縄で逮捕はやめてくれよ保安官様」
「安心せい、逮捕する時はドアを蹴破って銃突きつけた方がはやいからのう」
「決め台詞は『デトロ! 開けろイト市警だ!』ですか?」
「後輩ちゃんよ若干ネタが古いしここはデトロイトじゃない」
「最近の流行りは分かりませんねぇ」
小ボケも挟みつつ甘味に舌鼓をうっているろ、オーナーの『代理人』が小さな紙袋を抱えながらこちらにやってきた。
「楽しんでもらっているようで、何よりでございます」
「どうもどうも。今回はちゃんとツケにするつもりはないから。金で支払いできたりするよね?」
「いえ、今回は軍から報奨金を頂いておりますので支払いは必要ございません。また平和な時に来てくだされば幸い、といったところでございましょうか」
「うーん、逃げられちゃったな、残念無念」
むう、と不満げな現指揮官だったが、鼻をスンスンと動かして紙袋の正体に気が付いたらしく目を輝かせた。
「おやおやおや、手に持っているのはもしかしなくとも!」
「いつかとおなじお土産です。そろそろ夏ですし、アイスコーヒー向けのブレンドを用意させていただきました」
「いやっほい! 生豆の本物コーヒーです堪りませんね!」
「そいつはありがたい限りだ。基地に戻ったら少しコーヒーゼリーでも作ってみるかね」
「なんとそれは本当ですかガンスミスさん! しばらく甘味には困りませんね!」
「浮かれちゃってさぁ。まだ書類仕事は山積みなんだよう?」
「美味いコーヒーがあればすぐ終わりますよ!」
「こないだまで紅茶派じゃなかったっけ? 泥水とかなんとか」
「あーあー聞こえませんねぇー」
「コイツ......」
不意に、荘厳な鐘の音が響く。それに気が付いたのか、代理人はコーヒー豆の入った紙袋を手渡し、両手を合わせて軽く頭を下げた。
「本日は『喫茶 鉄血』にご来店いただきありがとうございました。どうかまたこの街に来ることがあれば、我々の店を訪れてください」
「ええ、言われずとも!」
「ま、コーヒーは美味しかったしね」
「......ああ」
「ういうい、また来るよ」
「では、我々はここでおさらばかのう」
「またのご来店を、お待ちしております」
スッと意識が遠くなり、気がつけばそれぞれが元いた場所に戻っていた。しかし、明確に違うのは......香ばしい香りを立たせる、コーヒー豆の入った紙袋があること。
「先月のカフェの売り上げ台帳なんだけド......フム、コーヒー豆、それも煎りたての良き香り。ナニ、老ぼれに隠し事かネ?」
「ええ、死神さん。ちょいとつてを辿っていいコーヒー豆を貰いまして、折角なので夏らしくアイスコーヒーをこしらえてもらえませんかね」
「......かしこまりました」
世界は違う。
しかし平和への想いと、
コーヒーの香りだけは、
どこも変わらないのだろう。