幕末・浪漫千香〜どんな時代でも、幸せになれる〜 作:秋藤冨美
「西郷さん、これから日の本はどうなっていくと考えますか。 」
その後話題は次第に時勢のことに移り。
「うーん。そうなあえ。今
...当たっている。実際、江戸時代が終わり明治の世を迎えたとき、政府の重役には多くが両藩の者から選ばれた。しかし、そこに至るまでに多くの血を流したということもまた事実。
「でもそうなると、西郷さんたちに反発する人たちも出てくるのではないでしょうか。 」
「そやそうでしょうけど...。それにしても不思議なもんじゃ。
西郷は感慨深いといった風に腕組みをした。
「そうですよ。学ぶことは、生きることだと思うんです。
千香は、前々からこの時代に言われている女子の幸せについて疑問を持っていた。自分は、今まで初等、中等、高等、続いて大学と学ぶことに関して不自由な思いをしたことは無かった。しかしながら、この時代では女子に学問は必要無いと考えられている。いくら学びたいと思っても、周りがそれを承知せず渋々諦めるといったことが多い。だから後に、女だって学びたい、働きたいと声を上げた人々もいるのだ。
「早く嫁に行け、
千香はぎゅっと、膝の上に乗せた拳を握りしめた。
「...千香さぁの様な
西郷はハッと息を呑んで、目を見開いた後口角を上げた。
「そう、ですね。この時代では珍しいかも...。 」
千香は顎に手を当てぼそり、と呟いた。
「ん?今何か言おいもしたか? 」
「いいえ。何も。...あの、もしよろしければなんですけど、薩摩の話を伺ってもいいですか?えと、別に変な意味は無くて!純粋に興味があるっていうか。 」
また思わず失言してしまうところだった。それで千香はなんとか話題を変えようと試みる。
「よかどよ!どおんと何でん聞いてくいやんせ! 」
こんな風に西郷は薩摩の話題になると、子どもの様に目をキラキラと輝かせる。けれど戦になると想像もつかない程恐ろしい姿に豹変するのだと考えると、千香はこの優しそうな雰囲気をまとっている西郷吉之助という男が初めて恐ろしく思えた。